建築現場より

2009/09/19

東北本線浦和駅付近高架化(駅部工区)工事

「そら」2009年9月号 現場拝見  第14回

東北本線浦和駅付近高架化(駅部工区)工事
施工/鉄建・清水建設共同企業体

湘南新宿ラインの浦和駅停車で

新宿・横浜へのアクセスも向上

現在、急ピッチで工事が進められている「東北本線浦和駅付近高架化(駅部工区)工事」(施工/鉄建・清水JV)は、埼玉県さいたま市にあるJR浦和駅の東西の連絡通路の新設をはじめ、駅を中心に延長約1.3kmを高架化するものである。

これまで浦和駅は、駅の東西の連絡通路がなく、利用者から「不便なため何とかしてほしい」という声が多く寄せられていた。そのため、高架下の1階部分に幅25mの東西連絡通路を整備し、東口と西口間の通行をスムーズにして、分断されていた東西市街地の一体化を推進する計画である。

また、駅の高架化に合わせ、構内のバリアフリー化にも取り組んでいる。各ホームに、これまでなかったエスカレーターやエレベーターを新設し、利用者の利便性の向上した新しい駅へと生まれ変わる
 高架化工事は、用地が限られているため、1線ずつ線路を移動しながら慎重に進められている。地面を走っていた線路がすべて高架化されたのち、東北客貨線に旅客ホームを新設し、湘南新宿ラインのホームとする予定だ。

現在は通過している湘南新宿ラインが浦和駅に停車することによって、京浜東北線と埼京線の混雑が緩和され、新宿方面や横浜方面とのアクセスが大きく向上する。

高架化工事は、京浜東北線(南行・北行)および京浜東北線。高崎線上下線の計4線を高架化していく。工事は、平成17年より本格工事が始まり、まず最初に、一番東口寄りの京浜東北線(南行)の線路の隣りに高架ホームを建設、京浜東北線(南行)の高架化に着手した。平成191月、高架への切換工事が無事完成し、新しい旅客ホームが新設された。

続いて、京浜東北線(北行)を高架化し、平成205月に高架への切換を行った。

現在、宇都宮線と高崎線の上り線の高架ホームの建設が進められており、今年12月に高架化する予定。その後、宇都宮線と高崎線下り線も順次高架化していく

高架化された駅前広場側の新しい駅舎の壁面は、水色の防風スクリーン(強化ガラス)が多用され、開放的で洗練された外観となっている。ホームの上野側・大宮側には、コンコースからの階段を設置し、壁面は強化ガラスで装飾され、とても明るいイメージになった。

「私達は鉄道利用のお客さまに

ご迷惑をかけません」と唱和

 現場作業所は、浦和駅前にあるプレハブの建物の2階にある。もともと、銀行の支店が併設されていたが、今は1階に浦和駅東口交番が入っている。

 室内には、鉄建建設の今年の安全推進スローガン「見過ごすな危険の芽 ルールを守って 安全第一」が掲示されている。

安全重点目標は、「墜落災害の防止。重機・クレーン災害の防止。工事事故の防止」。

また、労働衛生目標として、「解体作業等における石綿ばく露防止対策の徹底。過重労働等による健康障害防止のための管理の実施」を掲げている。

さらに、安全3大運動として、「TPKY(鉄建式計画時危険予知)による安全先取りの推進、安全10分間運動の推進、一声かけ運動の推進」を実施している。

中津祐造所長が、同現場に着任したのは平成14年12月。今年で7年目になる。中津所長は、毎年1月に、その年の作業所目標を掲げている。平成21年は次の三つ。

    基本ルール厳守の現場

    安全を確保し、トラブル防止の現場

    品質・工程管理を徹底する現場

ちなみに前年は、

    安心・安全で健康な現場

    品質・工程管理を徹底する現

    報告・連絡・相談を徹底する現場

人通りや交通量、列車本数が多い駅での大規模な工事で、しかも限られた時間内に作業を進めなくてはなりません。すみやかに作業に取り掛かれるよう、また、より良い条件の中で安全に作業が進められるように、毎日、作業工程を念入りに確認しています。常にJR東日本の了解のもと工事を進めていますから、計画外の作業は絶対しないよう現場に周知徹底を図っています」と語る中津所長。穏和な語り口が印象的だ。

 現場では、朝礼と夕礼の点呼のときに、全員で「安全唱和」を行っている。

    何かあったらまず一報

    安全確認できない場合は、線閉解除しない

    疑わしきときは、まず電車を止める

続けて、「鉄道工事従事者の心得」も全員で唱和している。

    私達は、鉄道利用のお客さまにご迷惑をかけません!

    私達は、線路の内、上空で作業していることを忘れません!

    私達は、基本動作とルールを守り、予定外の作業はしません!

    私達は、無断作業、計画外作業は絶対に行いません!

町内会の一員として祭に参加

半被姿で神輿を担ぐ!

「工事を円滑かつ安全に進めるため、工事に関わるすべての人と良好な関係を築く努力をしています。工事をしているのではなく、工事をさせてもらっているんだという気持ちを忘れずに、近隣住民のみなさんと接していきたいですね」と中津所長。

 職長会会長の島本徹さん(東和建設)は、「毎年7月に行われる浦和の祭に参加し、町内会の一員として半纏姿で神輿を担いでいます。今年も、職員3人と協力会社から2人が、2日間にわたって参加しました。こうしたことも、現場のイメージアップなど、良い結果につながっていると思います」と語る。

中津所長と島本さんのご案内で、私も宇都宮線と高崎線上り線ホームを見学させていただいた。ヘルメットをかぶり、黄色い安全チョッキを着用して、さながら工事関係者のようだ。

真新しい階段を上って工事中のホームへ。まだ一般の人が降り立ったことがない高架のホームに立てたことは、とても新鮮な体験だ。ほかのホームが新設された際は、近隣住民を招き、線路に下りて歩く「軌道内ウォーク」を楽しんでもらったそうだ。

工事はちょうど、ホーム屋根の鉄骨の仕上げにかかっているところであった。視線を下に移すと、敷設されている線路は、コンクリートの枕木を付けた状態で、20cmほど浮かして仮止めされている。木枠をはめてコンクリートを流し込むそうだ。

防護壁を隔てて、青いストライプの京浜東北線の車輌が頻繁に走り抜けていく。電車の走行が止まる夜間も、毎日、約40人が工事に当たっている。ホームの切換段階に入ると、100人体制に膨れ上がる。

これまで、浦和駅というと、正直なところ、県庁所在地とは思えないほど不便で、なんとなく暗いイメージがあった。工事の進捗によって、それもきれいに払拭されることだろう。
 高架化工事
全体の完成は、平成25年3月の予定。高架化工事とともに、東口の再開発工事も進み、浦和駅内外の風景も一気に変わることであろう。

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2009/07/30

町田市相原町706番地先から鑓水小山給水所間送水管(1500mm)用トンネル及び立抗築造工事

「そら」2009年7月号 現場拝見  第13回

施工/飛鳥・鉄建建設共同企業体

シールド発進後に巨礫が見つかり

立坑をさらに4m深く掘り下げ

多摩ニュータウン西部の小高い丘に、クリーム色の巨大な建物がある。約10km離れた高尾山の展望台からも双眼鏡で見られることができるこの建物は、東京都水道局が進める「多摩丘陵幹線事業」の二次路線の第8工区にあたるトンネルの発進基地「多摩シールド作業所」だ。

多摩南西部地域は、都市化の進展に伴う水需要の増大から、①送水能力の強化、②浄水場・送水幹線の事故や震災時の広域的なバックアップ機能の確保、③更新時期を迎える送水管の代替機能の確保が必要とされている。東京都水道局は、こうした課題を解決するため、平成9年より多摩丘陵幹線整備事業として工事を進めてきた。事業が完成すると、多摩南西地域への安定的な給水が確保され、既存の送水幹線の補修や更新工事が効率よく行えるという。

同現場の立坑の掘削工事で、当初予定のシールド発進の深さ(土被り17m)に、土質調査の時に確認できなかった巨礫(Max750×350)が見つかった。そのため、立坑をさらに4m深く掘り下げ、立坑の深さは24m。かなり深い。ここから直径2.6mのシールド機で延長3.4kmを掘削する。丘陵地帯の幾重にも重なる地層を下り勾配で貫き、到達点の地中接合で相手方のシールド機とドッキングする工法を採用。「現在、発信基地から1500mを掘進中ですが、カッタービットの摩耗など、難題が残っています。職員と作業員が一体となって、最後まで無事故・無災害で到達させたい」と川島所長は力強く語る。

不安全行動ゼロ宣言を掲示

「安全に時間と金を惜しむな!」

同作業所の川島所長は、災害ゼロをッ製するべく、次のような「不安全行動ゼロ宣言」を掲げ、周知徹底を図っている。

①親方(職長)・監督(職員)は、現場巡視時、決して不安全行動を見逃さず、その場で迅速に指導する。

②作業員同士(全協力会社)の声掛け運動を展開し、現場から不安全行動を排除する。

③安全設備に妥協はない!仕事を中止しても安全施設の維持・管理を行う。

「不安全行動があったとき、問題を先送りすると、現場内に『妥協→漫然』といった雰囲気や環境が生まれます。そうならないよう不安全行動を見つけたら、仕事をいったん止めさせ、その場で指導・是正し、確認するということを徹底させようというものです」と川島所長は語る。そのためにも、現場のコミュニケーションをよりよくしようと懸命だ。 

また、「工程、品質、利益は、すべて安全の上に成り立っています。『安全に時間と金を惜しむな!』をスローガンに掲げています」と語る川島所長の願いは、現場の随所に反映されている。

まず、「命の籠」と名づけられた二重の墜落防止措置。クレーン作業で支障となる手すりを改良したもので、間口部際での手すりの取り外し作業の危険を回避するため、スライドゲートに改造した。 

「開口部付近で作業を行うときは、手すり端部に安全帯をかけるルールになっていますが、ゲート開閉作業がほんの短い時間で終わるので、万一、安全帯をかけないで作業してしまったら……という危険性を考慮して、直下に転落防止の養生枠を取り付けました」と藤田敏治課長は説明する。

もう一つは、立坑下坑口部に取り付けた通称「フラッシュサイレン」だ。24mもの深さがある立抗の上部のクレーン作業中、もし落下物があったら重大災害につながる。したがって、クレーン作業中は、開口部直下は、立ち入り禁止にしなければならない。立坑上下間には、警報ブザーや退避アナウンスや回転灯は設置されている。しかし、狭いトンネル内を腰をかがめて長時間歩いてきた作業員が、坑口の手前で警報アナウンスがあったとしても、すぐ気づくことができるだろうか? 少しでも早くトンネルから抜け出て腰を伸ばしたくなるのではないか? そう感じた同現場では、対策として、トンネル坑口内に、はっきり目に付く点滅式の回転ライト(フラッシュサイレン)を取り付けた。あわせて、トンネル坑口の先に、腰を伸ばしてもらえるようにと、「ぶら下がり棒」も設置した。

KY活動マンネリ防止に

職長会活動を積極的に展開

作業が順調に進むに従い、繰り返し作業が中心のシールド工事は、日々のKY活動が、どうしてもマンネリ化してしまう傾向がある。そこでマンネリ防止に活躍するのが、職長会活動である。現在、シールド掘削班、残土運搬班、仮設電気班、セグメントシール班、ガードマンの計5班(5名)で構成され、隔週金曜日にミーティングを行っている。

これまでの主な活動は、次ぎのとおり。

    目で確かめる安全帯機能

これは、シールド発信前の高所作業を行う仮設備関係の施工時期に行ったものである。高所作業では、墜落・転落災害防止のために安全帯を使用するが、安全帯のフックをより高い位置に掛けなければ墜落した際の衝撃が大きく、内臓破裂の危険性もある。職長会では、「実際に人に見立てたハリボテを使って、その衝撃を実感してもらおう!」と体験実験を行った。安全帯を腰より低い位置に掛けてハリボテを落とすと、その衝撃は大きく、安全帯のフックは変形した。以来、作業員の安全意識は高まり、KY活動において、「安全帯を使う」のみにとどまらず、「フックは腰より上の高さに掛ける」というルールが新たに加えられた。

    安全標語の募集

年度ごとにJV職員や協力業者全員から標語を募集し、全員が審査員となって優秀作品を決定。優秀作は現場内に掲示。

    顔写真入り入坑表示札

コミュニケーションを図るうえで、顔写真の表示はとても役立っている。

現場のイメージアップのため

地域のボランティアにも参加

工事を円滑に進めるには、近隣住民の理解を得ることが重要だ。そのため、さまざまな工夫や努力を行っている。

●イメージアップ……看板発信基地のハウスに、東京都水道局の「東京水」のイメージ看板を掲示。加えて、地名である「鑓水」のいわれをイメージさせる看板も設置し、親近感を持ってもらえるよう努めている。

●現場見学会とAED講習会……シールド発進前に、立坑下にセットされたシールド機を中心にした見学会を開催し、近隣マンションの100名が来場。また、現場見学会とあわせて、講師を招きAEDの使用方法の講習会も開催し好評を得た。自由民が緊急時に利用できるようハウス外壁に設置場所の案内図を掲示した。

●川島所長の地域ボランティア活動への参加……毎週金曜日の朝30分間、現場周辺の清掃作業を行っている。所用でなかなか参加できない川島所長はじめ職員数人は、地域ボランティア活動として、昨年9月より、八王子市、稲城市、府中市主催の多摩川清掃に積極的に参加している。

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2009/04/30

プロロジスパーク座間I新築工事

「そら」2009年3月号 現場拝見 第12回

プロロジスパーク座間I新築工事

設計・施工/(株)フジタ横浜支店

広大な倉庫スペースを確保し

大量かつ迅速な荷の積み卸しが可能に

周辺を小田急線と東急田園都市線、相鉄線が走り、国道246号線や東名高速道路が走るなど、首都圏エリアはじめ、神奈川・東海エリアへの交通アクセスが便利な、陸上輸送の拠点として恵まれた立地にある神奈川座間市にマルチテナント型物流施設「プロロジスパーク座間I」の新築工事が進行中だ。

同現場は、敷地面積約6万㎡、延床面積約14万㎡を有し、鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)5階建40フィートコンテナトレーラーが各階に直接乗り入れができるよう大型ランプウェイ2基(上り専用・下り専用)を備え、約190台分のトラックバースと約350台分の屋上駐車場を整備するなど、大量かつ迅速な荷の積み卸しが可能となる。1フロアー当たり約2万4,000㎡の広さを確保し、倉庫内はテナントのニーズに応じて4分割することもできる設計となっている。 

免震システムとPcaPC工法を

組み合わせた免震PcaPC構造を採用

構造は、作業者および荷物の安全を確保できる地震に強い施工法を検討した。

「物流施設専門の不動産開発会社プロロジスが、特許を持つ杭頭免震工法を採用しています。建物と基礎の間に免震装置を設け、大地震の際、積層ゴムが変形し、建物がゆっくり平行に揺れることで、地震力を吸収して、地震の揺れを一般構造と比べ3分の1から10分の1に大幅に減らすことが可能です」と武石宏所長は現場を案内しながら説明する。随行する工事担当の鈴木泉さんは、2008年入社の新入社員だ。

阪神大震災級の震度7の地震発生時にも、建物はほとんどダメージを受けないという。施設内で働く作業者の安全を確保し、保管物の荷崩れや破損などのリスクもほとんどない。先進の大型物流施設といえそうだ。

また、免震工法とプレキャスト・プレストレスト鉄筋コンクリート工法(PcaPC工法)を組み合わせた最新技術「免震PcaPC構造」の採用で、より高い耐震性能を発揮した。

PcaPC工法とは、柱と梁部材をあらかじめ工場でプレキャスト化(Pca)し、現場で建方したのちに、PC鋼棒やPC鋼線を用いて締め付け、柱と梁の一体化を図るPC圧着工法を採用するというもの。

免震PCaPC構造の採用により、高品質はもちろん、工期の短縮、騒音の低減、産業廃棄物の極少化、工事の省力化、さらに高強度コンクリートによる耐力性・耐久性もアップする。高強度コンクリートの床は、大型トラックや重量物を運ぶフォークリフトの走行による変形やひび割れが、鉄骨造の建物に比べ少ない。構造体の剛性(硬さ)が高く、建物の劣化が少ないため、100年以上持続する建築物の実現も可能だという。

「団結・責任感・率先垂範」

不安全行動は見逃さない!

武石所長は、「所長方針」として、次の3つ掲げている。

    団結……強調と和、職長会の推進と活性化、無事故無災害を目指す

    責任感……決めた事は守る・守らせる、己の益より会社の益

    率先垂範……常に先を見、手本を示す

「『なんでも話せて、毎日のびのびとやれる雰囲気づくりを皆で協力し合ってつくろう!』ということです。作業員1人ひとりの気持ちに配慮して、シャワー室を設置してほしいといった要望にも素早く対応するよう努めています。そのため、『所長のためだったら何でもやるよ』といってくれるムードがあります」と武石所長。

また、作業所安全管理方針として、「危険に対する感性を高め、事前に摘み取ろう 危険の芽」をスローガンにしている。

さらに、「工事安全衛生目標」として次の4つを挙げ、周知徹底を図っている。

①重点管理指定工種作業は、事前にミニ施工会議を開催し、当該工種に伴う危険源および実施対策事項を徹底追及し、「災害ゼロ」を目指す

②すべての作業における現地での危険予知活動実施率100%を徹底追及し、決めた事、決められた事を守り!守らせる!風土醸成を目指す

③不安全な行動やルール無視は、決して見逃さず、その場で是正指導を行い、作業所規律・安全風土の維持を徹底追求する

「現場には、絶対安全といえるような場所はありません。大切なのは、『自分の安全は自分が守る』という気持ちを各自がしっかり持つことです。みんながやっているからいいやという、ヒューマンエラーが一番怖い。急がば回れで、決められた事をきちんと守り抜くこと。それが大切です」と所長は強調する。

「自分の安全は自分が守る」

特別教育や救助訓練で安全意識を高揚

武石所長の『自分の安全は自分が守る』という教えは、職長会に浸透し、次の安全衛生活動計画にも反映されている。

    朝礼・安全ミーティング・KYKの自主運営

    職長会パトロールの実施ならびにパトロール結果の集計と改善(毎週水曜日午前10時から実施)

    詰所・トイレ・駐車場などの保守管理と一斉清掃の清掃分担など、良好な環境の維持・整備

    関係職長および作業員の連絡調整スピードの向上

    職長会主導による工区別責任者の選任(工区マスター管理の周知徹底)

危険・有害業務に従事する者については、法令上、特別教育の実施が義務づけられていることから、同現場では、酸素欠乏危険作業、フォークリフト作業、高所作業車作業、研削砥石取替え作業に就く者を対象に特別教育を実施している。

また、万一の災害発生時に備え、あわてずに行動できるよう、全国安全衛生週間や全国労働衛生期間中に、緊急時の救助訓練、遭難訓練、消化訓練といった「安全衛生訓練」を行い、職長および作業員の安全意識の向上に努めている。

「建物の共用棟には、レストラン、託児所、休憩所、オフィススペースなども設けます。周辺環境の整備も図り、緑化や歩道の拡幅なども行います。南側の市道沿いは、歩道として整備して市に提供することになっています。20095月竣工に向け、人と環境に優しい施設の実現をめざし、『己の益より会社の益』という言葉を忘れずに全力で安全施工に取り組んでいきたい」と武石所長は意気込みを語った。

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2009/02/01

横浜環状北線トンネル・立杭工事及び長島大竹線高架橋下部工事(仮称)

「そら」2009年1月号 現場拝見  第11回施工/五洋建設(株)

TRDやGSTなどの最新工法で高精度の掘削が可能に!

2002年サッカーワールドカップ決勝戦が開かれた日産スタジアムを臨む横浜市港北区北新横浜。鶴見川に架かる新横浜大橋から亀甲橋に至るあたりで、横浜環状北線トンネル(以下「北線」という)の出入口付近の開削トンネル、シールド発進立杭および新横浜換気所の土留工、横浜市都市計画道路長島大竹線のRC橋脚、橋台、擁壁の築造工事が進行中だ。北線は、横浜市の交通ネットワークの骨格を形成する横浜環状道路の北側区間に当たる。第三京浜道路の港北インターチェンジから、首都高速道路横浜羽田空港線の生麦ジャンクションをつなぐ自動車専用道路。全体の約7割がトンネル構造となる。現在、北線の出入口は、シールドマシンを下ろすための発進立坑が行われている。開削トンネルの土留壁は、地下水圧による掘削底面の「盤ぶくれ」を防止するため、止水性に優れたTRD地中連続壁を地表から44~50mの深さまで打設する。「盤ぶくれ」とは、地盤を掘削したときに掘削底面の地盤が、地下水圧によって持ち上げられる現象のこと。これが発生すると、掘削底面に亀裂が生じ、土砂.を伴った地下水が掘削溝内に噴出し、土留壁の倒壊、周辺地盤.の沈下などの重大災害を誘発することもあるという。「TRD工法」とは、地中に建て込んだチェーンソー状のカッターポストとカッターチェーンを一気に横方向に移動させ、溝状に掘削した原地盤土砂とカッターポスト下端部からセメントスラリを攪拌しながら、ソイルセメントの地中連続壁を施工する工法をいう。また、終端部の遮水壁は、約50mの深さとなるため、GST工法(SMW工法の施工精度を向上させた工法)を採用。これにより、削孔時に、GST掘削機の先端位置をリアルタイムに自動計測・制御できるため、高精度の連続地中壁の施工が可能となった。従来のSMW工法にくらべ、土留壁の削孔精度が300分の1以上に向上した。「発進立坑の土留壁は、土砂が崩れないよう強固な壁にするため、止水性と鋼性に優れた泥土モルタル地中連続壁を採用しました。地下水位や地盤変位を計測し、周辺に影響がないことを確認しながら施工しています」と伊藤文彦所長は語る。「泥土モルタル地中連続壁工法」とは、水平多軸式壁掘削機を用いて、高精度の土留壁を造る工法で、壁体材料に泥土モルタルを使用し、周辺地盤の沈下を抑える。ちなみに、北線のトンネルが通過する地層を事前に調査した結果、ほぼ全線にわたり、上総層群という非常に硬い地層であることが判明。したがって、北線の工事は、全体的に地盤の堅固な深い位置に計画し、最も地盤沈下を抑制できるシールド工法が採用された。そのため、地盤沈下の心配は少ないといわれている。さらに、新横浜大橋につながる長島大竹線の橋脚は、ケコム工法で施工する。これは、橋脚基礎下部に気密な作業室を設置し、ケーシング(鋼製の筒)を回転・圧入させながら、掘削・沈設後、鉄筋コンクリートを打設することによって、場所打ち杭を築造するもの。ケーシング内の土砂は、油圧グラブを用いて掘削・搬出する。低騒音・低振動型の堀削機を使用するため、周辺環境に優しい工法であるといえる。

「安全五箇条」を基本方針に掲げ自分勝手な行動を戒める

工事用車両については、現場周辺が通学路であるため、搬出・入時間を制限。特に、ダンプトラックについては走行ルートを決めているとともに、荷台にシートを被せたり、工事用道路や出入口付近に散水したりして、土砂の飛散防止に努めている。「当工事の進捗も約25%となりました。これまでは、連壁工事がメインでしたが、いよいよ掘削、土留支保工が中心です。職員の人数も限られているので、細かなところまで目の行き届かないこともあるかもしれませんが、職長会の皆さんの協力で、安全面についてもより引き締めて取り組んでいきたいと思っています」(伊藤所長)。伊藤署長は、安全五箇条として、一、 近道せず二、 省略せず三、 憶測で行動せず四、 急がず慌てず五、 周囲の注意を怠らずを挙げ、安全を無視して自分勝手な行動をとることを戒めている。「常に余裕を持って仕事をすることが大切です。事故を起こしては何にもなりません」と強調する。さらに、現場のスローガンとして、「重機災害の防止、墜落転落災害の防止、飛来落下災害の防止」という3つを掲げる。クレーンが倒れる、重機の旋回時に作業員がはさまれる、杭打ち機に巻き込まれる、H鋼が落下するなど、工程ごとの危険性を予測し、それを除去するための具体的な対策(クレーンのつり荷の下への立入禁止、監視の徹底、重機の作業半径への立入禁止など)を立てている。すなわち、リスクアセスメントを実施し、作業所に潜む労働災害の芽を事前に摘み取るよう努めているのである。職長会の野上雅人会長(産興建設)と雨宮信太郎副会長(野本建設)も、毎週水曜日に職長会による安全パトロールを行い、危険要因の除去に神経をとがらせる。

近隣住民に配慮した環境美化運動にも取り組む

同現場では、周辺環境にも気を配り、仮囲いは白色板を基調とし、部分的に透明板を採用することによって、施工状況が見られるよう工夫している。また、斜面を覆うシートも、従来のブルーシートではなく、土面になじむブラウンシートを採用するなど、周囲との調和を図っている。また、定期的に道路清掃や土手の草刈などの奉仕作業も行っている。注目されている現場だけに、市関係者などの見学者も絶えない。工学部の大学生100人を招いて、(社)日本土木工業協会主催の「100万人の市民見学会」も開催し、好評を得た。「安全は1人ひとりが守らないと達成できません。より仲間意識を強め、これからも助け合って、基本ルールの徹底と確認を励行していきます」と静かに語る伊藤所長。強固な意志とあたたかな人柄が伝わってきた。

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2009/01/02

富士見二丁目北部地区第一種市街地再開発事業ビル築工事(仮称)

