建築現場より

2009/04/30

プロロジスパーク座間I新築工事

「そら」2009年3月号 現場拝見 第12回

プロロジスパーク座間I新築工事

設計・施工/(株)フジタ横浜支店

広大な倉庫スペースを確保し

大量かつ迅速な荷の積み卸しが可能に

周辺を小田急線と東急田園都市線、相鉄線が走り、国道246号線や東名高速道路が走るなど、首都圏エリアはじめ、神奈川・東海エリアへの交通アクセスが便利な、陸上輸送の拠点として恵まれた立地にある神奈川座間市にマルチテナント型物流施設「プロロジスパーク座間I」の新築工事が進行中だ。

同現場は、敷地面積約6万㎡、延床面積約14万㎡を有し、鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)5階建40フィートコンテナトレーラーが各階に直接乗り入れができるよう大型ランプウェイ2基(上り専用・下り専用)を備え、約190台分のトラックバースと約350台分の屋上駐車場を整備するなど、大量かつ迅速な荷の積み卸しが可能となる。1フロアー当たり約2万4,000㎡の広さを確保し、倉庫内はテナントのニーズに応じて4分割することもできる設計となっている。 

免震システムとPcaPC工法を

組み合わせた免震PcaPC構造を採用

構造は、作業者および荷物の安全を確保できる地震に強い施工法を検討した。

「物流施設専門の不動産開発会社プロロジスが、特許を持つ杭頭免震工法を採用しています。建物と基礎の間に免震装置を設け、大地震の際、積層ゴムが変形し、建物がゆっくり平行に揺れることで、地震力を吸収して、地震の揺れを一般構造と比べ3分の1から10分の1に大幅に減らすことが可能です」と武石宏所長は現場を案内しながら説明する。随行する工事担当の鈴木泉さんは、2008年入社の新入社員だ。

阪神大震災級の震度7の地震発生時にも、建物はほとんどダメージを受けないという。施設内で働く作業者の安全を確保し、保管物の荷崩れや破損などのリスクもほとんどない。先進の大型物流施設といえそうだ。

また、免震工法とプレキャスト・プレストレスト鉄筋コンクリート工法(PcaPC工法)を組み合わせた最新技術「免震PcaPC構造」の採用で、より高い耐震性能を発揮した。

PcaPC工法とは、柱と梁部材をあらかじめ工場でプレキャスト化(Pca)し、現場で建方したのちに、PC鋼棒やPC鋼線を用いて締め付け、柱と梁の一体化を図るPC圧着工法を採用するというもの。

免震PCaPC構造の採用により、高品質はもちろん、工期の短縮、騒音の低減、産業廃棄物の極少化、工事の省力化、さらに高強度コンクリートによる耐力性・耐久性もアップする。高強度コンクリートの床は、大型トラックや重量物を運ぶフォークリフトの走行による変形やひび割れが、鉄骨造の建物に比べ少ない。構造体の剛性(硬さ)が高く、建物の劣化が少ないため、100年以上持続する建築物の実現も可能だという。

「団結・責任感・率先垂範」

不安全行動は見逃さない!

武石所長は、「所長方針」として、次の3つ掲げている。

    団結……強調と和、職長会の推進と活性化、無事故無災害を目指す

    責任感……決めた事は守る・守らせる、己の益より会社の益

    率先垂範……常に先を見、手本を示す

「『なんでも話せて、毎日のびのびとやれる雰囲気づくりを皆で協力し合ってつくろう!』ということです。作業員1人ひとりの気持ちに配慮して、シャワー室を設置してほしいといった要望にも素早く対応するよう努めています。そのため、『所長のためだったら何でもやるよ』といってくれるムードがあります」と武石所長。

また、作業所安全管理方針として、「危険に対する感性を高め、事前に摘み取ろう 危険の芽」をスローガンにしている。

さらに、「工事安全衛生目標」として次の4つを挙げ、周知徹底を図っている。

①重点管理指定工種作業は、事前にミニ施工会議を開催し、当該工種に伴う危険源および実施対策事項を徹底追及し、「災害ゼロ」を目指す

②すべての作業における現地での危険予知活動実施率100%を徹底追及し、決めた事、決められた事を守り!守らせる!風土醸成を目指す

③不安全な行動やルール無視は、決して見逃さず、その場で是正指導を行い、作業所規律・安全風土の維持を徹底追求する

「現場には、絶対安全といえるような場所はありません。大切なのは、『自分の安全は自分が守る』という気持ちを各自がしっかり持つことです。みんながやっているからいいやという、ヒューマンエラーが一番怖い。急がば回れで、決められた事をきちんと守り抜くこと。それが大切です」と所長は強調する。

「自分の安全は自分が守る」

特別教育や救助訓練で安全意識を高揚

武石所長の『自分の安全は自分が守る』という教えは、職長会に浸透し、次の安全衛生活動計画にも反映されている。

    朝礼・安全ミーティング・KYKの自主運営

    職長会パトロールの実施ならびにパトロール結果の集計と改善(毎週水曜日午前10時から実施)

    詰所・トイレ・駐車場などの保守管理と一斉清掃の清掃分担など、良好な環境の維持・整備

    関係職長および作業員の連絡調整スピードの向上

    職長会主導による工区別責任者の選任(工区マスター管理の周知徹底)

危険・有害業務に従事する者については、法令上、特別教育の実施が義務づけられていることから、同現場では、酸素欠乏危険作業、フォークリフト作業、高所作業車作業、研削砥石取替え作業に就く者を対象に特別教育を実施している。

また、万一の災害発生時に備え、あわてずに行動できるよう、全国安全衛生週間や全国労働衛生期間中に、緊急時の救助訓練、遭難訓練、消化訓練といった「安全衛生訓練」を行い、職長および作業員の安全意識の向上に努めている。

「建物の共用棟には、レストラン、託児所、休憩所、オフィススペースなども設けます。周辺環境の整備も図り、緑化や歩道の拡幅なども行います。南側の市道沿いは、歩道として整備して市に提供することになっています。20095月竣工に向け、人と環境に優しい施設の実現をめざし、『己の益より会社の益』という言葉を忘れずに全力で安全施工に取り組んでいきたい」と武石所長は意気込みを語った。

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2009/02/01

横浜環状北線トンネル・立杭工事及び長島大竹線高架橋下部工事(仮称)

「そら」2009年1月号 現場拝見  第11回施工/五洋建設(株)

TRDやGSTなどの最新工法で高精度の掘削が可能に!

2002年サッカーワールドカップ決勝戦が開かれた日産スタジアムを臨む横浜市港北区北新横浜。鶴見川に架かる新横浜大橋から亀甲橋に至るあたりで、横浜環状北線トンネル(以下「北線」という)の出入口付近の開削トンネル、シールド発進立杭および新横浜換気所の土留工、横浜市都市計画道路長島大竹線のRC橋脚、橋台、擁壁の築造工事が進行中だ。北線は、横浜市の交通ネットワークの骨格を形成する横浜環状道路の北側区間に当たる。第三京浜道路の港北インターチェンジから、首都高速道路横浜羽田空港線の生麦ジャンクションをつなぐ自動車専用道路。全体の約7割がトンネル構造となる。現在、北線の出入口は、シールドマシンを下ろすための発進立坑が行われている。開削トンネルの土留壁は、地下水圧による掘削底面の「盤ぶくれ」を防止するため、止水性に優れたTRD地中連続壁を地表から44~50mの深さまで打設する。「盤ぶくれ」とは、地盤を掘削したときに掘削底面の地盤が、地下水圧によって持ち上げられる現象のこと。これが発生すると、掘削底面に亀裂が生じ、土砂.を伴った地下水が掘削溝内に噴出し、土留壁の倒壊、周辺地盤.の沈下などの重大災害を誘発することもあるという。「TRD工法」とは、地中に建て込んだチェーンソー状のカッターポストとカッターチェーンを一気に横方向に移動させ、溝状に掘削した原地盤土砂とカッターポスト下端部からセメントスラリを攪拌しながら、ソイルセメントの地中連続壁を施工する工法をいう。また、終端部の遮水壁は、約50mの深さとなるため、GST工法(SMW工法の施工精度を向上させた工法)を採用。これにより、削孔時に、GST掘削機の先端位置をリアルタイムに自動計測・制御できるため、高精度の連続地中壁の施工が可能となった。従来のSMW工法にくらべ、土留壁の削孔精度が300分の1以上に向上した。「発進立坑の土留壁は、土砂が崩れないよう強固な壁にするため、止水性と鋼性に優れた泥土モルタル地中連続壁を採用しました。地下水位や地盤変位を計測し、周辺に影響がないことを確認しながら施工しています」と伊藤文彦所長は語る。「泥土モルタル地中連続壁工法」とは、水平多軸式壁掘削機を用いて、高精度の土留壁を造る工法で、壁体材料に泥土モルタルを使用し、周辺地盤の沈下を抑える。ちなみに、北線のトンネルが通過する地層を事前に調査した結果、ほぼ全線にわたり、上総層群という非常に硬い地層であることが判明。したがって、北線の工事は、全体的に地盤の堅固な深い位置に計画し、最も地盤沈下を抑制できるシールド工法が採用された。そのため、地盤沈下の心配は少ないといわれている。さらに、新横浜大橋につながる長島大竹線の橋脚は、ケコム工法で施工する。これは、橋脚基礎下部に気密な作業室を設置し、ケーシング(鋼製の筒)を回転・圧入させながら、掘削・沈設後、鉄筋コンクリートを打設することによって、場所打ち杭を築造するもの。ケーシング内の土砂は、油圧グラブを用いて掘削・搬出する。低騒音・低振動型の堀削機を使用するため、周辺環境に優しい工法であるといえる。

「安全五箇条」を基本方針に掲げ自分勝手な行動を戒める

工事用車両については、現場周辺が通学路であるため、搬出・入時間を制限。特に、ダンプトラックについては走行ルートを決めているとともに、荷台にシートを被せたり、工事用道路や出入口付近に散水したりして、土砂の飛散防止に努めている。「当工事の進捗も約25%となりました。これまでは、連壁工事がメインでしたが、いよいよ掘削、土留支保工が中心です。職員の人数も限られているので、細かなところまで目の行き届かないこともあるかもしれませんが、職長会の皆さんの協力で、安全面についてもより引き締めて取り組んでいきたいと思っています」(伊藤所長)。伊藤署長は、安全五箇条として、一、 近道せず二、 省略せず三、 憶測で行動せず四、 急がず慌てず五、 周囲の注意を怠らずを挙げ、安全を無視して自分勝手な行動をとることを戒めている。「常に余裕を持って仕事をすることが大切です。事故を起こしては何にもなりません」と強調する。さらに、現場のスローガンとして、「重機災害の防止、墜落転落災害の防止、飛来落下災害の防止」という3つを掲げる。クレーンが倒れる、重機の旋回時に作業員がはさまれる、杭打ち機に巻き込まれる、H鋼が落下するなど、工程ごとの危険性を予測し、それを除去するための具体的な対策(クレーンのつり荷の下への立入禁止、監視の徹底、重機の作業半径への立入禁止など)を立てている。すなわち、リスクアセスメントを実施し、作業所に潜む労働災害の芽を事前に摘み取るよう努めているのである。職長会の野上雅人会長(産興建設)と雨宮信太郎副会長(野本建設)も、毎週水曜日に職長会による安全パトロールを行い、危険要因の除去に神経をとがらせる。

近隣住民に配慮した環境美化運動にも取り組む

同現場では、周辺環境にも気を配り、仮囲いは白色板を基調とし、部分的に透明板を採用することによって、施工状況が見られるよう工夫している。また、斜面を覆うシートも、従来のブルーシートではなく、土面になじむブラウンシートを採用するなど、周囲との調和を図っている。また、定期的に道路清掃や土手の草刈などの奉仕作業も行っている。注目されている現場だけに、市関係者などの見学者も絶えない。工学部の大学生100人を招いて、(社)日本土木工業協会主催の「100万人の市民見学会」も開催し、好評を得た。「安全は1人ひとりが守らないと達成できません。より仲間意識を強め、これからも助け合って、基本ルールの徹底と確認を励行していきます」と静かに語る伊藤所長。強固な意志とあたたかな人柄が伝わってきた。

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2009/01/02

富士見二丁目北部地区第一種市街地再開発事業ビル築工事(仮称)

「そら」2008年11月号 現場拝見  第10回

施工/大成建設(株)東京支店

千代田区の超高層マンション

新たなランドマークとして注目集める

JR総武・中央線、東京メトロ有楽町・東西・南北線、都営大江戸線など、交通アクセスに優れた飯田橋駅から徒歩2分。千代田区富士見2丁目に、地上38階建て414戸の住居棟と地上17階建ての業務棟が建設中だ。

明治時代、このあたりの高台から、富士山を臨むことができたことから、富士見と呼ばれるようなった。この現場一帯は、20年近く前から、再開発計画が進められてきた。その中核を形成する超高層マンション「プラウドタワー千代田富士見」は、千代田区の新たなランドマークと注目されている。

建物は、鉄筋コンクリート造。基礎構造は深杭と地盤改良による直接基礎の2方式。コンクリートの設計基準強度は、30~100N/mm2。建物の上部躯体に、3種類の制震装置が併用され、さまざまな周期の揺れに対応できる。

「あわてず、ゆっくり、ていねいに!」

飽くなき無事故無災害の追求

さる7月3日、全国安全週間行事の一環として、大成建設の山内隆司社長による現場巡視が行われた。「職長会をはじめ、みなさんの協力で、おかげさまで大変高い評価を戴きました」と平田尚久作業所長は語る。所長の隣で大きくうなずくのは、職長会の早川伸夫会長

所長スローガンは、「近隣にはいつもやさしい気持ちで!」。都会の真ん中での大工事。地域住民とのコミュニレーションは必要不可欠だ。さらに、「あわてず、ゆっくり、ていねいに!」をモットーに、具体的な施策として、次の4点を挙げる。

        落ちない 

墜落する恐れのある高所作業時は、安全帯のダブル使用で身を守り、垂直・水平部の開口部を作らない。

        はさまれない

重機まわりの立入禁止に入らない。機械を扱うときのルールを守る。

        倒さない

足場や仮囲いの点検を毎日確実に行う。とくに重機の足元の確認を徹底する。

        飛ばさない、落とさない

整理整頓をして、物を存置させない。養生にすき間を作らない。

「この現場の重点目標は、『絶対に人を落とさない、物を落とさない』です」と平田所長は強調する。住居棟の最上階は138mに達する。万一、この高さから物が落ちて人に当たったら即死だ。落下物が跳ね、すぐ横のJRの線路に入ったら大変なことになる。

「無事故無災害を目指し、工程より安全優先で作業すること、人命を優先することはいうまでもありません。予定どおり作業が進まないとイライラして強引に進めたときが一番危ない。事故が起こったら、何にもなりません」。目標は、飽くなき無事故無災害の追求だ。

「作業に取りかかる前に、職長はじめみんなで段取り等を知っているか確認し合い、1人で勝手に行わないことが大切です。重大事故が起きたとき、職員も社員も知らなかったというケースもありますから」

規律と緊張感のある空気を保つため、作業員、特に新規入場者には礼儀とマナーの遵守を周知徹底している。きちんと挨拶をする、道具を大切に扱う、時間と約束を守る、きちんと片づけと整理整頓をする、いつも清潔にして健康管理をする。新規入場者は識別しやすいように、保護帽にシールを貼らせている(7日間着用)

自己管理ができる人は、事故を起こさない、というのが平田所長の持論だ。「まず、1人ひとりが、自分の身は自分で守り、事故を絶対起こさないという強い意志を持つことが大切です」と強調する。

 さらに、作業前の朝礼・昼礼による安全意識の向上(朝礼時には危険予知瞑想を行い、どこに危険が潜んでいるか、どんな危険が予想されるか考えさせる)、現地KY(危険予知)による作業手順の確認と周知、安全パトロールによる作業環境の安全確認などで、現場の緊張感を持続するよう努めている。現地KYでは、「手すりよし、ネットよし、電動工具よし」と指差し呼称をする。玉掛けワイヤーの点検、道路の凸凹による歩行者の転倒注意、ゲート前での一時停止の厳守、仮囲い周辺の点検、解体工事の粉塵防止対策など、神経を尖らせながら、毎日、現場ルールを遵守するよう指導に当たっている。

作業員一人ひとりが知恵と感性を磨き

危険を摘み取ることが大切

「どこが危険なのか、何が危険なのか、といったことを過去の事故例を通して常に学ぶことで、作業員1人ひとりが、知識と知恵と感性を磨き、危険の芽を摘み取ること、それが大切です」と鈴木所長は指摘する。

「住居棟は、5日サイクルで順調に工事が進んでいますが、繰り返し作業に馴れて、できているはず、やっているはずという思い込みは、思わぬ落とし穴があります。必ず自分の目で安全を確認し、決して手抜きをしないで、次のステップに進むように職長を通じて指導しています」

