建築現場より

2009/09/19

東北本線浦和駅付近高架化(駅部工区)工事

「そら」2009年9月号 現場拝見  第14回

東北本線浦和駅付近高架化(駅部工区)工事
施工/鉄建・清水建設共同企業体

湘南新宿ラインの浦和駅停車で

新宿・横浜へのアクセスも向上

現在、急ピッチで工事が進められている「東北本線浦和駅付近高架化(駅部工区)工事」(施工/鉄建・清水JV)は、埼玉県さいたま市にあるJR浦和駅の東西の連絡通路の新設をはじめ、駅を中心に延長約1.3kmを高架化するものである。

これまで浦和駅は、駅の東西の連絡通路がなく、利用者から「不便なため何とかしてほしい」という声が多く寄せられていた。そのため、高架下の1階部分に幅25mの東西連絡通路を整備し、東口と西口間の通行をスムーズにして、分断されていた東西市街地の一体化を推進する計画である。

また、駅の高架化に合わせ、構内のバリアフリー化にも取り組んでいる。各ホームに、これまでなかったエスカレーターやエレベーターを新設し、利用者の利便性の向上した新しい駅へと生まれ変わる
 高架化工事は、用地が限られているため、1線ずつ線路を移動しながら慎重に進められている。地面を走っていた線路がすべて高架化されたのち、東北客貨線に旅客ホームを新設し、湘南新宿ラインのホームとする予定だ。

現在は通過している湘南新宿ラインが浦和駅に停車することによって、京浜東北線と埼京線の混雑が緩和され、新宿方面や横浜方面とのアクセスが大きく向上する。

高架化工事は、京浜東北線(南行・北行)および京浜東北線。高崎線上下線の計4線を高架化していく。工事は、平成17年より本格工事が始まり、まず最初に、一番東口寄りの京浜東北線(南行)の線路の隣りに高架ホームを建設、京浜東北線(南行)の高架化に着手した。平成191月、高架への切換工事が無事完成し、新しい旅客ホームが新設された。

続いて、京浜東北線(北行)を高架化し、平成205月に高架への切換を行った。

現在、宇都宮線と高崎線の上り線の高架ホームの建設が進められており、今年12月に高架化する予定。その後、宇都宮線と高崎線下り線も順次高架化していく

高架化された駅前広場側の新しい駅舎の壁面は、水色の防風スクリーン(強化ガラス)が多用され、開放的で洗練された外観となっている。ホームの上野側・大宮側には、コンコースからの階段を設置し、壁面は強化ガラスで装飾され、とても明るいイメージになった。

「私達は鉄道利用のお客さまに

ご迷惑をかけません」と唱和

 現場作業所は、浦和駅前にあるプレハブの建物の2階にある。もともと、銀行の支店が併設されていたが、今は1階に浦和駅東口交番が入っている。

 室内には、鉄建建設の今年の安全推進スローガン「見過ごすな危険の芽 ルールを守って 安全第一」が掲示されている。

安全重点目標は、「墜落災害の防止。重機・クレーン災害の防止。工事事故の防止」。

また、労働衛生目標として、「解体作業等における石綿ばく露防止対策の徹底。過重労働等による健康障害防止のための管理の実施」を掲げている。

さらに、安全3大運動として、「TPKY(鉄建式計画時危険予知)による安全先取りの推進、安全10分間運動の推進、一声かけ運動の推進」を実施している。

中津祐造所長が、同現場に着任したのは平成14年12月。今年で7年目になる。中津所長は、毎年1月に、その年の作業所目標を掲げている。平成21年は次の三つ。

    基本ルール厳守の現場

    安全を確保し、トラブル防止の現場

    品質・工程管理を徹底する現場

ちなみに前年は、

    安心・安全で健康な現場

    品質・工程管理を徹底する現

    報告・連絡・相談を徹底する現場

人通りや交通量、列車本数が多い駅での大規模な工事で、しかも限られた時間内に作業を進めなくてはなりません。すみやかに作業に取り掛かれるよう、また、より良い条件の中で安全に作業が進められるように、毎日、作業工程を念入りに確認しています。常にJR東日本の了解のもと工事を進めていますから、計画外の作業は絶対しないよう現場に周知徹底を図っています」と語る中津所長。穏和な語り口が印象的だ。

 現場では、朝礼と夕礼の点呼のときに、全員で「安全唱和」を行っている。

    何かあったらまず一報

    安全確認できない場合は、線閉解除しない

    疑わしきときは、まず電車を止める

続けて、「鉄道工事従事者の心得」も全員で唱和している。

    私達は、鉄道利用のお客さまにご迷惑をかけません!

    私達は、線路の内、上空で作業していることを忘れません!

    私達は、基本動作とルールを守り、予定外の作業はしません!

    私達は、無断作業、計画外作業は絶対に行いません!

町内会の一員として祭に参加

半被姿で神輿を担ぐ!

「工事を円滑かつ安全に進めるため、工事に関わるすべての人と良好な関係を築く努力をしています。工事をしているのではなく、工事をさせてもらっているんだという気持ちを忘れずに、近隣住民のみなさんと接していきたいですね」と中津所長。

 職長会会長の島本徹さん(東和建設)は、「毎年7月に行われる浦和の祭に参加し、町内会の一員として半纏姿で神輿を担いでいます。今年も、職員3人と協力会社から2人が、2日間にわたって参加しました。こうしたことも、現場のイメージアップなど、良い結果につながっていると思います」と語る。

中津所長と島本さんのご案内で、私も宇都宮線と高崎線上り線ホームを見学させていただいた。ヘルメットをかぶり、黄色い安全チョッキを着用して、さながら工事関係者のようだ。

真新しい階段を上って工事中のホームへ。まだ一般の人が降り立ったことがない高架のホームに立てたことは、とても新鮮な体験だ。ほかのホームが新設された際は、近隣住民を招き、線路に下りて歩く「軌道内ウォーク」を楽しんでもらったそうだ。

工事はちょうど、ホーム屋根の鉄骨の仕上げにかかっているところであった。視線を下に移すと、敷設されている線路は、コンクリートの枕木を付けた状態で、20cmほど浮かして仮止めされている。木枠をはめてコンクリートを流し込むそうだ。

防護壁を隔てて、青いストライプの京浜東北線の車輌が頻繁に走り抜けていく。電車の走行が止まる夜間も、毎日、約40人が工事に当たっている。ホームの切換段階に入ると、100人体制に膨れ上がる。

これまで、浦和駅というと、正直なところ、県庁所在地とは思えないほど不便で、なんとなく暗いイメージがあった。工事の進捗によって、それもきれいに払拭されることだろう。
 高架化工事
全体の完成は、平成25年3月の予定。高架化工事とともに、東口の再開発工事も進み、浦和駅内外の風景も一気に変わることであろう。

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2009/07/30

町田市相原町706番地先から鑓水小山給水所間送水管(1500mm)用トンネル及び立抗築造工事

「そら」2009年7月号 現場拝見  第13回

施工/飛鳥・鉄建建設共同企業体

シールド発進後に巨礫が見つかり

立坑をさらに4m深く掘り下げ

多摩ニュータウン西部の小高い丘に、クリーム色の巨大な建物がある。約10km離れた高尾山の展望台からも双眼鏡で見られることができるこの建物は、東京都水道局が進める「多摩丘陵幹線事業」の二次路線の第8工区にあたるトンネルの発進基地「多摩シールド作業所」だ。

多摩南西部地域は、都市化の進展に伴う水需要の増大から、①送水能力の強化、②浄水場・送水幹線の事故や震災時の広域的なバックアップ機能の確保、③更新時期を迎える送水管の代替機能の確保が必要とされている。東京都水道局は、こうした課題を解決するため、平成9年より多摩丘陵幹線整備事業として工事を進めてきた。事業が完成すると、多摩南西地域への安定的な給水が確保され、既存の送水幹線の補修や更新工事が効率よく行えるという。