「そら」2008年11月号 現場拝見  第10回

施工/大成建設(株)東京支店

千代田区の超高層マンション

新たなランドマークとして注目集める

JR総武・中央線、東京メトロ有楽町・東西・南北線、都営大江戸線など、交通アクセスに優れた飯田橋駅から徒歩2分。千代田区富士見2丁目に、地上38階建て414戸の住居棟と地上17階建ての業務棟が建設中だ。

明治時代、このあたりの高台から、富士山を臨むことができたことから、富士見と呼ばれるようなった。この現場一帯は、20年近く前から、再開発計画が進められてきた。その中核を形成する超高層マンション「プラウドタワー千代田富士見」は、千代田区の新たなランドマークと注目されている。

建物は、鉄筋コンクリート造。基礎構造は深杭と地盤改良による直接基礎の2方式。コンクリートの設計基準強度は、30~100N/mm2。建物の上部躯体に、3種類の制震装置が併用され、さまざまな周期の揺れに対応できる。

「あわてず、ゆっくり、ていねいに!」

飽くなき無事故無災害の追求

さる7月3日、全国安全週間行事の一環として、大成建設の山内隆司社長による現場巡視が行われた。「職長会をはじめ、みなさんの協力で、おかげさまで大変高い評価を戴きました」と平田尚久作業所長は語る。所長の隣で大きくうなずくのは、職長会の早川伸夫会長

所長スローガンは、「近隣にはいつもやさしい気持ちで!」。都会の真ん中での大工事。地域住民とのコミュニレーションは必要不可欠だ。さらに、「あわてず、ゆっくり、ていねいに!」をモットーに、具体的な施策として、次の4点を挙げる。

        落ちない 

墜落する恐れのある高所作業時は、安全帯のダブル使用で身を守り、垂直・水平部の開口部を作らない。

        はさまれない

重機まわりの立入禁止に入らない。機械を扱うときのルールを守る。

        倒さない

足場や仮囲いの点検を毎日確実に行う。とくに重機の足元の確認を徹底する。

        飛ばさない、落とさない

整理整頓をして、物を存置させない。養生にすき間を作らない。

「この現場の重点目標は、『絶対に人を落とさない、物を落とさない』です」と平田所長は強調する。住居棟の最上階は138mに達する。万一、この高さから物が落ちて人に当たったら即死だ。落下物が跳ね、すぐ横のJRの線路に入ったら大変なことになる。

「無事故無災害を目指し、工程より安全優先で作業すること、人命を優先することはいうまでもありません。予定どおり作業が進まないとイライラして強引に進めたときが一番危ない。事故が起こったら、何にもなりません」。目標は、飽くなき無事故無災害の追求だ。

「作業に取りかかる前に、職長はじめみんなで段取り等を知っているか確認し合い、1人で勝手に行わないことが大切です。重大事故が起きたとき、職員も社員も知らなかったというケースもありますから」

規律と緊張感のある空気を保つため、作業員、特に新規入場者には礼儀とマナーの遵守を周知徹底している。きちんと挨拶をする、道具を大切に扱う、時間と約束を守る、きちんと片づけと整理整頓をする、いつも清潔にして健康管理をする。新規入場者は識別しやすいように、保護帽にシールを貼らせている(7日間着用)

自己管理ができる人は、事故を起こさない、というのが平田所長の持論だ。「まず、1人ひとりが、自分の身は自分で守り、事故を絶対起こさないという強い意志を持つことが大切です」と強調する。

 さらに、作業前の朝礼・昼礼による安全意識の向上(朝礼時には危険予知瞑想を行い、どこに危険が潜んでいるか、どんな危険が予想されるか考えさせる)、現地KY(危険予知)による作業手順の確認と周知、安全パトロールによる作業環境の安全確認などで、現場の緊張感を持続するよう努めている。現地KYでは、「手すりよし、ネットよし、電動工具よし」と指差し呼称をする。玉掛けワイヤーの点検、道路の凸凹による歩行者の転倒注意、ゲート前での一時停止の厳守、仮囲い周辺の点検、解体工事の粉塵防止対策など、神経を尖らせながら、毎日、現場ルールを遵守するよう指導に当たっている。

作業員一人ひとりが知恵と感性を磨き

危険を摘み取ることが大切

「どこが危険なのか、何が危険なのか、といったことを過去の事故例を通して常に学ぶことで、作業員1人ひとりが、知識と知恵と感性を磨き、危険の芽を摘み取ること、それが大切です」と鈴木所長は指摘する。

「住居棟は、5日サイクルで順調に工事が進んでいますが、繰り返し作業に馴れて、できているはず、やっているはずという思い込みは、思わぬ落とし穴があります。必ず自分の目で安全を確認し、決して手抜きをしないで、次のステップに進むように職長を通じて指導しています」

平田所長は災害をなくすため、自分一人だけでなく、仲間の命も大切にすること、仕事に対して謙虚であることを心がけるよう朝礼で作業員に呼びかけている。

「仲間からケガ人を出さないよう、やってはいけないことはやらない。自分の力を過信しないで、手抜きをしたり、早まったり、慌てたりしない。初心を大切に、職員と職長会が一致団結、力を合わせて、安全意識を高め、工事中の災害ゼロを誓っています」。

所長のお話から、プロ中のプロ集団であるという誇りと自覚と緊張感が伝わってくる。「あわてず、ゆっくり、ていねいに!」と私も口の中で繰り返す。迷ったら、作業手順を見直し、心のスキがないかきちんと確認すること。心のスキが事故につながるのだ。

「私は、この作業所から誰一人としてケガ人や病人を出したくありません。尊い命です。自分の体を大切に、具合の悪いときは、無理をしないで、職長や仲間に伝えて休息ほしい。今月も無事故で、そして元気に作業をしてほしい」。穏やかで、そして毅然とした平田所長の言葉が印象に残った。

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2008/11/01

(仮称)豊洲3丁目8-4街区計画築工事

「そら」2008年9月号 現場拝見  第9回

(仮称)豊洲3丁目8-4街区計画築工事 竹中工務店

独自のチューブ架橋と制震技術を採用

耐震性に優れた超高層マンションを実現

東京都江東区豊洲の運河に沿ったエリアは、超高層マンションを中心とする開発がいくつも進められ、大きな変貌を遂げている。もともと豊洲は、関東大震災の瓦礫で埋め立てられた埋立地。昭和12年、将来の発展を願い、豊かな土地になるように「豊洲」と名づけられた。

その後、石川島播磨重工業(IHI)などの工場が立ち並ぶ工業地として発展。現在、IHIの工場跡地は、ショッピングモールとして賑わっている。

 豊洲の再開発は、2001年に始まった。住宅を中心に教育・医療・商業機能も配した魅力的な文化都市を目指し、大規模な開発が進んでいる。この豊洲3丁目8-4街区に、RC造地下1階・地上44階建ての超高層マンションが建設中だ。延床面積は約10万㎡、2007年10月着工、10年3月完成予定。

建物の基本構造は、同社が独自に開発した、住戸内の梁をなくし、さまざまな住戸プランを可能にするチューブ型の架構法「スーパー・フレックスチューブR」を採用。これは、連続的に配置した柱とそれをつなぐ梁で構成されるチューブ型の立体的な架構法で、コア共用部に竹中式制震間柱を込みこむことにより、振動時のエネルギーを吸収し、揺れを抑える制震機能を果たす。

チューブ架構と制震構造を組み合わせることによって、住戸内や共用部に梁がなく、さまざまな住戸ニ−ズに対応可能な、快適な住宅を実現できる。また、地震の時でも振動、建物の損壊を最小限に抑えられる。

さらに、コンクリート1m2当り約800トンにも最大耐えられる高強度・高耐火の「AFRコンクリートR」も採用。

このように、同社独自の最新の工法・制震技術を採用することにより、耐震性にも優れた超高層マンションを実現している。

「当プロジェクトは、この地域で最後に計画された超高層マンションとして、注目を集めています。超高層マンションの建設とともに、敷地に面した豊洲運河沿いを住民の方以外のみなさんも楽しめる散策路として整備します。緑豊かな街づくりに携わることに大きな誇り持ち、1人ひとりに豊かな思い出が残る職場となるよう、一丸となって日々の作業に頑張っています」と澁田所長は、完成予想図を示しながら語る。

それを見ると、垂直方向へ伸び上がる建物はスタイリッシュで、運河沿いの青空を映してきらめく壁面は、豊洲の新たなシンボル・タワーとしての存在感を漂わす。同時に、未来都市・豊洲のさらなる進化を予感させる。

「豊かな思い出」づくりに

リーダー会とともに取り組む

澁田所長の所長方針は、①全工期無事故無災害を達成する、②品質重視の姿勢を貫き、適正品質を確保してお客さまの信頼を得る、③工期を厳守し、お客さまに満足される建物を確保させる、④創意工夫によりムダ・ムリ・ムラを排除し、生産性向上に努める、⑤建設副産物の資源循環・発生抑制を推進するリサイクル率の向上により、環境保全活動を推進する、⑥思いやりの精神で、明るく、元気な職場環境をつくる、という6項目。

「当作業所で働く皆さんは、お互いを思いやる、やさしい精神をいつも持ってもらいたいですね。そして、明るく元気な職場環境を共につくりあげたい。豊かな豊洲の街を作る私たちの心の中にも、豊かな思い出がたくさん残る、そんな作業所になるよう願っています」

 澁田所長のいう「豊かな思い出」づくりを支えるため、「リーダー会」の車輌・広報委員会は、壁新聞「ニュースステーション豊洲」を今年創刊した。

その紙面で、書記の鈴木慶妃さんは、「リーダー会はみんなのための、みんなで作る、みんなで育てる組織です。明るく楽しく働きやすい職場を作っていきましょう」と述べている。

宮原輝夫会長も、「整理整頓・清潔で働きやすい職場、みんなで協力し、明るく、楽しく、風通しのよい職場作りを目指して活動していきましょう」と訴えている。

5月発行の第2号は、「躯体1階立ち上がる!」という特集号。杭工事から躯体工事で活躍した、鍛冶・鉄筋・大工・とび・重機の作業者たちを業者ごとに写真入で紹介している。「技術のトーセツ」「熟練の墨田」「情熱の福山」「忍耐の東京重機」「不屈の藤井」「革新のビルド」「団結の共英」と、社名につけた二文字がユニーク。それにしてもなぜ、「忍耐の東京重機」なのだろうか?

「重機のオペレーターには、『先に自分たちの資材を吊り上げてほしい』など、業者の要望が集中します。そうした声を受け止めるオペレーターさんはなかなか大変なんです」と宮原会長。なるほど、それで「忍耐」の文字が付くのか。

埋立地のため、掘削に労力を費やした。澁田所長は、杭工事などに功績のあった縁の下の力持ち的存在の作業員を称えるため表彰状を贈った。1人ひとりに「豊かな思い出がたくさん残る作業所」にしたいという切なる願いが込められている。

こうした積み重ねが、明るく楽しい、働きやすい現場をつくり、だからこそ無事故無災害も達成できる、という強い信念が感じられる。

車輌・広報委員会の遠藤茂委員長は、警備員として毎日、現場入口に立つ。純朴な遠藤さんは、小学校の通学路に面する「現場の顔」。今ではすっかり小学生の人気者だ。

全国安全週間準備期間と安全週間中に、所内で募集した安全標語を短冊に記し、七夕の竹に吊り下げて作業所入口に飾った。それを目にした小学生の女の子から「私も短冊に願いごとを書きたい」と声をかけられた。遠藤さんが喜んで色紙を渡すと、「こうじがうまくいきますように」と記してくれた。この言葉に感動した所員は、女の子の小学校にお礼に伺ったという。

近隣の小学生との心温まる交流。「豊かな思い出」の1つとして、作業所で働く1人ひとりの心にしっかり刻まれている。小学生のメッセージ入りの七夕飾りは、「安全は『おかえりなさい』の笑顔まで」などの作業員たちの安全標語と一緒に、今も仮設通路を彩り、作業員はもとより、来訪者の心にやすらぎを与えている。 

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2008/09/01

多摩広域基幹病院(仮称)及び小児総合医療センター(仮称)整備等事業

「そら」2008年7月号

現場拝見 第8回  清水建設

施設の建設だけでなく、医療福祉事業の

運営自体に関わる医療PFI

東京都府中市武蔵野台。現在の都立府中病院のあたりは、約5万年前の旧石器時代の武蔵台遺跡が出たところである。ここで今、日本最大規模の病院PFTの建設が行われている。

これは、清水建設が主体となって設立した特別目的会社(SPC)多摩医療PFIによる事業で、現在の府中病院を「多摩広域基幹病院」として、また、現在の都立清瀬小児、八王子小児、梅ヶ丘の3つの病院を移転・統合し、「小児総合医療センター」として、2つの病院を一体的に整備するというものである。

平成22年春にオープン後、多摩医療PFIが、37年3月までの約15年間、運営・維持管理業務にあたる。

ちなみに、PFIとは、公共事業を実施するための手法の1つ。地方公共団体が発注者となり、公共事業として行い、民間の資金と経営能力・技術力などのノウハウを活用し、公共施設などの設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行うもの。正式名称は、Private Finance Initiative(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)といい、頭文字をとってPFIという。

清水建設の医療福祉施設に対する取り組みは、1985年に医療専門組織を立ち上げ以来、施設の建設だけでなく、医療福祉事業の運営自体に関してもノウハウを培ってきた。さらに、事業実施部署として、医療PFI事業推進部を立ち上げ、PFI事業にあたる組織体制を強化している。

この多摩医療PFIも、各種委託業務の統括・経営支援、建物設備の保守管理・警備などの維持管理、医療事務・洗濯・給食・清掃などの医療関連サービス、そして医療器械・薬品などの調達まで、多岐にわたっている。

所長の安全スローガン「念仏と完結」で三現主義を徹底

施設は、病院棟、宿舎棟、駐車場などから構成され、病院棟は、約53,000m2の敷地に建設。延べ床面積は12万9715㎡。地下1階・地上11階の鉄筋コンクリート造一部鉄骨造で免震構造。病床数は1350床。

平成19年春に着工し、平成21年9月竣工の予定だから、工期は27ヶ月にも及ぶ。そのため、「いかに工業化・システム化を取り入れるかがポイントです。当社の総合力を発揮する非常に良い機会だと張り切っています」と水田保雄建設所長は語る。

また、「業務には、品質、原価、工期、安全、環境が挙げられますが、やはり安全について第一に考えるべきです。万一事故を出してしまったら、いくら品質が良くても、早くできたとしても、お客さまの満足は得られません」。さらに、「施工管理のうえで、ポリシーを持つことは大切ですが、とくに安全管理については確固たる方針が必要です。絶対に事故を起こさないため、誰が、何を、どのようにやるのか、明確な方針が必要です」と強調する。

 そこで水田所長は、現場の安全管理について、すべての作業員に『念仏と完結』というキーワードを徹底させています」

「えっ?『念仏と完結』ですか」と、思わず私は問い返していた。

「『念仏』というのは、当作業所のスローガンである『点検・確認・危険予知』を常に念仏のように復唱し、実践することによって、自然と危険予知ができるようになり、安全に作業が進めることができます」

 ああ、なるほど。要は「点検・確認・危険予知」という3つを肝に銘じるということである。

「『完結』とは、中途半端で作業をしない、ということです。何事も『100%安全だ』と確信したうえで行うこと。そのためには三現主義で徹底的に確認して作業をすることです」

三現主義とは、現場、現物、現実という三つの「現」を重視すること。問題が発生したとき、机上で判断するのではなく、実際に現場に行き、現実を確認することで対策を立て、解決を図る。机上の空論ではなく、現場でこそ、より正しい判断を下すことができるという、品質管理の原則である。

「日頃の安全管理で、最も有効なことは、やはり安全パトロールだと思います。作業所と協力会社、職長会が協力し合って、隙間のないパトロールを行うことにより、安全管理はより向上すると確信しています」と胸を張る。

職長会のスローガン「すぐやる、

必ずやる、できるまでやる」

 職長会の名称は「武蔵会」。水田所長の「念仏と完結」を受けて、職長会のスローガンは、「すぐやる、必ずやる、できるまでやるを掲げる。 

34歳と若い永田康二会長を中心に、安全委員会の岩崎雅哉副委員長、衛生委員会の松山助一さん、環境委員会の長尾庸行さん、詰所委員会の中村千広さん、駐車委員会の柴義巳副会長、顧問・会計の小田孝夫さんと牟田靖さん、書記の梅田和司さんというみなさん。不安全行動を防止する「声かけリーダー」として、それぞれ、よく目立つ赤いヘルメットに赤い腕章を付けている。

 委員会ごとに、「吊り荷の下に人を入れない、入らない」(安全)、「照明はこまめに消しましょう」(衛生)、「リサイクルヤードの整理整頓、正しい分別の指導」(環境)、「こまめに消灯、身近なエコロジー」(詰所)といった目標を掲げている。

 職長会では、毎週の安全パトロールはもちろん、毎朝、最寄り駅の西国分寺駅から現場までのルートの各所に立って、入場する作業員の誘導、現場の周囲の清掃・草むしりなどに精を出す。

とくに、元請職員と職長会メンバー総出で、現場をいろどる数十個のプランターの花の植え替えを行っている。その様子は、「心優しき男たち」と評され、近くの学校からお礼のことばも届いたとか。「喜んでもらえると、うれしいですね」と永田会長はいう。

同現場は、これからがピーク。毎日10人以上の新規入場者を迎えるとともに、最大2000人の作業員が働くことになる。

「作業員のみなさんも、安全についていろいろ考え、注意をしていると思いますが、絶対に事故を起こさないという気持ちをいつも忘れないで、業務を遂行してほしいですね。暑い日が続きますが、健康には十分注意して、『念仏と完結』、これを忘れないでほしいと思います」と水田所長は、柔和な顔を引き締めた。

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2008/06/30

JV晴海新築工事作業所(仮称)

「そら」2008年5月号 現場拝見 第7回

JV晴海新築工事作業所(仮称)

長谷工 コーポレーション

最新の注目スポット・晴海にスタイリッシュなマンション建設中

東京都中央区晴海。最寄り駅は、都営大江戸線勝どき駅。都心のベイエリアは、これまで、豊洲や月島などの開発が話題をさらっているが、ここ晴海地区は、最新の注目スポット。周辺は開発が進み、道路も碁盤の目のように整備されてきている。開発計画ごとの敷地面積も比較的広いといった条件がそろっている。

晴海5丁目に、SRC造地下1階地上20階建てのマンションが建築中だ。建設敷地は、朝潮運河に沿いに位置し、東西に長い。敷地面積は、約1万2000㎡。その敷地の両側を朝潮小橋という橋が縦断している。朝潮小橋を境に東西に分かれ、西(W)敷地には438戸と378戸の住宅棟と10階建ての自走式駐車場(448)、東(E)敷地には378戸の住宅棟とタワーパーキング(100)が計画されている。

白と黒を基調としたスタイリッシュな外観デザインの住宅棟、水景施設を取り入れた中庭、地球温暖化防止のための屋上庭園や屋上緑化などが予定されている。2009年2月完成予定。

建設地の北側境界から朝潮運河の護岸までの距離がわずか10m程度と隣接している。そのため、「港湾法による規制もあり、場面場面で港湾局や関係官庁との調整が必要です。また、深層地盤改良杭、山留め工事、根ぎり工事などの基礎工事における止水、土留め、孔壁の崩れ防止などの配慮が必要で、敷地内の水位や掘削部周辺の土圧・変位などを常時測定する必要がありました」と荻原和博所長は語る。

配慮は施工だけにとどまらない。高潮対策のため、敷地廻りに3mの擁壁を設け、完成時の地盤は、現状より3m高く設計されている。

当たり前のことを当たり前にやる それが安全のために最も大切

荻原所長は、「建設部門のモットーである『信頼の品質を、心をこめてお客様へ』が、設計施工にたずさわる長谷工コーポレーション全員の共通の認識になっています」と力強く語る。「すべてにおいて安全が最優先される」ことを基本方針に掲げ、決して妥協を許さない姿勢を貫く。

「絶対に危険を見過ごさない。悪いものは即是正し、常に安全を確保して作業を進めるといった強い意志を持つことが大切です。そして、作業前に、何が危険か、どうすれば安全かを考えること(リスクアセスメントの実施)。ときには、一生懸命のあまり、周りを見失って、間違いを起こしてしまうことがあるかもしれない。それを避けるためにも、やらなければならないことは絶対に行い、やってはならないことは、絶対にやらない」

当たり前のことを当たり前にやること、それが最も単純で、最も大切ことなんだと、所員や作業員には言い聞かせている。

また、「常に成長し、自らのレベルアップを図る大切さも強調しています。常に問題意識を持つこと。なんにでも当事者意識を持って、『これで問題はないか?』と、日々新たにな気持ちで、自分のこととして受け止めて考えることが大切なんです」と強調する。

品質についても、「きれのいい仕事」「プロの目に耐えられる仕事」に徹するとともに、図面だけに頼らない、現場を重視した施工管理を心がけている。

「常に、エンドユーザーの立場で考えることが大切です」。それにより、アフタークレームをなくしていくことができるのである。

アットホームな雰囲気で 新規業者も溶け込める環境づくりに励む

職長会は、「シーサイドはるみ職長会」という名称で活発に活動している。

500人前後の職人さんが働いていますが、堅苦しくないアットホームな雰囲気で、新しい職人さんもすぐ現場に溶け込める環境をつくっています」と盛田英幹主任は語る。

シーサイドはるみ職長会は、「安全」「美化」「分別・環境」「駐車場」の4つの専門委員会に分かれ、それぞれ積極的な活動を展開している。

「安全委員会」は、毎日の安全確保のため、現場点検を実施。毎週火曜日には、「グットジョブパトロール」を行い、工程の打ち合わせの際に、他の模範となるようなよい仕事、よりよい現場の環境についても発表し、お互いの向上心を刺激し合っている。

「美化委員会」は、清掃道具を管理し、一斉清掃の運営を行っている。毎週火曜日と金曜日の午後に約30分間、一斉清掃を行い、清掃範囲の分担や清掃状況、出されるゴミの分別状況もチェックしている。

「分別・環境委員会」は、ゴミの分別管理、休憩所や仮設トイレの清掃・片付け状況の管理を実施している。

「駐車場委員会」は、入場してくる車輌の管理および駐車場の整備を行っている。

 このほか、職長会では、年2回、すべての作業員を集めて親睦会も開催。業種を超えてコミュニケーションを良くして、仕事上で必要な安全な声を掛け合い、前工程や後工程の業者間における細かい調整を行いやすい雰囲気づくりに一役買っている。

さらに、空き缶のプルトップを収集し、車椅子と交換する社会貢献活動も熱心に行っている。プルトップ8,000kg分を集めると車椅子1台になり、同社の全現場共通の活動となっている。

ここ晴海からは、変貌著しい東京を見渡すことができる。朝潮運河をはさんだ向かい側には、超高層マンションやスーパーマーケットからなる大規模再開発プロジェクトがある。湾内を行き交う船、羽田空港に離着陸する飛行機、お台場やレインボーブリッジも一望できる。

毎年8月の第2土曜日に開催され、60万人以上の観客が詰めかける東京湾大華火祭。その打ち上げ場所は、この現場のすぐ近くである。周辺の混雑をよそに、ゆっくりマンションから見物できなんて、それこそ最高の癒し、ステータスなのだろうな、と思う。

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2008/04/30

中央雨水1号貯留幹線2工区

「そら」2008年3月号 現場拝見  第6回

中央雨水1号貯留幹線2工区

間・東洋・飛島・京葉工管建設共同企業体

シールド工事の防音ハウスが

一夜限りのライブハウスに

JR京葉線の千葉みなと駅前の一角に、「中央雨水1号貯留幹線2工区」のシールドマシンの発進基地がある。

千葉市中心部では都市化の進行とともに、大雨の時に雨水が地下に浸透しにくくなり、短時間で大量の雨水が下水道や河川に集中するようになった。近年、局地的集中豪雨が頻発しているが、降った雨が下水管に流れ込む割合は50%ほど。そのため、雨水の流出量が増大し、床下・床上の浸水被害も発生しやすくなっている。こうした問題を解決するため、平成17年10月から、地下に雨水を一時的に貯めるためのトンネルを建設中だ。

この雨水貯留管が整備されると、雨が下水管に流れ込む割合は20%アップし、雨で薄められた汚水が川や海へ放流される回数を半減させて、汚濁防止にも役立つという。

シールドマシンを稼動させるトンネル建設は、昼夜連続の作業のため、どうしても作業音がしてしまう。周辺の環境に配慮して、騒音や振動を極力カットするため、シールドマシンの発進基地は、巨大な「防音ハウス」で覆われている。

そのシールドの発進式を行った平成19年3月25日、この防音ハウスが一夜限りのライブハウスに変身した。山田貴子トリオによるジャズ演奏が、抽選で集まった230名の前で催されたのだ。防音ハウスでジャズライブとは、なんとも粋なはからい。心地よいジャズのビートとともに、みなさん防音効果も体験できたのでは?