平田所長は災害をなくすため、自分一人だけでなく、仲間の命も大切にすること、仕事に対して謙虚であることを心がけるよう朝礼で作業員に呼びかけている。

「仲間からケガ人を出さないよう、やってはいけないことはやらない。自分の力を過信しないで、手抜きをしたり、早まったり、慌てたりしない。初心を大切に、職員と職長会が一致団結、力を合わせて、安全意識を高め、工事中の災害ゼロを誓っています」。

所長のお話から、プロ中のプロ集団であるという誇りと自覚と緊張感が伝わってくる。「あわてず、ゆっくり、ていねいに!」と私も口の中で繰り返す。迷ったら、作業手順を見直し、心のスキがないかきちんと確認すること。心のスキが事故につながるのだ。

「私は、この作業所から誰一人としてケガ人や病人を出したくありません。尊い命です。自分の体を大切に、具合の悪いときは、無理をしないで、職長や仲間に伝えて休息ほしい。今月も無事故で、そして元気に作業をしてほしい」。穏やかで、そして毅然とした平田所長の言葉が印象に残った。

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2008/11/01

(仮称)豊洲3丁目8-4街区計画築工事

「そら」2008年9月号 現場拝見  第9回

(仮称)豊洲3丁目8-4街区計画築工事 竹中工務店

独自のチューブ架橋と制震技術を採用

耐震性に優れた超高層マンションを実現

東京都江東区豊洲の運河に沿ったエリアは、超高層マンションを中心とする開発がいくつも進められ、大きな変貌を遂げている。もともと豊洲は、関東大震災の瓦礫で埋め立てられた埋立地。昭和12年、将来の発展を願い、豊かな土地になるように「豊洲」と名づけられた。

その後、石川島播磨重工業(IHI)などの工場が立ち並ぶ工業地として発展。現在、IHIの工場跡地は、ショッピングモールとして賑わっている。

 豊洲の再開発は、2001年に始まった。住宅を中心に教育・医療・商業機能も配した魅力的な文化都市を目指し、大規模な開発が進んでいる。この豊洲3丁目8-4街区に、RC造地下1階・地上44階建ての超高層マンションが建設中だ。延床面積は約10万㎡、2007年10月着工、10年3月完成予定。

建物の基本構造は、同社が独自に開発した、住戸内の梁をなくし、さまざまな住戸プランを可能にするチューブ型の架構法「スーパー・フレックスチューブR」を採用。これは、連続的に配置した柱とそれをつなぐ梁で構成されるチューブ型の立体的な架構法で、コア共用部に竹中式制震間柱を込みこむことにより、振動時のエネルギーを吸収し、揺れを抑える制震機能を果たす。

チューブ架構と制震構造を組み合わせることによって、住戸内や共用部に梁がなく、さまざまな住戸ニ−ズに対応可能な、快適な住宅を実現できる。また、地震の時でも振動、建物の損壊を最小限に抑えられる。

さらに、コンクリート1m2当り約800トンにも最大耐えられる高強度・高耐火の「AFRコンクリートR」も採用。

このように、同社独自の最新の工法・制震技術を採用することにより、耐震性にも優れた超高層マンションを実現している。

「当プロジェクトは、この地域で最後に計画された超高層マンションとして、注目を集めています。超高層マンションの建設とともに、敷地に面した豊洲運河沿いを住民の方以外のみなさんも楽しめる散策路として整備します。緑豊かな街づくりに携わることに大きな誇り持ち、1人ひとりに豊かな思い出が残る職場となるよう、一丸となって日々の作業に頑張っています」と澁田所長は、完成予想図を示しながら語る。

それを見ると、垂直方向へ伸び上がる建物はスタイリッシュで、運河沿いの青空を映してきらめく壁面は、豊洲の新たなシンボル・タワーとしての存在感を漂わす。同時に、未来都市・豊洲のさらなる進化を予感させる。

「豊かな思い出」づくりに

リーダー会とともに取り組む

澁田所長の所長方針は、①全工期無事故無災害を達成する、②品質重視の姿勢を貫き、適正品質を確保してお客さまの信頼を得る、③工期を厳守し、お客さまに満足される建物を確保させる、④創意工夫によりムダ・ムリ・ムラを排除し、生産性向上に努める、⑤建設副産物の資源循環・発生抑制を推進するリサイクル率の向上により、環境保全活動を推進する、⑥思いやりの精神で、明るく、元気な職場環境をつくる、という6項目。

「当作業所で働く皆さんは、お互いを思いやる、やさしい精神をいつも持ってもらいたいですね。そして、明るく元気な職場環境を共につくりあげたい。豊かな豊洲の街を作る私たちの心の中にも、豊かな思い出がたくさん残る、そんな作業所になるよう願っています」

 澁田所長のいう「豊かな思い出」づくりを支えるため、「リーダー会」の車輌・広報委員会は、壁新聞「ニュースステーション豊洲」を今年創刊した。

その紙面で、書記の鈴木慶妃さんは、「リーダー会はみんなのための、みんなで作る、みんなで育てる組織です。明るく楽しく働きやすい職場を作っていきましょう」と述べている。

宮原輝夫会長も、「整理整頓・清潔で働きやすい職場、みんなで協力し、明るく、楽しく、風通しのよい職場作りを目指して活動していきましょう」と訴えている。

5月発行の第2号は、「躯体1階立ち上がる!」という特集号。杭工事から躯体工事で活躍した、鍛冶・鉄筋・大工・とび・重機の作業者たちを業者ごとに写真入で紹介している。「技術のトーセツ」「熟練の墨田」「情熱の福山」「忍耐の東京重機」「不屈の藤井」「革新のビルド」「団結の共英」と、社名につけた二文字がユニーク。それにしてもなぜ、「忍耐の東京重機」なのだろうか?

「重機のオペレーターには、『先に自分たちの資材を吊り上げてほしい』など、業者の要望が集中します。そうした声を受け止めるオペレーターさんはなかなか大変なんです」と宮原会長。なるほど、それで「忍耐」の文字が付くのか。

埋立地のため、掘削に労力を費やした。澁田所長は、杭工事などに功績のあった縁の下の力持ち的存在の作業員を称えるため表彰状を贈った。1人ひとりに「豊かな思い出がたくさん残る作業所」にしたいという切なる願いが込められている。

こうした積み重ねが、明るく楽しい、働きやすい現場をつくり、だからこそ無事故無災害も達成できる、という強い信念が感じられる。

車輌・広報委員会の遠藤茂委員長は、警備員として毎日、現場入口に立つ。純朴な遠藤さんは、小学校の通学路に面する「現場の顔」。今ではすっかり小学生の人気者だ。

全国安全週間準備期間と安全週間中に、所内で募集した安全標語を短冊に記し、七夕の竹に吊り下げて作業所入口に飾った。それを目にした小学生の女の子から「私も短冊に願いごとを書きたい」と声をかけられた。遠藤さんが喜んで色紙を渡すと、「こうじがうまくいきますように」と記してくれた。この言葉に感動した所員は、女の子の小学校にお礼に伺ったという。

近隣の小学生との心温まる交流。「豊かな思い出」の1つとして、作業所で働く1人ひとりの心にしっかり刻まれている。小学生のメッセージ入りの七夕飾りは、「安全は『おかえりなさい』の笑顔まで」などの作業員たちの安全標語と一緒に、今も仮設通路を彩り、作業員はもとより、来訪者の心にやすらぎを与えている。 

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2008/09/01

多摩広域基幹病院(仮称)及び小児総合医療センター(仮称)整備等事業

「そら」2008年7月号

現場拝見 第8回  清水建設

施設の建設だけでなく、医療福祉事業の

運営自体に関わる医療PFI

東京都府中市武蔵野台。現在の都立府中病院のあたりは、約5万年前の旧石器時代の武蔵台遺跡が出たところである。ここで今、日本最大規模の病院PFTの建設が行われている。

これは、清水建設が主体となって設立した特別目的会社(SPC)多摩医療PFIによる事業で、現在の府中病院を「多摩広域基幹病院」として、また、現在の都立清瀬小児、八王子小児、梅ヶ丘の3つの病院を移転・統合し、「小児総合医療センター」として、2つの病院を一体的に整備するというものである。

平成22年春にオープン後、多摩医療PFIが、37年3月までの約15年間、運営・維持管理業務にあたる。

ちなみに、PFIとは、公共事業を実施するための手法の1つ。地方公共団体が発注者となり、公共事業として行い、民間の資金と経営能力・技術力などのノウハウを活用し、公共施設などの設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行うもの。正式名称は、Private Finance Initiative(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)といい、頭文字をとってPFIという。

清水建設の医療福祉施設に対する取り組みは、1985年に医療専門組織を立ち上げ以来、施設の建設だけでなく、医療福祉事業の運営自体に関してもノウハウを培ってきた。さらに、事業実施部署として、医療PFI事業推進部を立ち上げ、PFI事業にあたる組織体制を強化している。

この多摩医療PFIも、各種委託業務の統括・経営支援、建物設備の保守管理・警備などの維持管理、医療事務・洗濯・給食・清掃などの医療関連サービス、そして医療器械・薬品などの調達まで、多岐にわたっている。

所長の安全スローガン「念仏と完結」で三現主義を徹底

施設は、病院棟、宿舎棟、駐車場などから構成され、病院棟は、約53,000m2の敷地に建設。延べ床面積は12万9715㎡。地下1階・地上11階の鉄筋コンクリート造一部鉄骨造で免震構造。病床数は1350床。

平成19年春に着工し、平成21年9月竣工の予定だから、工期は27ヶ月にも及ぶ。そのため、「いかに工業化・システム化を取り入れるかがポイントです。当社の総合力を発揮する非常に良い機会だと張り切っています」と水田保雄建設所長は語る。

また、「業務には、品質、原価、工期、安全、環境が挙げられますが、やはり安全について第一に考えるべきです。万一事故を出してしまったら、いくら品質が良くても、早くできたとしても、お客さまの満足は得られません」。さらに、「施工管理のうえで、ポリシーを持つことは大切ですが、とくに安全管理については確固たる方針が必要です。絶対に事故を起こさないため、誰が、何を、どのようにやるのか、明確な方針が必要です」と強調する。

 そこで水田所長は、現場の安全管理について、すべての作業員に『念仏と完結』というキーワードを徹底させています」

「えっ?『念仏と完結』ですか」と、思わず私は問い返していた。

「『念仏』というのは、当作業所のスローガンである『点検・確認・危険予知』を常に念仏のように復唱し、実践することによって、自然と危険予知ができるようになり、安全に作業が進めることができます」

 ああ、なるほど。要は「点検・確認・危険予知」という3つを肝に銘じるということである。

「『完結』とは、中途半端で作業をしない、ということです。何事も『100%安全だ』と確信したうえで行うこと。そのためには三現主義で徹底的に確認して作業をすることです」

三現主義とは、現場、現物、現実という三つの「現」を重視すること。問題が発生したとき、机上で判断するのではなく、実際に現場に行き、現実を確認することで対策を立て、解決を図る。机上の空論ではなく、現場でこそ、より正しい判断を下すことができるという、品質管理の原則である。

「日頃の安全管理で、最も有効なことは、やはり安全パトロールだと思います。作業所と協力会社、職長会が協力し合って、隙間のないパトロールを行うことにより、安全管理はより向上すると確信しています」と胸を張る。

職長会のスローガン「すぐやる、

必ずやる、できるまでやる」

 職長会の名称は「武蔵会」。水田所長の「念仏と完結」を受けて、職長会のスローガンは、「すぐやる、必ずやる、できるまでやるを掲げる。 

34歳と若い永田康二会長を中心に、安全委員会の岩崎雅哉副委員長、衛生委員会の松山助一さん、環境委員会の長尾庸行さん、詰所委員会の中村千広さん、駐車委員会の柴義巳副会長、顧問・会計の小田孝夫さんと牟田靖さん、書記の梅田和司さんというみなさん。不安全行動を防止する「声かけリーダー」として、それぞれ、よく目立つ赤いヘルメットに赤い腕章を付けている。

 委員会ごとに、「吊り荷の下に人を入れない、入らない」(安全)、「照明はこまめに消しましょう」(衛生)、「リサイクルヤードの整理整頓、正しい分別の指導」(環境)、「こまめに消灯、身近なエコロジー」(詰所)といった目標を掲げている。

 職長会では、毎週の安全パトロールはもちろん、毎朝、最寄り駅の西国分寺駅から現場までのルートの各所に立って、入場する作業員の誘導、現場の周囲の清掃・草むしりなどに精を出す。

とくに、元請職員と職長会メンバー総出で、現場をいろどる数十個のプランターの花の植え替えを行っている。その様子は、「心優しき男たち」と評され、近くの学校からお礼のことばも届いたとか。「喜んでもらえると、うれしいですね」と永田会長はいう。

同現場は、これからがピーク。毎日10人以上の新規入場者を迎えるとともに、最大2000人の作業員が働くことになる。

「作業員のみなさんも、安全についていろいろ考え、注意をしていると思いますが、絶対に事故を起こさないという気持ちをいつも忘れないで、業務を遂行してほしいですね。暑い日が続きますが、健康には十分注意して、『念仏と完結』、これを忘れないでほしいと思います」と水田所長は、柔和な顔を引き締めた。

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2008/06/30

JV晴海新築工事作業所(仮称)

「そら」2008年5月号 現場拝見 第7回

JV晴海新築工事作業所(仮称)

長谷工 コーポレーション

最新の注目スポット・晴海にスタイリッシュなマンション建設中

東京都中央区晴海。最寄り駅は、都営大江戸線勝どき駅。都心のベイエリアは、これまで、豊洲や月島などの開発が話題をさらっているが、ここ晴海地区は、最新の注目スポット。周辺は開発が進み、道路も碁盤の目のように整備されてきている。開発計画ごとの敷地面積も比較的広いといった条件がそろっている。

晴海5丁目に、SRC造地下1階地上20階建てのマンションが建築中だ。建設敷地は、朝潮運河に沿いに位置し、東西に長い。敷地面積は、約1万2000㎡。その敷地の両側を朝潮小橋という橋が縦断している。朝潮小橋を境に東西に分かれ、西(W)敷地には438戸と378戸の住宅棟と10階建ての自走式駐車場(448)、東(E)敷地には378戸の住宅棟とタワーパーキング(100)が計画されている。

白と黒を基調としたスタイリッシュな外観デザインの住宅棟、水景施設を取り入れた中庭、地球温暖化防止のための屋上庭園や屋上緑化などが予定されている。2009年2月完成予定。

建設地の北側境界から朝潮運河の護岸までの距離がわずか10m程度と隣接している。そのため、「港湾法による規制もあり、場面場面で港湾局や関係官庁との調整が必要です。また、深層地盤改良杭、山留め工事、根ぎり工事などの基礎工事における止水、土留め、孔壁の崩れ防止などの配慮が必要で、敷地内の水位や掘削部周辺の土圧・変位などを常時測定する必要がありました」と荻原和博所長は語る。

配慮は施工だけにとどまらない。高潮対策のため、敷地廻りに3mの擁壁を設け、完成時の地盤は、現状より3m高く設計されている。

当たり前のことを当たり前にやる それが安全のために最も大切

荻原所長は、「建設部門のモットーである『信頼の品質を、心をこめてお客様へ』が、設計施工にたずさわる長谷工コーポレーション全員の共通の認識になっています」と力強く語る。「すべてにおいて安全が最優先される」ことを基本方針に掲げ、決して妥協を許さない姿勢を貫く。

「絶対に危険を見過ごさない。悪いものは即是正し、常に安全を確保して作業を進めるといった強い意志を持つことが大切です。そして、作業前に、何が危険か、どうすれば安全かを考えること(リスクアセスメントの実施)。ときには、一生懸命のあまり、周りを見失って、間違いを起こしてしまうことがあるかもしれない。それを避けるためにも、やらなければならないことは絶対に行い、やってはならないことは、絶対にやらない」

当たり前のことを当たり前にやること、それが最も単純で、最も大切ことなんだと、所員や作業員には言い聞かせている。

また、「常に成長し、自らのレベルアップを図る大切さも強調しています。常に問題意識を持つこと。なんにでも当事者意識を持って、『これで問題はないか?』と、日々新たにな気持ちで、自分のこととして受け止めて考えることが大切なんです」と強調する。

品質についても、「きれのいい仕事」「プロの目に耐えられる仕事」に徹するとともに、図面だけに頼らない、現場を重視した施工管理を心がけている。

「常に、エンドユーザーの立場で考えることが大切です」。それにより、アフタークレームをなくしていくことができるのである。

アットホームな雰囲気で 新規業者も溶け込める環境づくりに励む

職長会は、「シーサイドはるみ職長会」という名称で活発に活動している。

500人前後の職人さんが働いていますが、堅苦しくないアットホームな雰囲気で、新しい職人さんもすぐ現場に溶け込める環境をつくっています」と盛田英幹主任は語る。

シーサイドはるみ職長会は、「安全」「美化」「分別・環境」「駐車場」の4つの専門委員会に分かれ、それぞれ積極的な活動を展開している。

「安全委員会」は、毎日の安全確保のため、現場点検を実施。毎週火曜日には、「グットジョブパトロール」を行い、工程の打ち合わせの際に、他の模範となるようなよい仕事、よりよい現場の環境についても発表し、お互いの向上心を刺激し合っている。