同現場の立坑の掘削工事で、当初予定のシールド発進の深さ(土被り17m)に、土質調査の時に確認できなかった巨礫(Max750×350)が見つかった。そのため、立坑をさらに4m深く掘り下げ、立坑の深さは24m。かなり深い。ここから直径2.6mのシールド機で延長3.4kmを掘削する。丘陵地帯の幾重にも重なる地層を下り勾配で貫き、到達点の地中接合で相手方のシールド機とドッキングする工法を採用。「現在、発信基地から1500mを掘進中ですが、カッタービットの摩耗など、難題が残っています。職員と作業員が一体となって、最後まで無事故・無災害で到達させたい」と川島所長は力強く語る。

不安全行動ゼロ宣言を掲示

「安全に時間と金を惜しむな!」

同作業所の川島所長は、災害ゼロをッ製するべく、次のような「不安全行動ゼロ宣言」を掲げ、周知徹底を図っている。

①親方(職長)・監督(職員)は、現場巡視時、決して不安全行動を見逃さず、その場で迅速に指導する。

②作業員同士(全協力会社)の声掛け運動を展開し、現場から不安全行動を排除する。

③安全設備に妥協はない!仕事を中止しても安全施設の維持・管理を行う。

「不安全行動があったとき、問題を先送りすると、現場内に『妥協→漫然』といった雰囲気や環境が生まれます。そうならないよう不安全行動を見つけたら、仕事をいったん止めさせ、その場で指導・是正し、確認するということを徹底させようというものです」と川島所長は語る。そのためにも、現場のコミュニケーションをよりよくしようと懸命だ。 

また、「工程、品質、利益は、すべて安全の上に成り立っています。『安全に時間と金を惜しむな!』をスローガンに掲げています」と語る川島所長の願いは、現場の随所に反映されている。

まず、「命の籠」と名づけられた二重の墜落防止措置。クレーン作業で支障となる手すりを改良したもので、間口部際での手すりの取り外し作業の危険を回避するため、スライドゲートに改造した。 

「開口部付近で作業を行うときは、手すり端部に安全帯をかけるルールになっていますが、ゲート開閉作業がほんの短い時間で終わるので、万一、安全帯をかけないで作業してしまったら……という危険性を考慮して、直下に転落防止の養生枠を取り付けました」と藤田敏治課長は説明する。

もう一つは、立坑下坑口部に取り付けた通称「フラッシュサイレン」だ。24mもの深さがある立抗の上部のクレーン作業中、もし落下物があったら重大災害につながる。したがって、クレーン作業中は、開口部直下は、立ち入り禁止にしなければならない。立坑上下間には、警報ブザーや退避アナウンスや回転灯は設置されている。しかし、狭いトンネル内を腰をかがめて長時間歩いてきた作業員が、坑口の手前で警報アナウンスがあったとしても、すぐ気づくことができるだろうか? 少しでも早くトンネルから抜け出て腰を伸ばしたくなるのではないか? そう感じた同現場では、対策として、トンネル坑口内に、はっきり目に付く点滅式の回転ライト(フラッシュサイレン)を取り付けた。あわせて、トンネル坑口の先に、腰を伸ばしてもらえるようにと、「ぶら下がり棒」も設置した。

KY活動マンネリ防止に

職長会活動を積極的に展開

作業が順調に進むに従い、繰り返し作業が中心のシールド工事は、日々のKY活動が、どうしてもマンネリ化してしまう傾向がある。そこでマンネリ防止に活躍するのが、職長会活動である。現在、シールド掘削班、残土運搬班、仮設電気班、セグメントシール班、ガードマンの計5班(5名)で構成され、隔週金曜日にミーティングを行っている。

これまでの主な活動は、次ぎのとおり。

    目で確かめる安全帯機能

これは、シールド発信前の高所作業を行う仮設備関係の施工時期に行ったものである。高所作業では、墜落・転落災害防止のために安全帯を使用するが、安全帯のフックをより高い位置に掛けなければ墜落した際の衝撃が大きく、内臓破裂の危険性もある。職長会では、「実際に人に見立てたハリボテを使って、その衝撃を実感してもらおう!」と体験実験を行った。安全帯を腰より低い位置に掛けてハリボテを落とすと、その衝撃は大きく、安全帯のフックは変形した。以来、作業員の安全意識は高まり、KY活動において、「安全帯を使う」のみにとどまらず、「フックは腰より上の高さに掛ける」というルールが新たに加えられた。

    安全標語の募集

年度ごとにJV職員や協力業者全員から標語を募集し、全員が審査員となって優秀作品を決定。優秀作は現場内に掲示。

    顔写真入り入坑表示札

コミュニケーションを図るうえで、顔写真の表示はとても役立っている。

現場のイメージアップのため

地域のボランティアにも参加

工事を円滑に進めるには、近隣住民の理解を得ることが重要だ。そのため、さまざまな工夫や努力を行っている。

●イメージアップ……看板発信基地のハウスに、東京都水道局の「東京水」のイメージ看板を掲示。加えて、地名である「鑓水」のいわれをイメージさせる看板も設置し、親近感を持ってもらえるよう努めている。

●現場見学会とAED講習会……シールド発進前に、立坑下にセットされたシールド機を中心にした見学会を開催し、近隣マンションの100名が来場。また、現場見学会とあわせて、講師を招きAEDの使用方法の講習会も開催し好評を得た。自由民が緊急時に利用できるようハウス外壁に設置場所の案内図を掲示した。

●川島所長の地域ボランティア活動への参加……毎週金曜日の朝30分間、現場周辺の清掃作業を行っている。所用でなかなか参加できない川島所長はじめ職員数人は、地域ボランティア活動として、昨年9月より、八王子市、稲城市、府中市主催の多摩川清掃に積極的に参加している。

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2009/04/30

プロロジスパーク座間I新築工事

「そら」2009年3月号 現場拝見 第12回

プロロジスパーク座間I新築工事

設計・施工/(株)フジタ横浜支店

広大な倉庫スペースを確保し

大量かつ迅速な荷の積み卸しが可能に

周辺を小田急線と東急田園都市線、相鉄線が走り、国道246号線や東名高速道路が走るなど、首都圏エリアはじめ、神奈川・東海エリアへの交通アクセスが便利な、陸上輸送の拠点として恵まれた立地にある神奈川座間市にマルチテナント型物流施設「プロロジスパーク座間I」の新築工事が進行中だ。

同現場は、敷地面積約6万㎡、延床面積約14万㎡を有し、鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)5階建40フィートコンテナトレーラーが各階に直接乗り入れができるよう大型ランプウェイ2基(上り専用・下り専用)を備え、約190台分のトラックバースと約350台分の屋上駐車場を整備するなど、大量かつ迅速な荷の積み卸しが可能となる。1フロアー当たり約2万4,000㎡の広さを確保し、倉庫内はテナントのニーズに応じて4分割することもできる設計となっている。 

免震システムとPcaPC工法を

組み合わせた免震PcaPC構造を採用

構造は、作業者および荷物の安全を確保できる地震に強い施工法を検討した。

「物流施設専門の不動産開発会社プロロジスが、特許を持つ杭頭免震工法を採用しています。建物と基礎の間に免震装置を設け、大地震の際、積層ゴムが変形し、建物がゆっくり平行に揺れることで、地震力を吸収して、地震の揺れを一般構造と比べ3分の1から10分の1に大幅に減らすことが可能です」と武石宏所長は現場を案内しながら説明する。随行する工事担当の鈴木泉さんは、2008年入社の新入社員だ。

阪神大震災級の震度7の地震発生時にも、建物はほとんどダメージを受けないという。施設内で働く作業者の安全を確保し、保管物の荷崩れや破損などのリスクもほとんどない。先進の大型物流施設といえそうだ。

また、免震工法とプレキャスト・プレストレスト鉄筋コンクリート工法(PcaPC工法)を組み合わせた最新技術「免震PcaPC構造」の採用で、より高い耐震性能を発揮した。

PcaPC工法とは、柱と梁部材をあらかじめ工場でプレキャスト化(Pca)し、現場で建方したのちに、PC鋼棒やPC鋼線を用いて締め付け、柱と梁の一体化を図るPC圧着工法を採用するというもの。

免震PCaPC構造の採用により、高品質はもちろん、工期の短縮、騒音の低減、産業廃棄物の極少化、工事の省力化、さらに高強度コンクリートによる耐力性・耐久性もアップする。高強度コンクリートの床は、大型トラックや重量物を運ぶフォークリフトの走行による変形やひび割れが、鉄骨造の建物に比べ少ない。構造体の剛性(硬さ)が高く、建物の劣化が少ないため、100年以上持続する建築物の実現も可能だという。

「団結・責任感・率先垂範」

不安全行動は見逃さない!