見学した小学生から「ケガをしないで

がんばって」と感想文

作業基地となるシールドの発進立抗は、深さ38m。安全かつ迅速に昇降するため、エレベーターも配備されている。山口忠美所長(間)のご案内で、私は、地下38mにエレベーターで降り、泥水加圧式シールド工法の現場を見学させていただいた。

地盤の改良を省略するため、炭素繊維などで補強した新素材による土留壁をシールド機で直接切削している。これは、発進防護工、到達防護工と呼ばれる工法である。

トンネル工事は、目に見える部分が少ないため、その実態は一般にあまり知られていない。暗く狭い地中で、泥にまみれた壮絶な現場を想像するかもしれない。しかし、目の前に広がるトンネル内は、土砂もなくきれい。快適職場にも認定された現場は、毎日、たくさんの見学者が訪れる。工期内で2,000名を想定しているそうだ。幼稚園生と保護者が見学した際、現場をイメージして描いてもらったという壁面のイラストが、あたたかな雰囲気をつくっている。

「小学生の見学会のあと、ケガをしないで、がんばってくださいという感想文が寄せられました。所内全員が励まされるとともに気を引き締めることで、安全意識の向上にもつながりました」と山口所長は語る。

坑内には、50mごとに色を替えた蛍光灯が設置され、とても明るい。常に距離感を意識させるとともに、非常灯としても活用されている。従来は、個々に行っていたシールド掘進整備の運転と制御は、地上の中央制御室で、リアルタイムで集中管理されている。

山口所長は、この現場の前は、杜の都・仙台の広瀬川河畔で、シールド工法による電力洞道トンネル工事を担当されていたそうだ。

「シールド掘進とセグメント(コンクリートと鋼製の専用壁材)の組立作業という、昼夜連続の繰り返しで18ヶ月もの長期間にわたりトンネルを掘り進めています。

その間、約20,000回以上も立坑での荷役や資材搬送の作業があります。さらに、1日100台も場内を車両が通行して、残土の運搬や資材の搬出入に当たります。

長期間の繰り返し作業の馴れとマンネリ化による不安全行動や設備・機械類のトラブルの災害を防止するため、二重三重の安全対策をルール化し、遵守するよう日常的に安全衛生活動に取り組んでいます」と強調する。

所長自ら種から育てた四季折々の

草花で現場のイメージアップ

不安全行動災害の防止のため、安全掲示板は、だれが見てもはっかりわかるものを設置した。そして、所員の顔写真と行動目標や日々の進捗状況を明記した。

安全のための所長方針「作業所全員による安全意識の向上を図る」ため、①本工事特有の危険要因の摘出と対応策の完全実施。現場固有の安全基本ルールを設定し、完全に遵守させる、②教育・訓練による安全作業の充実と定着を図る。定例・特別教育、避難・消火・救護訓練等の実施、③コミュニケーションの充実を図る。JV職員・協力会社が一体となって快適な職場環境を目指す。

I S O所長方針「豊かな環境づくりに貢献する」ため、①ごみはリサイクル資源と廃棄物に分別し、処分する、②再生資源の利用や材料を余らせない工夫をし、資源を有効に活用する、③使用していない電気・照明はOFFにし、省エネに努める、④騒音・振動の発生を抑制するため環境手順を遵守し、作業を行う、⑤重機・車輌はアイドリングストップをし、温暖化防止に努める。

さらに「価値ある製品・サービスを提供する」として、次の5点を挙げている。①作業手順教育は全員が受講し、品質向上のため作業内容をよく理解する、②材料受入検査を実施し、合格した材料のみを使用する、③材料は置場を決めて識別・養生し、品質の維持と使用の間違いを防止する、④検査機器の点検・管理を実施し、適正な機器を使用する、⑤工程内検査を実施し、適合品を次工程へ引き渡す。

「遵守事項」は12か条。①いつもみんなに大きく元気な声で挨拶、②安全指示は具体的に、③高所作業は安全帯を着用でなく使用する、④決められた作業行動は必ず指差呼称で確認、⑤立坑の荷役は下部作業者の避難の確認後、開始する、⑥入坑時は全員トラチョッキを着用、⑦坑内の通行規準を遵守、⑧機械の点検時は元電源OFF・投入禁止札・施錠をする、⑨機械・設備の運転は取扱い責任者が行う(有資格者でも不可)、⑩玉掛ワイヤーはロック止めを使用(さしワイヤー不可)、⑪搬入資機材は所定の位置・置き方で整理、⑫搬出入車両は原則的に前進で入退場する(右折禁止)。

ガーデニングが趣味という山口所長は、現場のイメージアップのため、自ら種から育てた草花を防音ハウス前の花壇に植えている。山下寿弘さんを中心とする職長会も、水やりなど協力している。

「工事は、全体の61%の掘進を無事故で完了しています。残りも急カーブの施工や重要な構造物に近接するなど、困難なことが山積みしています。さらに安全整備の創意工夫をして、全工期の無災害記録達成に向け、作業所全員一丸となって臨みたいですね」。山口所長は力強く語った。

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2008/04/21

日本赤十字社医療センター建物建設工事

「そら」2008年1月号 現場拝見 第5回

日本赤十字社医療センター建物建設工事

施工/大林組

「命を守る病院をつくっている」

という使命を忘れてはならない

今回の建設現場は、東京・渋谷区の日赤広尾医療センター。広尾は、都内でも有数の高級住宅街として知られ、邸宅や高級マンションが多く見られる。

地下RC造3階・地上S造13階建て、延べ約8万2,000㎡の広さを誇る新しい医療センターは、病床数は670床。診療科目は、現行の24科から31科へ増えて、救命医療が充実する。工期は、2006年11月から11年3月まで。現在、駐車場などになる地下部分を掘削中だ。

昭和50年に建設された医療センターは、老朽化が著しく、現行の建築基準法(昭和56年改正)に定められている耐震性を備えていないため、関東地域での巨大地震が発生した場合、病院機能の停止というような事態も強く危惧されていた。

そこで、地域医療の使命を果たし、非常災害時には医療救護の拠点とするため、建物の全面改築となったわけである。

新たな医療センターの建設にあたって、免震構造を採用した。積層ゴムとダンパーで構成された免震装置を地盤と建物の間に設置することで、耐震安全性が大幅に向上する。

また、通常は670床だが、大規模災害の発生時には、仮設の病床を約1,000床増やし、傷病者を収容できるようにとする。

赤十字の「十」をかたどった建物の屋上には、患者および医薬品の搬送のためのヘリポートも整備する予定だ。

「工事を行うに当たり、自分たちは、いま何をつくっているかを理解することが問題です。命を守る病院をつくっているという使命を忘れてはいけません」と田村所長は強調する。

赤レンガ塀の撤去、

樹齢300年の

赤松の移植、1日250台のダンプ

以前、日赤通り側は、医療センターの周りを赤レンガ塀が囲んでいた。工事施工に伴い撤去し、日赤の敷地を提供して、2.5mの歩道を4mまで拡げた。また、北側の区道沿いも、1mの歩道を2mに拡張した。日赤通りの赤レンガ塀の一部は、医療センター正門の両脇などに復元することになっているそうだ。

この医療センターの敷地は、もともと延宝年間から佐倉藩堀田家の下屋敷だった。敷地内には、当時を偲ばせる「二代目宗吾の松」といわれる推定樹齢300年の赤松があった。その移植も大きな課題だった。歌舞伎でも知られる佐倉宗吾ゆかりの松ということから、江戸時代からある大木を盆栽仕立ての美しい樹形のまま移動させるという、大がかりな工事となった。

「枝張り18mもの赤松を200トンクレーンに吊り上げ、トレーラーに載せて移動させる様子は、圧巻の一言につきましたね」と田村所長は振り返る。

また、赤松の移植のほか、これまでに最も大変だったのは、工事現場の真ん中を通っていた一般道を4段階にわたって切り替えたこと。現場のすぐ脇に建っている既存の医療センター(病棟)の患者や関係者の安全を確保するため、切り替え作業は深夜に行った。事前の告知から慎重に対応したため、クレームはなかったそうだ。

現在、1日250台のダンプトラックが出入りしている。江戸時代からほとんど道のかたちが変わっていない現場一帯は、道が狭く、坂道が多い。とくに大型車は、曲がり角で歩行者や道路標識に接触するおそれがある。

そのため、出入りする工事車両の運転者に対し、搬入許可、日時、経路の指定などの伝達を徹底し、十分注意するよう呼びかけている。また、現場前の路上などで待機や駐車をしないよう、入退場のときは、必ず窓ガラスを開けて、警備員の誘導に従うよう定めている。

「飲みものあげて、と現場のみんなに声をかけるなど、とても気さくな所長です」と語るのは、職長会会長の木村貴之さん(鈴木組)。貴之さんは、父・市夫さんとともに、田村所長とは2代にわたり20年のつきあいになる。

「職長会を立ち上げてまだ日が浅いので、まわりのベテランの職長さんに支えられています。現場のルールを新規入場者にも徹底していきたい」と木村会長はいう。

現在、所員32人、作業員170人。これから工事の進展にともない、作業員の人数は800~1000人にもふくれ上がる。

「若い所員は、現場の熟練工から、そんなやり方ではダメだと指摘されるなど、いろいろ教えられています」と田村所長は笑顔で語る。所長と会長の気負いのないやりとりをながめていても、現場のコミュニケーションがよくとれていることが伝わってくる。

「仕事に誇りを持ち、魂を込めて

つくる」よう作業員らに指導

作業所の基本方針は、「顧客満足の向上を自負した継続的改善の実践に基づき、顧客が安心し、満足し、誇りを持って使うことのできる建物を提供し、もって、当社に対する信頼を深め、会社の一層の発展を図る」とある。

現場の施工方針として、①世のため、人のための建物であることに誇りを持って誠実に魂を込めて創る、②コミュニケーションを重ねて、全員のベクトルを一致させる、③稼動中の病院の敷地内であることを意識し、現場を常に清潔に保つ、④メンテナンスの容易な建物を作る、⑤耐久性のある材料を選択する、という5点を挙げている。

さらに、管理のポイントとして、①躯体の場合は、書類だけに偏向しない現場重視の施工管理、②外装の場合は、精緻な図面検討と正確な施工管理、③内装の場合は、性能(遮音・振動)の実証と美観の一致を挙げ、施工中に瑕疵の兆候があらわれたときは徹底的につぶす、としている。

経済性を保つためには、「費用対効果を常に考えて、必要なところには資源(人・モノ・金)を投入し、必要のないところには投入しない」と実にわかりやすい。

所長は、「薄肉PCa折り曲げ型枠工法」を開発したことでも知られている。これは、コンクリート工事の省力化とスピードアップのため、現場での型枠材の加工、組立て、解体作業を極力減らす工法の1つ。合板ベニヤを使用しないため、熱帯雨林の伐採などの環境破壊の改善や現場での廃材利用にも有効とされている。

「細かい1つひとつの作業を積み重ね、決して手抜きをしたり、まあいいやという雰囲気にしない。全工期無事故無災害で、すべての終わったとき、お互いにっこり笑って別れたいね」とあくまで穏和な表情で、しかし毅然とした態度で田村所長は語った。<

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2008/04/15

丸の内トラストタワー本館新築工事

「そら」2007年11月号 現場拝見 第4回

丸の内トラストタワー本館新築工事

戸田建設

これまで培ってきた技術力を結集した超高層ビル

東京駅丸の内側に続き、八重洲口側でも超高層ビルの建設が最盛期を迎えている。新丸ビルの完成が騒がれていた頃に比べて、八重洲口側の駅側の街並みは、驚くべき変化を遂げている。

駅前の「丸の内トラストタワーN館」の隣に建設中の「丸の内トラストタワー本館」は、地下4階・地上37階建て、高さ178mという超高層ビルだ。

先進の高性能オフィスを中心に、2737階に外資系の5つ星クラスのラグジュアリー・ホテル「シャングリ・ラ」が入居する複合施設となる。N館を上回る規模の開発として、2008年11月の竣工予定。

建物には、台風から大地震まで、さまざまな原因によって生じる揺れを吸収する「粘性ダンパー」と大地震の揺れを吸収する「履歴ダンパー」を組み合わせた「ハイブリッド制震構造」を採用。幅広い揺れに対して高い制震効果が期待できる。

また、制震装置として屋上に「ハイブリッドマスダンパー(HMD)」を2基設置。三十一回り上階にあるホテルの客室の風揺れを吸収・低減し、強風時にも揺れを感じさせない優れた居住性能を確保している。

そのほか、直接基礎と杭基礎を併用した「バイル・ラフト基礎」、鋼管コンクリート柱(CFT柱)の中に鉄筋を設けて高軸力に対応する「戸田式鋼管コンクリート柱(TO-SCFT)」など、新技術の展開を図っている。

「着工前の計画・設計に2年半を費やすなど、当社がこれまで培ってきた技術力を結集した建物です。このハイブリッド制震構造などの技術を今後の高層ビル建築に積極的に役立てていきたいと考えています」と大谷清介統括所長は語る。

現場の方針を全作業員に

伝える「丸の内」ルール

大谷統括所長、宮上晃一作業所長、野坂浩司副所長の3人のご案内で、さっそく現場を拝見させていただいた。

朝礼広場には「丸虎ゲート」が設置され、大きな姿見が掲げられてあり、作業員は毎朝、服装・安全帯のチェックを行う。

これは、「丸虎会」という職長会が作成したもの。「丸虎」の「丸」は地名の丸の内から、「虎」は建物名のトラストタワーから名づけたそうだ。

丸虎会のスローガンは、「安全意識・仲間意識の追求・実現」。作業所のスローガンである「施工美の追求・実現 ひとつひとつをていねいにきちんとやろう!」に則り、全作業員が、1つの目標に向かって安全意識を高め、無事故・無災害を達成しようという決意がこめられている。その対策として、うっかりミスやぼんやりミスをなくし、仲間を守るため、ひと声掛け運動に力を入れている。

広場の掲示板には、丸虎会組織表が貼られていた。「わからない事は私達に聞いて下さい」と赤い文字。その下に、大きなカラーの顔写真が並び、ひと目でメンバーの名前と顔がわかって有難い。

また、「丸の内ルール」と記されたポスターもたくさん貼られている。例えば、「トラック荷台での荷捌き作業は、床開口部周囲で行わない。最低2mは確保する」、「10cm以上の段差がある所での立馬作業は段差から50cm以上離して立馬を設置する」、「積荷が接触しても、強風でも絶対に落ちない玉掛方法とする」など。具体的なイラスト入りで、私のようなシロウトにもわかりやすい。

東京駅の新幹線ホームに隣接する現場だけに、とくに地上階の風散防止に注意を払っている。

このポスターは、丸虎会の3つのサークルの1つ、セーフティサークル(サークル長・山門大志さん・向井建設)が、作業所の方針を全作業員に伝えるために作成している。

セーフティサークルは、「作業所内の安全推進」を基本方針に、安全朝礼や安全大会の司会進行、全職長による安全パトロール、持込工具・玉掛ワイヤーの一斉点検やIDカードの使用状況の管理などを行っている。

クリーンサークル(センター長・林勝巳さん・オリテック)の基本方針は、「3RE運動と美化運動の推進」。クリーンBOX(清掃用具入れ)の設置および管理、作業員を集めての分別講習会、産業廃棄物の分別管理、一斉清掃の自主運営などを通して、混合廃棄物ゼロの達成をめざしている。

コンフォートサークル(サークル長・田淵浩之さん・三機工業)の基本方針は、「快適職場の環境づくり」。意見箱の改善提案や安全標語の募集から、詰所やトイレの清掃管理、詰所パトロール、一般ゴミの管理・分別の徹底、置き花の飾りつけ、場内・場外の作業員モラルの向上、レクリエーションの準備・実行など、多岐にわたる。

緊急地震情報「ユレキテル」で危険を回避して安全を確保

続いて、氷やスポーツ飲料などが常備された熱中症対策室、安全帯置場、喫煙所などを見学。詰所では、スピーカーと赤色の回転灯が目についた。

「これは、気象庁から受けた速報に地盤や構造物の特性のデータを加え、独自に予測震度を解析するシステム『ユレキテル』です。当社が開発したもので、今年4月から、全国約500の作業所に情報を伝えています」と大谷統括所長。

気象庁の地震観測網で検知した初期微動から、震度と到達時間を瞬時に予測し、実際に地震が到達する数十秒前に警報を発する仕組みになっている。

2007年7月16日、午前10時13分。タワークレーンが建築資材をつり上げようとすると、その運転台の画面に「震度4の揺れが来る」という緊急地震情報が表示された。新潟県中越沖地震の発生を検知したのである。 

ただちに詰所や場内にいる約400人の作業員へスピーカーと赤色の回転灯で警戒を呼びかけた。揺れは震度3。建設中のビル上層部では、とくに大きな揺れとなったが、事前に安全を確保したため、けが人はなかった。

揺れの直前に情報が届いたとしても、慌てて立馬などから足を踏み外す危険性もある。そのため、3ヵ月に1度、地震が発生した時、すみやかに対応できるよう総合訓練も実施している。警報が発せられると、より安全な場所に移動し、安全な姿勢をとる。危険物や火気を扱っている作業員も、作業を中止して安全な場所に移動するよう指導している。

ちょうど職長会室で、丸虎会の川口昇会長(向井建設)と会った。大谷統括所長といくつもの現場をともにしている川口会長は、所長の信頼も厚い。その方針をよく理解し、現場でリーダーシップを発揮している。

「安全意識・仲間意識の追求・実現」にまい進する丸虎会は、同社の他の現場の職長会も牽引する立場だとか。実に頼もしい。<>

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2008/01/11

丸の内トラストタワー本館新築工事

「そら」2007年11月号 現場拝見  第4回

戸田建設

これまで培ってきた技術力を

結集した超高層ビル

東京駅丸の内側に続き、八重洲口側でも超高層ビルの建設が最盛期を迎えている。新丸ビルの完成が騒がれていた頃に比べて、八重洲口側の駅側の街並みは、驚くべき変化を遂げている。昼休みの時間になると、駅周辺でたくさんの作業員の姿を見かける。

駅前の「丸の内トラストタワーN館」の隣に建設中の「丸の内トラストタワー本館」は、地下4階・地上37階建て、高さ178mという超高層ビルだ。

先進の高性能オフィスを中心に、2737階に外資系の5つ星クラスのラグジュアリー・ホテル「シャングリ・ラ」が入居する複合施設となる。N館を上回る規模の開発として、2008年11月の竣工予定。

建物には、台風から大地震まで、さまざまな原因によって生じる揺れを吸収する「粘性ダンパー」と大地震の揺れを吸収する「履歴ダンパー」を組み合わせた「ハイブリッド制震構造」を採用。幅広い揺れに対して高い制震効果が期待できる。

また、制震装置として屋上に「ハイブリッドマスダンパー(HMD)」を2基設置。三十一回り上階にあるホテルの客室の風揺れを吸収・低減し、強風時にも揺れを感じさせない優れた居住性能を確保している。

そのほか、直接基礎と杭基礎を併用した「バイル・ラフト基礎」、鋼管コンクリート柱(CFT柱)の中に鉄筋を設けて高軸力に対応する「戸田式鋼管コンクリート柱(TO-SCFT)」など、新技術の展開を図っている。

「着工前の計画・設計に2年半を費やすなど、当社がこれまで培ってきた技術力を結集した建物です。このハイブリッド制震構造などの技術を今後の高層ビル建築に積極的に役立てていきたいと考えています」と大谷清介統括所長は語る。

現場の方針を全作業員に

伝える「丸の内」ルール

大谷統括所長、宮上晃一作業所長、野坂浩司副所長の3人のご案内で、さっそく現場を拝見させていただいた。

朝礼広場には「丸虎ゲート」が設置され、大きな姿見が掲げられてあり、作業員は毎朝、服装・安全帯のチェックを行う。

これは、「丸虎会」という職長会が作成したもの。「丸虎」の「丸」は地名の丸の内から、「虎」は建物名のトラストタワーから名づけたそうだ。

丸虎会のスローガンは、「安全意識・仲間意識の追求・実現」。作業所のスローガンである「施工美の追求・実現 ひとつひとつをていねいにきちんとやろう!」に則り、全作業員が、1つの目標に向かって安全意識を高め、無事故・無災害を達成しようという決意がこめられている。その対策として、うっかりミスやぼんやりミスをなくし、仲間を守るため、ひと声掛け運動に力を入れている。

広場の掲示板には、丸虎会組織表が貼られていた。「わからない事は私達に聞いて下さい」と赤い文字。その下に、大きなカラーの顔写真が並び、ひと目でメンバーの名前と顔がわかって有難い。

また、「丸の内ルール」と記されたポスターもたくさん貼られている。例えば、「トラック荷台での荷捌き作業は、床開口部周囲で行わない。最低2mは確保する」、「10cm以上の段差がある所での立馬作業は段差から50cm以上離して立馬を設置する」、「積荷が接触しても、強風でも絶対に落ちない玉掛方法とする」など。具体的なイラスト入りで、私のようなシロウトにもわかりやすい。

東京駅の新幹線ホームに隣接する現場だけに、とくに地上階の風散防止に注意を払っている。

このポスターは、丸虎会の3つのサークルの1つ、セーフティサークル(サークル長・山門大志さん・向井建設)が、作業所の方針を全作業員に伝えるために作成している。

セーフティサークルは、「作業所内の安全推進」を基本方針に、安全朝礼や安全大会の司会進行、全職長による安全パトロール、持込工具・玉掛ワイヤーの一斉点検やIDカードの使用状況の管理などを行っている。

クリーンサークル(センター長・林勝巳さん・オリテック)の基本方針は、「3RE運動と美化運動の推進」。クリーンBOX(清掃用具入れ)の設置および管理、作業員を集めての分別講習会、産業廃棄物の分別管理、一斉清掃の自主運営などを通して、混合廃棄物ゼロの達成をめざしている。

コンフォートサークル(サークル長・田淵浩之さん・三機工業)の基本方針は、「快適職場の環境づくり」。意見箱の改善提案や安全標語の募集から、詰所やトイレの清掃管理、詰所パトロール、一般ゴミの管理・分別の徹底、置き花の飾りつけ、場内・場外の作業員モラルの向上、レクリエーションの準備・実行など、多岐にわたる。

「丸虎会」という名称は、一見、阪神ファンの会かと思ってしまうほど、ちょっとやんちゃなイメージ。それにくらべてサークル名は、セーフティ、クリーン、コンフォートと、とてもスマート。現場の規則を「丸の内ルール」としたところも、押し付けがましくなく、オシャレ。でも、「施工美の追求・実現 ひとつひとつをていねいにきちんとやろう!」というスローガンをしっかり根づかせようという信念が伝わる。

緊急地震情報「ユレキテル」で

危険を回避して安全を確保

続いて、氷やスポーツ飲料などが常備された熱中症対策室、安全帯置場、喫煙所などを見学。詰所では、スピーカーと赤色の回転灯が目についた。

「これは、気象庁から受けた速報に地盤や構造物の特性のデータを加え、独自に予測震度を解析するシステム『ユレキテル』です。当社が開発したもので、今年4月から、全国約500の作業所に情報を伝えています」と大谷統括所長。

気象庁の地震観測網で検知した初期微動から、震度と到達時間を瞬時に予測し、実際に地震が到達する数十秒前に警報を発する仕組みになっている。

2007年7月16日、午前10時13分。タワークレーンが建築資材をつり上げようとすると、その運転台の画面に「震度4の揺れが来る」という緊急地震情報が表示された。新潟県中越沖地震の発生を検知したのである。

ただちに詰所や場内にいる約400人の作業員へスピーカーと赤色の回転灯で警戒を呼びかけた。揺れは震度3。建設中のビル上層部では、とくに大きな揺れとなったが、事前に安全を確保したため、けが人はなかった。

揺れの直前に情報が届いたとしても、慌てて立馬などから足を踏み外す危険性もある。そのため、3ヵ月に1度、地震が発生した時、すみやかに対応できるよう総合訓練も実施している。警報が発せられると、より安全な場所に移動し、安全な姿勢をとる。危険物や火気を扱っている作業員も、作業を中止して安全な場所に移動するよう指導している。

ちょうど職長会室で、丸虎会の川口昇会長(向井建設)と会った。大谷統括所長といくつもの現場をともにしている川口会長は、所長の信頼も厚い。その方針をよく理解し、現場でリーダーシップを発揮している。

「安全意識・仲間意識の追求・実現」にまい進する丸虎会は、同社の他の現場の職長会も牽引する立場だとか。実に頼もしい。

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2007/11/10

圏央道城山八王子トンネル(その1)工事

「そら」2007年9月号 現場拝見 第3回

圏央道城山八王子トンネル(その1)工事

熊谷・前田特定建設工事共同企業体

大型トラックが行き交う

坑内は緊張感に包まれて

圏央道(正式には「首都圏中央連絡自動車道」)は、都心から半径およそ4060kmの位置に計画された約300㎞におよぶ環状の自動車専用道路である。

「圏央道城山八王子トンネル(その1)工事」は、圏央道の山岳トンネルとしては最長となる城山八王子トンネル(全長約3,600m)の東京都区間の一部で、上り線約1、198m、下り線約1、126m の掘削を行っている。

大塚俊英所長のご案内で、掘削が行われている現場へ向かう。濃い緑色の仮囲いや防音ハウスによって、あたりから隔てられている。

防音設備に囲まれた作業基地から本坑に入る。全体に防音設備を施しているのは、「工事の騒音や振動や濁水による周辺環境への影響を最小限に抑えるためです」と大塚所長は丁寧に教えてくださる。

坑内に入ると、ふだん目にすることのないトンネル工事仕様の25トンの大型ダンプトラックが行き交う。安全通路が確保されているものの、重ダンプが通過するたびに、そのパワフルな迫力に圧倒され、私もいやおうなしに緊張感に包まれる。

さらに、トンネルの奥へ。山の中腹から作業坑を建設し、そのあと南北に掘り進んでいるため、4つの切羽がある。そのうちの1つへ向かう。

SF映画に出てきそうな建設ロボット

そのあとの感動の瞬間!