「美化委員会」は、清掃道具を管理し、一斉清掃の運営を行っている。毎週火曜日と金曜日の午後に約30分間、一斉清掃を行い、清掃範囲の分担や清掃状況、出されるゴミの分別状況もチェックしている。

「分別・環境委員会」は、ゴミの分別管理、休憩所や仮設トイレの清掃・片付け状況の管理を実施している。

「駐車場委員会」は、入場してくる車輌の管理および駐車場の整備を行っている。

 このほか、職長会では、年2回、すべての作業員を集めて親睦会も開催。業種を超えてコミュニケーションを良くして、仕事上で必要な安全な声を掛け合い、前工程や後工程の業者間における細かい調整を行いやすい雰囲気づくりに一役買っている。

さらに、空き缶のプルトップを収集し、車椅子と交換する社会貢献活動も熱心に行っている。プルトップ8,000kg分を集めると車椅子1台になり、同社の全現場共通の活動となっている。

ここ晴海からは、変貌著しい東京を見渡すことができる。朝潮運河をはさんだ向かい側には、超高層マンションやスーパーマーケットからなる大規模再開発プロジェクトがある。湾内を行き交う船、羽田空港に離着陸する飛行機、お台場やレインボーブリッジも一望できる。

毎年8月の第2土曜日に開催され、60万人以上の観客が詰めかける東京湾大華火祭。その打ち上げ場所は、この現場のすぐ近くである。周辺の混雑をよそに、ゆっくりマンションから見物できなんて、それこそ最高の癒し、ステータスなのだろうな、と思う。

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2008/04/30

中央雨水1号貯留幹線2工区

「そら」2008年3月号 現場拝見  第6回

中央雨水1号貯留幹線2工区

間・東洋・飛島・京葉工管建設共同企業体

シールド工事の防音ハウスが

一夜限りのライブハウスに

JR京葉線の千葉みなと駅前の一角に、「中央雨水1号貯留幹線2工区」のシールドマシンの発進基地がある。

千葉市中心部では都市化の進行とともに、大雨の時に雨水が地下に浸透しにくくなり、短時間で大量の雨水が下水道や河川に集中するようになった。近年、局地的集中豪雨が頻発しているが、降った雨が下水管に流れ込む割合は50%ほど。そのため、雨水の流出量が増大し、床下・床上の浸水被害も発生しやすくなっている。こうした問題を解決するため、平成17年10月から、地下に雨水を一時的に貯めるためのトンネルを建設中だ。

この雨水貯留管が整備されると、雨が下水管に流れ込む割合は20%アップし、雨で薄められた汚水が川や海へ放流される回数を半減させて、汚濁防止にも役立つという。

シールドマシンを稼動させるトンネル建設は、昼夜連続の作業のため、どうしても作業音がしてしまう。周辺の環境に配慮して、騒音や振動を極力カットするため、シールドマシンの発進基地は、巨大な「防音ハウス」で覆われている。

そのシールドの発進式を行った平成19年3月25日、この防音ハウスが一夜限りのライブハウスに変身した。山田貴子トリオによるジャズ演奏が、抽選で集まった230名の前で催されたのだ。防音ハウスでジャズライブとは、なんとも粋なはからい。心地よいジャズのビートとともに、みなさん防音効果も体験できたのでは?

見学した小学生から「ケガをしないで

がんばって」と感想文

作業基地となるシールドの発進立抗は、深さ38m。安全かつ迅速に昇降するため、エレベーターも配備されている。山口忠美所長(間)のご案内で、私は、地下38mにエレベーターで降り、泥水加圧式シールド工法の現場を見学させていただいた。

地盤の改良を省略するため、炭素繊維などで補強した新素材による土留壁をシールド機で直接切削している。これは、発進防護工、到達防護工と呼ばれる工法である。

トンネル工事は、目に見える部分が少ないため、その実態は一般にあまり知られていない。暗く狭い地中で、泥にまみれた壮絶な現場を想像するかもしれない。しかし、目の前に広がるトンネル内は、土砂もなくきれい。快適職場にも認定された現場は、毎日、たくさんの見学者が訪れる。工期内で2,000名を想定しているそうだ。幼稚園生と保護者が見学した際、現場をイメージして描いてもらったという壁面のイラストが、あたたかな雰囲気をつくっている。

「小学生の見学会のあと、ケガをしないで、がんばってくださいという感想文が寄せられました。所内全員が励まされるとともに気を引き締めることで、安全意識の向上にもつながりました」と山口所長は語る。

坑内には、50mごとに色を替えた蛍光灯が設置され、とても明るい。常に距離感を意識させるとともに、非常灯としても活用されている。従来は、個々に行っていたシールド掘進整備の運転と制御は、地上の中央制御室で、リアルタイムで集中管理されている。

山口所長は、この現場の前は、杜の都・仙台の広瀬川河畔で、シールド工法による電力洞道トンネル工事を担当されていたそうだ。

「シールド掘進とセグメント(コンクリートと鋼製の専用壁材)の組立作業という、昼夜連続の繰り返しで18ヶ月もの長期間にわたりトンネルを掘り進めています。

その間、約20,000回以上も立坑での荷役や資材搬送の作業があります。さらに、1日100台も場内を車両が通行して、残土の運搬や資材の搬出入に当たります。

長期間の繰り返し作業の馴れとマンネリ化による不安全行動や設備・機械類のトラブルの災害を防止するため、二重三重の安全対策をルール化し、遵守するよう日常的に安全衛生活動に取り組んでいます」と強調する。

所長自ら種から育てた四季折々の

草花で現場のイメージアップ

不安全行動災害の防止のため、安全掲示板は、だれが見てもはっかりわかるものを設置した。そして、所員の顔写真と行動目標や日々の進捗状況を明記した。

安全のための所長方針「作業所全員による安全意識の向上を図る」ため、①本工事特有の危険要因の摘出と対応策の完全実施。現場固有の安全基本ルールを設定し、完全に遵守させる、②教育・訓練による安全作業の充実と定着を図る。定例・特別教育、避難・消火・救護訓練等の実施、③コミュニケーションの充実を図る。JV職員・協力会社が一体となって快適な職場環境を目指す。

I S O所長方針「豊かな環境づくりに貢献する」ため、①ごみはリサイクル資源と廃棄物に分別し、処分する、②再生資源の利用や材料を余らせない工夫をし、資源を有効に活用する、③使用していない電気・照明はOFFにし、省エネに努める、④騒音・振動の発生を抑制するため環境手順を遵守し、作業を行う、⑤重機・車輌はアイドリングストップをし、温暖化防止に努める。

さらに「価値ある製品・サービスを提供する」として、次の5点を挙げている。①作業手順教育は全員が受講し、品質向上のため作業内容をよく理解する、②材料受入検査を実施し、合格した材料のみを使用する、③材料は置場を決めて識別・養生し、品質の維持と使用の間違いを防止する、④検査機器の点検・管理を実施し、適正な機器を使用する、⑤工程内検査を実施し、適合品を次工程へ引き渡す。

「遵守事項」は12か条。①いつもみんなに大きく元気な声で挨拶、②安全指示は具体的に、③高所作業は安全帯を着用でなく使用する、④決められた作業行動は必ず指差呼称で確認、⑤立坑の荷役は下部作業者の避難の確認後、開始する、⑥入坑時は全員トラチョッキを着用、⑦坑内の通行規準を遵守、⑧機械の点検時は元電源OFF・投入禁止札・施錠をする、⑨機械・設備の運転は取扱い責任者が行う(有資格者でも不可)、⑩玉掛ワイヤーはロック止めを使用(さしワイヤー不可)、⑪搬入資機材は所定の位置・置き方で整理、⑫搬出入車両は原則的に前進で入退場する(右折禁止)。

ガーデニングが趣味という山口所長は、現場のイメージアップのため、自ら種から育てた草花を防音ハウス前の花壇に植えている。山下寿弘さんを中心とする職長会も、水やりなど協力している。

「工事は、全体の61%の掘進を無事故で完了しています。残りも急カーブの施工や重要な構造物に近接するなど、困難なことが山積みしています。さらに安全整備の創意工夫をして、全工期の無災害記録達成に向け、作業所全員一丸となって臨みたいですね」。山口所長は力強く語った。

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2008/04/21

日本赤十字社医療センター建物建設工事

「そら」2008年1月号 現場拝見 第5回

日本赤十字社医療センター建物建設工事

施工/大林組

「命を守る病院をつくっている」

という使命を忘れてはならない

今回の建設現場は、東京・渋谷区の日赤広尾医療センター。広尾は、都内でも有数の高級住宅街として知られ、邸宅や高級マンションが多く見られる。

地下RC造3階・地上S造13階建て、延べ約8万2,000㎡の広さを誇る新しい医療センターは、病床数は670床。診療科目は、現行の24科から31科へ増えて、救命医療が充実する。工期は、2006年11月から11年3月まで。現在、駐車場などになる地下部分を掘削中だ。

昭和50年に建設された医療センターは、老朽化が著しく、現行の建築基準法(昭和56年改正)に定められている耐震性を備えていないため、関東地域での巨大地震が発生した場合、病院機能の停止というような事態も強く危惧されていた。

そこで、地域医療の使命を果たし、非常災害時には医療救護の拠点とするため、建物の全面改築となったわけである。

新たな医療センターの建設にあたって、免震構造を採用した。積層ゴムとダンパーで構成された免震装置を地盤と建物の間に設置することで、耐震安全性が大幅に向上する。

また、通常は670床だが、大規模災害の発生時には、仮設の病床を約1,000床増やし、傷病者を収容できるようにとする。

赤十字の「十」をかたどった建物の屋上には、患者および医薬品の搬送のためのヘリポートも整備する予定だ。

「工事を行うに当たり、自分たちは、いま何をつくっているかを理解することが問題です。命を守る病院をつくっているという使命を忘れてはいけません」と田村所長は強調する。

赤レンガ塀の撤去、

樹齢300年の

赤松の移植、1日250台のダンプ

以前、日赤通り側は、医療センターの周りを赤レンガ塀が囲んでいた。工事施工に伴い撤去し、日赤の敷地を提供して、2.5mの歩道を4mまで拡げた。また、北側の区道沿いも、1mの歩道を2mに拡張した。日赤通りの赤レンガ塀の一部は、医療センター正門の両脇などに復元することになっているそうだ。

この医療センターの敷地は、もともと延宝年間から佐倉藩堀田家の下屋敷だった。敷地内には、当時を偲ばせる「二代目宗吾の松」といわれる推定樹齢300年の赤松があった。その移植も大きな課題だった。歌舞伎でも知られる佐倉宗吾ゆかりの松ということから、江戸時代からある大木を盆栽仕立ての美しい樹形のまま移動させるという、大がかりな工事となった。

「枝張り18mもの赤松を200トンクレーンに吊り上げ、トレーラーに載せて移動させる様子は、圧巻の一言につきましたね」と田村所長は振り返る。

また、赤松の移植のほか、これまでに最も大変だったのは、工事現場の真ん中を通っていた一般道を4段階にわたって切り替えたこと。現場のすぐ脇に建っている既存の医療センター(病棟)の患者や関係者の安全を確保するため、切り替え作業は深夜に行った。事前の告知から慎重に対応したため、クレームはなかったそうだ。

現在、1日250台のダンプトラックが出入りしている。江戸時代からほとんど道のかたちが変わっていない現場一帯は、道が狭く、坂道が多い。とくに大型車は、曲がり角で歩行者や道路標識に接触するおそれがある。

そのため、出入りする工事車両の運転者に対し、搬入許可、日時、経路の指定などの伝達を徹底し、十分注意するよう呼びかけている。また、現場前の路上などで待機や駐車をしないよう、入退場のときは、必ず窓ガラスを開けて、警備員の誘導に従うよう定めている。

「飲みものあげて、と現場のみんなに声をかけるなど、とても気さくな所長です」と語るのは、職長会会長の木村貴之さん(鈴木組)。貴之さんは、父・市夫さんとともに、田村所長とは2代にわたり20年のつきあいになる。

「職長会を立ち上げてまだ日が浅いので、まわりのベテランの職長さんに支えられています。現場のルールを新規入場者にも徹底していきたい」と木村会長はいう。

現在、所員32人、作業員170人。これから工事の進展にともない、作業員の人数は800~1000人にもふくれ上がる。

「若い所員は、現場の熟練工から、そんなやり方ではダメだと指摘されるなど、いろいろ教えられています」と田村所長は笑顔で語る。所長と会長の気負いのないやりとりをながめていても、現場のコミュニケーションがよくとれていることが伝わってくる。

「仕事に誇りを持ち、魂を込めて

つくる」よう作業員らに指導

作業所の基本方針は、「顧客満足の向上を自負した継続的改善の実践に基づき、顧客が安心し、満足し、誇りを持って使うことのできる建物を提供し、もって、当社に対する信頼を深め、会社の一層の発展を図る」とある。

現場の施工方針として、①世のため、人のための建物であることに誇りを持って誠実に魂を込めて創る、②コミュニケーションを重ねて、全員のベクトルを一致させる、③稼動中の病院の敷地内であることを意識し、現場を常に清潔に保つ、④メンテナンスの容易な建物を作る、⑤耐久性のある材料を選択する、という5点を挙げている。

さらに、管理のポイントとして、①躯体の場合は、書類だけに偏向しない現場重視の施工管理、②外装の場合は、精緻な図面検討と正確な施工管理、③内装の場合は、性能(遮音・振動)の実証と美観の一致を挙げ、施工中に瑕疵の兆候があらわれたときは徹底的につぶす、としている。

経済性を保つためには、「費用対効果を常に考えて、必要なところには資源(人・モノ・金)を投入し、必要のないところには投入しない」と実にわかりやすい。

所長は、「薄肉PCa折り曲げ型枠工法」を開発したことでも知られている。これは、コンクリート工事の省力化とスピードアップのため、現場での型枠材の加工、組立て、解体作業を極力減らす工法の1つ。合板ベニヤを使用しないため、熱帯雨林の伐採などの環境破壊の改善や現場での廃材利用にも有効とされている。

「細かい1つひとつの作業を積み重ね、決して手抜きをしたり、まあいいやという雰囲気にしない。全工期無事故無災害で、すべての終わったとき、お互いにっこり笑って別れたいね」とあくまで穏和な表情で、しかし毅然とした態度で田村所長は語った。<

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2008/04/15

丸の内トラストタワー本館新築工事

「そら」2007年11月号 現場拝見 第4回

丸の内トラストタワー本館新築工事

戸田建設

これまで培ってきた技術力を結集した超高層ビル

東京駅丸の内側に続き、八重洲口側でも超高層ビルの建設が最盛期を迎えている。新丸ビルの完成が騒がれていた頃に比べて、八重洲口側の駅側の街並みは、驚くべき変化を遂げている。

駅前の「丸の内トラストタワーN館」の隣に建設中の「丸の内トラストタワー本館」は、地下4階・地上37階建て、高さ178mという超高層ビルだ。

先進の高性能オフィスを中心に、2737階に外資系の5つ星クラスのラグジュアリー・ホテル「シャングリ・ラ」が入居する複合施設となる。N館を上回る規模の開発として、2008年11月の竣工予定。

建物には、台風から大地震まで、さまざまな原因によって生じる揺れを吸収する「粘性ダンパー」と大地震の揺れを吸収する「履歴ダンパー」を組み合わせた「ハイブリッド制震構造」を採用。幅広い揺れに対して高い制震効果が期待できる。

また、制震装置として屋上に「ハイブリッドマスダンパー(HMD)」を2基設置。三十一回り上階にあるホテルの客室の風揺れを吸収・低減し、強風時にも揺れを感じさせない優れた居住性能を確保している。

そのほか、直接基礎と杭基礎を併用した「バイル・ラフト基礎」、鋼管コンクリート柱(CFT柱)の中に鉄筋を設けて高軸力に対応する「戸田式鋼管コンクリート柱(TO-SCFT)」など、新技術の展開を図っている。

「着工前の計画・設計に2年半を費やすなど、当社がこれまで培ってきた技術力を結集した建物です。このハイブリッド制震構造などの技術を今後の高層ビル建築に積極的に役立てていきたいと考えています」と大谷清介統括所長は語る。