武石所長は、「所長方針」として、次の3つ掲げている。

    団結……強調と和、職長会の推進と活性化、無事故無災害を目指す

    責任感……決めた事は守る・守らせる、己の益より会社の益

    率先垂範……常に先を見、手本を示す

「『なんでも話せて、毎日のびのびとやれる雰囲気づくりを皆で協力し合ってつくろう!』ということです。作業員1人ひとりの気持ちに配慮して、シャワー室を設置してほしいといった要望にも素早く対応するよう努めています。そのため、『所長のためだったら何でもやるよ』といってくれるムードがあります」と武石所長。

また、作業所安全管理方針として、「危険に対する感性を高め、事前に摘み取ろう 危険の芽」をスローガンにしている。

さらに、「工事安全衛生目標」として次の4つを挙げ、周知徹底を図っている。

①重点管理指定工種作業は、事前にミニ施工会議を開催し、当該工種に伴う危険源および実施対策事項を徹底追及し、「災害ゼロ」を目指す

②すべての作業における現地での危険予知活動実施率100%を徹底追及し、決めた事、決められた事を守り!守らせる!風土醸成を目指す

③不安全な行動やルール無視は、決して見逃さず、その場で是正指導を行い、作業所規律・安全風土の維持を徹底追求する

「現場には、絶対安全といえるような場所はありません。大切なのは、『自分の安全は自分が守る』という気持ちを各自がしっかり持つことです。みんながやっているからいいやという、ヒューマンエラーが一番怖い。急がば回れで、決められた事をきちんと守り抜くこと。それが大切です」と所長は強調する。

「自分の安全は自分が守る」

特別教育や救助訓練で安全意識を高揚

武石所長の『自分の安全は自分が守る』という教えは、職長会に浸透し、次の安全衛生活動計画にも反映されている。

    朝礼・安全ミーティング・KYKの自主運営

    職長会パトロールの実施ならびにパトロール結果の集計と改善(毎週水曜日午前10時から実施)

    詰所・トイレ・駐車場などの保守管理と一斉清掃の清掃分担など、良好な環境の維持・整備

    関係職長および作業員の連絡調整スピードの向上

    職長会主導による工区別責任者の選任(工区マスター管理の周知徹底)

危険・有害業務に従事する者については、法令上、特別教育の実施が義務づけられていることから、同現場では、酸素欠乏危険作業、フォークリフト作業、高所作業車作業、研削砥石取替え作業に就く者を対象に特別教育を実施している。

また、万一の災害発生時に備え、あわてずに行動できるよう、全国安全衛生週間や全国労働衛生期間中に、緊急時の救助訓練、遭難訓練、消化訓練といった「安全衛生訓練」を行い、職長および作業員の安全意識の向上に努めている。

「建物の共用棟には、レストラン、託児所、休憩所、オフィススペースなども設けます。周辺環境の整備も図り、緑化や歩道の拡幅なども行います。南側の市道沿いは、歩道として整備して市に提供することになっています。20095月竣工に向け、人と環境に優しい施設の実現をめざし、『己の益より会社の益』という言葉を忘れずに全力で安全施工に取り組んでいきたい」と武石所長は意気込みを語った。

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2009/02/01

横浜環状北線トンネル・立杭工事及び長島大竹線高架橋下部工事(仮称)

「そら」2009年1月号 現場拝見  第11回施工/五洋建設(株)

TRDやGSTなどの最新工法で高精度の掘削が可能に!

2002年サッカーワールドカップ決勝戦が開かれた日産スタジアムを臨む横浜市港北区北新横浜。鶴見川に架かる新横浜大橋から亀甲橋に至るあたりで、横浜環状北線トンネル(以下「北線」という)の出入口付近の開削トンネル、シールド発進立杭および新横浜換気所の土留工、横浜市都市計画道路長島大竹線のRC橋脚、橋台、擁壁の築造工事が進行中だ。北線は、横浜市の交通ネットワークの骨格を形成する横浜環状道路の北側区間に当たる。第三京浜道路の港北インターチェンジから、首都高速道路横浜羽田空港線の生麦ジャンクションをつなぐ自動車専用道路。全体の約7割がトンネル構造となる。現在、北線の出入口は、シールドマシンを下ろすための発進立坑が行われている。開削トンネルの土留壁は、地下水圧による掘削底面の「盤ぶくれ」を防止するため、止水性に優れたTRD地中連続壁を地表から44~50mの深さまで打設する。「盤ぶくれ」とは、地盤を掘削したときに掘削底面の地盤が、地下水圧によって持ち上げられる現象のこと。これが発生すると、掘削底面に亀裂が生じ、土砂.を伴った地下水が掘削溝内に噴出し、土留壁の倒壊、周辺地盤.の沈下などの重大災害を誘発することもあるという。「TRD工法」とは、地中に建て込んだチェーンソー状のカッターポストとカッターチェーンを一気に横方向に移動させ、溝状に掘削した原地盤土砂とカッターポスト下端部からセメントスラリを攪拌しながら、ソイルセメントの地中連続壁を施工する工法をいう。また、終端部の遮水壁は、約50mの深さとなるため、GST工法(SMW工法の施工精度を向上させた工法)を採用。これにより、削孔時に、GST掘削機の先端位置をリアルタイムに自動計測・制御できるため、高精度の連続地中壁の施工が可能となった。従来のSMW工法にくらべ、土留壁の削孔精度が300分の1以上に向上した。「発進立坑の土留壁は、土砂が崩れないよう強固な壁にするため、止水性と鋼性に優れた泥土モルタル地中連続壁を採用しました。地下水位や地盤変位を計測し、周辺に影響がないことを確認しながら施工しています」と伊藤文彦所長は語る。「泥土モルタル地中連続壁工法」とは、水平多軸式壁掘削機を用いて、高精度の土留壁を造る工法で、壁体材料に泥土モルタルを使用し、周辺地盤の沈下を抑える。ちなみに、北線のトンネルが通過する地層を事前に調査した結果、ほぼ全線にわたり、上総層群という非常に硬い地層であることが判明。したがって、北線の工事は、全体的に地盤の堅固な深い位置に計画し、最も地盤沈下を抑制できるシールド工法が採用された。そのため、地盤沈下の心配は少ないといわれている。さらに、新横浜大橋につながる長島大竹線の橋脚は、ケコム工法で施工する。これは、橋脚基礎下部に気密な作業室を設置し、ケーシング(鋼製の筒)を回転・圧入させながら、掘削・沈設後、鉄筋コンクリートを打設することによって、場所打ち杭を築造するもの。ケーシング内の土砂は、油圧グラブを用いて掘削・搬出する。低騒音・低振動型の堀削機を使用するため、周辺環境に優しい工法であるといえる。