ちょうど、コンクリート吹付機による吹き付け作業が行われていた。半円を描く側面に向かって、ピストルのように突き出たノズル先からセメントが細かく吹き付けられる。

このトンネルは、NATM工法を採用し、砂岩や頁岩によって構成されている。発破や機械等による掘削を併用しつつ、掘削した部分に素早くコンクリートを吹き付けて固め、ロックボルトを岩盤に打ち込み、山自体の保持力を利用しながら、トンネルを掘り進めていく。

頁岩は、海などで堆積したものが脱水・固結してできた堆積岩の一種で、堆積面にそって岩が本のページのように薄く層状に割れやすい性質から命名された。工事に携わる1人ひとりが適度な緊張感を保持しないと、「どうしても事故につながりやすくなる」(大塚所長)という。私が、本坑に入った瞬間、全身に感じたあの緊張感は、作業員1人ひとりの安全に向けた意識の表れと考えると、十分に納得できる。

所長の隣に立ち、私も工事の様子を見守った。どのくらい時間が経過しただろうか? 30度を超す外気、トンネル内の気温は32度を超し、湿度も70 %近いかもしれない。保安帽にマスク姿の私も、じっとしているだけで汗ばんでくる。といっても、風管の整備により換気が行われているため、思ったほど不快感はない。

それより、このような現場で、黙々とスピーディーに作業されているみなさんを思うと、そんなことはいっていられないという気がする。

吹き付け作業終了後、ロボットアームを突き出した、SF映画の地底の王国にでも出てきそうな大型重機ジャンボドリルが登場した。この機械は、切羽に火薬装てん用の穴、ロックボルトの穴をさく孔するための大型せん孔機械である。ロボットアームを振り上げて追いかけてきそうな、一見コワモテの重機だ。

見上げると、運転席に運転者が座り、ロックボルト作業や浮石落としなどのため、前方の左右に突き出たゴンドラのような作業足場に作業員が乗って、トンネルの穴を覆っているビニールシートを取り除いていく。これは、吹き付けるセメントが外部に吹き出ないよう配慮して設置したもの。

ビニールシートが外され、ドリルジャンボがバックして、トンネル内に姿を消すと、目の前にぽっかりと大きな穴が。貫通した向こう側から差し込む光。感動の一瞬だ。トンネルの先には、緑の山々が見渡せる。

かつて、土木の世界には、「女性がトンネル現場に入るのはご法度」という風習があった。それを思うと、こうした貴重な体験をさせていただいたことに感謝したい。

経験や知識を生かし、先回りして

事故が起きない対策を立てる

午後一番の定例の会議には、協力会社所長、職長、職員らが集まる。翌日の作業内容、作業員人数、車両入場予定などの状況把握から、職員による伝達事項の周知など、かなり綿密な打ち合わせを行う。とくに、1日90台もの10トンダンプが出入りしているこの現場は、高尾山の登山コースと隣接しており、大勢の登山客が訪れるため交通事故による第三者災害防止には安全には最新の注意を払っている。

また、ダンプの積載重量計とタイヤ洗浄機も整備した。道路を汚さず、環境美化につとめ、労働安全衛生法令を遵守すること。ごくあたりのまえのことであるが、安全の確保は、こうした地道な努力を続けていくことが大切なのである。

「コミュニケーションは大切だけど、なれあいはダメ。互いの歩調が合わないと、品質や安全は達成できません。現場を支える近隣、施主、協力会社、職員の重いが1つになってこそ、ものづくりができるんです」と大塚所長は力強く語る。

そして、「これまでの経験や知識を生かして常に先回りして、事故が起きない対策を立てておくことが必要です。『このくらいでいいか』といった妥協は禁物。周辺のみなさんの工事に対する理解、発注者との調整、協力会社の職長や作業員の立場になって考え、少しでも働きやすい環境をつくりながら、工事計画を進めることが大切です。こうしたマネジメントができて初めて、質の高い建造物ができるのです」とも。

こちらの作業所では、混合廃棄物量ゼロを目指すゼロエミッション活動を行って、産業廃棄物の発生を抑え、分別の徹底によるリサイクル率の向上につとめている。そのほか、トンネル掘削に伴う、ずり処理では、余掘りをできるだけ減らし、建設土の発生を抑えるとともに、他の工事現場の盛土材として活用するなど、工事間で利用を促進するよう取り組んでいる。

2008年2月の工事の完成を目指し、酷暑の中、昼夜を徹した作業が続く。

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2007/10/10

(仮称)北品川三丁目計画新築工事

「そら」2007年7月号 現場拝見 第2回

(仮称)北品川三丁目計画新築工事

前田建設工業 東京支店

超高層タワーマンションの敷地に

広がる開放的なやすらぎ空間

ここ数年、都内でもっとも劇的な変貌を遂げている街、品川。京浜急行で1つ目の新馬場駅は、江戸時代、東海道の宿場町・品川宿として栄えた。地名は、幕府公用の荷物を運ぶ馬を置いた馬場があったことに由来する。

周辺は神社旧跡が多い。そのため、歴史散歩に訪れる人も増えている。北品川3丁目の名刹・東海寺は、臨済宗京都紫野大徳寺の末寺。品川区史跡めぐりマップのモデルコースにも指定されている。寛永15(1638)年、沢庵和尚を開山として、3代将軍徳川家光によって創建。この東海寺の隣り、山の手通り沿いに建設中なのが、地上36階、総戸数278戸の免震タワーマンションである。

完成予想図によると、縦のラインを強調したシャープでモダンな外観。建物の四隅には、ガラスと若葉色のタイルを配置。周辺の寺社と調和し、圧迫感の少ない、軽やかで清潔感のあるイメージを打ち出している。

マンションのプロムナードは、東海寺の参道と一体化した歩道に。指定文化財をより身近に感じられるように、マンションの敷地内に、品川の敷地や旧街道の歴史などを紹介する「しながわ歴史ギャラリー」を設ける。交通量の多い山の手通りの喧騒から離れ、憩いとやすらぎの場になるように、広場には水盤や水琴窟や手水鉢、ベンチも置かれる。史跡めぐりで疲れた方も気軽に休める。近代的な超高層タワーマンションの足もとに、ほっとするような和の空間が広がる。

私は、これまで数十ヵ所のタワーマンションの建設現場を取材させていただいた。でも、これほど地域住民に広く開かれたやすらぎの場を提供しているマンションは、ほかにはあまりなかったような気がする。

免震装置による耐震・安全性に加え

広い居住空間も実現

前田建設工業は、安全かつ快適な超高層マンションの建設のため、1986年より、60階200mクラスの建物を対象とする「MARC-Hシステム」の開発に取り組んでいる。工期短縮、大スパン構造、超高強度コンクリートの開発にも取り組み、これまでに約40棟を建設。

MARC-Hシステムは、鉄筋コンクリート造の柱・梁・床スラブで構成される純ラーメン耐震工法といわれるものですが、居住空間を広くするため、梁形を極力なくし、天井の高さを確保しています」と浅川勝弘所長(前田建設工業東京支店)は語る。

柱・梁・床スラブなどには、PCa(プレキャスト)部材を用いて、高い品質と耐久性を保った。さらに、工場生産されたPCa部材を使って、施工の合理化と工期の短縮を実現した。

梁の本数は、建物の耐力に比例する。そのため、梁が少なくなると、建物全体の耐力は低下する。そこで、「MARC-Hシステム」に免震装置も併用。オイルダンパー、鉛ダンパー、積層ゴムによって、地震のときの揺れを初期に抑え、震動の低減を図った。

また、外周の梁を逆梁(梁と天井がさかさまになった工法)として、梁成を大きくすることで、個々の梁の耐力をアップ。在来工法では、梁が屋根(天井)を支える形をとる。これに対し逆梁は、天井の上から梁がそれを支え、バルコニーの底面となって外に張り出す。

「エンドユーザーのニーズや嗜好の変化を的確にとらえ、地震や火災のときの安全性はもちろん、広い居住空間(最大約20m×約7・5m)も確保し、さらに風による影響の低く抑えています」(浅川所長)。

ゼロエミッションへの取り組みとしては、プラスチック型枠を用いて、それまでのベニヤなどの南洋材を削減し、使用後もリサイクルしている。解体工事で8品目、仕上げ工事で13品目の分別・リサイクルを実施。また、作業員に分別教育を行い、理解を促している。 

このほか、できるかぎり無梱包の資材を搬入したり、不用材で現場に置く消火セット(水を入れたペットボトルを設置した箱)を作成している。さらに、作業所のエアコン温度(冷房27度、暖房21度)を調節し、温暖化防止に努めている。

所長オリジナルの3Kリボンで

より良い職場環境を目指す!

こちらの作業所の安全スローガンは、「強い意志とおもいやりで心通わせゼロ災害」。

1人ひとりが、『強い意志』を持って状況判断をして安全を実践すれば、より大きな力につながります。そして、自分自身はもちろん、仕事の仲間・家族・まわりの人間に『おもいやり』を持って接し、常に気を配り、励まし合いたい。作業の連絡・調整、危険ポイント、立ち入り禁止区画などの情報を交換するためにも、『心』を通わせたコミュニケーションは必要不可欠です。そうでなければ、安全の維持・管理はできません」と浅川所長は強調する。

この安全スローガンをいつも身近に感じてもらいたいと、所長オリジナルの、「3K(さんか)リボン」(青・赤の2色)を全員に配付、着用をルール化している。

「私が入社したときから、建設業界の3Kのイメージを払拭し、より快適な職場をみんなの力で成し遂げたいと思っていました」。危険を予知し、ケアレスミスをなくし、よりよい職場環境を!という、3つのキーワードの頭文字から3Kリボンと名付けた。

これは、リボンの素材探しから、太さや長さなど試行錯誤し、ウレタンの伸縮性のある素材で手作りしている。

職長会「さつき会」の三上明広会長と根本貞明副会長の左腕にも、所長オリジナルの青い3Kリボンが巻かれている。赤いリボンは新規入場者なので、すぐ見分けがつく。職長たちは、なれない新規入場者の行動に目を光らせるとともに、声をかけるよう心がけている。

リボンの表面には、「安全帯使用」「作業床の確認」など、それぞれ安全意識を高めることばが記されている。なかには「○○命」と大切な人の名が記されている場合も。「作業中に腕章を見ることで、自然と安全意識が高まりますね」と三上会長は、効果について語る。

さつき会では、浅川所長の思いを汲み取り、「今日も無事に家族のもとへ 自らの意志で造る快適職場」というスローガンを完成。作業員全員の名前と写真入ポスターの掲示、一列になっての肩もみ体操、日替わりによる「本日の一言」など、緊張感の中にも、「なごみ」の要素をうまく取り入れている工夫している。

現場の仮囲いに飾られている季節の風景画はセンスがよく、涼しげ。作業所入口付近の街路樹の根もとには、色とりどりの美しい花が植えられている。これは、「道ゆくみなさんに喜んでもらえたら」と、警備員の松尾忍さんが、自腹で購入し世話をしているという。こんなところにも、さつき会のみなさんの心遣いと心意気が感じられて、うれしくなる。

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2007/09/14

浦安東野一丁目新築工事

月刊「つち」2007年6月号

明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…60 最終回

間組 カーサ浦安会

昔・陸の孤島が東京ベイエリアを

代表する都市に発展

千葉県浦安市というと、東京ディズニーランドやベイエリアに立ち並ぶホテル群が思い浮かぶ。

その昔、浦安は、東京に隣接しながらも三方を海と川に囲まれ、陸の孤島といわれていた。アサリなどの貝をむく作業が見られる漁師町だった。青年期を浦安で過ごした作家・山本周五郎の『青べか物語』には、海辺の下町の風景や人情が切々と綴られている。

しかし、昭和三七年に漁業権の一部を放棄して海の埋め立て事業が始まると浦安は大きく姿を変える。浦安の総面積は、かつての約四倍の一七平方キロメートルに拡大し、急速に都市化が進んだ。

昭和五八年には東京ディズニーランドがオープン。周辺に大型リゾートホテルやイベントホールが建設された。六三年にはJR京葉線が開通。新浦安や舞浜の駅周辺の整備も進み、浦安は、東京ベイエリアを代表する都市として発展している。

今回私が訪ねた浦安市東野は、昭和四三年の埋立事業で誕生した。地名は、一面にヨシやカヤが生い茂っていたので、東方にある原野という意味だという。

現在の浦安は、旧市街と呼ばれる浦安駅周辺の層と、開発が進む埋立地に新たに移り住んだ若いライフスタイルの層の二つが水と油のように分かれている、といわれる。お互いに異なる価値観を受け入れ、新たな風土をつくり上げていく途上にある街といえるかもしれない。

現場の周囲にトウモロコシや

スイカの畑をつくりたい

工事現場は、浦安・新浦安・舞浜の各駅からほぼ中央に位置する。マンション名の「パークホームズ新浦安カーサ・セントリア」のカーサは邸宅、セントリアは中心を意味する。浦安の中心に位置する、南欧風のリラックスした上質な住まいをめざしているそうだ。

建物は、鉄筋コンクリート造、地上一四階建。間取りは、二LDK+Nから五LDKで、最多販売価格帯は三一〇〇万円台。

定期借地権(地上権五〇年)というシステムを採用した浦安市初のマンションなので、土地所有権の場合にくらべ、販売価格が三~四割ほど安くなっている。かわりに一か月一、二万円程度の地代がかかる。

職長会の名は「カーサ浦安会」。メンバーは、会長の松田利和さん(南武建設・鳶)、副会長の川田洋市さん(南武建設・鉄筋)、矢野雄一さん(宝盛建設・型枠)、書記の米倉由茂さん(六興電気・電気)、会計の祖師貴博さん(大成温調・設備)、環境衛生委員会委員長の大原寿さん(平子鉄筋・鉄筋)、コミュニケーション委員会委員長の杉本達弥さん(南武建設・型枠)の七人。

鳶職三〇年というベテラン、松田会長のモットーはお仕事柄、「グッド・バランス」。意外だがマンション現場は初めてとのこと。

「長い基礎工事を経て、ようやく地上五階まで立ち上がって、職長会活動も本格化してきました。なごやかな人間関係の橋渡しをして、譲り合うところは譲り合う。でも、馴れ合いにはならないよう、いうべきことはきちんと伝える。硬軟のバランスを大切にしていきたいですね」と穏和な表情でおっしゃる。「とにかく何事も気合一発ですね」と矢野副会長。

先日も職長会メンバーと寺井正春所長(間組)で、ゴルフを楽しんだ。「酒が大好き」という大原さんは、「次は現場で、バーベキュー大会かな」。すると、みなさんから「近くに釣り船があるから、東京湾で釣りもいいね」「夏は屋形船かな」「ビアガーデンもいいね」と次々に声が上がった。

「ちょっと変わったこともやりたいなあ」と川田副会長。「現場の周囲に野菜畑をつくって、トウモロコシとかスイカをみんなに配れたらいいなあ」。「ああ、畑いいね、ぜひやろう」と寺井所長も大賛成。

ふだんは、「工期を守るのに精一杯で、遊びどころではない」(松田会長)ということもあり、現場の結束を固める懇親会の話題でしばし盛り上がった。

ところで、高度経済成長期の一九七〇年代以降に数多く建設されたマンションが、いま次々に築三〇年を迎えている。まさに、マンションも高齢化社会の到来といえよう。

こちらのマンションは、定期借地権により、五〇年後は、原則として借地上に建てた建物を取り壊し、更地にして地主に返還することになる。でも、寺井所長によると、そう簡単でもないようだ。

「鉄筋コンクリートの建造体は、基本的には一〇〇年以上の耐用年数を想定してつくられています。取り壊しの簡単な建物であればよいでしょうが、基本構造設計や設備のメンテナンスや現場の施工精度などのレベルが高く、堅固な建物の場合、取り壊すのはかなり大変な作業です。正直なところ、どうやって壊すのだろうと思いますね」

五〇年後のマンション、いや日本の風景は一体どうなっているのだろう。私自身どうなっているのか、わからないものなあ。

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2007/05/20

千葉市中央区新宿共同住宅新築工事

月刊「つち」2007年5月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…59

日本国土開発  

千葉市中央区新宿共同住宅新築工事

フージャース千葉中央作業所 職長会

駅の目の前に二〇階の

ハイグレード・マンション

今回、私が降り立ったのは、京成千葉中央駅。「千葉」と付く駅名はとても多い。京成千葉、新千葉、千葉中央、千葉寺。JRにも千葉、西千葉、東千葉、本千葉。さらに京葉線には千葉みなと、モノレールには千葉公園と、とても覚えきれない。

千葉県中央区は、市の中心部に位置していることから、行政・経済の中心でもある。

国際的な物流拠点として千葉港の整備やJR千葉駅を中心とする再開発など、一〇〇万都市にふさわしい魅力ある都市づくりが進められている。

臨海部には、県立美術館、千葉港のシンボルである高さ一二五メートルのポートタワー、人口海浜を備えたポートパークがある。

また、大規模な製鉄所もあり、東京湾岸に沿って京葉工業地帯を形成している。

私は、千葉県出身だが、生活圏はほとんど千葉都民といってもよいので、千葉には、まだまだ知らないことがたくさんあるのだなあ、という気がする。

京成千葉中央駅前には、京成ホテルミラマーレを中心に、シネマや飲食店街もある。駅から徒歩一分という目の前には、六月末完成を目指し、地上二〇階のハイグレードな高層マンションが建設中だ。

「ものづくり」に必要な

「愚直なプロフェッショナル

「フージャース千葉中央作業所職長会」は、会長の高橋修さん(伊藤忠丸紅・ボード)、副会長の丸井健二さん(ライクス・設備)と斎藤信弘さん(工藤電機工事・電気)、書記の熊谷英典さん(アクティー・墨出し)、安全委員の川北信夫さん(三浦組・鳶・土工)と小梶正博さん(野村工業・はつり工事)の六人。

「ふつう現場では、内装のボードを貼る人をボード屋さんとか、左官屋さんとか職種で呼ぶことが多いのですが、ここでは、ちゃんと名前で呼び合っています。それだけ、職人さん同士が仲良しというか、仲間意識が強いですね」と高橋会長。

 毎日、約一三〇人が現場で作業している。その中でも職長クラスは、お互いに顔と名前が一致しているので、ファミリー的なつながりがあるそうだ。

職長会では、月二回の現場パトロールを行い、その報告と検討会を開いている。

また、喫煙や詰所の使用については、細かくルールを定めている。

現場での喫煙や飲食は厳禁。喫煙所は、各階のエレベータホールとしている。ただし、躯体施工階および支保工が残っている階での喫煙は禁止。

業者ごとに、名前を記した灰皿缶を一個ずつ渡し、それを各階の喫煙所まで持ち運んで使用する。

休憩のあと、灰皿の吸殻は収拾缶に捨てるなど、火の始末は業者ごとに徹底するようにしている。

 飲み物の後始末も、各職長が管理している。午前一〇時の休憩のときに出たゴミは一二時に、午後三時の休憩で出たゴミは作業終了時までに処分して、ゴミは残さない。

 詰所では、常に整理整頓を心がけ、机の上に、カバンや着替えなどを置いたままにしない。用意されたロッカーにしまう。

新聞はボックスに、空き缶やゴミも休憩のあとすぐに片付けて、作業に戻る。飲み物は一か所にまとめて置く。

 床にゴミや飲食物を放置しない。現在、詰所としているところは、立体駐車場ピットなので、汚すと清掃が大変である。そのため、床を汚さないよう十分注意している。

敷地が限られているため、搬入や搬出のトラックの誘導には、特に気を使っている。

「やはり施工主さんに喜んでもらえる建物をつくりたいですね。お客さまに、より良い住まい環境と安心を提供できるよう、これからもみんなで一致協力していきたい。工期も残りわずかですが、無事故で完成させたいですね」と高橋会長。
 木村司所長(日本国土開発)は、「当社はISO九〇〇一・一四〇〇一の全国展開で、品質基準を守って施工しています。千葉中央駅前にふさわしい建築物となるよう、みんなが一丸となって竣工を目指しています」。

発注元のフージャースコーポレーションのコンセプトは、「基本性能にこだわり、広くてリーズナブルな価格」。

〇〇四年、首都圏マンション供給戸数ランキングでは、埼玉県で第一位、千葉県で第三位にランクされている。

社名のフージャース(Hoosiers)は、廣岡社長が、ホームステイで一時期を過ごしたアメリカ中部インディアナ州の州民の愛称だとか。

こちらの高層マンションは、会社初のタワーマンションとなるそうだ。それだけに内外の期待も高いといえよう。

廣岡社長は、あるインタビューで、建設会社を決めるときは、「マンションに関して特別に高い技術力より、丈夫なものをきちんとつくるという姿勢が大切。いい意味で、愚直なプロフェッショナルをパートナーに選びたいですね」と語っている。

なるほど。不動産も建設も「ものづくり」による付加価値を創造するもの。それには、なにより「愚直なプロフェッショナル」が必要とされる。それは、今回の職長会のみなさんにもぴったり当てはまる気がする。

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2007/05/15

みなとみらい50街区南マンション新築工事

月刊「つち」20074月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…58

五洋建設  東京支店

みなとみらい50街区南マンション新築工事 職長会

みなとみらいに暮らす夢を

実現するタワーマンション

JR桜木町駅から、みなとみらい地区へ向かって、展示ホールのある国際通りに出ると、あたりは電柱もなく、道路もその上に広がる空も広々としている。その先の海浜地帯には高層マンション群が出来上がりつつある。

横浜みなとみらい21中央地区の50街区に建設中のツインタワーマンション「Brillia Grande みなとみらい」は、即日完売したそうだ。

ベイブリッジの夜景、横浜港の汽笛、山下公園の花火も、すべて窓から実感できる。眺望の素晴らしさはもちろん、「みなとみらい」のタワーマンションに暮らすというのは、若い夫婦を中心に十分魅力的なのだろう。

鉄筋コンクリート一部鉄骨造、地下一階地上三〇階建の共同住宅二棟と、これを結ぶ二階建の低層棟で構成される。住宅は一LDKから四LDKの分譲五五五戸。低層棟には住居のエントランスのほか、店舗やミニシアターを配置。駐車場は三八八台分のタワー型で、住宅棟の真中に組み込まれる。

ツインタワーの海側(東側)がオーシャン棟。西側には公園が整備中。そこに面する棟は、パーク棟と呼ばれている。

完成予定の平成一九年末には、周囲で建設中のマンションと合わせて、このあたりの住民は一万人を超えると予想されている。みなとみらいに新しい街が出現する。

建物の出来具合は

職長会の雰囲気に左右される

 こちらの職長会の会長は、第七期会長となる三浦淳一さん(ロジナコーポレーション・雑工)を中心に、副会長の鈴木竜也さん(三建・内装ボード工)、書記の山崎晃生さん(中電工・電気工)と宮崎直樹さん(高砂熱学工業・空調工)、会計の小松健太さん(川本工業・給排水工)、環境委員会長の石倉正義さん(共和商事・造作大工)、清掃委員会長の田中啓介さん(中部建設・置床)、駐車場委員会長の松田章寿さん(三建・ボード工)を中心に活動されている。

さらに、第三期会長の田村富紀夫さん(向井建設)と第五期会長の西村一巳さん(丸喜組・コンクリート打設)もインタヴューに参加してくださった。

第四期会長の勝俊二さんには、以前、所沢のマンション工事の取材の折、お世話になった。急に川崎の現場に行かれたということで、再会はかなわなかったが、奥田敏所長(五洋建設)が、勝さんの携帯に連絡を入れてくださり、元気なお声を聴くことができた。

「休日も携帯にかかってくると(何が起こったのかと)ドキッとする」と、勝さんがおっしゃっていたのを思い出した。

 それにしても、会長がすでに七期目を数えるというのは珍しい。三ヶ月交代制で、三浦会長は今年一月に就任された。大きな現場だけに、赤地に白い二本のラインの入ったヘルメットをかぶった職長さんの数は六〇名を超える。できるだけ多くの方に会長を担ってもらい、一人の負担が偏るのをなくそうという試みらしい。

 田村第三期会長のときに現在の各委員会が立ち上がり、さらに勝第四期会長のときに組織の基礎が固まり、西村第五期会長のときに躯体から内装仕上げ工事へのスムーズな移行が図られた。

「どのような現場でも、一人ひとりの力によって支えられて成り立っています。安全を守るためにも、挨拶などのコミュニケーションが大切だと思います。この現場は、安全に対する意識がとても高く、日々の作業の打ち合わせでも、細かく工程を確認しています」と三浦会長。

工事主任の神浦英樹さん(五洋建設)のご案内で、パーク棟の最上階から一階ずつ降りながら、フロアごとの進捗状況を視察させていただいた。たしかに、現場ですれ違うたび、お互いに「お疲れさまです」と声を出している。その姿勢が爽やかで、気持ちが良い。

下層階では、部屋の間仕切りはもちろん、壁や床やキッチンなどの水回りの設備も仕上がっていた。玄関や部屋の段差はまったくない。壁やフローリングは白でまとめられ、部屋全体が明るく広々としている。濃い目のフローリングにくらべると、傷や汚れも目立ちにくいので、最近、白が人気だとか。ドアは濃い色の重厚な木で、白い部屋を引き締めている。

私は、都内のタワーマンションを毎月のように取材させていただいているが、今回は、逆に、「ほかの職長会の取り組みで面白いと思ったことがあったら教えてください」と職長会の方から質問を受けた。それくらい、自分たちの現場を楽しく居心地のよいところにしようと真剣に取り組んでいるのだ。みなさんの熱気が伝わってきた。

結局、建物の出来具合というのは、大手ゼネコンだから良い物件になるとは限らないのであって、職長会の現場の雰囲気に左右されるといってもよいのではないか?