現場の方針を全作業員に

伝える「丸の内」ルール

大谷統括所長、宮上晃一作業所長、野坂浩司副所長の3人のご案内で、さっそく現場を拝見させていただいた。

朝礼広場には「丸虎ゲート」が設置され、大きな姿見が掲げられてあり、作業員は毎朝、服装・安全帯のチェックを行う。

これは、「丸虎会」という職長会が作成したもの。「丸虎」の「丸」は地名の丸の内から、「虎」は建物名のトラストタワーから名づけたそうだ。

丸虎会のスローガンは、「安全意識・仲間意識の追求・実現」。作業所のスローガンである「施工美の追求・実現 ひとつひとつをていねいにきちんとやろう!」に則り、全作業員が、1つの目標に向かって安全意識を高め、無事故・無災害を達成しようという決意がこめられている。その対策として、うっかりミスやぼんやりミスをなくし、仲間を守るため、ひと声掛け運動に力を入れている。

広場の掲示板には、丸虎会組織表が貼られていた。「わからない事は私達に聞いて下さい」と赤い文字。その下に、大きなカラーの顔写真が並び、ひと目でメンバーの名前と顔がわかって有難い。

また、「丸の内ルール」と記されたポスターもたくさん貼られている。例えば、「トラック荷台での荷捌き作業は、床開口部周囲で行わない。最低2mは確保する」、「10cm以上の段差がある所での立馬作業は段差から50cm以上離して立馬を設置する」、「積荷が接触しても、強風でも絶対に落ちない玉掛方法とする」など。具体的なイラスト入りで、私のようなシロウトにもわかりやすい。

東京駅の新幹線ホームに隣接する現場だけに、とくに地上階の風散防止に注意を払っている。

このポスターは、丸虎会の3つのサークルの1つ、セーフティサークル(サークル長・山門大志さん・向井建設)が、作業所の方針を全作業員に伝えるために作成している。

セーフティサークルは、「作業所内の安全推進」を基本方針に、安全朝礼や安全大会の司会進行、全職長による安全パトロール、持込工具・玉掛ワイヤーの一斉点検やIDカードの使用状況の管理などを行っている。

クリーンサークル(センター長・林勝巳さん・オリテック)の基本方針は、「3RE運動と美化運動の推進」。クリーンBOX(清掃用具入れ)の設置および管理、作業員を集めての分別講習会、産業廃棄物の分別管理、一斉清掃の自主運営などを通して、混合廃棄物ゼロの達成をめざしている。

コンフォートサークル(サークル長・田淵浩之さん・三機工業)の基本方針は、「快適職場の環境づくり」。意見箱の改善提案や安全標語の募集から、詰所やトイレの清掃管理、詰所パトロール、一般ゴミの管理・分別の徹底、置き花の飾りつけ、場内・場外の作業員モラルの向上、レクリエーションの準備・実行など、多岐にわたる。

緊急地震情報「ユレキテル」で危険を回避して安全を確保

続いて、氷やスポーツ飲料などが常備された熱中症対策室、安全帯置場、喫煙所などを見学。詰所では、スピーカーと赤色の回転灯が目についた。

「これは、気象庁から受けた速報に地盤や構造物の特性のデータを加え、独自に予測震度を解析するシステム『ユレキテル』です。当社が開発したもので、今年4月から、全国約500の作業所に情報を伝えています」と大谷統括所長。

気象庁の地震観測網で検知した初期微動から、震度と到達時間を瞬時に予測し、実際に地震が到達する数十秒前に警報を発する仕組みになっている。

2007年7月16日、午前10時13分。タワークレーンが建築資材をつり上げようとすると、その運転台の画面に「震度4の揺れが来る」という緊急地震情報が表示された。新潟県中越沖地震の発生を検知したのである。 

ただちに詰所や場内にいる約400人の作業員へスピーカーと赤色の回転灯で警戒を呼びかけた。揺れは震度3。建設中のビル上層部では、とくに大きな揺れとなったが、事前に安全を確保したため、けが人はなかった。

揺れの直前に情報が届いたとしても、慌てて立馬などから足を踏み外す危険性もある。そのため、3ヵ月に1度、地震が発生した時、すみやかに対応できるよう総合訓練も実施している。警報が発せられると、より安全な場所に移動し、安全な姿勢をとる。危険物や火気を扱っている作業員も、作業を中止して安全な場所に移動するよう指導している。

ちょうど職長会室で、丸虎会の川口昇会長(向井建設)と会った。大谷統括所長といくつもの現場をともにしている川口会長は、所長の信頼も厚い。その方針をよく理解し、現場でリーダーシップを発揮している。

「安全意識・仲間意識の追求・実現」にまい進する丸虎会は、同社の他の現場の職長会も牽引する立場だとか。実に頼もしい。<>

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2008/01/11

丸の内トラストタワー本館新築工事

「そら」2007年11月号 現場拝見  第4回

戸田建設

これまで培ってきた技術力を

結集した超高層ビル

東京駅丸の内側に続き、八重洲口側でも超高層ビルの建設が最盛期を迎えている。新丸ビルの完成が騒がれていた頃に比べて、八重洲口側の駅側の街並みは、驚くべき変化を遂げている。昼休みの時間になると、駅周辺でたくさんの作業員の姿を見かける。

駅前の「丸の内トラストタワーN館」の隣に建設中の「丸の内トラストタワー本館」は、地下4階・地上37階建て、高さ178mという超高層ビルだ。

先進の高性能オフィスを中心に、2737階に外資系の5つ星クラスのラグジュアリー・ホテル「シャングリ・ラ」が入居する複合施設となる。N館を上回る規模の開発として、2008年11月の竣工予定。

建物には、台風から大地震まで、さまざまな原因によって生じる揺れを吸収する「粘性ダンパー」と大地震の揺れを吸収する「履歴ダンパー」を組み合わせた「ハイブリッド制震構造」を採用。幅広い揺れに対して高い制震効果が期待できる。

また、制震装置として屋上に「ハイブリッドマスダンパー(HMD)」を2基設置。三十一回り上階にあるホテルの客室の風揺れを吸収・低減し、強風時にも揺れを感じさせない優れた居住性能を確保している。

そのほか、直接基礎と杭基礎を併用した「バイル・ラフト基礎」、鋼管コンクリート柱(CFT柱)の中に鉄筋を設けて高軸力に対応する「戸田式鋼管コンクリート柱(TO-SCFT)」など、新技術の展開を図っている。

「着工前の計画・設計に2年半を費やすなど、当社がこれまで培ってきた技術力を結集した建物です。このハイブリッド制震構造などの技術を今後の高層ビル建築に積極的に役立てていきたいと考えています」と大谷清介統括所長は語る。

現場の方針を全作業員に

伝える「丸の内」ルール

大谷統括所長、宮上晃一作業所長、野坂浩司副所長の3人のご案内で、さっそく現場を拝見させていただいた。

朝礼広場には「丸虎ゲート」が設置され、大きな姿見が掲げられてあり、作業員は毎朝、服装・安全帯のチェックを行う。

これは、「丸虎会」という職長会が作成したもの。「丸虎」の「丸」は地名の丸の内から、「虎」は建物名のトラストタワーから名づけたそうだ。

丸虎会のスローガンは、「安全意識・仲間意識の追求・実現」。作業所のスローガンである「施工美の追求・実現 ひとつひとつをていねいにきちんとやろう!」に則り、全作業員が、1つの目標に向かって安全意識を高め、無事故・無災害を達成しようという決意がこめられている。その対策として、うっかりミスやぼんやりミスをなくし、仲間を守るため、ひと声掛け運動に力を入れている。

広場の掲示板には、丸虎会組織表が貼られていた。「わからない事は私達に聞いて下さい」と赤い文字。その下に、大きなカラーの顔写真が並び、ひと目でメンバーの名前と顔がわかって有難い。

また、「丸の内ルール」と記されたポスターもたくさん貼られている。例えば、「トラック荷台での荷捌き作業は、床開口部周囲で行わない。最低2mは確保する」、「10cm以上の段差がある所での立馬作業は段差から50cm以上離して立馬を設置する」、「積荷が接触しても、強風でも絶対に落ちない玉掛方法とする」など。具体的なイラスト入りで、私のようなシロウトにもわかりやすい。

東京駅の新幹線ホームに隣接する現場だけに、とくに地上階の風散防止に注意を払っている。

このポスターは、丸虎会の3つのサークルの1つ、セーフティサークル(サークル長・山門大志さん・向井建設)が、作業所の方針を全作業員に伝えるために作成している。

セーフティサークルは、「作業所内の安全推進」を基本方針に、安全朝礼や安全大会の司会進行、全職長による安全パトロール、持込工具・玉掛ワイヤーの一斉点検やIDカードの使用状況の管理などを行っている。

クリーンサークル(センター長・林勝巳さん・オリテック)の基本方針は、「3RE運動と美化運動の推進」。クリーンBOX(清掃用具入れ)の設置および管理、作業員を集めての分別講習会、産業廃棄物の分別管理、一斉清掃の自主運営などを通して、混合廃棄物ゼロの達成をめざしている。

コンフォートサークル(サークル長・田淵浩之さん・三機工業)の基本方針は、「快適職場の環境づくり」。意見箱の改善提案や安全標語の募集から、詰所やトイレの清掃管理、詰所パトロール、一般ゴミの管理・分別の徹底、置き花の飾りつけ、場内・場外の作業員モラルの向上、レクリエーションの準備・実行など、多岐にわたる。

「丸虎会」という名称は、一見、阪神ファンの会かと思ってしまうほど、ちょっとやんちゃなイメージ。それにくらべてサークル名は、セーフティ、クリーン、コンフォートと、とてもスマート。現場の規則を「丸の内ルール」としたところも、押し付けがましくなく、オシャレ。でも、「施工美の追求・実現 ひとつひとつをていねいにきちんとやろう!」というスローガンをしっかり根づかせようという信念が伝わる。

緊急地震情報「ユレキテル」で

危険を回避して安全を確保

続いて、氷やスポーツ飲料などが常備された熱中症対策室、安全帯置場、喫煙所などを見学。詰所では、スピーカーと赤色の回転灯が目についた。

「これは、気象庁から受けた速報に地盤や構造物の特性のデータを加え、独自に予測震度を解析するシステム『ユレキテル』です。当社が開発したもので、今年4月から、全国約500の作業所に情報を伝えています」と大谷統括所長。

気象庁の地震観測網で検知した初期微動から、震度と到達時間を瞬時に予測し、実際に地震が到達する数十秒前に警報を発する仕組みになっている。

2007年7月16日、午前10時13分。タワークレーンが建築資材をつり上げようとすると、その運転台の画面に「震度4の揺れが来る」という緊急地震情報が表示された。新潟県中越沖地震の発生を検知したのである。

ただちに詰所や場内にいる約400人の作業員へスピーカーと赤色の回転灯で警戒を呼びかけた。揺れは震度3。建設中のビル上層部では、とくに大きな揺れとなったが、事前に安全を確保したため、けが人はなかった。

揺れの直前に情報が届いたとしても、慌てて立馬などから足を踏み外す危険性もある。そのため、3ヵ月に1度、地震が発生した時、すみやかに対応できるよう総合訓練も実施している。警報が発せられると、より安全な場所に移動し、安全な姿勢をとる。危険物や火気を扱っている作業員も、作業を中止して安全な場所に移動するよう指導している。

ちょうど職長会室で、丸虎会の川口昇会長(向井建設)と会った。大谷統括所長といくつもの現場をともにしている川口会長は、所長の信頼も厚い。その方針をよく理解し、現場でリーダーシップを発揮している。

「安全意識・仲間意識の追求・実現」にまい進する丸虎会は、同社の他の現場の職長会も牽引する立場だとか。実に頼もしい。

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2007/11/10

圏央道城山八王子トンネル(その1)工事

「そら」2007年9月号 現場拝見 第3回

圏央道城山八王子トンネル(その1)工事

熊谷・前田特定建設工事共同企業体

大型トラックが行き交う

坑内は緊張感に包まれて

圏央道(正式には「首都圏中央連絡自動車道」)は、都心から半径およそ4060kmの位置に計画された約300㎞におよぶ環状の自動車専用道路である。

「圏央道城山八王子トンネル(その1)工事」は、圏央道の山岳トンネルとしては最長となる城山八王子トンネル(全長約3,600m)の東京都区間の一部で、上り線約1、198m、下り線約1、126m の掘削を行っている。

大塚俊英所長のご案内で、掘削が行われている現場へ向かう。濃い緑色の仮囲いや防音ハウスによって、あたりから隔てられている。

防音設備に囲まれた作業基地から本坑に入る。全体に防音設備を施しているのは、「工事の騒音や振動や濁水による周辺環境への影響を最小限に抑えるためです」と大塚所長は丁寧に教えてくださる。

坑内に入ると、ふだん目にすることのないトンネル工事仕様の25トンの大型ダンプトラックが行き交う。安全通路が確保されているものの、重ダンプが通過するたびに、そのパワフルな迫力に圧倒され、私もいやおうなしに緊張感に包まれる。

さらに、トンネルの奥へ。山の中腹から作業坑を建設し、そのあと南北に掘り進んでいるため、4つの切羽がある。そのうちの1つへ向かう。

SF映画に出てきそうな建設ロボット

そのあとの感動の瞬間!

ちょうど、コンクリート吹付機による吹き付け作業が行われていた。半円を描く側面に向かって、ピストルのように突き出たノズル先からセメントが細かく吹き付けられる。

このトンネルは、NATM工法を採用し、砂岩や頁岩によって構成されている。発破や機械等による掘削を併用しつつ、掘削した部分に素早くコンクリートを吹き付けて固め、ロックボルトを岩盤に打ち込み、山自体の保持力を利用しながら、トンネルを掘り進めていく。

頁岩は、海などで堆積したものが脱水・固結してできた堆積岩の一種で、堆積面にそって岩が本のページのように薄く層状に割れやすい性質から命名された。工事に携わる1人ひとりが適度な緊張感を保持しないと、「どうしても事故につながりやすくなる」(大塚所長)という。私が、本坑に入った瞬間、全身に感じたあの緊張感は、作業員1人ひとりの安全に向けた意識の表れと考えると、十分に納得できる。

所長の隣に立ち、私も工事の様子を見守った。どのくらい時間が経過しただろうか? 30度を超す外気、トンネル内の気温は32度を超し、湿度も70 %近いかもしれない。保安帽にマスク姿の私も、じっとしているだけで汗ばんでくる。といっても、風管の整備により換気が行われているため、思ったほど不快感はない。

それより、このような現場で、黙々とスピーディーに作業されているみなさんを思うと、そんなことはいっていられないという気がする。

吹き付け作業終了後、ロボットアームを突き出した、SF映画の地底の王国にでも出てきそうな大型重機ジャンボドリルが登場した。この機械は、切羽に火薬装てん用の穴、ロックボルトの穴をさく孔するための大型せん孔機械である。ロボットアームを振り上げて追いかけてきそうな、一見コワモテの重機だ。

見上げると、運転席に運転者が座り、ロックボルト作業や浮石落としなどのため、前方の左右に突き出たゴンドラのような作業足場に作業員が乗って、トンネルの穴を覆っているビニールシートを取り除いていく。これは、吹き付けるセメントが外部に吹き出ないよう配慮して設置したもの。

ビニールシートが外され、ドリルジャンボがバックして、トンネル内に姿を消すと、目の前にぽっかりと大きな穴が。貫通した向こう側から差し込む光。感動の一瞬だ。トンネルの先には、緑の山々が見渡せる。

かつて、土木の世界には、「女性がトンネル現場に入るのはご法度」という風習があった。それを思うと、こうした貴重な体験をさせていただいたことに感謝したい。

経験や知識を生かし、先回りして

事故が起きない対策を立てる

午後一番の定例の会議には、協力会社所長、職長、職員らが集まる。翌日の作業内容、作業員人数、車両入場予定などの状況把握から、職員による伝達事項の周知など、かなり綿密な打ち合わせを行う。とくに、1日90台もの10トンダンプが出入りしているこの現場は、高尾山の登山コースと隣接しており、大勢の登山客が訪れるため交通事故による第三者災害防止には安全には最新の注意を払っている。

また、ダンプの積載重量計とタイヤ洗浄機も整備した。道路を汚さず、環境美化につとめ、労働安全衛生法令を遵守すること。ごくあたりのまえのことであるが、安全の確保は、こうした地道な努力を続けていくことが大切なのである。

「コミュニケーションは大切だけど、なれあいはダメ。互いの歩調が合わないと、品質や安全は達成できません。現場を支える近隣、施主、協力会社、職員の重いが1つになってこそ、ものづくりができるんです」と大塚所長は力強く語る。

そして、「これまでの経験や知識を生かして常に先回りして、事故が起きない対策を立てておくことが必要です。『このくらいでいいか』といった妥協は禁物。周辺のみなさんの工事に対する理解、発注者との調整、協力会社の職長や作業員の立場になって考え、少しでも働きやすい環境をつくりながら、工事計画を進めることが大切です。こうしたマネジメントができて初めて、質の高い建造物ができるのです」とも。