「安全五箇条」を基本方針に掲げ自分勝手な行動を戒める

工事用車両については、現場周辺が通学路であるため、搬出・入時間を制限。特に、ダンプトラックについては走行ルートを決めているとともに、荷台にシートを被せたり、工事用道路や出入口付近に散水したりして、土砂の飛散防止に努めている。「当工事の進捗も約25%となりました。これまでは、連壁工事がメインでしたが、いよいよ掘削、土留支保工が中心です。職員の人数も限られているので、細かなところまで目の行き届かないこともあるかもしれませんが、職長会の皆さんの協力で、安全面についてもより引き締めて取り組んでいきたいと思っています」(伊藤所長)。伊藤署長は、安全五箇条として、一、 近道せず二、 省略せず三、 憶測で行動せず四、 急がず慌てず五、 周囲の注意を怠らずを挙げ、安全を無視して自分勝手な行動をとることを戒めている。「常に余裕を持って仕事をすることが大切です。事故を起こしては何にもなりません」と強調する。さらに、現場のスローガンとして、「重機災害の防止、墜落転落災害の防止、飛来落下災害の防止」という3つを掲げる。クレーンが倒れる、重機の旋回時に作業員がはさまれる、杭打ち機に巻き込まれる、H鋼が落下するなど、工程ごとの危険性を予測し、それを除去するための具体的な対策(クレーンのつり荷の下への立入禁止、監視の徹底、重機の作業半径への立入禁止など)を立てている。すなわち、リスクアセスメントを実施し、作業所に潜む労働災害の芽を事前に摘み取るよう努めているのである。職長会の野上雅人会長(産興建設)と雨宮信太郎副会長(野本建設)も、毎週水曜日に職長会による安全パトロールを行い、危険要因の除去に神経をとがらせる。

近隣住民に配慮した環境美化運動にも取り組む

同現場では、周辺環境にも気を配り、仮囲いは白色板を基調とし、部分的に透明板を採用することによって、施工状況が見られるよう工夫している。また、斜面を覆うシートも、従来のブルーシートではなく、土面になじむブラウンシートを採用するなど、周囲との調和を図っている。また、定期的に道路清掃や土手の草刈などの奉仕作業も行っている。注目されている現場だけに、市関係者などの見学者も絶えない。工学部の大学生100人を招いて、(社)日本土木工業協会主催の「100万人の市民見学会」も開催し、好評を得た。「安全は1人ひとりが守らないと達成できません。より仲間意識を強め、これからも助け合って、基本ルールの徹底と確認を励行していきます」と静かに語る伊藤所長。強固な意志とあたたかな人柄が伝わってきた。

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2009/01/02

富士見二丁目北部地区第一種市街地再開発事業ビル築工事(仮称)

「そら」2008年11月号 現場拝見  第10回

施工/大成建設(株)東京支店

千代田区の超高層マンション

新たなランドマークとして注目集める

JR総武・中央線、東京メトロ有楽町・東西・南北線、都営大江戸線など、交通アクセスに優れた飯田橋駅から徒歩2分。千代田区富士見2丁目に、地上38階建て414戸の住居棟と地上17階建ての業務棟が建設中だ。

明治時代、このあたりの高台から、富士山を臨むことができたことから、富士見と呼ばれるようなった。この現場一帯は、20年近く前から、再開発計画が進められてきた。その中核を形成する超高層マンション「プラウドタワー千代田富士見」は、千代田区の新たなランドマークと注目されている。

建物は、鉄筋コンクリート造。基礎構造は深杭と地盤改良による直接基礎の2方式。コンクリートの設計基準強度は、30~100N/mm2。建物の上部躯体に、3種類の制震装置が併用され、さまざまな周期の揺れに対応できる。

「あわてず、ゆっくり、ていねいに!」

飽くなき無事故無災害の追求

さる7月3日、全国安全週間行事の一環として、大成建設の山内隆司社長による現場巡視が行われた。「職長会をはじめ、みなさんの協力で、おかげさまで大変高い評価を戴きました」と平田尚久作業所長は語る。所長の隣で大きくうなずくのは、職長会の早川伸夫会長

所長スローガンは、「近隣にはいつもやさしい気持ちで!」。都会の真ん中での大工事。地域住民とのコミュニレーションは必要不可欠だ。さらに、「あわてず、ゆっくり、ていねいに!」をモットーに、具体的な施策として、次の4点を挙げる。

        落ちない 

墜落する恐れのある高所作業時は、安全帯のダブル使用で身を守り、垂直・水平部の開口部を作らない。

        はさまれない

重機まわりの立入禁止に入らない。機械を扱うときのルールを守る。

        倒さない

足場や仮囲いの点検を毎日確実に行う。とくに重機の足元の確認を徹底する。

        飛ばさない、落とさない

整理整頓をして、物を存置させない。養生にすき間を作らない。

「この現場の重点目標は、『絶対に人を落とさない、物を落とさない』です」と平田所長は強調する。住居棟の最上階は138mに達する。万一、この高さから物が落ちて人に当たったら即死だ。落下物が跳ね、すぐ横のJRの線路に入ったら大変なことになる。

「無事故無災害を目指し、工程より安全優先で作業すること、人命を優先することはいうまでもありません。予定どおり作業が進まないとイライラして強引に進めたときが一番危ない。事故が起こったら、何にもなりません」。目標は、飽くなき無事故無災害の追求だ。

「作業に取りかかる前に、職長はじめみんなで段取り等を知っているか確認し合い、1人で勝手に行わないことが大切です。重大事故が起きたとき、職員も社員も知らなかったというケースもありますから」

規律と緊張感のある空気を保つため、作業員、特に新規入場者には礼儀とマナーの遵守を周知徹底している。きちんと挨拶をする、道具を大切に扱う、時間と約束を守る、きちんと片づけと整理整頓をする、いつも清潔にして健康管理をする。新規入場者は識別しやすいように、保護帽にシールを貼らせている(7日間着用)

自己管理ができる人は、事故を起こさない、というのが平田所長の持論だ。「まず、1人ひとりが、自分の身は自分で守り、事故を絶対起こさないという強い意志を持つことが大切です」と強調する。

 さらに、作業前の朝礼・昼礼による安全意識の向上(朝礼時には危険予知瞑想を行い、どこに危険が潜んでいるか、どんな危険が予想されるか考えさせる)、現地KY(危険予知)による作業手順の確認と周知、安全パトロールによる作業環境の安全確認などで、現場の緊張感を持続するよう努めている。現地KYでは、「手すりよし、ネットよし、電動工具よし」と指差し呼称をする。玉掛けワイヤーの点検、道路の凸凹による歩行者の転倒注意、ゲート前での一時停止の厳守、仮囲い周辺の点検、解体工事の粉塵防止対策など、神経を尖らせながら、毎日、現場ルールを遵守するよう指導に当たっている。

作業員一人ひとりが知恵と感性を磨き

危険を摘み取ることが大切

「どこが危険なのか、何が危険なのか、といったことを過去の事故例を通して常に学ぶことで、作業員1人ひとりが、知識と知恵と感性を磨き、危険の芽を摘み取ること、それが大切です」と鈴木所長は指摘する。

「住居棟は、5日サイクルで順調に工事が進んでいますが、繰り返し作業に馴れて、できているはず、やっているはずという思い込みは、思わぬ落とし穴があります。必ず自分の目で安全を確認し、決して手抜きをしないで、次のステップに進むように職長を通じて指導しています」

平田所長は災害をなくすため、自分一人だけでなく、仲間の命も大切にすること、仕事に対して謙虚であることを心がけるよう朝礼で作業員に呼びかけている。

「仲間からケガ人を出さないよう、やってはいけないことはやらない。自分の力を過信しないで、手抜きをしたり、早まったり、慌てたりしない。初心を大切に、職員と職長会が一致団結、力を合わせて、安全意識を高め、工事中の災害ゼロを誓っています」。

所長のお話から、プロ中のプロ集団であるという誇りと自覚と緊張感が伝わってくる。「あわてず、ゆっくり、ていねいに!」と私も口の中で繰り返す。迷ったら、作業手順を見直し、心のスキがないかきちんと確認すること。心のスキが事故につながるのだ。