建設業とひとくちにいっても、建物の完成までには、多種多様の多くの職人さんが関わっている。職人さん同士が協力し合っている現場は、より良い物件に仕上がる。その逆の現場は、出来ばえもそれなりになってしまうのだろう。

ところで、五洋建設の英文名は「Penta-Ocean Construction」。地上に降りると、吹く風に、ほのかに潮の香りがするような気がした。

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2007/04/09

江古田の森保健福祉施設新築工事

月刊「つち」20073月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…57

熊谷組

江古田の森保健福祉施設新築工事

職長会

江古田の森に

世界最大規模の保健福祉施設

「江古田の森」は、東京都中野区の北端、江古田三丁目の旧国立療養所中野病院の跡地にある。

中野病院は、胸部疾患を主な対象とする病床数七〇〇ほどの国立病院だった。詩人の立原道造は、結核でこの療養所に昭和一三年末に入所し、翌年三月に二四歳で亡くなっている。

昭和六一年一月、厚生労働省の国立病院・療養所の再編計画により、新宿区の国立国際医療センターに統合された。国土交通省から払い下げられた四〇〇〇〇㎡の土地は、小高い丘の上に、数々の広葉樹が生い茂り、武蔵野の面影が残っている。

中野区は、民間の資金やノウハウを活用する通称・PFI法を採用し、全国から社会福祉法人を公募した。その結果、福島県郡山市を拠点とする社会福祉法人南東北福祉事業団が選定され、現在、江古田の森保健福祉施設の建設が行われている。

ちなみに、PFIPとはプライベート・ファイナンス・イニシアチブの略称。これまで、公共が提供していたサービスに民間資金を導入し、民間が主導となってサービスを実施すること。一九九二年にイギリスで始まったそうだ。財政難の自治体は、学校、病院、文化施設など、行政がやってきた公共事業をPFI手法を導入して実施する例が増えている。区のPFIによる保健福祉施設整備は、全国的にも初めてだとか。

江古田の森保健福祉施設は、RC造の地下一階、地上七階建。フロアごとに、介護老人保健施設(入所一〇〇床、通所四〇床)、介護老人福祉施設(入所一二〇床、通所四〇床)、身体障害者療護施設(入所一二床、デイサービス一五床)、知的障害者入所施設(入所三二床、デイサービス一五床)、ケアハウス(入所六〇床)、計四三四床という、多種にわたるサービスを提供する複合型福祉施設。

今年二月末に完成すれば、日本はもちろん、世界最大規模の保健福祉施設となる。

壁の「ご近所犬ギャラリー」で

近隣とコミュニケーション

 世界最規模の福祉施設工事の職長会は、田村盛司会長(安井土木・土工)、安全班副会長の横山栄司さん(ダイケン・内装工)、環境班会長の阿曾弘樹さん(池本工業・左官)、同副会長の斉藤孝志さん(見世木工・大工)が中心となって運営されている。

田村会長は、「区民も待ち望んでいた施設ですから、非常にやりがいがあります。私たちの第一の使命はしっかりしたものをつくること。完ぺきな品質、工期厳守、無事故・無災害、周囲への影響を最小限にすることを常に念頭においています。まわりの豊かな自然をできるだけ残し、近隣に気を配りながら、これからも無事故・無災害で臨みたい」。

現場に入る前、私は、周りを囲っている白い壁に、たくさんのわんちゃんの写真が貼られていることに気づいて、思わず見入ってしまった。

タイトルは、「江古田の森の仲間たち」。小型犬から大型犬まで、種類も実にさまざま。いずれも個性豊かで、愛らしい。真っ白な壁によく映えて、「ご近所犬ギャラリー」といった感じ。実はこれも、近隣のみなさんとのコミュニケーションに役立てたいという、職長会のアイディアだとか。

隣接する公園には毎日、たくさんの犬と飼い主さんが散歩に訪れる。その通り道である工事現場の壁の前で、ガードマンが犬の写真を撮らせていただく。スタッフの谷山みどりさんによってA四版に引き伸ばされたわんこの写真は、一枚は飼い主さんへ、もう一枚は、名前と犬種と生年月日を添えて壁に貼り出した。

これが大変評判になり、すでに、壁一面に飾られた写真は二〇〇枚を突破。これを目当てにわざわざ遠くから訪ねてこられ、「ぜひ、うちの犬も撮ってほしい」と申し出る飼い主さんもおられるとか。

これまで、近隣の小学校のお子さんの絵や鉢植えを仮囲いに飾るといった例はあったが、犬の写真を展示しているのは、私が知るかぎり初めて。少子化でペットが子どもの数を超えているという実態からみても、とてもタイムリーというか、おもしろい試みだ。

施設が完成した際には、仮囲いは取り払われる。でも、犬の写真は、施設の廊下などを飾る予定。愛らしい表情で、お年よりの目を楽しませることだろう。

施設の壁面には、「安全・品質・環境・一致団結」という大きなポスターが貼られている。これは、メッシュシート・プリントといって、特殊な布地に直接カラー印刷した特別製。これも業界でも初めての試みだとか。なかなかアート感覚豊かな職長会のようだ。

現在、完成をめざして、仕上げ作業の真っ最中。巨大な施設はバリアフリー。案内してくださった職長会メンバーからは、「ここなら親も安心して預けられそう」という声も。

二〇〇人の作業員の割り振りやフロアマスターの役割の確認なども力が入る。フロアマスターは、各階の①作業通路の確保、②窓閉め、③消火器の設置、④清掃状況、⑤照明の玉切れ、⑥資材の整理整頓、⑦路ばい配線などを細かくチェックしている。

このあたりは、向かいに警察病院の看護学校も建設中。公園も整備され、春になると、周囲の景観は、がらりと変わりそうだ。

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2007/02/08

大林組 四番町マンション計画②

思いやりの心が仲間意識を育て

事故や災害を防ぐ

 こちらの職長会は、君島秀則会長(明城建設・とび・土工)、副会長・衛生環境部会リーダーの露峰修一さん(測信・墨だし)と横谷重太郎さん(斗米工業・左官)、安全部会リーダーの桜井完途さん(ヨウコー・内装工)と津崎賢二さん(クワザワ・軽量ボード工)、衛生環境部会の篠田勉さん(東海ビコー・養生・クリーニング)、広報部会リーダーの織田圭佑さん(東光電気工事・電気工)と金子忠文さん(斎久工業・空調・衛生設備)の8人を中心に運営されている。

 30歳の君島会長はじめ、若い世代が積極的に活動している。取材に入る前、会長は、「緊張するなあ。堅苦しいのイヤなんで」とおっしゃっていたが、「前向きな意見をぶつけて、不平不満なんでもいい合える」(桜井さん)というように、気さくなお人柄を反映して、職長会もざっくばらんな雰囲気のようだ。

「この現場は、ゼロエミッションの重点現場です。『分ければ資源、混ぜればゴミ』をキヤッチフレーズに、作業員一人ひとりが、分別についての知識を持って、作業後のゴミの省力化に高い意識で取り組んでいます」(君島会長)

 各階ごとにフロアマスターが任命され、整理整頓と清掃の状況を確認している。各階に設置された木製の清掃用具置場は、会長の手作り。「廃材のベニア板を利用してつくりました。購入すれば数万はかかりますから。これもコストダウンの一つです」(君島会長)

自ら筆頭に立って実践するリーダーシップが、職長会をまとめる原動力になっているのだろう。

ゴミの分別作業は、職長会総出で行う。たまたま通りかかった人も積極的に手伝うなど、助け合いの精神も浸透している。

「やはり何事も思いやりの心が大切だと思うんですよね。自分のことだけでなく、相手の立場に立って考えて行動する。それが仲間意識を育てて、事故や災害を防ぐことにつながるんだと思います」(君島会長)

 こうした成果が認められ、労働基準監督署から職長会は表彰されている。

 躯体工事も終り、これから本格的に内装・仕上げ作業に入る。「なんでも思っていることをいいやすい会です。クリーニングの仕事は、女性作業員が多いので、着替えるための更衣室を設けてほしいと提案しました」

 お話が弾むにつれて、みなさんは、この四番町の現場の前に、三番町のマンションからご一緒だったということがわかった。君島会長と川上昭二所長(大林組)は、すでに五年のつき合いだとか。

「会のメンバーは、三、四年同じ現場でやっていますから、お互いをよくわかって、良くまとまっています」(津崎さん)

 広報部会の織田さんは、電気工事の仕事について三年目。職長会で決定した安全についての決意表明やルールなどを全体に知らせるため、掲示物の作成をまかされている。「大切な仕事ですからね、頑張ってもらいたい」と若い織田さんに、会長は期待を寄せている。

 インタヴューのあと、最上階の億ションの部屋を拝見させていただくため、エレベーターを待っていた。

すると会長が、「一度仕事をやめたことがあるんです。でもまた、とびを始めて、それから所長とは一緒です」とぽつり。なにがあったのかわからないが、心に響くことばだったなあ。

新しい年も、高い志を胸に、無事故無災害の、より良い職場づくりに取り組んでいただきたい。そう祈った。

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2007/02/07

大林組 四番町マンション計画①

月刊「つち」20072月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…56

邸宅の赴きと豊かな樹木を

継承する高級マンション

千代田区番町は、元祖・高級住宅地。お屋敷や政治家や著名人が居住するマンションが立ち並ぶ。

皇居半蔵濠に面した番町の東端にあたるのが一番町。二番町は、怪談「番町皿屋敷」の舞台ともいわれている。東京メトロ麹町駅もある。三番町は、最も九段寄り。東郷公園や千鳥ヶ渕戦没者墓苑も近くにある。二松学舎大、大妻女子大、東京家政学院、大妻高・中、九段中など、学校が多い。
 図書館・児童館がある四番町。五番町は、市谷駅前から総武線線路沿いに四谷駅の手前まで。土手は外堀公園で、春は「お花見スポット」となる。六番町は、四ッ谷駅と日本テレビ通りの間にある。
 東京都心では、天を突く威容を誇
る超高層タワーはもはや珍しくない。しかし、ここ番町一帯では、見当たらない。

現在、四番町で建築中のマンションは、邸宅は無機質で先鋭的であるよりも、ぬくもりとやさしさが必要であるというコンセプトのもと、一七階建という高さを感じさせない落ち着いた外観。

以前は、私邸であったこともあり、邸宅の赴きと豊かな樹木を継承する全一二八戸の免震マンションになる。

住戸面積五六~二六六平方メートル、販売住戸価格は五六〇〇万円~二億五五〇〇万円台。

JR・都営新宿線・東京メトロの市ヶ谷駅から徒歩三分、同駅のほかに麹町駅など四駅七路線が利用できるという立地もあり、すでに全戸が完売しているという。

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2007/01/15

新別館ビル新築工事②

「玉掛けや高所作業やクレーン作業などをするとき、黄色のフォークリフトなどの技能講習修了者、青色の高所作業などの特別教育修了者、赤色のクレーンなどの免許資格者というように色分けした資格証を首から提げて行います。これで、一目で確認できます」(安全・宮崎さん)

「ゼロエミッションのモデル現場として、分別の確認と指導に力を入れています。廃材や段ボールなどを使いやすいように小さく切って、近隣の住民の方に分けて有効活用してもらうことで、地域との共生にも役立てています」(環境・村中さん)
「赤坂周辺は大型現場が集中していますから、工事車輌で道路が混み合って、地元商店街などに迷惑をかけないよう配慮しています」(衛生交通・佐藤さん)

「オリンピック制度の関係書類を作成しています。パートナー制度も実施しています」(広報・国吉さん)

「オリンピック制度」と「パートナー制度」は、前の現場で初めて耳にした。こちらでは、午前八時の朝礼のほかに、午後1時に昼礼も行っている。そこで行っているのが「パートナー制度」。これは、まず、パートナーを組んだ相手を思いやり、相手の立場に立って考えられる信頼関係をつくろうというもの。

「体調が悪いのに気づかないまま作業をしていると、思わぬところで事故を起こしてしまうことがあります。一日二回、朝礼と昼礼のときに握手をしてスキンシップを図り、お互いに相手の健康状態や服装などをチェックします。自分自身では気づかないところを見つけてもらって、災害を未然に防ぐのです。

さらに、作業現場で、使用する機械や工具、作業場所の安全点検を行い、危険がひそんでいないか、指差し・掛け声確認をします。チェックカードに細かく書き込むことによって、末端の作業員まで、安全を守る意識を徹底しています」(武藤会長)

 そのほか、フロアごとに数グループが集まり、混在する作業について説明する「現地KY活動」も実施している。

また、すべての作業員を対象に、無災害労働を続けた時間、職長・所長などの評価によって「金・銀・銅会員」という三つのランクに分けて登録している。これが「オリンピック」制度。

毎月、銀・銅会員の推薦が提出され、月末には結果が発表される。なかには落ちる人もいる。それぞれ、金・銀・銅に色分けした「御守シール」がヘルメットに貼られる。

 現在、銀会員は二〇数人。金会員になるには、上級職長認定者であること、無災害延労働時間の累計が一二五〇時間(スポットは累計六〇〇〇時間)、奉仕清掃に積極的に参加しているか、安全態度は他の模範となっているか、といった項目に加え、職長面接もある。他の職との連携・調整にリーダーシップを発揮しているかなども問われる。こうしたことを見事クリアした金会員は、四人しかいない。

ちなみに、清水顧問と武藤会長は金会員、日吉さんは銀会員。銀会員には、愛幸桧のネーム入りベスト、金会員には時計などの記念品が贈呈される。

とくに金会員は、実績などの継続的貢献度が高く評価され、「愛幸桧の正会員として登録、各種の特典を与え、以後の所長管轄現場においても優遇する」とある。つまり、「(業界を引退するまで)一生のおつきあい」(中村所長)が保証される。

まさに、金会員は、職長の星。スーパーエリート職長といえよう。

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2007/01/14

新別館ビル新築工事①

月刊「つち」200612月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…55

鹿島建設 愛幸桧

「金」のスーパーエリート職長は

「一生のおつきあい」を保証

東京・赤坂は、その名の通りたくさんの坂があり、それぞれに由来がある。例えば、転坂は、江戸時代から木立に囲まれて暗いうえ道が悪いため、通行する人たちがよくころんだためだとか。そのままの名前だなあ。

坂は、比較的長い坂で、勾配もさることながら、カーブがついているので、アスファルトに滑り止めが施されている。

 この坂の上に、地上一五階、地下二階のビルが建設中。一~九階は事務所、一〇階より上は高級賃貸住宅になる。工期は一九年五月の予定。すでに一五階まで建ちあがり、上棟式目前の取材となった。

 実は、こちらは、二年前に赤坂四丁目の一ツ木通り沿いに建設中だったオフィスビルと同じ中村幸太郎所長(鹿島建設)の現場。

四丁目のオフィスビル完成とともに、明るく優しく愛深くをモットーとする職長会「愛幸桧」メンバーの多くは、六丁目のこの現場へ移動。前の現場で会長をつとめておられた清水浩一さんは、現在、顧問に昇格。武藤憲昭さん(石澤工業・鉄筋)に会長を譲り、次の現場・豊洲のマンションにおられる。お忙しいなか、取材に駆けつけてくださった。

武藤会長を中心に、副会長の宮崎武志さん(大木組・とび)と村中浩二さん(きんでん・電気)と佐藤和義さん(小野工務店・はつり工)と国吉強さん(大浦工測・墨出し)の四人は、それぞれ安全委員長、環境委員長、衛生交通委員長、広報委員長も兼任。

その下で、村松浩さん(京浜美装・養生工)は環境副委員長、島田和幸さん(高砂熱学工業・空調設備)は衛生交通副委員長、久保田真由さん(日比谷総合整備・衛生工)は広報副委員長をつとめている。

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2007/01/13

登戸遊園間立体工事②

パトロール後、「どこが、

どうなっていた」か具体的に指摘

 職長会は、協力業者によって構成される協力会の下部組織として、運営されている。

会長は赤坂知治さん(旭工建・土木)、副会長は計良雅芳さん(一藤・とび)、会計監査は高橋豊さん(アサヒ安全業務社・警備)、中澤孝至さん(オリエンタル建設・PC桁仮設)、門間進平さん(フジ設備工業・設備)、大熊信五さん(エイシン・アルミサッシ)、鈴木晃紀さん(旭工建・土木)。

顧問は作業所長の太田正保さん(小田急建設)。副所長の根本さん(同)は、安全・渉外を担当されている。

 一般に、建築工事は長くても二、三年だが、こちらは、鉄道工事ということもあって、工期は倍近い。すでに丸七年になる。赤坂会長はじめ、みなさん五~七年のつきあいになるという。

「お互いにすっかり気心も知れて、遠慮なくなんでもいい合える。コミュニケーションもうまくいっています。

長期の作業になっていますので、全体にマンネリ化しないよう絶えず注意を払っています。安全大会・血圧測定・玉掛けワイヤー点検などの年間・月間行事を細かく決めて、職長会活動が滞らないよう努めています」(赤坂会長)

 現場では、①安全帯使用の徹底、②生きたYKKの実施、③交通労働災害防止の徹底、④産業廃棄物の分別収集の徹底、という4点を基本にして無事故無災害の決意を誓う「安全の誓い」を立てた。

 月二回の職長会による安全パトロールでは、パトロール後に「結果表」を各自が提出。これは、①場所(どこの、どこが)、②結果(どうなっていた)、③時間(いつまでに)、④評価・提案・指摘(しなさい、したほうがよい、○○がよかった)ということを具体的に記述するもの。

 例えば、「駅下、足場の通路標示なし」「多摩ヤード、ペットボトル・空き缶が山になっている」「踏切第一、吸殻入れを清掃すること」「踏切第二、ワイヤーの点検をすること」「」といった具合に指摘し、改善された日もきちんと書き込む。

 根本さんは、安全ポイントをデジカメに撮影し、昼食後の会議で、モニターによって職長会メンバーに公開。目に見えるかたちにすることで、毎日の安全点検に役立ててもらっている。

安全大会の消火器訓練のあとには親睦会を開催する。作業所前の朝礼会場でのバーベキューで、高橋さんは、焼き鳥を焼いてサービス。職人さんの中には、以前、板前さんだった方もおられるので、ホタテの刺身などがふるまわれることも。

夜中は、列車の運行が止まる約三時間に集中して作業をしなければならない。複々線化のため、一晩で旧線路を撤去し、仮設線路に付け替えたこともあった。切り替え工事では、数百人体制で作業に従事する。

これから、昼七〇人・夜三〇人の昼夜体制で工事は続けられる。

「長いこと工事に携わっていると、鉄道とともに登戸周辺も大きく変わってきていると感じます。以前は、駅前も狭くてゴミゴミした感じでしたが、環境が整備されて、だいぶきれいになりましたね」と大熊さん。

永年、一つ現場で働いてこられただけに、言葉に実感がこもっていた。

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2007/01/12

登戸遊園間立体工事①

月刊「つち」200611月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…54

改良工事によって

時間短縮と混雑緩和へ

小田急電鉄の向ヶ丘遊園駅沿線の立体交差複々線化工事が佳境を迎えている。

これは、立体化して増線することによって、スピードアップを目指すもの。朝方のラッシュ時の一時間に約五本の上り列車が増発され、時間短縮と混雑の緩和が図られる。

今回訪ねたのは、小田急開業当時の姿を今に伝える駅舎だという向ヶ丘遊園駅。登戸~向ヶ丘遊園間の現場を案内していただいた。

この区間は、駅の間隔が近いこともあってか、長らく現状を保ってきた。しかし、多摩川橋梁工事が本格化したこともあり、二〇〇〇年、登戸駅改良工事とともに工事がスタート。駅名の基となった向ヶ丘遊園は、残念ながら二〇〇二年三月、七五年の歴史を閉じた。

計画では、代々木上原駅は完成済みの高架駅、東北沢~世田谷代田は地下化、梅ヶ丘(以前、取材済み)~祖師谷大蔵間は高架化、成城学園前駅付近は地下化、喜多見~和泉多摩川間は高架化となっている。
 登戸~向ヶ丘遊園間も四線化する予定だったが、用地確保ができないため、暫定的に三線化(上り二線・下り一線)となる予定。

登戸駅は、高架および盛土構造の駅舎が、狭くて老朽化していた。そこで、高架構造の二層式の駅舎に改築され、JR南武線との乗換もスムーズに。混雑の緩和も図られた。

エレベーターやエスカレーター、身障者対応のトイレなども新設。二面三線のホーム全体に屋根が設置されるなど、バリアフリーの駅に生まれ変わろうとしている。

登戸駅を発車すると三線化工事の脇をゆっくり走りながら高架を下っていく。そして、二面四線の向ヶ丘遊園駅に到着する。

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2006/10/04

小田急線 立体交差複々線化工事

小田急電鉄の向ヶ丘遊園駅沿線の立体交差複々線化工事の現場へ。職長さんにお集まりいただき、座談会。そののち、所長さんのご案内で、登戸駅までの現場を視察。踏切でなく、日中にナマ線路を横断するなんて。ドキドキ。これも取材だからこそ。

Photo

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2006/10/03

小岩駅北口地区再開発新築工事

月刊「つち」200610月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…53

錢高組

小岩駅北口地区再開発新築工事

職長会

駅近くの飲み屋街が

再開発でタワーマンションに

東京都江戸川区のJR小岩駅。構内には、大相撲第四四代横綱であった栃錦の銅像がある。待ち合せの目印になっている。

栃錦は、駅近くの下小岩小学校へ通っていたそうで、横綱引退後は、日本相撲協会の理事長をつとめ、両国国技館を建てた人物として知られている。

余談だが、国技館の工事の見積もりは、一六一億五〇〇〇万円であった。でも、二子山事業部長(当時)と栃錦が、端数の一一億五〇〇〇万円を値引きさせて、一五〇億円にしてもらったのだとか。

駅南口は、サンロードという商店街が広がり、平日でも、かなりにぎわっている。どこか懐かしく、下町らしい風情が漂う。

北口の前には、イトーヨーカドー。高架沿いに市川方面へ二分ほど歩くと、白い外壁の高層ビルが建設中。全戸南向き、二四階建のタワーマンション「東京グランファースト」。

聞くところによると、このあたりは、もともと柳小路と呼ばれていたそうだ。入り組んだ通りに、木造の店舗などが建ち並ぶ飲み屋街。老朽化して不衛生な地区になっていた。

地震や火災の際には、人命にかかわる危険性が高いということで、安全な街につくり変えたいという要望が地域から出されていたそうだ。

区では、地震や火災に強い街づくりの実現に向け、敷地を共同化した場合など、一定の条件により再開発ビルの建設費の一部を補助している。

そこで、小岩駅北口再開発事業協議会がつくられ、地区再開発事業がスタート。二〇〇五年五月に新築工事が着工し、〇七年には完成する予定。

建物の一・二階は、約二六店舗が入る。三~二四階は、一六三戸の共同住宅になる。現在一九階まで建ちあがっている。完成すれば、江戸川区・葛飾区内で最高層のタワーマンションになる。

「仲良く、笑顔で」

危険予防のための声かけを

今回、集まっていただいたのは、職長会幹部の六人。会長は畠秀一さん(深谷組・土工)、副会長は中村宏次さん(マサル・シーリング防水工事)と加藤吉弘さん(NAPC工事)、会計は三好正寿さん(夢信総合整備・空調衛生)、書記は田中誠一さん(四電工・電気工)。会は環境チームと安全衛生チームの二つに分かれている。環境チーム・リーダーは平嶋昌博さん(吉田興業・はつり工)

「着工してから一年間は、五、六業者しかいなかったこともあって、ようやく今年の八月に、職長会活動が本格的に稼動したところです」と、真っ黒に日に焼けて精悍な感じの畠会長。

 毎週月・木曜日、職長による安全パトロールを行っている。火曜日には、錢高組と一般作業員によるパトロールを実施。これは、業者単位で行われ、安全意識の向上をめざしている。また週三回、昼休み後の一五分間、集中的に清掃している。

環境チームも、毎週火・金曜日にトイレや休憩所などをパトロールしている。

「職場環境を良くするためにも、分別してできるだけゴミを減らすことに力を入れています。先日、産廃業者による勉強会も開きました」と、環境チーム・リーダーの平嶋さん。

猛暑の夏には、熱中症予防のため、「涼しん帽」という、ヘルメット内部に装着して、首筋のうしろを冷やすネット状の帽子が、全作業員に配布された。

「気分が悪くなってきても、納期やノルマなどが気になっても、途中で仕事をやめて現場を離れるということはなかなかできません。決められた時間での作業なので、休むと収入に直接結びつきますからね。

そのため、疲れたり、気分が悪くなったりしても無理をしてしまうケースがあります。そうならないためにも、職長が、常に作業員の顔色を気遣い、こまめに声をかけ、気軽に休みをとれるような環境をつくること。それが最も大切だと思います」と平嶋さん。

ちなみに、平嶋さんの現場でのモットーは、「仲良く、笑顔で」。なるほど、熱中症などの「危険」を予防するためにも、早めに「休む勇気」を後押しするような、声かけが大切なのだ。

「この現場は、もともと和気あいあいというか、業者ごとのコミュニケーションもいい。声を掛け合ったおかげか、熱中症になった人は、一人もいなかった」と中村副会長。

 現在、一〇〇人の作業員は、これから一五〇人まで増える。

「新しい人には、前の現場のことを聞いたり、何か接点を見つけて話しやすくして、コミュニケーションをとるようにしています」と加藤副会長。「無事故無災害のため、これからも声をかけあっていきたい」と三好さん。