こちらの作業所では、混合廃棄物量ゼロを目指すゼロエミッション活動を行って、産業廃棄物の発生を抑え、分別の徹底によるリサイクル率の向上につとめている。そのほか、トンネル掘削に伴う、ずり処理では、余掘りをできるだけ減らし、建設土の発生を抑えるとともに、他の工事現場の盛土材として活用するなど、工事間で利用を促進するよう取り組んでいる。

2008年2月の工事の完成を目指し、酷暑の中、昼夜を徹した作業が続く。

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2007/10/10

(仮称)北品川三丁目計画新築工事

「そら」2007年7月号 現場拝見 第2回

(仮称)北品川三丁目計画新築工事

前田建設工業 東京支店

超高層タワーマンションの敷地に

広がる開放的なやすらぎ空間

ここ数年、都内でもっとも劇的な変貌を遂げている街、品川。京浜急行で1つ目の新馬場駅は、江戸時代、東海道の宿場町・品川宿として栄えた。地名は、幕府公用の荷物を運ぶ馬を置いた馬場があったことに由来する。

周辺は神社旧跡が多い。そのため、歴史散歩に訪れる人も増えている。北品川3丁目の名刹・東海寺は、臨済宗京都紫野大徳寺の末寺。品川区史跡めぐりマップのモデルコースにも指定されている。寛永15(1638)年、沢庵和尚を開山として、3代将軍徳川家光によって創建。この東海寺の隣り、山の手通り沿いに建設中なのが、地上36階、総戸数278戸の免震タワーマンションである。

完成予想図によると、縦のラインを強調したシャープでモダンな外観。建物の四隅には、ガラスと若葉色のタイルを配置。周辺の寺社と調和し、圧迫感の少ない、軽やかで清潔感のあるイメージを打ち出している。

マンションのプロムナードは、東海寺の参道と一体化した歩道に。指定文化財をより身近に感じられるように、マンションの敷地内に、品川の敷地や旧街道の歴史などを紹介する「しながわ歴史ギャラリー」を設ける。交通量の多い山の手通りの喧騒から離れ、憩いとやすらぎの場になるように、広場には水盤や水琴窟や手水鉢、ベンチも置かれる。史跡めぐりで疲れた方も気軽に休める。近代的な超高層タワーマンションの足もとに、ほっとするような和の空間が広がる。

私は、これまで数十ヵ所のタワーマンションの建設現場を取材させていただいた。でも、これほど地域住民に広く開かれたやすらぎの場を提供しているマンションは、ほかにはあまりなかったような気がする。

免震装置による耐震・安全性に加え

広い居住空間も実現

前田建設工業は、安全かつ快適な超高層マンションの建設のため、1986年より、60階200mクラスの建物を対象とする「MARC-Hシステム」の開発に取り組んでいる。工期短縮、大スパン構造、超高強度コンクリートの開発にも取り組み、これまでに約40棟を建設。

MARC-Hシステムは、鉄筋コンクリート造の柱・梁・床スラブで構成される純ラーメン耐震工法といわれるものですが、居住空間を広くするため、梁形を極力なくし、天井の高さを確保しています」と浅川勝弘所長(前田建設工業東京支店)は語る。

柱・梁・床スラブなどには、PCa(プレキャスト)部材を用いて、高い品質と耐久性を保った。さらに、工場生産されたPCa部材を使って、施工の合理化と工期の短縮を実現した。

梁の本数は、建物の耐力に比例する。そのため、梁が少なくなると、建物全体の耐力は低下する。そこで、「MARC-Hシステム」に免震装置も併用。オイルダンパー、鉛ダンパー、積層ゴムによって、地震のときの揺れを初期に抑え、震動の低減を図った。

また、外周の梁を逆梁(梁と天井がさかさまになった工法)として、梁成を大きくすることで、個々の梁の耐力をアップ。在来工法では、梁が屋根(天井)を支える形をとる。これに対し逆梁は、天井の上から梁がそれを支え、バルコニーの底面となって外に張り出す。

「エンドユーザーのニーズや嗜好の変化を的確にとらえ、地震や火災のときの安全性はもちろん、広い居住空間(最大約20m×約7・5m)も確保し、さらに風による影響の低く抑えています」(浅川所長)。

ゼロエミッションへの取り組みとしては、プラスチック型枠を用いて、それまでのベニヤなどの南洋材を削減し、使用後もリサイクルしている。解体工事で8品目、仕上げ工事で13品目の分別・リサイクルを実施。また、作業員に分別教育を行い、理解を促している。 

このほか、できるかぎり無梱包の資材を搬入したり、不用材で現場に置く消火セット(水を入れたペットボトルを設置した箱)を作成している。さらに、作業所のエアコン温度(冷房27度、暖房21度)を調節し、温暖化防止に努めている。

所長オリジナルの3Kリボンで

より良い職場環境を目指す!

こちらの作業所の安全スローガンは、「強い意志とおもいやりで心通わせゼロ災害」。

1人ひとりが、『強い意志』を持って状況判断をして安全を実践すれば、より大きな力につながります。そして、自分自身はもちろん、仕事の仲間・家族・まわりの人間に『おもいやり』を持って接し、常に気を配り、励まし合いたい。作業の連絡・調整、危険ポイント、立ち入り禁止区画などの情報を交換するためにも、『心』を通わせたコミュニケーションは必要不可欠です。そうでなければ、安全の維持・管理はできません」と浅川所長は強調する。

この安全スローガンをいつも身近に感じてもらいたいと、所長オリジナルの、「3K(さんか)リボン」(青・赤の2色)を全員に配付、着用をルール化している。

「私が入社したときから、建設業界の3Kのイメージを払拭し、より快適な職場をみんなの力で成し遂げたいと思っていました」。危険を予知し、ケアレスミスをなくし、よりよい職場環境を!という、3つのキーワードの頭文字から3Kリボンと名付けた。

これは、リボンの素材探しから、太さや長さなど試行錯誤し、ウレタンの伸縮性のある素材で手作りしている。

職長会「さつき会」の三上明広会長と根本貞明副会長の左腕にも、所長オリジナルの青い3Kリボンが巻かれている。赤いリボンは新規入場者なので、すぐ見分けがつく。職長たちは、なれない新規入場者の行動に目を光らせるとともに、声をかけるよう心がけている。

リボンの表面には、「安全帯使用」「作業床の確認」など、それぞれ安全意識を高めることばが記されている。なかには「○○命」と大切な人の名が記されている場合も。「作業中に腕章を見ることで、自然と安全意識が高まりますね」と三上会長は、効果について語る。

さつき会では、浅川所長の思いを汲み取り、「今日も無事に家族のもとへ 自らの意志で造る快適職場」というスローガンを完成。作業員全員の名前と写真入ポスターの掲示、一列になっての肩もみ体操、日替わりによる「本日の一言」など、緊張感の中にも、「なごみ」の要素をうまく取り入れている工夫している。

現場の仮囲いに飾られている季節の風景画はセンスがよく、涼しげ。作業所入口付近の街路樹の根もとには、色とりどりの美しい花が植えられている。これは、「道ゆくみなさんに喜んでもらえたら」と、警備員の松尾忍さんが、自腹で購入し世話をしているという。こんなところにも、さつき会のみなさんの心遣いと心意気が感じられて、うれしくなる。

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2007/09/14

浦安東野一丁目新築工事

月刊「つち」2007年6月号

明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…60 最終回

間組 カーサ浦安会

昔・陸の孤島が東京ベイエリアを

代表する都市に発展

千葉県浦安市というと、東京ディズニーランドやベイエリアに立ち並ぶホテル群が思い浮かぶ。

その昔、浦安は、東京に隣接しながらも三方を海と川に囲まれ、陸の孤島といわれていた。アサリなどの貝をむく作業が見られる漁師町だった。青年期を浦安で過ごした作家・山本周五郎の『青べか物語』には、海辺の下町の風景や人情が切々と綴られている。

しかし、昭和三七年に漁業権の一部を放棄して海の埋め立て事業が始まると浦安は大きく姿を変える。浦安の総面積は、かつての約四倍の一七平方キロメートルに拡大し、急速に都市化が進んだ。

昭和五八年には東京ディズニーランドがオープン。周辺に大型リゾートホテルやイベントホールが建設された。六三年にはJR京葉線が開通。新浦安や舞浜の駅周辺の整備も進み、浦安は、東京ベイエリアを代表する都市として発展している。

今回私が訪ねた浦安市東野は、昭和四三年の埋立事業で誕生した。地名は、一面にヨシやカヤが生い茂っていたので、東方にある原野という意味だという。

現在の浦安は、旧市街と呼ばれる浦安駅周辺の層と、開発が進む埋立地に新たに移り住んだ若いライフスタイルの層の二つが水と油のように分かれている、といわれる。お互いに異なる価値観を受け入れ、新たな風土をつくり上げていく途上にある街といえるかもしれない。

現場の周囲にトウモロコシや

スイカの畑をつくりたい

工事現場は、浦安・新浦安・舞浜の各駅からほぼ中央に位置する。マンション名の「パークホームズ新浦安カーサ・セントリア」のカーサは邸宅、セントリアは中心を意味する。浦安の中心に位置する、南欧風のリラックスした上質な住まいをめざしているそうだ。

建物は、鉄筋コンクリート造、地上一四階建。間取りは、二LDK+Nから五LDKで、最多販売価格帯は三一〇〇万円台。

定期借地権(地上権五〇年)というシステムを採用した浦安市初のマンションなので、土地所有権の場合にくらべ、販売価格が三~四割ほど安くなっている。かわりに一か月一、二万円程度の地代がかかる。

職長会の名は「カーサ浦安会」。メンバーは、会長の松田利和さん(南武建設・鳶)、副会長の川田洋市さん(南武建設・鉄筋)、矢野雄一さん(宝盛建設・型枠)、書記の米倉由茂さん(六興電気・電気)、会計の祖師貴博さん(大成温調・設備)、環境衛生委員会委員長の大原寿さん(平子鉄筋・鉄筋)、コミュニケーション委員会委員長の杉本達弥さん(南武建設・型枠)の七人。

鳶職三〇年というベテラン、松田会長のモットーはお仕事柄、「グッド・バランス」。意外だがマンション現場は初めてとのこと。

「長い基礎工事を経て、ようやく地上五階まで立ち上がって、職長会活動も本格化してきました。なごやかな人間関係の橋渡しをして、譲り合うところは譲り合う。でも、馴れ合いにはならないよう、いうべきことはきちんと伝える。硬軟のバランスを大切にしていきたいですね」と穏和な表情でおっしゃる。「とにかく何事も気合一発ですね」と矢野副会長。

先日も職長会メンバーと寺井正春所長(間組)で、ゴルフを楽しんだ。「酒が大好き」という大原さんは、「次は現場で、バーベキュー大会かな」。すると、みなさんから「近くに釣り船があるから、東京湾で釣りもいいね」「夏は屋形船かな」「ビアガーデンもいいね」と次々に声が上がった。

「ちょっと変わったこともやりたいなあ」と川田副会長。「現場の周囲に野菜畑をつくって、トウモロコシとかスイカをみんなに配れたらいいなあ」。「ああ、畑いいね、ぜひやろう」と寺井所長も大賛成。

ふだんは、「工期を守るのに精一杯で、遊びどころではない」(松田会長)ということもあり、現場の結束を固める懇親会の話題でしばし盛り上がった。

ところで、高度経済成長期の一九七〇年代以降に数多く建設されたマンションが、いま次々に築三〇年を迎えている。まさに、マンションも高齢化社会の到来といえよう。

こちらのマンションは、定期借地権により、五〇年後は、原則として借地上に建てた建物を取り壊し、更地にして地主に返還することになる。でも、寺井所長によると、そう簡単でもないようだ。

「鉄筋コンクリートの建造体は、基本的には一〇〇年以上の耐用年数を想定してつくられています。取り壊しの簡単な建物であればよいでしょうが、基本構造設計や設備のメンテナンスや現場の施工精度などのレベルが高く、堅固な建物の場合、取り壊すのはかなり大変な作業です。正直なところ、どうやって壊すのだろうと思いますね」

五〇年後のマンション、いや日本の風景は一体どうなっているのだろう。私自身どうなっているのか、わからないものなあ。

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2007/05/20

千葉市中央区新宿共同住宅新築工事

月刊「つち」2007年5月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…59

日本国土開発  

千葉市中央区新宿共同住宅新築工事

フージャース千葉中央作業所 職長会

駅の目の前に二〇階の

ハイグレード・マンション

今回、私が降り立ったのは、京成千葉中央駅。「千葉」と付く駅名はとても多い。京成千葉、新千葉、千葉中央、千葉寺。JRにも千葉、西千葉、東千葉、本千葉。さらに京葉線には千葉みなと、モノレールには千葉公園と、とても覚えきれない。

千葉県中央区は、市の中心部に位置していることから、行政・経済の中心でもある。

国際的な物流拠点として千葉港の整備やJR千葉駅を中心とする再開発など、一〇〇万都市にふさわしい魅力ある都市づくりが進められている。

臨海部には、県立美術館、千葉港のシンボルである高さ一二五メートルのポートタワー、人口海浜を備えたポートパークがある。

また、大規模な製鉄所もあり、東京湾岸に沿って京葉工業地帯を形成している。

私は、千葉県出身だが、生活圏はほとんど千葉都民といってもよいので、千葉には、まだまだ知らないことがたくさんあるのだなあ、という気がする。

京成千葉中央駅前には、京成ホテルミラマーレを中心に、シネマや飲食店街もある。駅から徒歩一分という目の前には、六月末完成を目指し、地上二〇階のハイグレードな高層マンションが建設中だ。

「ものづくり」に必要な

「愚直なプロフェッショナル

「フージャース千葉中央作業所職長会」は、会長の高橋修さん(伊藤忠丸紅・ボード)、副会長の丸井健二さん(ライクス・設備)と斎藤信弘さん(工藤電機工事・電気)、書記の熊谷英典さん(アクティー・墨出し)、安全委員の川北信夫さん(三浦組・鳶・土工)と小梶正博さん(野村工業・はつり工事)の六人。

「ふつう現場では、内装のボードを貼る人をボード屋さんとか、左官屋さんとか職種で呼ぶことが多いのですが、ここでは、ちゃんと名前で呼び合っています。それだけ、職人さん同士が仲良しというか、仲間意識が強いですね」と高橋会長。

 毎日、約一三〇人が現場で作業している。その中でも職長クラスは、お互いに顔と名前が一致しているので、ファミリー的なつながりがあるそうだ。

職長会では、月二回の現場パトロールを行い、その報告と検討会を開いている。

また、喫煙や詰所の使用については、細かくルールを定めている。

現場での喫煙や飲食は厳禁。喫煙所は、各階のエレベータホールとしている。ただし、躯体施工階および支保工が残っている階での喫煙は禁止。

業者ごとに、名前を記した灰皿缶を一個ずつ渡し、それを各階の喫煙所まで持ち運んで使用する。

休憩のあと、灰皿の吸殻は収拾缶に捨てるなど、火の始末は業者ごとに徹底するようにしている。

 飲み物の後始末も、各職長が管理している。午前一〇時の休憩のときに出たゴミは一二時に、午後三時の休憩で出たゴミは作業終了時までに処分して、ゴミは残さない。

 詰所では、常に整理整頓を心がけ、机の上に、カバンや着替えなどを置いたままにしない。用意されたロッカーにしまう。

新聞はボックスに、空き缶やゴミも休憩のあとすぐに片付けて、作業に戻る。飲み物は一か所にまとめて置く。

 床にゴミや飲食物を放置しない。現在、詰所としているところは、立体駐車場ピットなので、汚すと清掃が大変である。そのため、床を汚さないよう十分注意している。

敷地が限られているため、搬入や搬出のトラックの誘導には、特に気を使っている。

「やはり施工主さんに喜んでもらえる建物をつくりたいですね。お客さまに、より良い住まい環境と安心を提供できるよう、これからもみんなで一致協力していきたい。工期も残りわずかですが、無事故で完成させたいですね」と高橋会長。
 木村司所長(日本国土開発)は、「当社はISO九〇〇一・一四〇〇一の全国展開で、品質基準を守って施工しています。千葉中央駅前にふさわしい建築物となるよう、みんなが一丸となって竣工を目指しています」。

発注元のフージャースコーポレーションのコンセプトは、「基本性能にこだわり、広くてリーズナブルな価格」。

〇〇四年、首都圏マンション供給戸数ランキングでは、埼玉県で第一位、千葉県で第三位にランクされている。

社名のフージャース(Hoosiers)は、廣岡社長が、ホームステイで一時期を過ごしたアメリカ中部インディアナ州の州民の愛称だとか。

こちらの高層マンションは、会社初のタワーマンションとなるそうだ。それだけに内外の期待も高いといえよう。

廣岡社長は、あるインタビューで、建設会社を決めるときは、「マンションに関して特別に高い技術力より、丈夫なものをきちんとつくるという姿勢が大切。いい意味で、愚直なプロフェッショナルをパートナーに選びたいですね」と語っている。