「私は、この作業所から誰一人としてケガ人や病人を出したくありません。尊い命です。自分の体を大切に、具合の悪いときは、無理をしないで、職長や仲間に伝えて休息ほしい。今月も無事故で、そして元気に作業をしてほしい」。穏やかで、そして毅然とした平田所長の言葉が印象に残った。

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2008/11/01

(仮称)豊洲3丁目8-4街区計画築工事

「そら」2008年9月号 現場拝見  第9回

(仮称)豊洲3丁目8-4街区計画築工事 竹中工務店

独自のチューブ架橋と制震技術を採用

耐震性に優れた超高層マンションを実現

東京都江東区豊洲の運河に沿ったエリアは、超高層マンションを中心とする開発がいくつも進められ、大きな変貌を遂げている。もともと豊洲は、関東大震災の瓦礫で埋め立てられた埋立地。昭和12年、将来の発展を願い、豊かな土地になるように「豊洲」と名づけられた。

その後、石川島播磨重工業(IHI)などの工場が立ち並ぶ工業地として発展。現在、IHIの工場跡地は、ショッピングモールとして賑わっている。

 豊洲の再開発は、2001年に始まった。住宅を中心に教育・医療・商業機能も配した魅力的な文化都市を目指し、大規模な開発が進んでいる。この豊洲3丁目8-4街区に、RC造地下1階・地上44階建ての超高層マンションが建設中だ。延床面積は約10万㎡、2007年10月着工、10年3月完成予定。

建物の基本構造は、同社が独自に開発した、住戸内の梁をなくし、さまざまな住戸プランを可能にするチューブ型の架構法「スーパー・フレックスチューブR」を採用。これは、連続的に配置した柱とそれをつなぐ梁で構成されるチューブ型の立体的な架構法で、コア共用部に竹中式制震間柱を込みこむことにより、振動時のエネルギーを吸収し、揺れを抑える制震機能を果たす。

チューブ架構と制震構造を組み合わせることによって、住戸内や共用部に梁がなく、さまざまな住戸ニ−ズに対応可能な、快適な住宅を実現できる。また、地震の時でも振動、建物の損壊を最小限に抑えられる。

さらに、コンクリート1m2当り約800トンにも最大耐えられる高強度・高耐火の「AFRコンクリートR」も採用。

このように、同社独自の最新の工法・制震技術を採用することにより、耐震性にも優れた超高層マンションを実現している。

「当プロジェクトは、この地域で最後に計画された超高層マンションとして、注目を集めています。超高層マンションの建設とともに、敷地に面した豊洲運河沿いを住民の方以外のみなさんも楽しめる散策路として整備します。緑豊かな街づくりに携わることに大きな誇り持ち、1人ひとりに豊かな思い出が残る職場となるよう、一丸となって日々の作業に頑張っています」と澁田所長は、完成予想図を示しながら語る。

それを見ると、垂直方向へ伸び上がる建物はスタイリッシュで、運河沿いの青空を映してきらめく壁面は、豊洲の新たなシンボル・タワーとしての存在感を漂わす。同時に、未来都市・豊洲のさらなる進化を予感させる。

「豊かな思い出」づくりに

リーダー会とともに取り組む

澁田所長の所長方針は、①全工期無事故無災害を達成する、②品質重視の姿勢を貫き、適正品質を確保してお客さまの信頼を得る、③工期を厳守し、お客さまに満足される建物を確保させる、④創意工夫によりムダ・ムリ・ムラを排除し、生産性向上に努める、⑤建設副産物の資源循環・発生抑制を推進するリサイクル率の向上により、環境保全活動を推進する、⑥思いやりの精神で、明るく、元気な職場環境をつくる、という6項目。

「当作業所で働く皆さんは、お互いを思いやる、やさしい精神をいつも持ってもらいたいですね。そして、明るく元気な職場環境を共につくりあげたい。豊かな豊洲の街を作る私たちの心の中にも、豊かな思い出がたくさん残る、そんな作業所になるよう願っています」

 澁田所長のいう「豊かな思い出」づくりを支えるため、「リーダー会」の車輌・広報委員会は、壁新聞「ニュースステーション豊洲」を今年創刊した。

その紙面で、書記の鈴木慶妃さんは、「リーダー会はみんなのための、みんなで作る、みんなで育てる組織です。明るく楽しく働きやすい職場を作っていきましょう」と述べている。

宮原輝夫会長も、「整理整頓・清潔で働きやすい職場、みんなで協力し、明るく、楽しく、風通しのよい職場作りを目指して活動していきましょう」と訴えている。

5月発行の第2号は、「躯体1階立ち上がる!」という特集号。杭工事から躯体工事で活躍した、鍛冶・鉄筋・大工・とび・重機の作業者たちを業者ごとに写真入で紹介している。「技術のトーセツ」「熟練の墨田」「情熱の福山」「忍耐の東京重機」「不屈の藤井」「革新のビルド」「団結の共英」と、社名につけた二文字がユニーク。それにしてもなぜ、「忍耐の東京重機」なのだろうか?

「重機のオペレーターには、『先に自分たちの資材を吊り上げてほしい』など、業者の要望が集中します。そうした声を受け止めるオペレーターさんはなかなか大変なんです」と宮原会長。なるほど、それで「忍耐」の文字が付くのか。

埋立地のため、掘削に労力を費やした。澁田所長は、杭工事などに功績のあった縁の下の力持ち的存在の作業員を称えるため表彰状を贈った。1人ひとりに「豊かな思い出がたくさん残る作業所」にしたいという切なる願いが込められている。

こうした積み重ねが、明るく楽しい、働きやすい現場をつくり、だからこそ無事故無災害も達成できる、という強い信念が感じられる。

車輌・広報委員会の遠藤茂委員長は、警備員として毎日、現場入口に立つ。純朴な遠藤さんは、小学校の通学路に面する「現場の顔」。今ではすっかり小学生の人気者だ。

全国安全週間準備期間と安全週間中に、所内で募集した安全標語を短冊に記し、七夕の竹に吊り下げて作業所入口に飾った。それを目にした小学生の女の子から「私も短冊に願いごとを書きたい」と声をかけられた。遠藤さんが喜んで色紙を渡すと、「こうじがうまくいきますように」と記してくれた。この言葉に感動した所員は、女の子の小学校にお礼に伺ったという。

近隣の小学生との心温まる交流。「豊かな思い出」の1つとして、作業所で働く1人ひとりの心にしっかり刻まれている。小学生のメッセージ入りの七夕飾りは、「安全は『おかえりなさい』の笑顔まで」などの作業員たちの安全標語と一緒に、今も仮設通路を彩り、作業員はもとより、来訪者の心にやすらぎを与えている。 

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2008/09/01

多摩広域基幹病院(仮称)及び小児総合医療センター(仮称)整備等事業

「そら」2008年7月号

現場拝見 第8回  清水建設

施設の建設だけでなく、医療福祉事業の

運営自体に関わる医療PFI

東京都府中市武蔵野台。現在の都立府中病院のあたりは、約5万年前の旧石器時代の武蔵台遺跡が出たところである。ここで今、日本最大規模の病院PFTの建設が行われている。

これは、清水建設が主体となって設立した特別目的会社(SPC)多摩医療PFIによる事業で、現在の府中病院を「多摩広域基幹病院」として、また、現在の都立清瀬小児、八王子小児、梅ヶ丘の3つの病院を移転・統合し、「小児総合医療センター」として、2つの病院を一体的に整備するというものである。

平成22年春にオープン後、多摩医療PFIが、37年3月までの約15年間、運営・維持管理業務にあたる。

ちなみに、PFIとは、公共事業を実施するための手法の1つ。地方公共団体が発注者となり、公共事業として行い、民間の資金と経営能力・技術力などのノウハウを活用し、公共施設などの設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行うもの。正式名称は、Private Finance Initiative(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)といい、頭文字をとってPFIという。