約一週間後には、地元の業者のセッティングで現場の親睦会が初めて開かれる。「楽しみですね」と私が声をかけると、初めての取材に、少し緊張されていた様子の畠会長はにっこり。みなさんのお顔も、心なしかゆるんだ気がする。

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2006/10/02

東京警察病院 新病院プロジェクト

月刊「つち」20069月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…52

西松・清水・大成・佐田・佐藤秀建設工事JV

東京警察病院 新病院プロジェクト

TPHプロジェクト職長会

犬屋敷→陸軍中野学校→

警察大学校→警察病院

東京・JR中野駅北口から徒歩三分ほど。区役所の裏手に警察大学校の広大な跡地が広がっている。

平成一三年に警察大学校と警視庁警察学校が調布に引越し、一三.七haもの空地ができた。一二〇〇本以上の樹木に囲まれた緑あふれる場所で、東京ドーム四個分くらいの広さ。

もともとここは、中野御囲跡(なかのおかこいあと)といって、徳川幕府の五代将軍・綱吉の「生類憐みの令」で集められた野犬の「犬屋敷」跡。犬部屋や子犬養育所、役人の住居など、総計約三〇万坪という膨大な広さの犬小屋に収容された犬は、八万数千頭にも及んだとか。

のちに昭和一五年、諜報(スパイ活動)技術を教える養成所強化を目的とした陸軍中野学校が設立。今では「囲町公園」という名が、かつての様子をわずかに伝えている。
 
この空地のうち2haは、千代田区から東京警察病院が移転してくることに決まっている。

東京警察病院は、昭和四年、警視庁職員で構成された財団法人自警会会員の拠出金により開設した。

警視庁職員およびその家族の診療を行う職域病院として発足したが、昭和二〇年には一般にも門戸を開放し、救急を始めとする、高度で幅広い地域医療に対応している。

政府や警視庁本部の特命に基づき、浅間山荘事件や在ペルー日本大使館占拠事件への特別医療チームの緊急派遣、地下鉄サリン事件後の山梨県上九一色村強制捜査の援護活動など、歴史に残る事件の解決にも関与してきたそうだ。

病院以外の土地をどのように利用するのか。当初、オフィスビルと高層マンションなどの再開発を進めるようとしたらしい。

中野区は、人口密度日本一、一人当たりの公園面積が東京二三区中で特に低いうえ、都の直下型地震被害想定によると、死者発生率が区内で最も高いと指摘されている。

そうした背景もあって、区民からは、憩いと防災のための緑地公園としてできるだけ残してほしい、と求める声も強いようだ。

業務に集中するみなさんに接して

一時、暑さも忘れて

平成二〇年三月、東京警察病院は、中野に移転する。工事の通称は、「TPHプロジェクト」。お話をうかがったのは、「TPHプロジェクト職長会」会長の新城健さん(ヒロキコーポレーション・鳶)、副会長の浜辺政浩さん(早川鉄鋼販売・鉄筋)と熊岡猛さん(楠工務店・型枠大工)、書記の浅山顕蔵さんと高橋清治さん(衛生JV)、安全委員会の阪口由一さん(城中工業・鉄骨とび)、車輛委員会の川名悟さん(日本セキュリティサービス・警備)と海老沢孝徳さんと竹ノ内輝行さん(電気JV)、環境保全委員会の佐藤司さん(楠工務店・型枠解体)、詰所委員会の関口克己さん(ヒロキコーポレーション・雑工事)、三嘴誠次郎さん(相模測建・測量)、毛利幸喜さん(空調JV)の一三人。

 うち毛利さん、三嘴さん、熊岡さん、浜辺さん、高橋さんの四人は、この前の現場の府中駅前再開発工事から、居合善司所長(西松建設)とともに働いてこられた気心の知れた仲間。会長に初めて就任された新城さんをしっかりサポートしている。

施設は、鉄骨鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)地下二階、地上九階建の病院棟と、鉄筋コンクリート造七階建の宿舎棟から成る。

一年前に始まった工事は、病院棟の地下躯体の真っ最中。これまで、基礎の免震装置作業に多くの時間を費やしてきた。

九月からは地上部分の躯体とともに、宿舎棟の工事も始まる。一九年一一月末完成予定というから、工程表から見ても、ちょうど折り返し点、ヘソというか要の部分に差し掛かっている。

「限られた工期で、とにかくいい建物をつくろう。これから一五〇人くらいの作業員が入りますが、いろいろな業種とからんで仕事をしやすい環境をつくることが職長会の仕事だと思っています」と新城会長。

「どこの現場でもそうですが、トイレと詰所のきれいな現場は、仕事環境も良い。清掃は自主的に徹底的にやっています」と浜辺副会長。

 職長会の現場パトロールは、毎週月曜日の午後一〇時半より、三、四班に分かれて三〇分間行っている。

「事故や災害を防止するため、特に安全帯を使うこと、それを重視しています」と安全委員会の阪口さん。

「掘削やコンクリート打設などで、多いときは、一日二五〇台もの大型ダンプや生コン車が出入りしました。いつも混雑している早稲田通りしか進入口がありませんから、入退場の連絡や調整に追われています」と車輛委員会の川名さん。

 取材当日も朝から大変蒸し暑かった。でも、みなさんは、淡々と業務を遂行することに集中されている。取材している私も一時、暑さも忘れ、頭が下がる思いがした。

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2006/10/01

第二東名高速道路静岡第一トンネル工事

月刊「つち」20068月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…51

フジタ・安藤建設・太平工業事務所共同企業体

第二東名高速道路静岡第一トンネル工事

職長会

東名高速の約二・五倍の

断面のトンネル工事

いま建設中の第二東名高速道路(第二東名)。東京から神戸まで、全長約四六〇㎞。渋滞が著しい現在の東名高速道路の機能を補充する「二一世紀の新しい大動脈」として、また、近い将来に予測されている東海地震に備える防災アクセス道路としての役割も期待されている。

第二東名は、東名よりも幅を広げて六車線になる。市街を避けて、山中に高速走行が可能な道路を通そうとすると、山をぶち抜くしかない。高架橋は、高層ビルのように高くなり、トンネルは山の中腹を貫く。全体の六割をトンネルと橋が占めるという。

今回訪ねた静岡第一トンネルも、静岡駅からバスで二〇分ほどの、市街地を抜けた北東端、標高約二〇〇mの山並みが始まるあたりにあった。東西に走る第二東名が、安倍川を渡る手前に位置する総延長一・二km、掘削幅一八m、掘削断面面積一九〇㎡の大断面のトンネル。東名と比べると約二・五倍もの大きさになる。

黄色い半被に「喝」の字が

書かれた旗を掲げてパトロール

大断面のトンネルの掘削とはいっても、閉鎖された空間の中での、厳しい作業である。

まず、岩山を爆破掘削するため、ダイナマイトを装填する細長い孔をあける。掘削後、壁面を支えるロックボルト用の孔もあける。

トンネル掘削の爆破作業の後、すぐにアーチ状の壁面を保護するため、コンクリートモルタルを吹きつける。モルタルは硬くなって壁面を支えるとともに、空気を遮断し、壁面の劣化を防ぐ。

こうした難工事に立ち向かったのが、職長会会長の小笠原秀明さん(宮本組・重機土工)、副会長の大川忠宏さん(宮本組・土工事)、田中義隆さん(藤友工業・トンネル掘削工)、浅原修さん(中村・コンクリート打設)、上島洋介さん(東興建設・法面(のりめん)工事)。

広島出身の小笠原会長は、二七歳。就職して初めての仕事がこの現場だった。まだ山が切り開かれていない着工当初から五年間にわたって、会社の先輩で前会長の大川副会長とともに、大型重機を手繰ってきた。「総量一二〇万平方㍍、高さ一五〇㍍の掘削で一日三〇〇〇立方㍍、ダンプ六〇〇杯分の土砂を運搬して、毎日、山の形が変わっていきました」。

掘削工歴二〇年以上のベテラン、田中さんは、トンネル掘削のエキスパート。「先端に付いた大きなドリルで岩をガリガリ削り取る重機や、狭いトンネルの中で車の向きを変えなくてもショベル部分が横に向く重ダンプなどを通して、大量の土砂や岩石を能率的に運搬するとともに、安全に作業することに最も神経を注ぎました」。浅原さんのコンクリート打設も、トンネル工事の中で最も厳しい作業環境を強いられる。

職長会では、こうした危険を伴う作業の改善に積極的に取り組んできた。「ひと声運動」はもちろん、黄色い半被を着て、大きく「喝」の一字が書かれた黄旗を掲げてパトロールをするなど、一瞬の気の緩みが重大な事故を招かないよう常に注意を払った。

特に、粉じん対策に力を入れているフジタは、作業によって発生する粉じんを除去するための大型集じん機の導入、粉じんを低減する効果がある吹付けコンクリートを採用するなど、ひと昔前のトンネル工事現場とは比べものにならない坑内の環境を実現した。

上島さんの法面工事は、切土や盛土の斜面は、そのままの状態では雨水・地下水による侵食や風化によって崩落しやすいので、植生によって法面を覆うもの。植生工事は、緑化する面に金網またはネットを張り、そのあと種子・有機肥料・土壌などを吹き付ける。

ここの地質は、静岡層群と呼ばれる砂岩・泥岩の堆積層。比較的安定した硬い地層のため、トンネルから掘り出された岩石は、舗装工事の砕石としてリサイクルされているそうだ。また、伐採された山の木も砕いてチップにし、地表に一五cmの厚さに敷き詰めている。

また、職長会は、作業所から現場に向かう途中の道路沿いの清掃や草刈り、花壇づくりなど、周囲の環境にも気を配っている。

広島の小笠原会長、兵庫の大川副会長、福岡の田中さん、山口の浅原さん、名古屋の上島さん、そして大阪の浅田さんと、みなさん各地から集っている。作業所の隣に建つ宿舎で起居を共にして、どんなときも励まし合ってきた。文字どおり、同じ釜の飯を食ってきた仲間たちだ。

トンネル作業における、高い環境づくりを目指してきた工事も、着工からすでに六度目の春を迎えた。トンネルの近くの調整池やダム工事など、最終の仕上げ段階に入っている。

残り工期は、あと九ヶ月余り。高品質の高速道路を完成させるため、「毎日、安全の効率良く作業が進捗するよう段取りするのが僕らの仕事です。もうひとふんばり」と小笠原会長。かたわらの浅井副所長は、この現場で急成長を遂げた若き会長に頼もしそうな視線を向けた。

これからも一丸となって、「高環境の職場づくり」を目指す。

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2006/09/30

南青山一丁目団地建替プロジェクト

月刊「つち」20067月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…50

大成建設

南青山一丁目団地建替プロジェクト

職長会

都営住宅が複合施設に再生

青山エリアのシンボル的存在

都心にまたひとつ、超高層タワー型の賃貸マンションを中心とした大型プロジェクトが進行中だ。

場所は、赤坂御所に近い、南青山。もともと都営住宅であった南青山一丁目団地を、民間の活力を導入して複合施設に再生しようというもの。
 平成一九年三月竣工に向け、ハイセンスな立地にふさわしい、ハイグレードな賃貸マンションに生まれ変わることが予想される。

共同住宅は、超高層棟(N棟)の六階~四六階部分に三九二戸。すでに四三階まで立ち上がっている。四六階という高さは、現時点で、都心のマンションとしては最も高い。

N棟の一階~五階は、オフィス、商業施設、図書館や大学院などの公益施設が、また一四階建のS棟には、共同住宅一五〇戸のほか、保育園、高齢者用グループホームが入り、ひとつのコミュニティタウンを形成する。

住宅は、ファミリータイプから、シングル・DINKSなどのコンパクトタイプ、外国人向けの大型住戸まで、幅広いライフスタイルに対応した豊富なバリエーションが設定されている。

特に、最上階からの夜景は、素晴らしいことだろう。それだけに、家賃はいくらになるのか気になるところだが、平均的会社員の月給の数倍という、まさにデラックス価格になるようだ。

南青山には、それほど高層の建物はない。このエリア初のタワーマンションであると同時に、青山一帯において、これだけ大規模の賃貸専用マンションは初めてということで、シンボル的存在として注目を集めている。

官民一体型の大規模再開発で

働くスーパーな職人たち

といっても、現場で働く職長会のみなさんは、いたって自然体で、気負いはない。職長会メンバーは、「伝説のスーパーとび」こと、会長の早川伸夫さん(加濃建設・とび)はじめ、それぞれユニークな呼び名のシールをつくってヘルメットに貼っておられる。

副会長の依岡晃さん(丸信建設・とび・土工)と鶴ヶ崎明さん(マサル・シール工事)と竹谷勇二さん(宮本建設・型枠大工)、会計の市田幹樹さん(九電工・電気工)書記の二片健志さん(櫻井工業・水回り)、安全分科会リーダーの朝倉健一さん(柴田工業・鍛冶工)、環境分科会リーダーの味村一樹さん(明和商会・内装工)、衛生分科会リーダーの下野常夫さん(中山測量・墨出し工)、広報・車輛分科会リーダーの大塚賢一さん(TOTO・ユニットバス)という、一〇人が集まってくださった。

「このプロジェクトは、東京都が民間事業者に七〇年間の定期借地契約で敷地を賃貸し、都営住宅と公共施設と民間施設からなる複合施設の建設・運営を委託するものです」と二片さん。

「民間の力を活かした首都の顔づくり」をテーマに掲げた、いくつかの先駆的プロジェクトの中で、「南青山一丁目団地建替プロジェクト」は、国の民間都市再生事業の第一号に認定された。記念すべきプロジェクトだ。

「みんな仲が良いので、申し送りもスムーズで、作業上のトラブルもほとんどないですね」と依岡副会長。

自称「カリスマ内装工」こと味村さんは、「毎朝、有志で、現場の周囲の道路に落ちている吸い殻を拾っていますが、みんな率先して参加してくれています。近所の方から挨拶されるなど、内外のコミュニケーションづくりにも役立っています」。

「仕事が終わると毎日のように、詰所でご苦労さま会をやっています。飲んでばか話をしているようですが、こうしてほしいなど、仕事の改善点も積極的に出されます」と早川会長。

 こうした日々の職長会の結束は、昨年のクリスマスシーズンにも大いに発揮された。仮設パイプ、蛍光灯、安全灯などの資材を活用して、大きな星のイルミネーションをつくったのである。

無機質になりがちな工事中のタワーマンションの外壁が、力を合わせて手づくりしたイルミネーションによって飾られた。約一ヶ月間にわたって、おしゃれな青山の街全体に心あたたまるクリスマスムードを演出した。

「毎月、いろいろな現場を取材されているんですか?」と早川会長から訊かれた。

はい、おかげさまで。毎回、どこでもあたたかく迎えていただきましたが、連載五〇回を迎えることができました。

これからもスーパー職人が集う職長会のサポーターとして、その安全を祈るとともに、現場を支える職長会の熱意あふれる活動をお伝えできたらと願っている。

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2006/08/17

戸塚上倉田町プロジェクト新築工事

月刊「つち」20054月号

明るい職場づくりをめざして

職長会訪問…36

大豊建設

戸塚マンション工事職長会

丘の上に近代的な

マンション群が誕生

 取材当日は二月下旬の冷たい雨の日。JR戸塚駅を降りて、一〇分ほど歩くと戸塚税務署へ向かう坂になる。道の片側をふちどる桜並木も冷え冷えとした感じだ。

税申告の案内人が立つ税務署の前を通り過ぎると、人家や人影も消え、大型トラックが水煙を上げて走り抜ける。坂を上りきった正面に工事現場のゲートがあった。

昨年八月末に工期がスタートして半年余り。こんもり繁っていた山を切り崩して造成し、現在、山留作業を行なっているところ。

ところどころに移動式クレーンなどの重機が見えるが、三七一万平方㍍という、広大な開発敷地面積を見渡すかぎり、建物はまだ何も建っていない。

寒風にあおられながら、将来、緑地公園として横浜市に寄贈するという小高い丘の上に立ち、相良雄二所長(大豊建設東京支店)から説明を受ける。

平成一八年七月に完成すれば、地下二階地上一二階の鉄筋コンクリート・免震構造の共同住宅四〇八戸(A棟八〇戸、B棟六七戸、C棟七四戸、D棟六〇戸、E棟六六戸、F棟六一戸)が建ち並ぶという。

ガスを使わないオール電化システム、ITカードや携帯電話での施錠など、近代的なマンションになるそうだ。山上に一つの街が誕生することになるのだろう。

工事も職長会も基礎固めの段階

「二月頃まで基礎工事で、四月になると六棟がいっせいに立ち上がります。躯体と仕上げ工事のピークは、今年の八月。その頃には六〇〇人くらいの作業員が工事に携わっている予定ですが、今はまだその前段階なので……」と相良所長。

職長会の組織自体、これから立ち上げる段階のよう。そのうえ今日は、朝から降り続く雨のため、中止になった作業が多く、作業員の方たちの姿をほとんど見かけなかった。

しかし、私たちの取材を受けるため、職長会メンバーの坂口豊男さん(矢野技研・鳶土工)と藤澤義明さん(森元工業・山留)のお二人が、そのまま残ってくださっていた。

 そのため今回は、職長会メンバー二名に対して、佐良所長はじめ一一名の職員の、職長より職員の数のほうが多いという、かなり変則的というか、異例の取材となった。

 同席されたのは、事務長の阿部さん、建築第三工区長の田中さんと佐藤さん、土木担当の仁田野さんと積田さん、建築第一工区担当の村松さん、建築第二工区担当の大橋さんと工藤さん、建築工務長の香川さん、品質管理の森さん。

 ちなみに、今回欠席された職長会のメンバーは、小笠原良信さん(土工事)、岩崎輝男さん(警備)、泉祥蔵さん(測量)、瀬口浩司さん(杭)、輪島典幸さん(はつり)、山田城一さん(鉄筋)のみなさん。

「実際に、職長会が立ち上がるのは三月くらいになるでしょう。工事と同じように、職長会活動もまだ基礎固めの段階です。

これから新しい職長がたくさん入ってきますが、われわれは、職長と職員、作業員同士のコミュニケーションを密にするためにも、今から気軽に会話を交わせるよう、下地をつくっておきたいですね」と坂口さん。

「山留のとき、クレーンで土を掘る前の準備をするのですが、穴に人が落ちることがないよう、安全には特に注意を払っています。

今後、作業員が三倍に増えますから、新規入場者教育にビデオを取り入れるなど、安全意識の啓発と労働災害の防止に力を入れていきたい」と藤澤さん。

お二人から、「これからわれわれが会を立ち上げるのだ」という気概が伝わってきた。

ところで、相良所長の所属が大豊建設と聞いて私が思い出すのは、約二年前、都内の下水道工事で視察させていただいた「シールド工法」である。

あの現場は、土木現場初心者の私としては衝撃的だった。かなり刺激的だったようで、今でも夢に現れることがある(笑)。

 佐良所長は、鹿児島県の屋久島のご出身。子供の頃、ダム工事を行なったのがたまたま大豊建設だったそうだ。

その後、縁あって大豊建設に入社。主に建設部門を担当。新幹線の建設で台湾に赴任されていたこともあった。ご自宅は名古屋なので、現在、単身赴任中。会社の寮から通っておられる。

 また、阿部事務長は、アフリカのマダガスカルに数年間赴任されていたそうで、国際経験も豊か。

ひととおり取材を後えると、藤澤さんは、作業着に身を包み、降り続く雨の中、現場に向かわれた。

工具を担いだ藤澤さんの雄姿を撮らせていただこうと、カメラマン氏がカメラを構えたところ、なにかの拍子で、ストロボの中の電池が作業所の床下に散らばってしまった。

そのとき、藤澤さんのとっさの行動に驚いた。身体をすばやく泥地に投げ出して床下に滑り込み、電池を拾い集めて集めてくださったのだ。さすがの身のこなし。その節は、ありがとうございました。

 最初に述べたように、底冷えのする、野外作業には厳しい一日だった。しかし、取材に協力してくださったみなさまのおかげで、帰りは心もあたたかく、もと来た坂道を下りたのだった。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…36

)

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2006/08/14

西新宿六丁目再開発事業

「つち」2002年3月号

金子架設工業株式会社 大成建設()ほか共同体

西新宿六丁目再開発事業(A工事)

    金子架設工業()

明治一八(一八八五)年創業。鳶工事・金属床板工事の専門業者として、帝国ホテル、新都庁第一庁舎、幕張メッセ北ホール、みなとみらいランドマークタワー、江戸東京博物館、新宿パークタワーなどの工事実績を持ち、「技術・技能の金子」と高く評価されている。

超高層ビルが建ち並ぶビジネスの一大拠点

二〇〇〇年に開通した都営地下鉄大江戸線の都庁前駅あるいは新宿西口駅から地上に出ると、超高層ビル群が、高さや規模や個性を競い合うように建ち並んでいる。

ここ西新宿は、淀橋浄水場が東村山に移転した跡地を中心とする東京都新宿副都心計画によって、地下駐車場、地下水道、公園、ビルなどが総合的に建設された。

京王プラザホテルを第一号に、新宿住友ビル、新宿三井ビル、安田海上火災ビル、新宿野村ビル、新宿センタービル、ホテルセンチュリー・ハイット、新宿NSビル、東京パークタワービルなどの超高層ビルが建ち、ビジネスの一大拠点となっている。

なかでも異彩を放っているのは、一九九一年に完成した東京都庁舎。首都・東京のシンボルは、いまではバブル経済の象徴のように見える。

 西新宿六丁目南地区。第一種市街地再開発事業として、大規模な新築工事が行われている。A工区は地下二階、地上三八階の高層ビルだ。

毎週金曜日の午後一時過ぎ。ヘルメットをかぶった四〇名余りの作業員が、現場周辺の歩道や植え込みに捨てられたゴミを丹念に拾い集めている。現場内の環境整備だけではなく、周囲の環境美化にも努めているのだ。

その中に、真っ赤なヘルメットをかぶった鈴木哲さんの姿があった。ヘルメットに二本の白いライン。これは、職長の証し。二本ラインが入ったヘルメットをかぶることは、現場で働く人々の憧れ、である。

金子架設工業の床版・鍛治工事の管理職長、鈴木哲さんは、職長をとりまとめる職長会会長でもある。現在四期目。大きな目、がっしりとした体格、太い声。「この職長さんのもとなら安心して働ける」といった頼れる雰囲気。

職長会は、安全分科会、環境・厚生分科会、風紀・車輌分科会の三つの分科会がある。施設点検班と防火設備班に分かれる安全分科会の会長は、鈴木守郎さん(金子架設工業 とび工事職長)

安全分科会は、フロアーマスター制を設置。フロアーごとに担当業者がフロアーの状態を定期的に巡視している。鈴木リーダーが担当するのは、高層階の安全施設の点検。

環境・厚生分科会は、詰所施設班とトイレ・清掃班と場内美化班がある。場内の喫煙所に火消し用の水を入れたペットボトルを置き、水につけてから吸殻を捨てるよう呼びかけている。

風紀・車輌分科会は、産廃班と場内駐車整理班に分かれる。場内の駐車だけではなく、新宿中央公園付近の工事関係車輌の違法駐車を排除する活動も行っている。

鈴木哲会長が、職長として最も注意を払っているのは安全面。高所での仕事は常に危険を伴う。無事故で竣工することが最大の目的である。多くの人命を預かる職長の責任は重大だ。安全に対して妥協することは事故につながりかねない。

毎日、危険作業位置を確認し、手順どおり仕事が進められているか、安全帯が正しく使われているか、厳しくチェックする。「自分の身は自分で守る」をモットーに、一人ひとりに安全対策を徹底している。

鈴木リーダーは、仕事がはじまる二時間前の、毎朝六時に現場に入る。約七〇〇人によるラジオ体操、点呼、職種別ミーティング。その後、各作業を開始する。

毎日、午前十一時半から一二時まで、六七人の職長が一堂に集まって職長会議。午後三時から四時まで、明日の仕事についての現場チェック。その間、安全パトロール。鈴木リーダーが、自分の仕事に集中できるのは、一日三〇分程度。そのほかは、ほとんど職長としての管理業務に費やされる。

とびの仕事は、仮囲いや足場の組み立てにはじまり、鉄骨の組み立てやタワークレーンの組み立て解体、内装の仕上げが終わって足場を解体するまで、最初から最後まで現場を担当する。他の業者と接する機会が多いため、職人さんたちからも頼りにされている存在だ。

鈴木リーダーは、とび職人三〇年のベテラン。駆け出しの頃は、親方から怒鳴られてばかりいた。「いつか、誰もが認めるとび職人になろう」と心に決め、見よう見まねで仕事を覚えた。京王プラザホテルをはじめ、さまざまな高層ビルの建設に携わり、腕を磨いてきた。

いま、千葉県知事認定の金子架設工業の職業訓練校で研修を終えた若手の成長に期待している。「仕事が好きで弱音を吐かない、負けず嫌いのタイプが成長する」と目を細める。仕事には厳しいが、一人ひとりの体調を人一倍気づかって、仕事を割り振っている。

 おふたりの案内で、建物の中を視察させていただいた。私もヘルメットをかぶり、腰に安全帯を装着する。これが意外と重たい。

鈴木哲会長が、溶接されたデッキプレートを指さして、「この床板は、私たちの仕事です」。自分の仕事を心から愛し、誇りを持っていることが、こちらにも伝わってくる。

工事用エスカレータで三八階へ。鉄骨の骨組みだけで、窓枠もまだない。「天気がよいときは、富士山が見えるんですよ」という守郎リーダーの声。思わず身を乗り出そうとすると、すかさず、「吉田さん、安全帯の金具をロープに付けて」と注意が飛んだ。