なるほど。不動産も建設も「ものづくり」による付加価値を創造するもの。それには、なにより「愚直なプロフェッショナル」が必要とされる。それは、今回の職長会のみなさんにもぴったり当てはまる気がする。

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2007/05/15

みなとみらい50街区南マンション新築工事

月刊「つち」20074月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…58

五洋建設  東京支店

みなとみらい50街区南マンション新築工事 職長会

みなとみらいに暮らす夢を

実現するタワーマンション

JR桜木町駅から、みなとみらい地区へ向かって、展示ホールのある国際通りに出ると、あたりは電柱もなく、道路もその上に広がる空も広々としている。その先の海浜地帯には高層マンション群が出来上がりつつある。

横浜みなとみらい21中央地区の50街区に建設中のツインタワーマンション「Brillia Grande みなとみらい」は、即日完売したそうだ。

ベイブリッジの夜景、横浜港の汽笛、山下公園の花火も、すべて窓から実感できる。眺望の素晴らしさはもちろん、「みなとみらい」のタワーマンションに暮らすというのは、若い夫婦を中心に十分魅力的なのだろう。

鉄筋コンクリート一部鉄骨造、地下一階地上三〇階建の共同住宅二棟と、これを結ぶ二階建の低層棟で構成される。住宅は一LDKから四LDKの分譲五五五戸。低層棟には住居のエントランスのほか、店舗やミニシアターを配置。駐車場は三八八台分のタワー型で、住宅棟の真中に組み込まれる。

ツインタワーの海側(東側)がオーシャン棟。西側には公園が整備中。そこに面する棟は、パーク棟と呼ばれている。

完成予定の平成一九年末には、周囲で建設中のマンションと合わせて、このあたりの住民は一万人を超えると予想されている。みなとみらいに新しい街が出現する。

建物の出来具合は

職長会の雰囲気に左右される

 こちらの職長会の会長は、第七期会長となる三浦淳一さん(ロジナコーポレーション・雑工)を中心に、副会長の鈴木竜也さん(三建・内装ボード工)、書記の山崎晃生さん(中電工・電気工)と宮崎直樹さん(高砂熱学工業・空調工)、会計の小松健太さん(川本工業・給排水工)、環境委員会長の石倉正義さん(共和商事・造作大工)、清掃委員会長の田中啓介さん(中部建設・置床)、駐車場委員会長の松田章寿さん(三建・ボード工)を中心に活動されている。

さらに、第三期会長の田村富紀夫さん(向井建設)と第五期会長の西村一巳さん(丸喜組・コンクリート打設)もインタヴューに参加してくださった。

第四期会長の勝俊二さんには、以前、所沢のマンション工事の取材の折、お世話になった。急に川崎の現場に行かれたということで、再会はかなわなかったが、奥田敏所長(五洋建設)が、勝さんの携帯に連絡を入れてくださり、元気なお声を聴くことができた。

「休日も携帯にかかってくると(何が起こったのかと)ドキッとする」と、勝さんがおっしゃっていたのを思い出した。

 それにしても、会長がすでに七期目を数えるというのは珍しい。三ヶ月交代制で、三浦会長は今年一月に就任された。大きな現場だけに、赤地に白い二本のラインの入ったヘルメットをかぶった職長さんの数は六〇名を超える。できるだけ多くの方に会長を担ってもらい、一人の負担が偏るのをなくそうという試みらしい。

 田村第三期会長のときに現在の各委員会が立ち上がり、さらに勝第四期会長のときに組織の基礎が固まり、西村第五期会長のときに躯体から内装仕上げ工事へのスムーズな移行が図られた。

「どのような現場でも、一人ひとりの力によって支えられて成り立っています。安全を守るためにも、挨拶などのコミュニケーションが大切だと思います。この現場は、安全に対する意識がとても高く、日々の作業の打ち合わせでも、細かく工程を確認しています」と三浦会長。

工事主任の神浦英樹さん(五洋建設)のご案内で、パーク棟の最上階から一階ずつ降りながら、フロアごとの進捗状況を視察させていただいた。たしかに、現場ですれ違うたび、お互いに「お疲れさまです」と声を出している。その姿勢が爽やかで、気持ちが良い。

下層階では、部屋の間仕切りはもちろん、壁や床やキッチンなどの水回りの設備も仕上がっていた。玄関や部屋の段差はまったくない。壁やフローリングは白でまとめられ、部屋全体が明るく広々としている。濃い目のフローリングにくらべると、傷や汚れも目立ちにくいので、最近、白が人気だとか。ドアは濃い色の重厚な木で、白い部屋を引き締めている。

私は、都内のタワーマンションを毎月のように取材させていただいているが、今回は、逆に、「ほかの職長会の取り組みで面白いと思ったことがあったら教えてください」と職長会の方から質問を受けた。それくらい、自分たちの現場を楽しく居心地のよいところにしようと真剣に取り組んでいるのだ。みなさんの熱気が伝わってきた。

結局、建物の出来具合というのは、大手ゼネコンだから良い物件になるとは限らないのであって、職長会の現場の雰囲気に左右されるといってもよいのではないか?

建設業とひとくちにいっても、建物の完成までには、多種多様の多くの職人さんが関わっている。職人さん同士が協力し合っている現場は、より良い物件に仕上がる。その逆の現場は、出来ばえもそれなりになってしまうのだろう。

ところで、五洋建設の英文名は「Penta-Ocean Construction」。地上に降りると、吹く風に、ほのかに潮の香りがするような気がした。

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2007/04/09

江古田の森保健福祉施設新築工事

月刊「つち」20073月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…57

熊谷組

江古田の森保健福祉施設新築工事

職長会

江古田の森に

世界最大規模の保健福祉施設

「江古田の森」は、東京都中野区の北端、江古田三丁目の旧国立療養所中野病院の跡地にある。

中野病院は、胸部疾患を主な対象とする病床数七〇〇ほどの国立病院だった。詩人の立原道造は、結核でこの療養所に昭和一三年末に入所し、翌年三月に二四歳で亡くなっている。

昭和六一年一月、厚生労働省の国立病院・療養所の再編計画により、新宿区の国立国際医療センターに統合された。国土交通省から払い下げられた四〇〇〇〇㎡の土地は、小高い丘の上に、数々の広葉樹が生い茂り、武蔵野の面影が残っている。

中野区は、民間の資金やノウハウを活用する通称・PFI法を採用し、全国から社会福祉法人を公募した。その結果、福島県郡山市を拠点とする社会福祉法人南東北福祉事業団が選定され、現在、江古田の森保健福祉施設の建設が行われている。

ちなみに、PFIPとはプライベート・ファイナンス・イニシアチブの略称。これまで、公共が提供していたサービスに民間資金を導入し、民間が主導となってサービスを実施すること。一九九二年にイギリスで始まったそうだ。財政難の自治体は、学校、病院、文化施設など、行政がやってきた公共事業をPFI手法を導入して実施する例が増えている。区のPFIによる保健福祉施設整備は、全国的にも初めてだとか。

江古田の森保健福祉施設は、RC造の地下一階、地上七階建。フロアごとに、介護老人保健施設(入所一〇〇床、通所四〇床)、介護老人福祉施設(入所一二〇床、通所四〇床)、身体障害者療護施設(入所一二床、デイサービス一五床)、知的障害者入所施設(入所三二床、デイサービス一五床)、ケアハウス(入所六〇床)、計四三四床という、多種にわたるサービスを提供する複合型福祉施設。

今年二月末に完成すれば、日本はもちろん、世界最大規模の保健福祉施設となる。

壁の「ご近所犬ギャラリー」で

近隣とコミュニケーション

 世界最規模の福祉施設工事の職長会は、田村盛司会長(安井土木・土工)、安全班副会長の横山栄司さん(ダイケン・内装工)、環境班会長の阿曾弘樹さん(池本工業・左官)、同副会長の斉藤孝志さん(見世木工・大工)が中心となって運営されている。

田村会長は、「区民も待ち望んでいた施設ですから、非常にやりがいがあります。私たちの第一の使命はしっかりしたものをつくること。完ぺきな品質、工期厳守、無事故・無災害、周囲への影響を最小限にすることを常に念頭においています。まわりの豊かな自然をできるだけ残し、近隣に気を配りながら、これからも無事故・無災害で臨みたい」。

現場に入る前、私は、周りを囲っている白い壁に、たくさんのわんちゃんの写真が貼られていることに気づいて、思わず見入ってしまった。

タイトルは、「江古田の森の仲間たち」。小型犬から大型犬まで、種類も実にさまざま。いずれも個性豊かで、愛らしい。真っ白な壁によく映えて、「ご近所犬ギャラリー」といった感じ。実はこれも、近隣のみなさんとのコミュニケーションに役立てたいという、職長会のアイディアだとか。

隣接する公園には毎日、たくさんの犬と飼い主さんが散歩に訪れる。その通り道である工事現場の壁の前で、ガードマンが犬の写真を撮らせていただく。スタッフの谷山みどりさんによってA四版に引き伸ばされたわんこの写真は、一枚は飼い主さんへ、もう一枚は、名前と犬種と生年月日を添えて壁に貼り出した。

これが大変評判になり、すでに、壁一面に飾られた写真は二〇〇枚を突破。これを目当てにわざわざ遠くから訪ねてこられ、「ぜひ、うちの犬も撮ってほしい」と申し出る飼い主さんもおられるとか。

これまで、近隣の小学校のお子さんの絵や鉢植えを仮囲いに飾るといった例はあったが、犬の写真を展示しているのは、私が知るかぎり初めて。少子化でペットが子どもの数を超えているという実態からみても、とてもタイムリーというか、おもしろい試みだ。

施設が完成した際には、仮囲いは取り払われる。でも、犬の写真は、施設の廊下などを飾る予定。愛らしい表情で、お年よりの目を楽しませることだろう。

施設の壁面には、「安全・品質・環境・一致団結」という大きなポスターが貼られている。これは、メッシュシート・プリントといって、特殊な布地に直接カラー印刷した特別製。これも業界でも初めての試みだとか。なかなかアート感覚豊かな職長会のようだ。

現在、完成をめざして、仕上げ作業の真っ最中。巨大な施設はバリアフリー。案内してくださった職長会メンバーからは、「ここなら親も安心して預けられそう」という声も。

二〇〇人の作業員の割り振りやフロアマスターの役割の確認なども力が入る。フロアマスターは、各階の①作業通路の確保、②窓閉め、③消火器の設置、④清掃状況、⑤照明の玉切れ、⑥資材の整理整頓、⑦路ばい配線などを細かくチェックしている。

このあたりは、向かいに警察病院の看護学校も建設中。公園も整備され、春になると、周囲の景観は、がらりと変わりそうだ。

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2007/02/08

大林組 四番町マンション計画②

思いやりの心が仲間意識を育て

事故や災害を防ぐ

 こちらの職長会は、君島秀則会長(明城建設・とび・土工)、副会長・衛生環境部会リーダーの露峰修一さん(測信・墨だし)と横谷重太郎さん(斗米工業・左官)、安全部会リーダーの桜井完途さん(ヨウコー・内装工)と津崎賢二さん(クワザワ・軽量ボード工)、衛生環境部会の篠田勉さん(東海ビコー・養生・クリーニング)、広報部会リーダーの織田圭佑さん(東光電気工事・電気工)と金子忠文さん(斎久工業・空調・衛生設備)の8人を中心に運営されている。

 30歳の君島会長はじめ、若い世代が積極的に活動している。取材に入る前、会長は、「緊張するなあ。堅苦しいのイヤなんで」とおっしゃっていたが、「前向きな意見をぶつけて、不平不満なんでもいい合える」(桜井さん)というように、気さくなお人柄を反映して、職長会もざっくばらんな雰囲気のようだ。

「この現場は、ゼロエミッションの重点現場です。『分ければ資源、混ぜればゴミ』をキヤッチフレーズに、作業員一人ひとりが、分別についての知識を持って、作業後のゴミの省力化に高い意識で取り組んでいます」(君島会長)

 各階ごとにフロアマスターが任命され、整理整頓と清掃の状況を確認している。各階に設置された木製の清掃用具置場は、会長の手作り。「廃材のベニア板を利用してつくりました。購入すれば数万はかかりますから。これもコストダウンの一つです」(君島会長)

自ら筆頭に立って実践するリーダーシップが、職長会をまとめる原動力になっているのだろう。

ゴミの分別作業は、職長会総出で行う。たまたま通りかかった人も積極的に手伝うなど、助け合いの精神も浸透している。

「やはり何事も思いやりの心が大切だと思うんですよね。自分のことだけでなく、相手の立場に立って考えて行動する。それが仲間意識を育てて、事故や災害を防ぐことにつながるんだと思います」(君島会長)

 こうした成果が認められ、労働基準監督署から職長会は表彰されている。

 躯体工事も終り、これから本格的に内装・仕上げ作業に入る。「なんでも思っていることをいいやすい会です。クリーニングの仕事は、女性作業員が多いので、着替えるための更衣室を設けてほしいと提案しました」

 お話が弾むにつれて、みなさんは、この四番町の現場の前に、三番町のマンションからご一緒だったということがわかった。君島会長と川上昭二所長(大林組)は、すでに五年のつき合いだとか。

「会のメンバーは、三、四年同じ現場でやっていますから、お互いをよくわかって、良くまとまっています」(津崎さん)

 広報部会の織田さんは、電気工事の仕事について三年目。職長会で決定した安全についての決意表明やルールなどを全体に知らせるため、掲示物の作成をまかされている。「大切な仕事ですからね、頑張ってもらいたい」と若い織田さんに、会長は期待を寄せている。

 インタヴューのあと、最上階の億ションの部屋を拝見させていただくため、エレベーターを待っていた。

すると会長が、「一度仕事をやめたことがあるんです。でもまた、とびを始めて、それから所長とは一緒です」とぽつり。なにがあったのかわからないが、心に響くことばだったなあ。

新しい年も、高い志を胸に、無事故無災害の、より良い職場づくりに取り組んでいただきたい。そう祈った。

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2007/02/07

大林組 四番町マンション計画①

月刊「つち」20072月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…56

邸宅の赴きと豊かな樹木を

継承する高級マンション

千代田区番町は、元祖・高級住宅地。お屋敷や政治家や著名人が居住するマンションが立ち並ぶ。

皇居半蔵濠に面した番町の東端にあたるのが一番町。二番町は、怪談「番町皿屋敷」の舞台ともいわれている。東京メトロ麹町駅もある。三番町は、最も九段寄り。東郷公園や千鳥ヶ渕戦没者墓苑も近くにある。二松学舎大、大妻女子大、東京家政学院、大妻高・中、九段中など、学校が多い。
 図書館・児童館がある四番町。五番町は、市谷駅前から総武線線路沿いに四谷駅の手前まで。土手は外堀公園で、春は「お花見スポット」となる。六番町は、四ッ谷駅と日本テレビ通りの間にある。
 東京都心では、天を突く威容を誇
る超高層タワーはもはや珍しくない。しかし、ここ番町一帯では、見当たらない。

現在、四番町で建築中のマンションは、邸宅は無機質で先鋭的であるよりも、ぬくもりとやさしさが必要であるというコンセプトのもと、一七階建という高さを感じさせない落ち着いた外観。

以前は、私邸であったこともあり、邸宅の赴きと豊かな樹木を継承する全一二八戸の免震マンションになる。

住戸面積五六~二六六平方メートル、販売住戸価格は五六〇〇万円~二億五五〇〇万円台。

JR・都営新宿線・東京メトロの市ヶ谷駅から徒歩三分、同駅のほかに麹町駅など四駅七路線が利用できるという立地もあり、すでに全戸が完売しているという。

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2007/01/15

新別館ビル新築工事②

「玉掛けや高所作業やクレーン作業などをするとき、黄色のフォークリフトなどの技能講習修了者、青色の高所作業などの特別教育修了者、赤色のクレーンなどの免許資格者というように色分けした資格証を首から提げて行います。これで、一目で確認できます」(安全・宮崎さん)

「ゼロエミッションのモデル現場として、分別の確認と指導に力を入れています。廃材や段ボールなどを使いやすいように小さく切って、近隣の住民の方に分けて有効活用してもらうことで、地域との共生にも役立てています」(環境・村中さん)
「赤坂周辺は大型現場が集中していますから、工事車輌で道路が混み合って、地元商店街などに迷惑をかけないよう配慮しています」(衛生交通・佐藤さん)

「オリンピック制度の関係書類を作成しています。パートナー制度も実施しています」(広報・国吉さん)

「オリンピック制度」と「パートナー制度」は、前の現場で初めて耳にした。こちらでは、午前八時の朝礼のほかに、午後1時に昼礼も行っている。そこで行っているのが「パートナー制度」。これは、まず、パートナーを組んだ相手を思いやり、相手の立場に立って考えられる信頼関係をつくろうというもの。