清水建設の医療福祉施設に対する取り組みは、1985年に医療専門組織を立ち上げ以来、施設の建設だけでなく、医療福祉事業の運営自体に関してもノウハウを培ってきた。さらに、事業実施部署として、医療PFI事業推進部を立ち上げ、PFI事業にあたる組織体制を強化している。

この多摩医療PFIも、各種委託業務の統括・経営支援、建物設備の保守管理・警備などの維持管理、医療事務・洗濯・給食・清掃などの医療関連サービス、そして医療器械・薬品などの調達まで、多岐にわたっている。

所長の安全スローガン「念仏と完結」で三現主義を徹底

施設は、病院棟、宿舎棟、駐車場などから構成され、病院棟は、約53,000m2の敷地に建設。延べ床面積は12万9715㎡。地下1階・地上11階の鉄筋コンクリート造一部鉄骨造で免震構造。病床数は1350床。

平成19年春に着工し、平成21年9月竣工の予定だから、工期は27ヶ月にも及ぶ。そのため、「いかに工業化・システム化を取り入れるかがポイントです。当社の総合力を発揮する非常に良い機会だと張り切っています」と水田保雄建設所長は語る。

また、「業務には、品質、原価、工期、安全、環境が挙げられますが、やはり安全について第一に考えるべきです。万一事故を出してしまったら、いくら品質が良くても、早くできたとしても、お客さまの満足は得られません」。さらに、「施工管理のうえで、ポリシーを持つことは大切ですが、とくに安全管理については確固たる方針が必要です。絶対に事故を起こさないため、誰が、何を、どのようにやるのか、明確な方針が必要です」と強調する。

 そこで水田所長は、現場の安全管理について、すべての作業員に『念仏と完結』というキーワードを徹底させています」

「えっ?『念仏と完結』ですか」と、思わず私は問い返していた。

「『念仏』というのは、当作業所のスローガンである『点検・確認・危険予知』を常に念仏のように復唱し、実践することによって、自然と危険予知ができるようになり、安全に作業が進めることができます」

 ああ、なるほど。要は「点検・確認・危険予知」という3つを肝に銘じるということである。

「『完結』とは、中途半端で作業をしない、ということです。何事も『100%安全だ』と確信したうえで行うこと。そのためには三現主義で徹底的に確認して作業をすることです」

三現主義とは、現場、現物、現実という三つの「現」を重視すること。問題が発生したとき、机上で判断するのではなく、実際に現場に行き、現実を確認することで対策を立て、解決を図る。机上の空論ではなく、現場でこそ、より正しい判断を下すことができるという、品質管理の原則である。

「日頃の安全管理で、最も有効なことは、やはり安全パトロールだと思います。作業所と協力会社、職長会が協力し合って、隙間のないパトロールを行うことにより、安全管理はより向上すると確信しています」と胸を張る。

職長会のスローガン「すぐやる、

必ずやる、できるまでやる」

 職長会の名称は「武蔵会」。水田所長の「念仏と完結」を受けて、職長会のスローガンは、「すぐやる、必ずやる、できるまでやるを掲げる。 

34歳と若い永田康二会長を中心に、安全委員会の岩崎雅哉副委員長、衛生委員会の松山助一さん、環境委員会の長尾庸行さん、詰所委員会の中村千広さん、駐車委員会の柴義巳副会長、顧問・会計の小田孝夫さんと牟田靖さん、書記の梅田和司さんというみなさん。不安全行動を防止する「声かけリーダー」として、それぞれ、よく目立つ赤いヘルメットに赤い腕章を付けている。

 委員会ごとに、「吊り荷の下に人を入れない、入らない」(安全)、「照明はこまめに消しましょう」(衛生)、「リサイクルヤードの整理整頓、正しい分別の指導」(環境)、「こまめに消灯、身近なエコロジー」(詰所)といった目標を掲げている。

 職長会では、毎週の安全パトロールはもちろん、毎朝、最寄り駅の西国分寺駅から現場までのルートの各所に立って、入場する作業員の誘導、現場の周囲の清掃・草むしりなどに精を出す。

とくに、元請職員と職長会メンバー総出で、現場をいろどる数十個のプランターの花の植え替えを行っている。その様子は、「心優しき男たち」と評され、近くの学校からお礼のことばも届いたとか。「喜んでもらえると、うれしいですね」と永田会長はいう。

同現場は、これからがピーク。毎日10人以上の新規入場者を迎えるとともに、最大2000人の作業員が働くことになる。

「作業員のみなさんも、安全についていろいろ考え、注意をしていると思いますが、絶対に事故を起こさないという気持ちをいつも忘れないで、業務を遂行してほしいですね。暑い日が続きますが、健康には十分注意して、『念仏と完結』、これを忘れないでほしいと思います」と水田所長は、柔和な顔を引き締めた。

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2008/06/30

JV晴海新築工事作業所(仮称)

「そら」2008年5月号 現場拝見 第7回

JV晴海新築工事作業所(仮称)

長谷工 コーポレーション

最新の注目スポット・晴海にスタイリッシュなマンション建設中

東京都中央区晴海。最寄り駅は、都営大江戸線勝どき駅。都心のベイエリアは、これまで、豊洲や月島などの開発が話題をさらっているが、ここ晴海地区は、最新の注目スポット。周辺は開発が進み、道路も碁盤の目のように整備されてきている。開発計画ごとの敷地面積も比較的広いといった条件がそろっている。

晴海5丁目に、SRC造地下1階地上20階建てのマンションが建築中だ。建設敷地は、朝潮運河に沿いに位置し、東西に長い。敷地面積は、約1万2000㎡。その敷地の両側を朝潮小橋という橋が縦断している。朝潮小橋を境に東西に分かれ、西(W)敷地には438戸と378戸の住宅棟と10階建ての自走式駐車場(448)、東(E)敷地には378戸の住宅棟とタワーパーキング(100)が計画されている。

白と黒を基調としたスタイリッシュな外観デザインの住宅棟、水景施設を取り入れた中庭、地球温暖化防止のための屋上庭園や屋上緑化などが予定されている。2009年2月完成予定。

建設地の北側境界から朝潮運河の護岸までの距離がわずか10m程度と隣接している。そのため、「港湾法による規制もあり、場面場面で港湾局や関係官庁との調整が必要です。また、深層地盤改良杭、山留め工事、根ぎり工事などの基礎工事における止水、土留め、孔壁の崩れ防止などの配慮が必要で、敷地内の水位や掘削部周辺の土圧・変位などを常時測定する必要がありました」と荻原和博所長は語る。

配慮は施工だけにとどまらない。高潮対策のため、敷地廻りに3mの擁壁を設け、完成時の地盤は、現状より3m高く設計されている。

当たり前のことを当たり前にやる それが安全のために最も大切

荻原所長は、「建設部門のモットーである『信頼の品質を、心をこめてお客様へ』が、設計施工にたずさわる長谷工コーポレーション全員の共通の認識になっています」と力強く語る。「すべてにおいて安全が最優先される」ことを基本方針に掲げ、決して妥協を許さない姿勢を貫く。

「絶対に危険を見過ごさない。悪いものは即是正し、常に安全を確保して作業を進めるといった強い意志を持つことが大切です。そして、作業前に、何が危険か、どうすれば安全かを考えること(リスクアセスメントの実施)。ときには、一生懸命のあまり、周りを見失って、間違いを起こしてしまうことがあるかもしれない。それを避けるためにも、やらなければならないことは絶対に行い、やってはならないことは、絶対にやらない」

当たり前のことを当たり前にやること、それが最も単純で、最も大切ことなんだと、所員や作業員には言い聞かせている。

また、「常に成長し、自らのレベルアップを図る大切さも強調しています。常に問題意識を持つこと。なんにでも当事者意識を持って、『これで問題はないか?』と、日々新たにな気持ちで、自分のこととして受け止めて考えることが大切なんです」と強調する。

