わん句・日めくり犬の句・犬と俳句

2007/10/31

棉の実の爆ぜる日仔犬貰はるる

10/31    細川和子

先日、北海道・羅臼(らうす)から、ヒグマなどの大型獣を相手に、紀州犬と猟をしている方が、「仔犬」を求めて、私の知人宅を訪問された。現在の愛犬が11歳で猟を引退することもあり、新たに「仔犬」を育てたいという。ころげ回る4頭の「仔犬」の中でも、最も太って元気なオスが、後日、羅臼に渡ることに。「棉の実」は、アオイ科ワタ属の植物の総称。夏、花が咲いたあとに桃のかたちに似た実となり、それが熟すと実が弾ける。「棉の実」が「爆ぜる」と、中から白い棉が噴き出す。

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2007/10/30

露葎繊き赤犬を女王とし

10/30    石田波郷

」とは、もともと、からみあって伸びる草のこと。野原や空き地など、繁って地面を覆う。茎には小さな刺があり、衣服などにつくと煩わしい。夏の間は、荒れた風情の「葎」が、「露」に輝いている。濡れた「露葎」に守られるかのように「赤犬」がすっくと佇んでいる。細くしなやかな「赤犬」は、「女王」と呼ばれるにふさわしい美しさと品位を兼ね備えているかのよう。「赤犬を女王とし」という詠み方は、ディズニー映画の主人公のような、ドラマチックな展開を期待させる。

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2007/10/29

残菊に犬も淋しき顔をする

10/29     殿村菟絲子

晩秋になっても、庭の隅などに、色合いが薄れながらも、まだ咲いている菊の花がある。菊は、咲き残ったり、枯れ始めたりしたものにも味わいがある。これを「残る菊」「残菊」という。とくに「ざんぎく」という呼称は、いかにも時期を外したという感じで、音からして哀しく響く。こうした、菊を見る人の心のありようを察したのか、「犬も淋しき顔をする」。同じ作者の「鶺鴒や巻尾の犬が路にゐる」は、まっすぐ伸びた「鶺鴒(せきれい・秋の季語)」の尾と「巻尾の犬」の対比が面白い。

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2007/10/28

木の実添へ犬の埋葬木に化れと

10/28   西東三鬼

川上犬という、長野県川上村の名が付いた、柴犬によく似た日本犬がいる。愛犬・龍と、その故郷・川上村に移住された方から、龍が亡くなったとき、栗や椎などの「木の実」をたくさん持たせてやりました、というお話をうかがったことを思い出した。紅葉した葉もたくさん詰めて、山に「埋葬」したそうだ。また、ある方は、黒いラブラドールのダンをヒマラヤ杉の根本に葬った。「遠くから見てもダンの木とわかるから」と。生れ変わって「木に化れ」という願いも込められているに違いない。

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2007/10/27

返事する犬ゐし小さき葉鶏頭

10/27     三角千栄子

目がさめるような「葉鶏頭」は、熱帯アジア原産。上部の葉が紅、黄、緑など、あざやかに発色する。なかでも燃えるような紅い「葉鶏頭」が印象的。古名は「かまつか」。漢名の「雁来紅(がんらいこう)」は、渡り鳥の雁(かり)が来るころ葉が紅くなることに由来。人の背丈をしのぐほど高くなるものもあるが、最近は、小さく密生した園芸種の「葉鶏頭」が、晩夏から秋にかけて、長い間咲いているのをよく見かける。「飼い犬と会話する子や秋深し  菖蒲満寿江(しょうぶみつえ)」も。

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2007/10/26

犬にのみ許す心や秋時雨

10/26     草間時彦

「犬にのみ許す心や」とは、なんと大胆な。「犬のみに許す心」、私にも思いあたるものがある。そんなことを言うと、よほど人間嫌いで、他人には決して心を開かない、変人のように思われそうだけれど。人間ではない、最も身近な生き物である「犬にのみ許す心」というものが、たしかに私にもある。「時雨」は、さっと降ってまもなく上がったり、日が当たりながら降っていたり、ときには、しばらく降り続くなど、趣が深い。たんに「時雨」といえば冬になるが、晩秋にもよく降る。

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2007/10/25

鹿火屋守太郎と呼ぶは犬なりし

10/25    宝田麦青

自然破壊などによって食物が減り、人里に下りた獣が農家に被害を与えることが多くなっている。「鹿火屋守」は、鹿や猪などが田畑を荒らすのを防ぐため、一晩中、火を焚き、獣が嫌う臭いをくすぶらせる小屋を守る人のこと。「淋しさに又銅鑼うつや鹿火屋守  原石鼎(はら・せきてい)」は、銅鑼(どら)を打って獣を追い払おうとしている。遠く響くその音に、「鹿火屋守」の孤独と秋が深まる。前出の「鹿火屋守」はひとりではない。「太郎」と「呼ぶ」犬と番をしている。「鹿火屋」の火や音は、動物と共生するため、目に見えない境界を静かに示し続けている気がする。

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2007/10/24

預りし犬返す朝木の実降る

10/24     佐々木 暢

友人が旅行中、その愛犬を預っていたのだろう。今朝は、飼い主に「返す」約束になっている。ひとつ屋根の下で寝食をともにして、すっかりなれている犬。無事、飼い主に渡すことができると安堵する反面、なんとなく手ばなすのがさみしい、そんな気もする。「木の実」とは、秋に熟する「木の実」の総称。団栗(どんぐり)の名で呼ばれるくぬぎ、椎(しい)、栃(とち)、胡桃(くるみ)など、さまざまな実が秋を彩り、地に落ちる。「預りし犬返す朝」という場面と「木の実降る」が響き合う。

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2007/10/23

木犀の香や純白の犬二匹

10/23     高野素十

あたりに漂う甘い香り。ふと見上げると、葉のわきに小花が密集して咲いている。風にただよう「木犀」の香りに触発され、遠い記憶がよみがえる。金色の花をつける金「木犀」と白色の花をつける銀「木犀」がある。私の実家には、樹齢20年を超える金「木犀」の木が2本ある。私の背丈くらいだったが、今では4メートルくらいの高さに繁っている。橙色の花は、星のまたたきのような明るさとあたたかさを持つ。その一方で、黄昏(たそがれ)どきを思わせる、ほの暗さも感じさせる。

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2007/10/22

籾殻火犬近寄りて見てゐたり

10/22     山口波津女

今では、回転式の大型機を使用するため、素朴な稲扱(こ)き風景は見られなくなったが、昔は、刈ってよく干した稲を扱いで「籾」にした。扱きおとしたばかりの米を「籾」という。この「籾」を玄米にするため、十分に乾燥してから籾摺(すり)をして、「籾殼」といわれる外側の堅いからを取り除く。その「籾殻」を集めて焼いている「籾殻火」に「近寄り」、じっと炎を見つめる犬。いつも農作業をしている傍らにいる、好奇心豊かな、人なつこい犬なのだろう。

波津女は、山口誓子夫人。

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