「体調が悪いのに気づかないまま作業をしていると、思わぬところで事故を起こしてしまうことがあります。一日二回、朝礼と昼礼のときに握手をしてスキンシップを図り、お互いに相手の健康状態や服装などをチェックします。自分自身では気づかないところを見つけてもらって、災害を未然に防ぐのです。

さらに、作業現場で、使用する機械や工具、作業場所の安全点検を行い、危険がひそんでいないか、指差し・掛け声確認をします。チェックカードに細かく書き込むことによって、末端の作業員まで、安全を守る意識を徹底しています」(武藤会長)

 そのほか、フロアごとに数グループが集まり、混在する作業について説明する「現地KY活動」も実施している。

また、すべての作業員を対象に、無災害労働を続けた時間、職長・所長などの評価によって「金・銀・銅会員」という三つのランクに分けて登録している。これが「オリンピック」制度。

毎月、銀・銅会員の推薦が提出され、月末には結果が発表される。なかには落ちる人もいる。それぞれ、金・銀・銅に色分けした「御守シール」がヘルメットに貼られる。

 現在、銀会員は二〇数人。金会員になるには、上級職長認定者であること、無災害延労働時間の累計が一二五〇時間(スポットは累計六〇〇〇時間)、奉仕清掃に積極的に参加しているか、安全態度は他の模範となっているか、といった項目に加え、職長面接もある。他の職との連携・調整にリーダーシップを発揮しているかなども問われる。こうしたことを見事クリアした金会員は、四人しかいない。

ちなみに、清水顧問と武藤会長は金会員、日吉さんは銀会員。銀会員には、愛幸桧のネーム入りベスト、金会員には時計などの記念品が贈呈される。

とくに金会員は、実績などの継続的貢献度が高く評価され、「愛幸桧の正会員として登録、各種の特典を与え、以後の所長管轄現場においても優遇する」とある。つまり、「(業界を引退するまで)一生のおつきあい」(中村所長)が保証される。

まさに、金会員は、職長の星。スーパーエリート職長といえよう。

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2007/01/14

新別館ビル新築工事①

月刊「つち」200612月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…55

鹿島建設 愛幸桧

「金」のスーパーエリート職長は

「一生のおつきあい」を保証

東京・赤坂は、その名の通りたくさんの坂があり、それぞれに由来がある。例えば、転坂は、江戸時代から木立に囲まれて暗いうえ道が悪いため、通行する人たちがよくころんだためだとか。そのままの名前だなあ。

坂は、比較的長い坂で、勾配もさることながら、カーブがついているので、アスファルトに滑り止めが施されている。

 この坂の上に、地上一五階、地下二階のビルが建設中。一~九階は事務所、一〇階より上は高級賃貸住宅になる。工期は一九年五月の予定。すでに一五階まで建ちあがり、上棟式目前の取材となった。

 実は、こちらは、二年前に赤坂四丁目の一ツ木通り沿いに建設中だったオフィスビルと同じ中村幸太郎所長(鹿島建設)の現場。

四丁目のオフィスビル完成とともに、明るく優しく愛深くをモットーとする職長会「愛幸桧」メンバーの多くは、六丁目のこの現場へ移動。前の現場で会長をつとめておられた清水浩一さんは、現在、顧問に昇格。武藤憲昭さん(石澤工業・鉄筋)に会長を譲り、次の現場・豊洲のマンションにおられる。お忙しいなか、取材に駆けつけてくださった。

武藤会長を中心に、副会長の宮崎武志さん(大木組・とび)と村中浩二さん(きんでん・電気)と佐藤和義さん(小野工務店・はつり工)と国吉強さん(大浦工測・墨出し)の四人は、それぞれ安全委員長、環境委員長、衛生交通委員長、広報委員長も兼任。

その下で、村松浩さん(京浜美装・養生工)は環境副委員長、島田和幸さん(高砂熱学工業・空調設備)は衛生交通副委員長、久保田真由さん(日比谷総合整備・衛生工)は広報副委員長をつとめている。

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2007/01/13

登戸遊園間立体工事②

パトロール後、「どこが、

どうなっていた」か具体的に指摘

 職長会は、協力業者によって構成される協力会の下部組織として、運営されている。

会長は赤坂知治さん(旭工建・土木)、副会長は計良雅芳さん(一藤・とび)、会計監査は高橋豊さん(アサヒ安全業務社・警備)、中澤孝至さん(オリエンタル建設・PC桁仮設)、門間進平さん(フジ設備工業・設備)、大熊信五さん(エイシン・アルミサッシ)、鈴木晃紀さん(旭工建・土木)。

顧問は作業所長の太田正保さん(小田急建設)。副所長の根本さん(同)は、安全・渉外を担当されている。

 一般に、建築工事は長くても二、三年だが、こちらは、鉄道工事ということもあって、工期は倍近い。すでに丸七年になる。赤坂会長はじめ、みなさん五~七年のつきあいになるという。

「お互いにすっかり気心も知れて、遠慮なくなんでもいい合える。コミュニケーションもうまくいっています。

長期の作業になっていますので、全体にマンネリ化しないよう絶えず注意を払っています。安全大会・血圧測定・玉掛けワイヤー点検などの年間・月間行事を細かく決めて、職長会活動が滞らないよう努めています」(赤坂会長)

 現場では、①安全帯使用の徹底、②生きたYKKの実施、③交通労働災害防止の徹底、④産業廃棄物の分別収集の徹底、という4点を基本にして無事故無災害の決意を誓う「安全の誓い」を立てた。

 月二回の職長会による安全パトロールでは、パトロール後に「結果表」を各自が提出。これは、①場所(どこの、どこが)、②結果(どうなっていた)、③時間(いつまでに)、④評価・提案・指摘(しなさい、したほうがよい、○○がよかった)ということを具体的に記述するもの。

 例えば、「駅下、足場の通路標示なし」「多摩ヤード、ペットボトル・空き缶が山になっている」「踏切第一、吸殻入れを清掃すること」「踏切第二、ワイヤーの点検をすること」「」といった具合に指摘し、改善された日もきちんと書き込む。

 根本さんは、安全ポイントをデジカメに撮影し、昼食後の会議で、モニターによって職長会メンバーに公開。目に見えるかたちにすることで、毎日の安全点検に役立ててもらっている。

安全大会の消火器訓練のあとには親睦会を開催する。作業所前の朝礼会場でのバーベキューで、高橋さんは、焼き鳥を焼いてサービス。職人さんの中には、以前、板前さんだった方もおられるので、ホタテの刺身などがふるまわれることも。

夜中は、列車の運行が止まる約三時間に集中して作業をしなければならない。複々線化のため、一晩で旧線路を撤去し、仮設線路に付け替えたこともあった。切り替え工事では、数百人体制で作業に従事する。

これから、昼七〇人・夜三〇人の昼夜体制で工事は続けられる。

「長いこと工事に携わっていると、鉄道とともに登戸周辺も大きく変わってきていると感じます。以前は、駅前も狭くてゴミゴミした感じでしたが、環境が整備されて、だいぶきれいになりましたね」と大熊さん。

永年、一つ現場で働いてこられただけに、言葉に実感がこもっていた。

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2007/01/12

登戸遊園間立体工事①

月刊「つち」200611月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…54

改良工事によって

時間短縮と混雑緩和へ

小田急電鉄の向ヶ丘遊園駅沿線の立体交差複々線化工事が佳境を迎えている。

これは、立体化して増線することによって、スピードアップを目指すもの。朝方のラッシュ時の一時間に約五本の上り列車が増発され、時間短縮と混雑の緩和が図られる。

今回訪ねたのは、小田急開業当時の姿を今に伝える駅舎だという向ヶ丘遊園駅。登戸~向ヶ丘遊園間の現場を案内していただいた。

この区間は、駅の間隔が近いこともあってか、長らく現状を保ってきた。しかし、多摩川橋梁工事が本格化したこともあり、二〇〇〇年、登戸駅改良工事とともに工事がスタート。駅名の基となった向ヶ丘遊園は、残念ながら二〇〇二年三月、七五年の歴史を閉じた。

計画では、代々木上原駅は完成済みの高架駅、東北沢~世田谷代田は地下化、梅ヶ丘(以前、取材済み)~祖師谷大蔵間は高架化、成城学園前駅付近は地下化、喜多見~和泉多摩川間は高架化となっている。
 登戸~向ヶ丘遊園間も四線化する予定だったが、用地確保ができないため、暫定的に三線化(上り二線・下り一線)となる予定。

登戸駅は、高架および盛土構造の駅舎が、狭くて老朽化していた。そこで、高架構造の二層式の駅舎に改築され、JR南武線との乗換もスムーズに。混雑の緩和も図られた。

エレベーターやエスカレーター、身障者対応のトイレなども新設。二面三線のホーム全体に屋根が設置されるなど、バリアフリーの駅に生まれ変わろうとしている。

登戸駅を発車すると三線化工事の脇をゆっくり走りながら高架を下っていく。そして、二面四線の向ヶ丘遊園駅に到着する。

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2006/10/04

小田急線 立体交差複々線化工事

小田急電鉄の向ヶ丘遊園駅沿線の立体交差複々線化工事の現場へ。職長さんにお集まりいただき、座談会。そののち、所長さんのご案内で、登戸駅までの現場を視察。踏切でなく、日中にナマ線路を横断するなんて。ドキドキ。これも取材だからこそ。

Photo

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2006/10/03

小岩駅北口地区再開発新築工事

月刊「つち」200610月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…53

錢高組

小岩駅北口地区再開発新築工事

職長会

駅近くの飲み屋街が

再開発でタワーマンションに

東京都江戸川区のJR小岩駅。構内には、大相撲第四四代横綱であった栃錦の銅像がある。待ち合せの目印になっている。

栃錦は、駅近くの下小岩小学校へ通っていたそうで、横綱引退後は、日本相撲協会の理事長をつとめ、両国国技館を建てた人物として知られている。

余談だが、国技館の工事の見積もりは、一六一億五〇〇〇万円であった。でも、二子山事業部長(当時)と栃錦が、端数の一一億五〇〇〇万円を値引きさせて、一五〇億円にしてもらったのだとか。

駅南口は、サンロードという商店街が広がり、平日でも、かなりにぎわっている。どこか懐かしく、下町らしい風情が漂う。

北口の前には、イトーヨーカドー。高架沿いに市川方面へ二分ほど歩くと、白い外壁の高層ビルが建設中。全戸南向き、二四階建のタワーマンション「東京グランファースト」。

聞くところによると、このあたりは、もともと柳小路と呼ばれていたそうだ。入り組んだ通りに、木造の店舗などが建ち並ぶ飲み屋街。老朽化して不衛生な地区になっていた。

地震や火災の際には、人命にかかわる危険性が高いということで、安全な街につくり変えたいという要望が地域から出されていたそうだ。

区では、地震や火災に強い街づくりの実現に向け、敷地を共同化した場合など、一定の条件により再開発ビルの建設費の一部を補助している。

そこで、小岩駅北口再開発事業協議会がつくられ、地区再開発事業がスタート。二〇〇五年五月に新築工事が着工し、〇七年には完成する予定。

建物の一・二階は、約二六店舗が入る。三~二四階は、一六三戸の共同住宅になる。現在一九階まで建ちあがっている。完成すれば、江戸川区・葛飾区内で最高層のタワーマンションになる。

「仲良く、笑顔で」

危険予防のための声かけを

今回、集まっていただいたのは、職長会幹部の六人。会長は畠秀一さん(深谷組・土工)、副会長は中村宏次さん(マサル・シーリング防水工事)と加藤吉弘さん(NAPC工事)、会計は三好正寿さん(夢信総合整備・空調衛生)、書記は田中誠一さん(四電工・電気工)。会は環境チームと安全衛生チームの二つに分かれている。環境チーム・リーダーは平嶋昌博さん(吉田興業・はつり工)

「着工してから一年間は、五、六業者しかいなかったこともあって、ようやく今年の八月に、職長会活動が本格的に稼動したところです」と、真っ黒に日に焼けて精悍な感じの畠会長。

 毎週月・木曜日、職長による安全パトロールを行っている。火曜日には、錢高組と一般作業員によるパトロールを実施。これは、業者単位で行われ、安全意識の向上をめざしている。また週三回、昼休み後の一五分間、集中的に清掃している。

環境チームも、毎週火・金曜日にトイレや休憩所などをパトロールしている。

「職場環境を良くするためにも、分別してできるだけゴミを減らすことに力を入れています。先日、産廃業者による勉強会も開きました」と、環境チーム・リーダーの平嶋さん。

猛暑の夏には、熱中症予防のため、「涼しん帽」という、ヘルメット内部に装着して、首筋のうしろを冷やすネット状の帽子が、全作業員に配布された。

「気分が悪くなってきても、納期やノルマなどが気になっても、途中で仕事をやめて現場を離れるということはなかなかできません。決められた時間での作業なので、休むと収入に直接結びつきますからね。

そのため、疲れたり、気分が悪くなったりしても無理をしてしまうケースがあります。そうならないためにも、職長が、常に作業員の顔色を気遣い、こまめに声をかけ、気軽に休みをとれるような環境をつくること。それが最も大切だと思います」と平嶋さん。

ちなみに、平嶋さんの現場でのモットーは、「仲良く、笑顔で」。なるほど、熱中症などの「危険」を予防するためにも、早めに「休む勇気」を後押しするような、声かけが大切なのだ。

「この現場は、もともと和気あいあいというか、業者ごとのコミュニケーションもいい。声を掛け合ったおかげか、熱中症になった人は、一人もいなかった」と中村副会長。

 現在、一〇〇人の作業員は、これから一五〇人まで増える。

「新しい人には、前の現場のことを聞いたり、何か接点を見つけて話しやすくして、コミュニケーションをとるようにしています」と加藤副会長。「無事故無災害のため、これからも声をかけあっていきたい」と三好さん。

約一週間後には、地元の業者のセッティングで現場の親睦会が初めて開かれる。「楽しみですね」と私が声をかけると、初めての取材に、少し緊張されていた様子の畠会長はにっこり。みなさんのお顔も、心なしかゆるんだ気がする。

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2006/10/02

東京警察病院 新病院プロジェクト

月刊「つち」20069月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…52

西松・清水・大成・佐田・佐藤秀建設工事JV

東京警察病院 新病院プロジェクト

TPHプロジェクト職長会

犬屋敷→陸軍中野学校→

警察大学校→警察病院

東京・JR中野駅北口から徒歩三分ほど。区役所の裏手に警察大学校の広大な跡地が広がっている。

平成一三年に警察大学校と警視庁警察学校が調布に引越し、一三.七haもの空地ができた。一二〇〇本以上の樹木に囲まれた緑あふれる場所で、東京ドーム四個分くらいの広さ。

もともとここは、中野御囲跡(なかのおかこいあと)といって、徳川幕府の五代将軍・綱吉の「生類憐みの令」で集められた野犬の「犬屋敷」跡。犬部屋や子犬養育所、役人の住居など、総計約三〇万坪という膨大な広さの犬小屋に収容された犬は、八万数千頭にも及んだとか。

のちに昭和一五年、諜報(スパイ活動)技術を教える養成所強化を目的とした陸軍中野学校が設立。今では「囲町公園」という名が、かつての様子をわずかに伝えている。
 
この空地のうち2haは、千代田区から東京警察病院が移転してくることに決まっている。

東京警察病院は、昭和四年、警視庁職員で構成された財団法人自警会会員の拠出金により開設した。

警視庁職員およびその家族の診療を行う職域病院として発足したが、昭和二〇年には一般にも門戸を開放し、救急を始めとする、高度で幅広い地域医療に対応している。

政府や警視庁本部の特命に基づき、浅間山荘事件や在ペルー日本大使館占拠事件への特別医療チームの緊急派遣、地下鉄サリン事件後の山梨県上九一色村強制捜査の援護活動など、歴史に残る事件の解決にも関与してきたそうだ。

病院以外の土地をどのように利用するのか。当初、オフィスビルと高層マンションなどの再開発を進めるようとしたらしい。

中野区は、人口密度日本一、一人当たりの公園面積が東京二三区中で特に低いうえ、都の直下型地震被害想定によると、死者発生率が区内で最も高いと指摘されている。

そうした背景もあって、区民からは、憩いと防災のための緑地公園としてできるだけ残してほしい、と求める声も強いようだ。

業務に集中するみなさんに接して

一時、暑さも忘れて

平成二〇年三月、東京警察病院は、中野に移転する。工事の通称は、「TPHプロジェクト」。お話をうかがったのは、「TPHプロジェクト職長会」会長の新城健さん(ヒロキコーポレーション・鳶)、副会長の浜辺政浩さん(早川鉄鋼販売・鉄筋)と熊岡猛さん(楠工務店・型枠大工)、書記の浅山顕蔵さんと高橋清治さん(衛生JV)、安全委員会の阪口由一さん(城中工業・鉄骨とび)、車輛委員会の川名悟さん(日本セキュリティサービス・警備)と海老沢孝徳さんと竹ノ内輝行さん(電気JV)、環境保全委員会の佐藤司さん(楠工務店・型枠解体)、詰所委員会の関口克己さん(ヒロキコーポレーション・雑工事)、三嘴誠次郎さん(相模測建・測量)、毛利幸喜さん(空調JV)の一三人。