二年以上工事をしている建物は、今年十一月、完成予定。できあがったビルを指さして、家族に「あれは自分がやった仕事だ」と言うときがうれしく、充実感がある、という。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問……1)

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2006/08/13

トッパン・フォームズ本社ビル建設工事

月刊つち 2002年4月号

鹿島・安藤建設()共同企業体

(仮称)トッパン・フォームズ本社ビル建設工事

職長会ベアーズ

*向井建設(

)

 明治四一(一九〇八)年創業。建築・土木一式工事の専門業者として、横浜国際総合競技場、上野合同庁舎、高輪プリンスホテルさくらタワー、仙台ドーム、江東清掃工場などの工事実績を持つ。長年培った技術・技能に裏打ちされた「ニューサブコン」への業務転換を推進している。

鉄道発祥の地「汐留」

JR新橋駅から東京臨海新交通ゆりかもめへ。車窓から、汐留の旧国鉄貨物駅跡地周辺で進められている大規模な都市再開発の全容を見ることができる。 

東京ドーム七個分という約一三ヘクタールの広大な土地に、電通本社(A街区)、汐留シティセンターと松下電工東京本社(B街区)、鹿島棟、日本テレビ本社(C街区)、日本通運本社(D北3街区)、共同通信社本社(E街区)など、高層ビル群が次々に外観を現している。

ニッポンの鉄道発祥の地であり、大貨物ターミナルとして栄えた汐留。二〇〇五年までに、ビジネス、商業、文化、居住などの機能持つ、新しい複合都市として生まれ変わろうとしている。

職長会、その名は「ベアーズ」

新幹線とゆりかもめが隣接するE街区でトッパン・フォームズ本社ビル(地下一階、地上一九階)の建設工事が行われている。

 こちらの職長会は、トッパン・フォームズのマスコット名にちなんで、「ベアーズ」という。野球チームのような軽快なネーミングである。会長の染谷健正さん(向井建設 鳶施工班職長)は、三〇歳前の若い職長さんだ。副会長の中村昌和さん(大浦工測)、鈴木勉さん(光伸電気)も若い。みなさん自分の仕事に誇りを持っている。

会議室でお会いした染谷会長は、笑顔が印象的で、少しあどけない感じもした。しかし、私たちを案内して現場に立ったとたん、表情が引き締まった。二本ラインの白ヘルメットをかぶり、腰に安全帯を付けた立ち姿は、自信にあふれ、なんともいえない存在感がある。

 ベアーズの目的は、作業所長の現場運営方針のもと、Q(品質)C(原価管理)D(工程管理)S(安全)M(士気高揚)などの面で、各協力業者の自主管理を進めるため、業者間の連絡を密にして相互の信頼を高め、工事を円滑に進めるとともに、快適な職場環境をつくること、である。

 そのため、「ブレイク・ザ3K  ゲット・ザ3C」というスローガンを掲げている。「きつい、汚い、危険」という3Kを打ち破り、「快適、清潔、創造」という3Cを手に入れようというものだ。

一年前の発足以来、安全、環境、福利厚生の三つの小委員会を立ち上げ、積極的な自主管理活動を展開している。

安全委員会は、現場の安全チェックと確認、安全運動の推進、環境委員会は、ゴミの分別状況の確認と指導、現場周辺の清掃状況の確認、福利厚生委員会は、休憩所やトイレなどの衛生状況の確認、清掃用具などのチェック、親睦会の計画・実行が主な仕事。現場内でのバーベキュー大会やボーリング大会などの懇親会を開催している。

塵ひとつない作業現場

ヘルメットと安全帯置き場に、冷水機と洗濯機と並んで鏡を設置したのも、ベアーズのアイディア。始業前に等身大の鏡に向かうことで、安全帯を装着しているかなど、身支度を点検する習慣と心構えが生まれる。同時に、モラルの向上にも役立っているのではないか、という気がする。

夏場の熱中症対策として、作業エリアごとに大型送風機と扇風機を設置。詰所には、ポカリスエット入り給水タンクと製氷機も用意した。

詰所に置かれた蓋付きのゴミ箱は、燃やせるゴミ、燃やさないゴミ、空き缶、ペットボトル、ビンなど五種類に分かれている。各ゴミ箱の上には、捨ててよいモノの現物が貼られているので、とてもわかりやすい。

現場には、分別回収用のゴミコンテナを設置。木くず、スクラップ、段ボールなどのリサイクル品とプラスチック、ガラス、アルミなどの混合廃棄物の分別回収を徹底している。

作業現場というと、どうしても雑然としたイメージがある。しかし、毎日、作業の終わりに、全員で片付けをしていることもあり、現場には塵ひとつ落ちていない。二〇〇一年一〇月の安全衛生週間の期間に、三田監督署より表彰されているだけのことはある。

「一声かけ運動」で快適職場を

向井建設では、昨年一月より、「指差呼称定着運動」を展開した。これは、作業の開始前などの要所要所で、指をさし、声に出して見落としがちな安全を確認し、基本作業を正しく行なう習慣をつけようというものだ。

また、全作業員の安全意識の向上を目的として、「セーフティポイント制度」も実施。現場の安全パトロールのとき、積極的に安全活動を実践していると認めた人にセーフティポイント・カードを発行して評価する。定期的にカードの集計を行い、優秀作業員を安全防止協議会で表彰した。

染谷会長率いるベアーズも、安全で快適な職場環境をつくるため、知恵を絞り、全員参加型の独自の活動をしている。とくに人の和、命の大切さ、環境意識の向上という三つに力を注いでいる。

「一声かけ運動」は、安全に反する行動を「しない、させない、見逃さない」ため、お互いに声をかけ合える、あたたかい雰囲気づくりをして、無事故・無災害を達成しようというもの。こうした日々の地道な積み重ねが、明るさと楽しさの中にも緊張感と一体感のある、活気ある職場づくりにつながっているのだろう。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…2)

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2006/08/12

新宿跨線橋架替工事

月刊つち 5月号

大林・鉄建・大成・小田急・

建設共同企業体

一般国道20号(甲州街道)新宿跨線橋(こせんきょう)架替工事

新宿駅JV工事職長会

全国最大級のターミナル、新宿駅。一日の乗降客、およそ三二〇万人のうち、約五〇万人が南口を利用しているという。改札を出て目の前に広がる国道は、甲州街道の名で親しまれている。いつも人と車であふれているこの通りが、JR東日本と小田急電鉄の路線と街路を跨いで架けられた道路橋ということは、ふだん意識していなかった。

この橋は、大正一三(一九二四)年につくられた「新宿跨線橋」である。七五年以上が経過して、老朽化が進んでいることから、幅三〇メートル・橋長一二三メートルの現在の橋梁を撤去して、幅五〇メートル・橋長一二七メートルに拡張した強固な橋に架け替える工事を行なっている。

新しい橋梁は、歩道の幅が倍近く広がる。橋梁部分を補強して、耐震性にすぐれた構造にする。さらに、JR線路上空に人工地盤を創りだし、公共駐車場、タクシーや高速バス乗り場、歩行者のための空間を整備する計画である。

駅ホーム下の工事現場

JR代々木駅の線路脇にある新宿駅JV工事事務所所長の佐藤剛史さんから、工事の説明を受けたあと、「新宿駅JV工事職長会」会長の新井孝士さん(野口工務店 一級土木施工管理技士)をはじめとする、職長会のみなさんの安全パトロールに同行させていただくことになった。私も、オレンジ色の作業着にヘルメット、白い長靴を身につけた。

踏切を渡って、工事現場へ。黄色の作業着の安全確認をする人が、隣接する線路に電車が来ると、旗を振って知らせると、みなさん、その場に立ったまま右手を斜めに上げた。

これは、「電車が来ていることをちゃんとわかっていますよ」という安全確認のサイン。作業するすぐ脇を電車が往来するため、常に安全確認を念頭に置いて、工事を進めている。

鉄パイプで組まれたハシゴを下りていくと、赤っぽい地面が露出したトンネル工事のような現場が広がっていた。地下に玉川上水があるため、足もとは水が溜まって泥地になっている。昼間もほとんど外の光が入らないので、灯りがついている。

これまで視察した建築現場は、すでに地上に立ち上がっている高層ビルで、作業の工程がよくわかった。しかし、一晩に約六メートル掘削しているという今回の現場は、地中なので一般の人の目にふれることはない。土木現場を初めて目の当たりにした私は、なんともいえない迫力に圧倒された。

見回すと、太い鉄骨の柱の向こうに、車輪のようなものが連なっているのが見えた。それが、ホームに停車している電車の車輪だとわかったとき、私は、自分がJR新宿駅ホームのほぼ真下にいることを実感した。ここは、架け替える橋梁部分の下部工事の現場である。

「安全・点検・確認」のアタック活動

たくさんの協力会社が出入りする現場は、作業員を直接指揮し、監督する協力会社の職長のみなさんによって構成される職長会が中心となって作業ごとの連絡・調整を行なう。職長としての経験豊かな新井会長は、落ち着いた態度で、現場のキーマンを務めている。

職場の人間関係が円滑でなければ、安全に対する意識やモラルは低下する。「人の和」をつくるため、ヘルメットの正面にネームを記して、名前で呼び合う「一声かけ運動」も職長会が中心となっている。「おい、おまえと呼ばれるより、名前で声をかけられるほうが、気持よく対応できます」(新井会長)

安全パトロールの実施と点検・確認、作業環境の整備と美化などの管理活動にも力を注いでいる。朝は「安全広場」と呼ばれる朝礼を行なう現場を、夕方は詰所を、清掃する。トイレや洗面台などの共用施設の清掃は、週三回、専門業者に依頼している。

「アタック(ATK)」は、安全(A)・点検(T)・確認(K)の略称。職長は、毎日、作業を始める前に、作業場所で、作業員一人ひとりに点検・確認を指示する。作業員は、安全設備・機械・工器具など、指示された項目を指差呼称して、安全かどうか点検・確認する。不具合な箇所を見つけた場合、是正したうえで職長に報告し、作業を開始する。こうしたアタック活動の指導も、職長会の重要な仕事だ。 

工事は昼夜休みなく行なわれている。電車の運行を最優先にしているため、電車が止まる夜間作業に重点が置かれ、夜間だけで約二〇〇人もの作業員が投入されている。

工事完成まで一〇年を要する、息の長い、文字通りの大プロジェクト。プロジェクト遂行のため、新井会長をはじめとする職長会の役割は大きい。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…3)

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2006/08/11

西神住宅第2団地3住区粗造成工事

月刊つち 2002年4月号

鴻池・大日本土木・山田工務店建設共同企業体

西神住宅第2団地3住区粗造成工事(その2)

西神(せいしん)

粗造成工事職長会

神戸らしいモダンなまちづくり

新神戸駅から市営地下鉄で約三〇分。西神南駅を下りると、約四一五ヘクタールの「西神南ニュータウン」が広がっている。

神戸の都心から約一五キロ西の丘陵地に位置する緑に包まれた住宅団地と聞いていたが、従来の画一的なニュータウンとは趣がだいぶ異なる。

民間事業コンペによる戸建住宅や中高層住宅は、いずれも個性的で、造型的にも色彩的にも斬新なものばかり。かといって奇をてらった感じはない。電線を地下に敷いた「無電柱化道路」は、まち並みに統一感をもたらし、全体に神戸らしいモダンで落ち着いた感じが漂う。

団地内東部の特定業務施設用地は、神戸サイエンスパークとして、教育・研究機関や住環境と調和した工場や事務所を誘致。「住み、働き、学び、憩う」というさまざまな機能を持つ、自立性の高いまちづくりをめざしている。

ここ西区は、古くから農業が盛んな地域だったが、神戸市による新住宅市街地開発事業として、阪神・淡路大震災後、耐震構造に力を注いだ住環境の整備が進み、神戸市最大の約二四万人の人口を抱える、ゆとりある新しい都市へと大きな変化を遂げている。

「ヤングパワー」ですぐ実行

 西神南ニュータウンの端で、開発面積二八・九ヘクタールにわたる大規模な粗造成工事が行われていた。遠目には、赤茶色のひらたい地面が広がっているように見えたが、JV工事事務所所長の岡崎惠次さんの説明によると、山林を造成するために一年余りの歳月を要したという。いま、ダムや溜池をつくる工事が進んでいる。まさに、住宅をつくるための土台部分の基礎固めといえる。地味だが、非常に大切な工事だ。

 職長会会長は、谷周三さん(宮本組工事部主任)。副会長は、岡本和朗さん(三和建設工務部工事主任)。谷会長は、大型重機を扱う作業を担当して一五年。岡本副会長は、地下水路などの工事に携わって一〇年になる。

お二人とも大柄な青年。職長会のメンバーもみな若い。「ヤングパワー」を全面に押し出し、積極的に新しいアイディアを出し合い、すぐ実行に移すことをモットーとしている。

 現場が住宅地から近いため、風向きによっては、現場の砂ほこりが洗濯物などに付いてしまうおそれがある。「こまめに水を撒いて、風が強い日は作業方法を変えるなど、細心の注意を払っています」と谷会長。

「三〇社を超える業者をまとめるため、職長会が中心となって業者間の連絡調整をして、協調性のある職場づくりを進めています」と岡本副会長。

 職場環境の整備にも力を入れている。山から切り出した竹を用いて、工事事務所の入口に花壇をつくった。その横には、水を受けると竹筒が傾くようになっている仕掛けの「ししおどし」も。トイレの入口は竹を組んで囲うなど、いずれも凝った和風造りだ。

 鴻池組では、現場内の安全衛生を徹底して災害を防止するため、セフティ・マスター制度を取り入れ、各担当者に委嘱している。「整理、整頓、清潔、清掃、しつけ」という5Sを合言葉に、不安全行動の改善に努めている。

 装甲車のような巨大なトラックが土砂を運んで行き交う現場の一角では、「森林リサイクル」と記された重機が、山から伐採した木の枝葉を勢いよく粉砕してチップしていた。 

取材のあとで立ち寄った、西神南ニュータウンのなかの井吹台谷口公園は、国宝の如意寺をはじめ、泉、トンボ池、湿地、野鳥観察所などがある自然豊かな公園。広場には、たくさんの子供たちが駆け回っていた。かたわらの緑地に、木のチップが敷かれていた。工事現場から出た伐採木のチップが、こんなところに活用されているのかな、と思った。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…4)

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2006/08/10

東京電力新豊洲変電所上部建物増築工事

月刊「つち」2002年7月号

清水建設 新豊洲変電所上部建物増築工事共同企業体

東京電力新豊洲変電所上部建物増築工事

リーダー会「大輪」

現場の小さな輪が一致団結して大きな輪に

 変電所というと、発電所から受けた電流の電圧を下げて消費者のもとへ送る設備のある建物というイメージ。でも、目の前にそびえる建物は、鉄骨が剥き出しになった、巨大な円形劇場のよう。変電所は地下にあり、現在、その上部を増築中なのだという。

昨年一〇月の着工以来、時には昼夜二交代で約八〇〇名もの作業員を投入して工事を行なっている。一五カ月後の二〇〇二年末の完成予定時には、地下四階地上一〇階、フッ素樹脂塗装の外壁のインテリジェントビルのような外観が立ち上がる、という。

統括安全衛生責任者で建設所長の手塚德さん(清水建設)が、絶大な信頼を寄せているのが、職長会ことリーダー会「大輪」。「大輪」という名称には、リーダー会を中心として、現場の小さな輪が、一致団結して大きな輪となり、竣工まで無事故・無災害で、立派な建物をつくりあげよう、という願いが込められている。

伊藤志郎会長(新青建設、とび)と、髙橋顕滋副会長(大崎建設、土工)は、この道三〇年以上のスペシャリスト。穏やかで柔和な表情の頼れる職長さんである。

リーダー会は、①作業員から広く意見や苦情などを聞き、作業員間の意思の疎通を図る、②すべての作業員が、より安全・快適に作業に従事できるよう自主的な活動を推進する、という大きく二つを目的として、安全管理委員会、環境美化委員会、分別収集委員会、詰所・共用施設委員会、駐車場委員会、行事委員会の六つを組織している。

五〇種以上の徹底した分別収集を実践

 さっそく、リーダー会のみなさんの案内で現場へ。まず、「現場入場確認ゲート」と記された白い門をくぐる。これより工事エリアということで、門に設置された全身を映す大きな鏡に向き合い、「保護具をもう一度確かめて」「気を引き締めて行こう」というわけだ。

工事用エレベータに乗り込むと、操作しているのは、現場では珍しい若い女性。コンクリートが打たれた床が広がる最上階は整然として、柱の横には、清掃用の箒が立ててある。毎作業後、職種ごとに責任をもって現場の片づけと整理整頓を行なうことを習慣化することで、快適な職場を実現、一斉清掃のムダな時間を廃止したそうだ。

週三回実施している安全管理委員会による安全パトロールでは、安全管理のプロとして危険箇所がないか目を光らせる。作業現場ごとに危険箇所をデジタルカメラに撮ってチェック。朝礼で作業員に現場写真を紹介して、改善を求める。危険箇所がきちんとフォローされているかを再チェックし、安全意識の徹底と作業環境の改善を確実に行なっている。「安全意識が高い人でなければ仕事は任せられない」(伊藤会長)のだ。   

ゴミのリサイクルのための分別収集も徹底している。プラスチック、木くず、金属くず、電線くず、ダンボール、生ゴム、パイプ、ビニール、コンクリート類、がれき類、古紙、石膏ボード、その他の廃棄物等々、その数五〇種以上。ビルの正面に、収集用の函がズラリ並んでいる風景は壮観だ。「これだけの数の分別収集を自主的に実践して、ゼロエミッション(廃棄物削減)に尽力している現場は、ほかに類を見ないでしょう」と手塚所長も絶賛。これもリーダー会のリーダーシップと作業員のみなさんの団結の賜という気がする。

さらに驚いたのは、詰所の中にリーダー会専用の広いスペースが確保されていること。ここには、常に二〇人以上の職長が集まり、ヨコの連絡を密にしている。作業の進行を確認し合い、随時、PHSで現場の作業員に指示。異なる職種同士、なんでも話し合える開放的な雰囲気ができている。そのため、トラブルもなく、スムーズに仕事が進んでいるというのは、心強い。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…6)

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2006/08/08

長井ダム本体建設

月刊「つち」2002年8月号

間・前田・奥村特定建設工事共同企業体

長井ダム本体建設第1工事(第1期)

黒獅子会

「水と緑と花のながい」へ

 東京から山形新幹線で二時間二〇分。赤湯駅でお会いした高山卓也さん(企業体事務課長)の運転する車で、最上川の支流・置賜野川に建設中の長井ダム本体建設工事出張所へ。 

途中、稲の緑とビニールハウス越しに見えるサクランボの赤のコントラストが美しい。フラワー長井線の沿線には、四季折々、サクラ、ツツジ、アジサイ、ハギなどの花が咲き競う。「水と緑と花のながい」というキッチフレーズを持つ長井市のあやめ公園は、この季節、五〇〇種一〇〇万本のアヤメとハナショウブで有名。ここには、ハナショウブの原種の長井古種三一種類も保存されている。 

企業体事務所の隣に、このほど、インフォメーションセンター「野川まなび館」が開館した。長井ダムの建設状況についての広報施設として、野川流域の自然環境と地域の歴史が展示され、市民の総合学習の拠点となっている。

作業員宿舎の生活環境を向上

長井ダムは、堤体自体の重さで水を溜める重力式コンクリートダム。高さ一二五・五㍍、長さ三八一㍍、大きさ約一二〇万立方㍍。巨大ダムというと、富山・黒部湖の「黒四ダム」が有名だが、堤頂から臨む長井ダムも、かなり急峻な地形に建設されている。剥き出しになったダム底が、圧巻である。

予備調査から二五年、付け替え県道工事や仮設備工事が始まってからでも一三年の歳月が費やされている。本体建設工事は、ようやく二〇〇〇年に始まった。現在、ダムサイト付近には、コンクリートに使う砂利、砂などの「骨材貯蔵ビン」九基、コンクリート混合設備や運搬設備など、巨大な施工設備が建ち並ぶ。骨材は、ダムサイトの上流約一キロ地点の原石山から掘った原石を第一次粉砕設備で粉砕して現場に調達する計画かある。

 野川は、磐梯朝日国立公園の朝日連峰の表玄関に当たる。一帯は、ブナの原生林や国蝶とされているオオムラサキをはじめ、イワナ、ヤマメなど、たくさんの動植物の生息地として知られている。長井ダム建設に当たっては、周辺環境の調査結果に基づき、生態系に与える影響を最小限に抑えるため、さまざまな環境保全対策を実施、自然環境に配慮している。

例えば、夜間作業は、動植物への影響を避けるため、照明の光源にナトリウム灯を採用。また、従来の施工方法では、大量の掘削を生ずるため、施工面積を縮小するとともにコスト縮減も実施、早期完成に努めている。

 野川渓谷に伝わる龍神伝説を元に、長井市では毎年九月、大蛇が這うような勇壮な黒獅子の舞が行なわれる。そこから名をとって、職長会は「黒獅子会」と呼ばれている。近藤輝実会長(河北建設)率いる黒獅子会は、各地のダム工事で経験を積んだ「ダム屋」と呼ばれる職長さんで構成されている。

トラチョッキといわれる黄色い安全チョッキに記された名前で呼び合い、業種間のコミュニケーションと連絡調整の活発化を図るなど、作業環境の向上に努めている。

なんといっても、ダム建設は、本体建設工事だけで八~一〇年はかかる長期プロジェクト。家族とともに長井市内に住んでいる若い作業員もいるが、単身、宿舎から送迎車で出張所に通って来る人も多い。黒獅子会では、市内の宿舎「葉山寮」五棟の維持・管理を通して、生活環境の向上に力を入れている。一人につき、エアコン付き畳四畳半の個室が与えられ、専属の調理師がいる大食堂、大浴場も完備。定期的に防火訓練、焼肉パーティや芋煮会などの懇親会も開催。

黒獅子会は、ダムは造ることだけが目的なのではなく、ダムをどのように使い、流域の発展に貢献させるかが大切だと考えている。「地域のみなさんと一緒に長井ダムを造り上げていこう」と地域の行事にも積極的に参加している。

発破を用いるなど、何かと危険が伴うダム建設では、「安全のため〈凡事徹底〉が大切」と金澤真一所長(間組 ダム工事総括管理技術者・技術士)は指摘する。日常の当たりまえの事を一つずつ、きちんと決められた通りやる。毎日の地道な積み重ねによって巨大ダムが完成するのだ。

ダムの基礎となる岩盤を覆っている表土や岩石を取り除く基礎掘削工事は、一部の河床部を残してほぼ完了。今秋、いよいよダム本体のコンクリートの打設を開始する予定である。

●長井ダム建設の目的

  洪水の軽減

  河川の流量の維持

  かんがい用水と水道用水の供給

  水力発電

●長井ダム建設の歩み

一九七七年四月 山形県が建設の予備調査に着手

七九年 実施計画調査に着手

八四年 国の直轄事業になる

八九年以降

工事用道路やダム工事中の県道迂回路となる付け替え県道、野川の流れを一時的に切り替える仮排水トンネルの建設。さらにトンネル工事、橋梁工事、土工工事、工事用受発電、濁水処理設備工事などを実施。一般補償や漁業補償の調印。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…7)

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2006/08/07

北千住駅西口地区第一種市街地再開発事業

月刊「つち」2002年11月号

戸田・鹿島・金澤・奥村・鉄建・佐田・新井共同企業体

北千住駅西口地区第一種市街地再開発事業

施設建築物建築工事(1街区)

千寿さくら会

周辺住民との関係が施工に大きく関係

一日の乗降者数一六〇万人、東京都北東部最大のターミナル駅、JR常磐線北千住駅。その西口の駅前広場に隣接して 今、大きなタワークレーンが屹立している。

 多くの人の目に止まる現場だけに、「近隣対策が大切です」と中尾清喜作業所長(戸田建設)は語る。現場周辺は、約二五〇〇世帯の住宅が密集している。地下四階地上一三階建ての建設中のビル上階から眺めても、周囲に高い建物はほとんど見当たらない。

沿道に住む住民は、できることなら工事車両は通ってほしくないと思っている。中尾所長は、これまでの経験から、こうした周辺住民の思いを理解して、より良い関係を作り上げることが、施工に大きく関係することを熟知している。

円滑な施工のため、現場作業所と近隣の自治会が話し合い、大型トラックによる資機材の搬入・搬出ルートは、三つのルート以外使わないことに合意した。月初めには近隣に作業工程表を配り、住民との合意を守るよう徹底している。

現場の外の囲いには、近隣の小学校から寄せられた子どもたちの絵を展示、行き交う人々の目を愉しませている。

場内外でのくわえタバコは即退場

 日光街道の宿場町として、江戸時代より発展を遂げた北千住に、一九八〇年、駅前広場の拡張と関連道路の整備を含む当地区の再開発事業の実現に向け、準備組合が発足。二〇年に及ぶ歳月を経て、二〇〇二年二月にようやく着工した。

建物の地下一階から地上九階には店舗が、一〇階以上には区民ホールやギャラリーの公益施設が収容される計画になっている。

現場の地下には、営団地下鉄線千代田線が通っている。「最も浅いところで二メートルほど下を走っています」(及川千里副所長)ということで、地下工事に当たっては、地下鉄の構造に悪影響を及ぼしたり、運行に支障が生じないよう、地下鉄の安全確保が大きな課題となっている。

そのため地下は、地下鉄をまたぐかたちで構築。これは、都市土木工事に匹敵する難しい工事だけに、高い精度が要求される。

 工事の規模の割には、工期が非常に厳しいため、まず、一階部分をPC化して建設。そのあと、地上と地下を同時にとりかかった。設備面でもユニット化を進め、工期を短縮を図った。