品質についても、「きれのいい仕事」「プロの目に耐えられる仕事」に徹するとともに、図面だけに頼らない、現場を重視した施工管理を心がけている。

「常に、エンドユーザーの立場で考えることが大切です」。それにより、アフタークレームをなくしていくことができるのである。

アットホームな雰囲気で 新規業者も溶け込める環境づくりに励む

職長会は、「シーサイドはるみ職長会」という名称で活発に活動している。

500人前後の職人さんが働いていますが、堅苦しくないアットホームな雰囲気で、新しい職人さんもすぐ現場に溶け込める環境をつくっています」と盛田英幹主任は語る。

シーサイドはるみ職長会は、「安全」「美化」「分別・環境」「駐車場」の4つの専門委員会に分かれ、それぞれ積極的な活動を展開している。

「安全委員会」は、毎日の安全確保のため、現場点検を実施。毎週火曜日には、「グットジョブパトロール」を行い、工程の打ち合わせの際に、他の模範となるようなよい仕事、よりよい現場の環境についても発表し、お互いの向上心を刺激し合っている。

「美化委員会」は、清掃道具を管理し、一斉清掃の運営を行っている。毎週火曜日と金曜日の午後に約30分間、一斉清掃を行い、清掃範囲の分担や清掃状況、出されるゴミの分別状況もチェックしている。

「分別・環境委員会」は、ゴミの分別管理、休憩所や仮設トイレの清掃・片付け状況の管理を実施している。

「駐車場委員会」は、入場してくる車輌の管理および駐車場の整備を行っている。

 このほか、職長会では、年2回、すべての作業員を集めて親睦会も開催。業種を超えてコミュニケーションを良くして、仕事上で必要な安全な声を掛け合い、前工程や後工程の業者間における細かい調整を行いやすい雰囲気づくりに一役買っている。

さらに、空き缶のプルトップを収集し、車椅子と交換する社会貢献活動も熱心に行っている。プルトップ8,000kg分を集めると車椅子1台になり、同社の全現場共通の活動となっている。

ここ晴海からは、変貌著しい東京を見渡すことができる。朝潮運河をはさんだ向かい側には、超高層マンションやスーパーマーケットからなる大規模再開発プロジェクトがある。湾内を行き交う船、羽田空港に離着陸する飛行機、お台場やレインボーブリッジも一望できる。

毎年8月の第2土曜日に開催され、60万人以上の観客が詰めかける東京湾大華火祭。その打ち上げ場所は、この現場のすぐ近くである。周辺の混雑をよそに、ゆっくりマンションから見物できなんて、それこそ最高の癒し、ステータスなのだろうな、と思う。

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2008/04/30

中央雨水1号貯留幹線2工区

「そら」2008年3月号 現場拝見  第6回

中央雨水1号貯留幹線2工区

間・東洋・飛島・京葉工管建設共同企業体

シールド工事の防音ハウスが

一夜限りのライブハウスに

JR京葉線の千葉みなと駅前の一角に、「中央雨水1号貯留幹線2工区」のシールドマシンの発進基地がある。

千葉市中心部では都市化の進行とともに、大雨の時に雨水が地下に浸透しにくくなり、短時間で大量の雨水が下水道や河川に集中するようになった。近年、局地的集中豪雨が頻発しているが、降った雨が下水管に流れ込む割合は50%ほど。そのため、雨水の流出量が増大し、床下・床上の浸水被害も発生しやすくなっている。こうした問題を解決するため、平成17年10月から、地下に雨水を一時的に貯めるためのトンネルを建設中だ。

この雨水貯留管が整備されると、雨が下水管に流れ込む割合は20%アップし、雨で薄められた汚水が川や海へ放流される回数を半減させて、汚濁防止にも役立つという。

シールドマシンを稼動させるトンネル建設は、昼夜連続の作業のため、どうしても作業音がしてしまう。周辺の環境に配慮して、騒音や振動を極力カットするため、シールドマシンの発進基地は、巨大な「防音ハウス」で覆われている。

そのシールドの発進式を行った平成19年3月25日、この防音ハウスが一夜限りのライブハウスに変身した。山田貴子トリオによるジャズ演奏が、抽選で集まった230名の前で催されたのだ。防音ハウスでジャズライブとは、なんとも粋なはからい。心地よいジャズのビートとともに、みなさん防音効果も体験できたのでは?

見学した小学生から「ケガをしないで

がんばって」と感想文

作業基地となるシールドの発進立抗は、深さ38m。安全かつ迅速に昇降するため、エレベーターも配備されている。山口忠美所長(間)のご案内で、私は、地下38mにエレベーターで降り、泥水加圧式シールド工法の現場を見学させていただいた。

地盤の改良を省略するため、炭素繊維などで補強した新素材による土留壁をシールド機で直接切削している。これは、発進防護工、到達防護工と呼ばれる工法である。

トンネル工事は、目に見える部分が少ないため、その実態は一般にあまり知られていない。暗く狭い地中で、泥にまみれた壮絶な現場を想像するかもしれない。しかし、目の前に広がるトンネル内は、土砂もなくきれい。快適職場にも認定された現場は、毎日、たくさんの見学者が訪れる。工期内で2,000名を想定しているそうだ。幼稚園生と保護者が見学した際、現場をイメージして描いてもらったという壁面のイラストが、あたたかな雰囲気をつくっている。

「小学生の見学会のあと、ケガをしないで、がんばってくださいという感想文が寄せられました。所内全員が励まされるとともに気を引き締めることで、安全意識の向上にもつながりました」と山口所長は語る。

坑内には、50mごとに色を替えた蛍光灯が設置され、とても明るい。常に距離感を意識させるとともに、非常灯としても活用されている。従来は、個々に行っていたシールド掘進整備の運転と制御は、地上の中央制御室で、リアルタイムで集中管理されている。

山口所長は、この現場の前は、杜の都・仙台の広瀬川河畔で、シールド工法による電力洞道トンネル工事を担当されていたそうだ。

「シールド掘進とセグメント(コンクリートと鋼製の専用壁材)の組立作業という、昼夜連続の繰り返しで18ヶ月もの長期間にわたりトンネルを掘り進めています。

その間、約20,000回以上も立坑での荷役や資材搬送の作業があります。さらに、1日100台も場内を車両が通行して、残土の運搬や資材の搬出入に当たります。

長期間の繰り返し作業の馴れとマンネリ化による不安全行動や設備・機械類のトラブルの災害を防止するため、二重三重の安全対策をルール化し、遵守するよう日常的に安全衛生活動に取り組んでいます」と強調する。

所長自ら種から育てた四季折々の

草花で現場のイメージアップ

不安全行動災害の防止のため、安全掲示板は、だれが見てもはっかりわかるものを設置した。そして、所員の顔写真と行動目標や日々の進捗状況を明記した。

安全のための所長方針「作業所全員による安全意識の向上を図る」ため、①本工事特有の危険要因の摘出と対応策の完全実施。現場固有の安全基本ルールを設定し、完全に遵守させる、②教育・訓練による安全作業の充実と定着を図る。定例・特別教育、避難・消火・救護訓練等の実施、③コミュニケーションの充実を図る。JV職員・協力会社が一体となって快適な職場環境を目指す。

I S O所長方針「豊かな環境づくりに貢献する」ため、①ごみはリサイクル資源と廃棄物に分別し、処分する、②再生資源の利用や材料を余らせない工夫をし、資源を有効に活用する、③使用していない電気・照明はOFFにし、省エネに努める、④騒音・振動の発生を抑制するため環境手順を遵守し、作業を行う、⑤重機・車輌はアイドリングストップをし、温暖化防止に努める。