 うち毛利さん、三嘴さん、熊岡さん、浜辺さん、高橋さんの四人は、この前の現場の府中駅前再開発工事から、居合善司所長(西松建設)とともに働いてこられた気心の知れた仲間。会長に初めて就任された新城さんをしっかりサポートしている。

施設は、鉄骨鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)地下二階、地上九階建の病院棟と、鉄筋コンクリート造七階建の宿舎棟から成る。

一年前に始まった工事は、病院棟の地下躯体の真っ最中。これまで、基礎の免震装置作業に多くの時間を費やしてきた。

九月からは地上部分の躯体とともに、宿舎棟の工事も始まる。一九年一一月末完成予定というから、工程表から見ても、ちょうど折り返し点、ヘソというか要の部分に差し掛かっている。

「限られた工期で、とにかくいい建物をつくろう。これから一五〇人くらいの作業員が入りますが、いろいろな業種とからんで仕事をしやすい環境をつくることが職長会の仕事だと思っています」と新城会長。

「どこの現場でもそうですが、トイレと詰所のきれいな現場は、仕事環境も良い。清掃は自主的に徹底的にやっています」と浜辺副会長。

 職長会の現場パトロールは、毎週月曜日の午後一〇時半より、三、四班に分かれて三〇分間行っている。

「事故や災害を防止するため、特に安全帯を使うこと、それを重視しています」と安全委員会の阪口さん。

「掘削やコンクリート打設などで、多いときは、一日二五〇台もの大型ダンプや生コン車が出入りしました。いつも混雑している早稲田通りしか進入口がありませんから、入退場の連絡や調整に追われています」と車輛委員会の川名さん。

 取材当日も朝から大変蒸し暑かった。でも、みなさんは、淡々と業務を遂行することに集中されている。取材している私も一時、暑さも忘れ、頭が下がる思いがした。

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2006/10/01

第二東名高速道路静岡第一トンネル工事

月刊「つち」20068月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…51

フジタ・安藤建設・太平工業事務所共同企業体

第二東名高速道路静岡第一トンネル工事

職長会

東名高速の約二・五倍の

断面のトンネル工事

いま建設中の第二東名高速道路(第二東名)。東京から神戸まで、全長約四六〇㎞。渋滞が著しい現在の東名高速道路の機能を補充する「二一世紀の新しい大動脈」として、また、近い将来に予測されている東海地震に備える防災アクセス道路としての役割も期待されている。

第二東名は、東名よりも幅を広げて六車線になる。市街を避けて、山中に高速走行が可能な道路を通そうとすると、山をぶち抜くしかない。高架橋は、高層ビルのように高くなり、トンネルは山の中腹を貫く。全体の六割をトンネルと橋が占めるという。

今回訪ねた静岡第一トンネルも、静岡駅からバスで二〇分ほどの、市街地を抜けた北東端、標高約二〇〇mの山並みが始まるあたりにあった。東西に走る第二東名が、安倍川を渡る手前に位置する総延長一・二km、掘削幅一八m、掘削断面面積一九〇㎡の大断面のトンネル。東名と比べると約二・五倍もの大きさになる。

黄色い半被に「喝」の字が

書かれた旗を掲げてパトロール

大断面のトンネルの掘削とはいっても、閉鎖された空間の中での、厳しい作業である。

まず、岩山を爆破掘削するため、ダイナマイトを装填する細長い孔をあける。掘削後、壁面を支えるロックボルト用の孔もあける。

トンネル掘削の爆破作業の後、すぐにアーチ状の壁面を保護するため、コンクリートモルタルを吹きつける。モルタルは硬くなって壁面を支えるとともに、空気を遮断し、壁面の劣化を防ぐ。

こうした難工事に立ち向かったのが、職長会会長の小笠原秀明さん(宮本組・重機土工)、副会長の大川忠宏さん(宮本組・土工事)、田中義隆さん(藤友工業・トンネル掘削工)、浅原修さん(中村・コンクリート打設)、上島洋介さん(東興建設・法面(のりめん)工事)。

広島出身の小笠原会長は、二七歳。就職して初めての仕事がこの現場だった。まだ山が切り開かれていない着工当初から五年間にわたって、会社の先輩で前会長の大川副会長とともに、大型重機を手繰ってきた。「総量一二〇万平方㍍、高さ一五〇㍍の掘削で一日三〇〇〇立方㍍、ダンプ六〇〇杯分の土砂を運搬して、毎日、山の形が変わっていきました」。

掘削工歴二〇年以上のベテラン、田中さんは、トンネル掘削のエキスパート。「先端に付いた大きなドリルで岩をガリガリ削り取る重機や、狭いトンネルの中で車の向きを変えなくてもショベル部分が横に向く重ダンプなどを通して、大量の土砂や岩石を能率的に運搬するとともに、安全に作業することに最も神経を注ぎました」。浅原さんのコンクリート打設も、トンネル工事の中で最も厳しい作業環境を強いられる。

職長会では、こうした危険を伴う作業の改善に積極的に取り組んできた。「ひと声運動」はもちろん、黄色い半被を着て、大きく「喝」の一字が書かれた黄旗を掲げてパトロールをするなど、一瞬の気の緩みが重大な事故を招かないよう常に注意を払った。

特に、粉じん対策に力を入れているフジタは、作業によって発生する粉じんを除去するための大型集じん機の導入、粉じんを低減する効果がある吹付けコンクリートを採用するなど、ひと昔前のトンネル工事現場とは比べものにならない坑内の環境を実現した。

上島さんの法面工事は、切土や盛土の斜面は、そのままの状態では雨水・地下水による侵食や風化によって崩落しやすいので、植生によって法面を覆うもの。植生工事は、緑化する面に金網またはネットを張り、そのあと種子・有機肥料・土壌などを吹き付ける。

ここの地質は、静岡層群と呼ばれる砂岩・泥岩の堆積層。比較的安定した硬い地層のため、トンネルから掘り出された岩石は、舗装工事の砕石としてリサイクルされているそうだ。また、伐採された山の木も砕いてチップにし、地表に一五cmの厚さに敷き詰めている。

また、職長会は、作業所から現場に向かう途中の道路沿いの清掃や草刈り、花壇づくりなど、周囲の環境にも気を配っている。

広島の小笠原会長、兵庫の大川副会長、福岡の田中さん、山口の浅原さん、名古屋の上島さん、そして大阪の浅田さんと、みなさん各地から集っている。作業所の隣に建つ宿舎で起居を共にして、どんなときも励まし合ってきた。文字どおり、同じ釜の飯を食ってきた仲間たちだ。

トンネル作業における、高い環境づくりを目指してきた工事も、着工からすでに六度目の春を迎えた。トンネルの近くの調整池やダム工事など、最終の仕上げ段階に入っている。

残り工期は、あと九ヶ月余り。高品質の高速道路を完成させるため、「毎日、安全の効率良く作業が進捗するよう段取りするのが僕らの仕事です。もうひとふんばり」と小笠原会長。かたわらの浅井副所長は、この現場で急成長を遂げた若き会長に頼もしそうな視線を向けた。

これからも一丸となって、「高環境の職場づくり」を目指す。

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2006/09/30

南青山一丁目団地建替プロジェクト

月刊「つち」20067月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…50

大成建設

南青山一丁目団地建替プロジェクト

職長会

都営住宅が複合施設に再生

青山エリアのシンボル的存在

都心にまたひとつ、超高層タワー型の賃貸マンションを中心とした大型プロジェクトが進行中だ。

場所は、赤坂御所に近い、南青山。もともと都営住宅であった南青山一丁目団地を、民間の活力を導入して複合施設に再生しようというもの。
 平成一九年三月竣工に向け、ハイセンスな立地にふさわしい、ハイグレードな賃貸マンションに生まれ変わることが予想される。

共同住宅は、超高層棟(N棟)の六階~四六階部分に三九二戸。すでに四三階まで立ち上がっている。四六階という高さは、現時点で、都心のマンションとしては最も高い。

N棟の一階~五階は、オフィス、商業施設、図書館や大学院などの公益施設が、また一四階建のS棟には、共同住宅一五〇戸のほか、保育園、高齢者用グループホームが入り、ひとつのコミュニティタウンを形成する。

住宅は、ファミリータイプから、シングル・DINKSなどのコンパクトタイプ、外国人向けの大型住戸まで、幅広いライフスタイルに対応した豊富なバリエーションが設定されている。

特に、最上階からの夜景は、素晴らしいことだろう。それだけに、家賃はいくらになるのか気になるところだが、平均的会社員の月給の数倍という、まさにデラックス価格になるようだ。

南青山には、それほど高層の建物はない。このエリア初のタワーマンションであると同時に、青山一帯において、これだけ大規模の賃貸専用マンションは初めてということで、シンボル的存在として注目を集めている。

官民一体型の大規模再開発で

働くスーパーな職人たち

といっても、現場で働く職長会のみなさんは、いたって自然体で、気負いはない。職長会メンバーは、「伝説のスーパーとび」こと、会長の早川伸夫さん(加濃建設・とび)はじめ、それぞれユニークな呼び名のシールをつくってヘルメットに貼っておられる。

副会長の依岡晃さん(丸信建設・とび・土工)と鶴ヶ崎明さん(マサル・シール工事)と竹谷勇二さん(宮本建設・型枠大工)、会計の市田幹樹さん(九電工・電気工)書記の二片健志さん(櫻井工業・水回り)、安全分科会リーダーの朝倉健一さん(柴田工業・鍛冶工)、環境分科会リーダーの味村一樹さん(明和商会・内装工)、衛生分科会リーダーの下野常夫さん(中山測量・墨出し工)、広報・車輛分科会リーダーの大塚賢一さん(TOTO・ユニットバス)という、一〇人が集まってくださった。

「このプロジェクトは、東京都が民間事業者に七〇年間の定期借地契約で敷地を賃貸し、都営住宅と公共施設と民間施設からなる複合施設の建設・運営を委託するものです」と二片さん。

「民間の力を活かした首都の顔づくり」をテーマに掲げた、いくつかの先駆的プロジェクトの中で、「南青山一丁目団地建替プロジェクト」は、国の民間都市再生事業の第一号に認定された。記念すべきプロジェクトだ。

「みんな仲が良いので、申し送りもスムーズで、作業上のトラブルもほとんどないですね」と依岡副会長。

自称「カリスマ内装工」こと味村さんは、「毎朝、有志で、現場の周囲の道路に落ちている吸い殻を拾っていますが、みんな率先して参加してくれています。近所の方から挨拶されるなど、内外のコミュニケーションづくりにも役立っています」。

「仕事が終わると毎日のように、詰所でご苦労さま会をやっています。飲んでばか話をしているようですが、こうしてほしいなど、仕事の改善点も積極的に出されます」と早川会長。

 こうした日々の職長会の結束は、昨年のクリスマスシーズンにも大いに発揮された。仮設パイプ、蛍光灯、安全灯などの資材を活用して、大きな星のイルミネーションをつくったのである。

無機質になりがちな工事中のタワーマンションの外壁が、力を合わせて手づくりしたイルミネーションによって飾られた。約一ヶ月間にわたって、おしゃれな青山の街全体に心あたたまるクリスマスムードを演出した。

「毎月、いろいろな現場を取材されているんですか?」と早川会長から訊かれた。

はい、おかげさまで。毎回、どこでもあたたかく迎えていただきましたが、連載五〇回を迎えることができました。

これからもスーパー職人が集う職長会のサポーターとして、その安全を祈るとともに、現場を支える職長会の熱意あふれる活動をお伝えできたらと願っている。

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2006/08/17

戸塚上倉田町プロジェクト新築工事

月刊「つち」20054月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…36

大豊建設

戸塚マンション工事職長会

丘の上に近代的な

マンション群が誕生

 取材当日は二月下旬の冷たい雨の日。JR戸塚駅を降りて、一〇分ほど歩くと戸塚税務署へ向かう坂になる。道の片側をふちどる桜並木も冷え冷えとした感じだ。

税申告の案内人が立つ税務署の前を通り過ぎると、人家や人影も消え、大型トラックが水煙を上げて走り抜ける。坂を上りきった正面に工事現場のゲートがあった。

昨年八月末に工期がスタートして半年余り。こんもり繁っていた山を切り崩して造成し、現在、山留作業を行なっているところ。

ところどころに移動式クレーンなどの重機が見えるが、三七一万平方㍍という、広大な開発敷地面積を見渡すかぎり、建物はまだ何も建っていない。

寒風にあおられながら、将来、緑地公園として横浜市に寄贈するという小高い丘の上に立ち、相良雄二所長(大豊建設東京支店)から説明を受ける。

平成一八年七月に完成すれば、地下二階地上一二階の鉄筋コンクリート・免震構造の共同住宅四〇八戸(A棟八〇戸、B棟六七戸、C棟七四戸、D棟六〇戸、E棟六六戸、F棟六一戸)が建ち並ぶという。

ガスを使わないオール電化システム、ITカードや携帯電話での施錠など、近代的なマンションになるそうだ。山上に一つの街が誕生することになるのだろう。

工事も職長会も基礎固めの段階

「二月頃まで基礎工事で、四月になると六棟がいっせいに立ち上がります。躯体と仕上げ工事のピークは、今年の八月。その頃には六〇〇人くらいの作業員が工事に携わっている予定ですが、今はまだその前段階なので……」と相良所長。

職長会の組織自体、これから立ち上げる段階のよう。そのうえ今日は、朝から降り続く雨のため、中止になった作業が多く、作業員の方たちの姿をほとんど見かけなかった。

しかし、私たちの取材を受けるため、職長会メンバーの坂口豊男さん(矢野技研・鳶土工)と藤澤義明さん(森元工業・山留)のお二人が、そのまま残ってくださっていた。

 そのため今回は、職長会メンバー二名に対して、佐良所長はじめ一一名の職員の、職長より職員の数のほうが多いという、かなり変則的というか、異例の取材となった。

 同席されたのは、事務長の阿部さん、建築第三工区長の田中さんと佐藤さん、土木担当の仁田野さんと積田さん、建築第一工区担当の村松さん、建築第二工区担当の大橋さんと工藤さん、建築工務長の香川さん、品質管理の森さん。

 ちなみに、今回欠席された職長会のメンバーは、小笠原良信さん(土工事)、岩崎輝男さん(警備)、泉祥蔵さん(測量)、瀬口浩司さん(杭)、輪島典幸さん(はつり)、山田城一さん(鉄筋)のみなさん。

「実際に、職長会が立ち上がるのは三月くらいになるでしょう。工事と同じように、職長会活動もまだ基礎固めの段階です。

これから新しい職長がたくさん入ってきますが、われわれは、職長と職員、作業員同士のコミュニケーションを密にするためにも、今から気軽に会話を交わせるよう、下地をつくっておきたいですね」と坂口さん。

「山留のとき、クレーンで土を掘る前の準備をするのですが、穴に人が落ちることがないよう、安全には特に注意を払っています。

今後、作業員が三倍に増えますから、新規入場者教育にビデオを取り入れるなど、安全意識の啓発と労働災害の防止に力を入れていきたい」と藤澤さん。

お二人から、「これからわれわれが会を立ち上げるのだ」という気概が伝わってきた。

ところで、相良所長の所属が大豊建設と聞いて私が思い出すのは、約二年前、都内の下水道工事で視察させていただいた「シールド工法」である。

あの現場は、土木現場初心者の私としては衝撃的だった。かなり刺激的だったようで、今でも夢に現れることがある(笑)。

 佐良所長は、鹿児島県の屋久島のご出身。子供の頃、ダム工事を行なったのがたまたま大豊建設だったそうだ。

その後、縁あって大豊建設に入社。主に建設部門を担当。新幹線の建設で台湾に赴任されていたこともあった。ご自宅は名古屋なので、現在、単身赴任中。会社の寮から通っておられる。

 また、阿部事務長は、アフリカのマダガスカルに数年間赴任されていたそうで、国際経験も豊か。

ひととおり取材を後えると、藤澤さんは、作業着に身を包み、降り続く雨の中、現場に向かわれた。

工具を担いだ藤澤さんの雄姿を撮らせていただこうと、カメラマン氏がカメラを構えたところ、なにかの拍子で、ストロボの中の電池が作業所の床下に散らばってしまった。

そのとき、藤澤さんのとっさの行動に驚いた。身体をすばやく泥地に投げ出して床下に滑り込み、電池を拾い集めて集めてくださったのだ。さすがの身のこなし。その節は、ありがとうございました。

 最初に述べたように、底冷えのする、野外作業には厳しい一日だった。しかし、取材に協力してくださったみなさまのおかげで、帰りは心もあたたかく、もと来た坂道を下りたのだった。

(明るい職場づくりをめざして