さらに「価値ある製品・サービスを提供する」として、次の5点を挙げている。①作業手順教育は全員が受講し、品質向上のため作業内容をよく理解する、②材料受入検査を実施し、合格した材料のみを使用する、③材料は置場を決めて識別・養生し、品質の維持と使用の間違いを防止する、④検査機器の点検・管理を実施し、適正な機器を使用する、⑤工程内検査を実施し、適合品を次工程へ引き渡す。

「遵守事項」は12か条。①いつもみんなに大きく元気な声で挨拶、②安全指示は具体的に、③高所作業は安全帯を着用でなく使用する、④決められた作業行動は必ず指差呼称で確認、⑤立坑の荷役は下部作業者の避難の確認後、開始する、⑥入坑時は全員トラチョッキを着用、⑦坑内の通行規準を遵守、⑧機械の点検時は元電源OFF・投入禁止札・施錠をする、⑨機械・設備の運転は取扱い責任者が行う(有資格者でも不可)、⑩玉掛ワイヤーはロック止めを使用(さしワイヤー不可)、⑪搬入資機材は所定の位置・置き方で整理、⑫搬出入車両は原則的に前進で入退場する(右折禁止)。

ガーデニングが趣味という山口所長は、現場のイメージアップのため、自ら種から育てた草花を防音ハウス前の花壇に植えている。山下寿弘さんを中心とする職長会も、水やりなど協力している。

「工事は、全体の61%の掘進を無事故で完了しています。残りも急カーブの施工や重要な構造物に近接するなど、困難なことが山積みしています。さらに安全整備の創意工夫をして、全工期の無災害記録達成に向け、作業所全員一丸となって臨みたいですね」。山口所長は力強く語った。

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2008/04/21

日本赤十字社医療センター建物建設工事

「そら」2008年1月号 現場拝見 第5回

日本赤十字社医療センター建物建設工事

施工/大林組

「命を守る病院をつくっている」

という使命を忘れてはならない

今回の建設現場は、東京・渋谷区の日赤広尾医療センター。広尾は、都内でも有数の高級住宅街として知られ、邸宅や高級マンションが多く見られる。

地下RC造3階・地上S造13階建て、延べ約8万2,000㎡の広さを誇る新しい医療センターは、病床数は670床。診療科目は、現行の24科から31科へ増えて、救命医療が充実する。工期は、2006年11月から11年3月まで。現在、駐車場などになる地下部分を掘削中だ。

昭和50年に建設された医療センターは、老朽化が著しく、現行の建築基準法(昭和56年改正)に定められている耐震性を備えていないため、関東地域での巨大地震が発生した場合、病院機能の停止というような事態も強く危惧されていた。

そこで、地域医療の使命を果たし、非常災害時には医療救護の拠点とするため、建物の全面改築となったわけである。

新たな医療センターの建設にあたって、免震構造を採用した。積層ゴムとダンパーで構成された免震装置を地盤と建物の間に設置することで、耐震安全性が大幅に向上する。

また、通常は670床だが、大規模災害の発生時には、仮設の病床を約1,000床増やし、傷病者を収容できるようにとする。

赤十字の「十」をかたどった建物の屋上には、患者および医薬品の搬送のためのヘリポートも整備する予定だ。

「工事を行うに当たり、自分たちは、いま何をつくっているかを理解することが問題です。命を守る病院をつくっているという使命を忘れてはいけません」と田村所長は強調する。

赤レンガ塀の撤去、

樹齢300年の

赤松の移植、1日250台のダンプ

以前、日赤通り側は、医療センターの周りを赤レンガ塀が囲んでいた。工事施工に伴い撤去し、日赤の敷地を提供して、2.5mの歩道を4mまで拡げた。また、北側の区道沿いも、1mの歩道を2mに拡張した。日赤通りの赤レンガ塀の一部は、医療センター正門の両脇などに復元することになっているそうだ。

この医療センターの敷地は、もともと延宝年間から佐倉藩堀田家の下屋敷だった。敷地内には、当時を偲ばせる「二代目宗吾の松」といわれる推定樹齢300年の赤松があった。その移植も大きな課題だった。歌舞伎でも知られる佐倉宗吾ゆかりの松ということから、江戸時代からある大木を盆栽仕立ての美しい樹形のまま移動させるという、大がかりな工事となった。

「枝張り18mもの赤松を200トンクレーンに吊り上げ、トレーラーに載せて移動させる様子は、圧巻の一言につきましたね」と田村所長は振り返る。

また、赤松の移植のほか、これまでに最も大変だったのは、工事現場の真ん中を通っていた一般道を4段階にわたって切り替えたこと。現場のすぐ脇に建っている既存の医療センター(病棟)の患者や関係者の安全を確保するため、切り替え作業は深夜に行った。事前の告知から慎重に対応したため、クレームはなかったそうだ。

現在、1日250台のダンプトラックが出入りしている。江戸時代からほとんど道のかたちが変わっていない現場一帯は、道が狭く、坂道が多い。とくに大型車は、曲がり角で歩行者や道路標識に接触するおそれがある。

そのため、出入りする工事車両の運転者に対し、搬入許可、日時、経路の指定などの伝達を徹底し、十分注意するよう呼びかけている。また、現場前の路上などで待機や駐車をしないよう、入退場のときは、必ず窓ガラスを開けて、警備員の誘導に従うよう定めている。

「飲みものあげて、と現場のみんなに声をかけるなど、とても気さくな所長です」と語るのは、職長会会長の木村貴之さん(鈴木組)。貴之さんは、父・市夫さんとともに、田村所長とは2代にわたり20年のつきあいになる。

「職長会を立ち上げてまだ日が浅いので、まわりのベテランの職長さんに支えられています。現場のルールを新規入場者にも徹底していきたい」と木村会長はいう。

現在、所員32人、作業員170人。これから工事の進展にともない、作業員の人数は800~1000人にもふくれ上がる。

「若い所員は、現場の熟練工から、そんなやり方ではダメだと指摘されるなど、いろいろ教えられています」と田村所長は笑顔で語る。所長と会長の気負いのないやりとりをながめていても、現場のコミュニケーションがよくとれていることが伝わってくる。

「仕事に誇りを持ち、魂を込めて

つくる」よう作業員らに指導

作業所の基本方針は、「顧客満足の向上を自負した継続的改善の実践に基づき、顧客が安心し、満足し、誇りを持って使うことのできる建物を提供し、もって、当社に対する信頼を深め、会社の一層の発展を図る」とある。

現場の施工方針として、①世のため、人のための建物であることに誇りを持って誠実に魂を込めて創る、②コミュニケーションを重ねて、全員のベクトルを一致させる、③稼動中の病院の敷地内であることを意識し、現場を常に清潔に保つ、④メンテナンスの容易な建物を作る、⑤耐久性のある材料を選択する、という5点を挙げている。

さらに、管理のポイントとして、①躯体の場合は、書類だけに偏向しない現場重視の施工管理、②外装の場合は、精緻な図面検討と正確な施工管理、③内装の場合は、性能(遮音・振動)の実証と美観の一致を挙げ、施工中に瑕疵の兆候があらわれたときは徹底的につぶす、としている。

経済性を保つためには、「費用対効果を常に考えて、必要なところには資源(人・モノ・金)を投入し、必要のないところには投入しない」と実にわかりやすい。

所長は、「薄肉PCa折り曲げ型枠工法」を開発したことでも知られている。これは、コンクリート工事の省力化とスピードアップのため、現場での型枠材の加工、組立て、解体作業を極力減らす工法の1つ。合板ベニヤを使用しないため、熱帯雨林の伐採などの環境破壊の改善や現場での廃材利用にも有効とされている。

「細かい1つひとつの作業を積み重ね、決して手抜きをしたり、まあいいやという雰囲気にしない。全工期無事故無災害で、すべての終わったとき、お互いにっこり笑って別れたいね」とあくまで穏和な表情で、しかし毅然とした態度で田村所長は語った。<

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