地下構造物が四階建てと深いため、一階床より地下二階を掘削する逆打ち工法を採用し、地下部と地上を一体化的に施工。これによって山留めも強固になり、地下鉄への影響もない。

 「現場は安全が第一」と語る高橋健一さん(向井建設)は、職長会「千寿さくら会」会長。父親も弟も建設業に従事する。とび・土工の道に進んで二四年のベテランは、がっしりとした身体に穏和な表情をたたえて、「人に恵まれたから」と口数は決して多くない。

毎週水曜日、安全衛生委員会を開き、そこで決められたことは職長会を通じて現場に実践させている。毎日午前中は安全パトロール、午後は品質確保パトロールと気を抜く間もない。職長会の取り決めで、タバコは、詰所回りのみОK、場内外でのくわえタバコは即退場、場内駐車車両も禁煙。高橋会長ご自身、禁煙派のせいか、工程打合せ時間も禁煙を徹底している。

この夏、現場の地下一階で開催された、職長会主催のバーベキュー大会は好評だった。

ビンゴ大会の一等の豪華景品は、21型テレビデオ。職長さん自ら、焼きそばや焼き鳥を焼き、あっという間に食事やビールがなくなった。

一声運動、作業終了時の整理整頓、週一回の一斉清掃、現場の打ち水、詰所周りの草花の手入れ、現場広報紙「千寿さくら便り」など、職長会の活動は広範囲にわたる。高橋会長がとくに力を入れているのは、作業所のゴミ分別及び管理。「昔とは違って、安全はもちろんですが、環境にも配慮することが当然の時代になっています」(高橋会長)

高橋会長を中心に、作業員一人ひとりが、最も重要な安全確保に力を尽くし、無事故無災害の竣工(二〇〇四年一月)をめざしている。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…10

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2006/08/06

常新つくばエクスプレス・秋葉原駅他建設工事

月刊「つち」200212月号

鉄建・三井・錢高特定建設工事共同企業体

一都三県を結ぶ

つくばエクスプレスの起点

 平成一七年度、開通予定のつくばエクスプレス(常磐新線)は、秋葉原駅を起点とし、東京、埼玉、千葉、茨城の一都三県を経て、つくば駅に至る全長約五八kmを約四五分で結ぶ、新しい都市高速鉄道新線だ。

今回、訪ねたのは、つくばエクスプレスの建設工事のうち、常磐新線秋葉原工区と呼ばれている秋葉原駅の「地下四層構造」の全長二八三・五m中、二一七・五mを開削工法で築造している現場である。

秋葉原駅といえば、私の仕事場のすぐ近くであり、乗換駅としてもよく利用している。その地下で、このような大規模工事が行われていたとは……。といっても、地下を走る新線の工事なので、地上から見る限り、クレーンなどの重機や資材が目につくだけ。その地下で一体何が行なわれているのかは、よくわからない。

 電気街として知られている秋葉原も、駅の周りは、神田市場跡などの広場が広がり、どことなく殺風景だ。しかし、つくばエクスプレスが開通する頃には、駅に隣接してヨドバシカメラなどの大型店舗やITビルが建つなど、様変わりするという。

会長を中心に一致団結

無事故無災害八〇万時間達成

こちらの職長会の町田誠会長(東和建設工事部課長)は、JV秋葉原作業所の荒井努所長(鉄建建設)が新入社員の頃、すでに「親方」と呼ばれていた大ベテラン。

といっても、町田会長は、荒井所長の一つ歳上。「新人の頃は、鉄筋を担いだりして、現場の仕事をひと通り覚えさせられました」という荒井所長は、入社以来、町田会長とのつきあいは二八年に及ぶ。

 荒井所長をはじめとする鉄建建設スタッフと町田会長、副会長の中村宣義さん(成豊建設)と小島祥裕さん(アント工事部長)は、前の都営地下鉄12号線工事中野坂上工区の現場から一緒の仲間だ。

 そこでは、地下鉄の開業に向けていっそうの工程短縮が必要となったため、従来の「順巻工法」を用いず、堀削しては上部から本設の構造物の床版コンクリートを打設し、これを支保工として土留壁を支えながら、順次下部へ工事を進めていく「逆巻工法」で施工。それにより、順巻工法で進めた他の工区以上の工期短縮を実現した。

町田会長は、中野工区の職長会会長として労働大臣賞、副会長の中村さんと小島さんも、無事故無災害安全優秀職長賞を受けている。「お互いの仕事をフォローし合ったのが良かったのでは」と町田会長。

さらに、荒井所長と町田会長を中心に一致団結し、「無事故無災害二三〇万時間達成」という記録を打ち立てた。

平成一〇年七月に着手した現在の秋葉原の現場でも、ビルの立ち退き交渉などで半年遅れた工期を逆巻工法で取り返しを図っている。無事故無災害記録も、八〇万時間に及んでいる。

「モノをつくることだけではなく、なにより安全が大事。和気あいあいの中にも、会社や所属を超えてなんでも注意し合えるメリハリのある作業環境をつくること、何事も持続すること、そして、一日一日の積み重ねが大切です」と小島副会長。

「安全管理にまあいいやは禁物。朝礼の時、平均台を渡らせてよろけるような二日酔いの人間は、即刻返します」と荒井所長。

さっそく、監理技術者の林聡副所長と労務安全グループリーダーの熊谷政光さん(いずれも鉄建建設)、お揃いの緑のヘルメットを被った職長会のみなさんの案内で現場へ。人ひとり通れるくらいの階段を地底深く下り、ビル一三階分もの深さを堀削したという内部を視察した。送風機などの換気施設が整っているため、湿気が少なく、クリーンな作業環境が保たれている。

土留壁と構造物の鉄筋を機械式継手により、継ぎ合わせることで一体にした合成壁の施工など、さまざまな技術が駆使されている。しかもコンクリート壁ひとつとっても、丁寧に処理されていることがわかる。

すでに、ホーム部分の鋼管柱もできている。つくばエクスプレスを利用するため、完成した秋葉原駅のホームに立った時、私は、この地底の工事現場と工事に携わっておられたみなさんのことを私は思い出すだろうかと、ふと思った。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…11

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2006/08/04

福島第二原子力発電所取水路開渠設置工事並びに関連徐却工事

月刊「つち」2003年3月号

五洋建設・熊谷組共同企業体

福島第二原子力発電所取水路開渠設置工事並びに関連徐却工事(1)

「新人の頃は何度も海に落ちました」

 オレンジのライフジャケットを身に付け、久保知久さん(五洋建設・福島第二港湾改造工事事務所現場代理人)が運転する車から護岸に降り立ったとたん、濃密な潮の香に包まれた。自然の匂いなのですぐ気にならなくなったが、なにしろ風が冷たい。高台の公園から、改造工事中の港湾全体を眺めていたときはそれほどでもなかったが、真冬の寒風にさらされ、立っているのもやっとという感じ。

 目の前には、巨大な起重機船が停泊して、大きなブロックを吊り上げようとしている。ここ福島第二原子力発電所の専用港湾へ流入する土砂量を減らすため、新たに取水路開渠を設置する工事は、二年半前に着工した。九四%は完成し、平成一五年にはすべて完了の予定。

容赦なく吹きつける潮風のなか、白ヘルメットにオレンジのライフジケット姿の五、六人の作業員のみなさんが、船と堤の上にそれぞれ立って作業している。

 起重機の向こうのポンプ船では、潜水夫が、海底に並べられたブロックを均しているという。風や波など天候の影響を直接受ける港湾作業は、心身ともによほどしっかりした状態でなければとても務まらない仕事であることを実感する。

 そんなことを口にすると、職長会の森山幹雄会長(五栄土木工事所長代理)が、「新人の頃は、何度も海に落ちましたよ。でも、落ちたとしても下は海だからね。そうして仕事を覚えていったものです」。

 ブロックを製作している職長会の泉保之さん(ヤマト工業東京支店主任)は、「最近はさすがに、着替えを持って出勤はしなくなったけれど、駆け出しの頃はよく海に落ちたので、必ず着替えを用意していました」と笑う。

熱中症対策として

親睦を兼ねた梅干づくり

浚渫工のスペシャリスト、森山会長は、地中海と紅海を結ぶ、国際海上交通の大動脈、スエズ運河の歴史的大工事を担当なさった。

一九六二(昭和三七)年、エジプトの国家プロジェクトが始まった。スエズ運河の拡幅増深工事に挑んだのは、ニッポンの海洋土木会社「水野組(現・五洋建設)」の技術者たちだった。
 森山幹雄。七七年から三年間、ニッポンの海洋土木技術の威信を賭けて、国際舞台に挑んだ。工事の主役はポンプ船と呼ばれる作業船。カッターで海中の土砂を削り、ポンプで吸い込み、地上に排出する。

コンクリートの五倍も硬い岩盤。その前に、カッターの刃先は二時間でボロボロ。一日三回交換に迫られた。作業は進まず、プロジェクトを悩ませた。そこには、遠くエジプトの地で、運河の硬い岩盤を克服しようと奮闘した技術者たちの壮絶なドラマがあった。

NHK総合テレビ「プロジェクトX 挑戦者たち」風に語ると、こんな感じだろうか? 実際に、今年一月、「爆発の嵐 スエズ運河を掘れ」として放映されたので、ご覧になった方もいるだろう。

当時、タービンポンプ式5000馬力の新造浚渫船「スエズ」による硬い岩盤の掘削工法は、世界の浚渫業界における一大技術革新だったという。

スエズ運河の改修工事で発揮された五洋建設のすぐれた技術力は、内外で高く評価された。 以来、五洋建設は、その名のとおり太平洋、大西洋、インド洋、南氷洋、北氷洋という五つの大洋を舞台に、世界各地で活動してきた。

話を戻して、森山会長率いる職長会では、夏の熱中症予防対策の一つとして、昨年、会員の親睦を兼ねた梅干づくりを行なった。本場・和歌山から取り寄せた一〇キロ㌘の青梅をシソとともに樽に漬け込み、天日干ししたものを瓶詰めにして各現場に置いた。

夏場の塩分補給には、一般にシオタブが用いられるが、手作りの梅干しは作業員に大変好評だったそうだ。

 泉さんは、工事の様子と四季の移り変わりをデジカメで記録している。自然豊かな発電所内の広大な敷地には、タヌキ、リス、ウサギなど、さまざまな野生動物が生息し、イノシシに出会ったこともある。そんな自然とのふれあいが、作業員のみなさんの心を癒してくれている。

港湾作業は、騒音対策などに大きな注意を払う街中の工事と異なり、工事本体に集中できる。地図を見たとき、ここは自分たちが作った海岸線だとわかる、後世に残る仕事でもある。それが、彼らの誇りなのだろう。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…13

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2006/08/03

相模原橋本地区分譲共同住宅新築工事

月刊「つち」20034月号

竹中・不動・株木・藤木・富山・相陽建設共同企業体

リーダー会

超高層免震構造の

タワー型マンションはすでに完売

 京王線相模原線で新宿駅から約四〇分、橋本駅の近くで、「橋本地区都市拠点総合整備事業」と呼ばれる街区が形成されようとしている。

その中心となるのが、神奈川県住宅供給公社が進める大型分譲マンション「オラリオン サイト」。広大な敷地の中央に、タワー型の超高層二棟(二番館と三番館、いずれも三二階建)、その東と西に超高層二棟(一番館一八階建、四番館二四階建)を配置した、総戸数八七八戸のビッグプロジェクトだ。

 大津勝也作業所長(竹中工務店横浜支店)によると、超高層免震構造と高耐久性コンクリートの採用など、きめ細かい性能が駆使されているという。超高層免震構造とは、建物の一階の柱下に設置した免震装置が、建物にかかる地震エネルギーを吸収して、建物がゆっくり揺れるようにするもの。

 竹中式フラットスラブ免震構造システムという日本初の技術によって、部屋に梁型がないため、バルコニー部分は天井までのスーパーハイサッシュを採用。採光はもちろん、ダイナミックな眺望が満喫できるという。

 西街区と呼ばれる一番館と二番館はすでに完成し、三月初旬に入居が始まる。一年後には、三番館と四番館の東街区が完成予定。二LDKから五LDKまで多彩なタイプ設定で全戸南向きを実現、すでに完売状態というから驚く。

女性作業員の環境を整え

レディース委員会を組織

 リーダー会会長の清水聖嗣さん(石橋産業)は、三〇代の若い職長さん。白い作業着に色付き眼鏡。一見、コワモテ風(失礼)だが、人あたりは実に柔らか。

東西に広がる超高層住宅という、非常に守備範囲の広い現場だが、各所にこまめに顔を出し、「おはよう」「気をつけてよ」と気さくに声を掛ける。そのため、清水さんが姿を見せないと、「なんで今日は来なかったのか」という声が聞かれるそうだ。

「体を動かすのが好き」という清水会長は、高校卒業後、夜学に通いながら、自動車の板金、型枠、鉄筋など、さまざまな職種を経験、外壁工として一二年のキャリアを持つ。ここでは、各戸の玄関ポーチ内に設置されたトランクルームの扉の外壁仕上げをしている。

「気性が激しいので、現場の安全管理でも危ないものは危ないと断固主張して、上に食ってかかってでも筋を通すタイプ。なあなあでは安全な仕事はできない」という。

いつも粘り強く人の話に耳を傾け、何事も納得のいくまで説明する。個性の強い職人集団をまとめ上げる手腕は、上からも下からも信頼が厚い。

 清水会長が特に力を入れているのは、ごみの分別。全員が参加する一斉清掃で、出されたごみの分別指導を行い、かさばる形のまま処理しないよう、ごみの減量化とリサイクルを促進。木屑、ダンボール、コンクリート屑、金属屑、電線、塩ビ、石膏ボードなど、細かくリサイクル品目を分けている。

リーダー会は、安全指導推進委員会、環境保全委員会、厚生管理推進委員会、清掃片付委員会、駐車場管理推進委員会という五つの委員会と並んで、「レディース委員会」が組織されている。

こちらでは、エレベーター・オペレーション、クレーン・オペレーション、ガス工事、クロス工事、クリーニングなどの職種で、十数人の女性作業員が働いている。

当初、男性トイレを利用していたが、女性専用トイレがほしい、着替えるための女性専用休憩所や女性用ロッカーもほしいという要望が寄せられた。環境を整える必要性を感じた清水会長によって立ち上げられたのが、このレディース委員会だ。

合田恵美子さん(又基工業)を委員長に、「女性にやさしい環境づくり みんなでつくろう快適環境」をスローガンに、作業所で女性が気持ちよく働くことができる福利と環境の整備を進めている。

左官工として一六年のキャリアを持つ合田委員長も、「リーダー会の中にレディース委員会を組織して、女性専用トイレや休憩所を設置するなど、女性作業員のための環境づくりを積極的にサポートしている現場はここが初めて」という。

「これからも女性が働きやすい職場を作るためバックアップしていきたい」と清水会長。合田委員長も、「女性特有の気遣いを発揮して、作業所全体を盛り上げていきたい」と笑顔で意気込みを語ってくれた。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…14)

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2006/08/02

南田中トンネル(仮称)築造工事

月刊「つち」2003年5月号

大成・間・大豊・西武・佐田・古久寝・共立建設共同企業体

南田中トンネル(仮称)築造工事(その1)

職長会

身だしなみに注意して笑顔で挨拶

西武新宿線井荻駅で下車して、環状八号線沿いを練馬方面に向かって歩くこと二〇分余り。南田中立体作業所二階の会議室を訪ねると、職長会のみなさんが、コの字型に座って勢揃いされていて、ちょっとびっくり。

 柔和な表情が印象的な職長会会長の谷井佳津利さん(川野建設)は、四六歳。構築(とび、鍛治、鉄筋、型枠)三〇年のベテラン。職長になって一〇年、人の和を育むことが安全で快適な職場づくりの基本だとして、現場経験を積んでこられた。

副会長の宇野友和さん(向井建設)、書記の小國二郎さん(磐城土建工業)と片野寿久(大興電機)さん、会計の金尾昭司さん(三和警備保障)など、職長会のみなさんは、月一回、午後一時から行なわる職長会会議を早めに切り上げて、「職長会訪問」の取材を待っていてくださったという。

「大成建設の向井工事長とは、この現場のずっと前から長いつきあいです」と谷井会長。

「業者の選定をするのは工事長の仕事ですから、いかにたくさんの優秀な業者を確保できるかが大きいですね」という向井研工事長の言葉に、みなさん大きくうなずいた。

「みんなこの現場だけではなく、次の現場でもいい出会いをしたいと思って仕事をしています。それだけ自分の仕事に自信を持っているし、負けず嫌いなんじゃないかな。それに家族思いの人が多いですね」(谷井会長)

「警備は現場の顔。身だしなみに注意して、近隣の方たちにも毎日笑顔で挨拶をしています。近くに幼稚園や小学校があるので、子供たちの安全確保も不可欠です」(金尾さん)

 みなさんのお話をうかがっているうち、職長会の堅い結束を感じた。同時に、ここに集まった職長さんは、まさに各業者を代表する「顔」であり、この現場を支える精鋭・頭脳なのだと実感した。

懇親会で打ち解けると

その後の仕事に良い影響が

 環状八号線南田中トンネル築造工事は、すでに開通している井荻トンネル(約一三〇〇㍍)に新たにトンネルを接続し、北東に向かって二一〇〇・四㍍延伸する工事。

事業区間の構造は、そのほとんどが沿道の環境保全と騒音の低減に配慮した半地下式トンネル構造となっている。この区間が完成することにより、笹目通りや目白通りなどと接続するため、交通の分散化が向上し、交通渋滞の緩和が期待される。

 さっそく、職長会のみなさんに、住宅地と隣り合わせの現場を案内していただいた。向井工事長によると、最新の土木技術を取り入れ、騒音や振動の低減や泥水処理など、環境に配慮した工事であることがうかがえる。

平成一三年末に着工した工事は、平成一八年三月末完成の予定。大掛かりなトンネル工事なので、大型重機を何台も用いて進めている。交通量の少ない夜間も工事を行って、渋滞の発生をおさえている。

 現場では、保安帽・安全靴・反射チョッキを着用。反射チョッキは、青地に白は職長さん、そのほかの人たちは黄色のチョッキ。派手なシャツや見た目に「怖い感じ」の服装は、遠慮することになっている。

 毎月の職長会では、今月の安全目標や先月の行事の実施状況、会計報告に続いて、職長会パトロールの結果が報告・討議される。

例えば、①朝がたの路面の凍結注意、②詰所やトイレの清掃状況、③当作業所の工事車両の光ヶ丘公園周辺の違法駐車のチェック、④場内での自転車の使用は原則として職長のみ、⑤各休憩所・事務所の施錠・消灯ならびに灰皿の後始末、⑥ごみの分別についての周知……取り上げられるテーマは、非常に多岐にわたっている。しかし、その一つひとつに、谷井会長をはじめとする職長会は丁寧に対処している。

「工事に携わったら、郷に入れば郷に従えで、その地区の生活環境に融合して、トラブルや事故がないよう努力しなければなりません。近隣のみなさんとコミュニケーションを密にして、一〇〇%満足させるよう努めることが、われわれ職長会の活性化にもつながります」と向井工事長。

職長会では、血圧測定と健康診断の実施、歩道際やゲート前の季節の花壇の植え替え、懇親会やお花見も行なっている。

秋の味覚を愉しもうと昨年企画されたデラックスバス・ツアーも大変好評だった。毎日、現場で顔を合わせていても、飲んだり食べたりして打ち解けると、その後の仕事に良い影響をもたらすという。

近隣と作業員、双方に喜ばれるよう、地道な活動を続ける職長会のみなさん。その姿を見ていると、「地図に残る仕事をやり遂げよう」という熱い思いが伝わってきて、こちらまで清々しい気持ちになった。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…15)

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2006/08/01

荒川区東尾久二、六丁目付近再構築シールド工法

月刊「つち」2003年6月号

大豊・佐田建設共同企業体

補助306号線新設に伴う荒川区東尾久二、六丁目付近再構築その1‐2及び二次覆工工事

職長会

トンネルを掘り進むシールド工法って?

地下鉄千代田線・町屋駅を下りるとすぐ、都内唯一の都電荒川線が走っている。その線路沿いをしばらく行くと、突然、右手の視界が開ける。幅広の真新しい道路が、まっすぐ延びて、街路樹の花水木の花が美しい。

二年ほど前、曲がりくねった旧道を三倍以上拡張して、防災道路として整備したのだという。明治通りまで延ばすため、現在も工事中だが、無電柱化を実現して、すっかり見通しの良い道路に生れ変っている。

今回、訪ねる現場は、ちょうどこの道路の真下、「シールド工法」という技術を用いた工事であるという。シールドとは「盾」という意味で、辞書によると「トンネルを掘る時に、回りの土がくずれないようにする枠」とある。トンネル工事なら、これまでも地下鉄や高速道路の工事を訪問している。そうした現場と同じようなイメージを抱いていたのだが、実際は、予想をはるかに超えた世界が広がっていた。

現場に入る前に、東尾久シールド作業所の現場代理人・池田勝彦さん(大豊建設)にシールド工法について画像を用いてレクチャーを受けた。シールド工法とは、シールド(shied)と呼ばれる鋼の筒の前面に、カッターが付いていて、それが稼動することで地中を効率的に掘り進んでいくことだという。

ニッポンにこの工法が入ったのは戦前で、一九四二年の国鉄・関門海底トンネル工事以降、トンネル工法として確立された。近年、都市部の基礎整備は、地下の利用なしでは考えられなくなっているといってもよいが、シールド工法は、その地下空間を創り出すものとしてなくてはならないものになっている……そうしたことが少しずつわかってきた。

経験とカンが頼りの少数精鋭の現場

職長会会長の白石憩(いこい)さん(日豊土木)は、シールド工歴二五年、ニッポンで一九名しかいないシールド工のマイスターのお一人。丸の内線・国会議事堂駅の地下工事などに携わり、九四年、大豊建設が開発した「DPLEX」という最新技術のシールドマシンを初めて押した(運転した)と、なつかしそうに語ってくださった。

マイスターの白石会長は、地下鉄11号線(半蔵門線)の本所土木工事の技術指導員として、若手作業員にシールド工法の指導に当たっていたそうだ。

今回の工事は、新しい道路沿いに総延長一一七五mを掘進して、老朽化した下水道を構築するもの。沿道には、小学校、病院、都電荒川線など、生活と密着した施設や輸送機関がある。そのため、慎重な施工が要求される。

シールド工法の第一人者である白石会長を中心に、昼夜合わせて二四人の作業員という少数精鋭で、昼夜工事に当たっている。

職長会も白石会長のほか、残土運搬の千葉実さん(花輪建設)、地盤改良基礎工事の加藤康徳さん(太洋基礎工業)、警備の根石喜由さん(三和警備保障)の四名で構成。

職長全員が顔を合わすのは、月1回の安全委員会のみ。しかし、少数精鋭の現場だけに、互いに顔が見えるというか、強い信頼感・連帯感・責任感で結ばれている気がする。

発進立坑のある建物は、自然豊かな尾久の原公園の入口にある。子ども連れをはじめ、老若男女たくさんの人々が集まる憩いの場所だ。そのため、周囲から浮き上がらないよう建物の外壁には、愛らしいイラストを描かれている。内部の土砂の音が漏れないよう、防音にも十分配慮している。

池田さんと白石会長の案内で、立坑から深さ一〇mほどの路線の中へ。台車が通る枕木の敷かれたトンネル内部は、思っていた以上に明るく、土砂や泥もなく整然としている。トンネル内は禁煙で、吸殻などのゴミひとつ落ちていない。安全設備も整っている。

一五分ほど歩くと、掘進工事の最前線に到達した。おおっ、これがお話を伺っていたシールドマシン! マシンの前方に二名の作業員。最新マシンを用いているが、それを動かす人間の経験とカンが必要とされる。前に「予想をはるかに超えた世界」と述べたが、シールド工法の現場は、私には驚きの連続だった。昼夜に及ぶ作業で、一日一二~一五mも掘り進むそうだ。

 それにしても、毎月、各地の建設現場の職長会を訪ねて一年以上になるが、ヘルメットを被った現場のみなさんは、実にきりりとされてカッコイイ。私も取材のたびにヘルメットを被るが、頭からヘルメットが浮いている感じで、なんともぎこちない。

ヘルメットが似合うプロ中のプロになるには、たくさんの現場を踏んで、さまざまな経験を積まなければならないのだなぁ。シールド工法という、これまで知らなかった未知の技術と現場を目の当たりにして、実感した。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…1)

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2006/07/31

月島1丁目地区開発計画

月刊「つち」2003年7月号

NCC月島大林組・青木建設共同企業

職長会

月島駅の目の前に三二階建てタワー

 都営大江戸線「月島駅」七番出口から地上に出ると、すぐ目の前にいきなり工事現場が現われた。思わず見上げると、高層の建物の上階に「I-MARK TOWER」の文字。隣は、月島名物のもんじゃ焼きのお店が軒を並べる月島西仲通り商店街のアーケードが続いている。その脇には、昔なつかしい路地が。

古川敏満(こがわ・としみつ)所長(大林組)の説明によると、アイ・マークタワーは、地下二階、地上三二階、一階に「もんじゃ焼き」などの店舗、二階に診療所・事務所、三階以上が共同住宅となる。

分譲三四八戸のほとんどは、すでに完売。タワークレーンの解体工事も完了し、今年八月の工期完了を目指して、現在、内装工事が進行中。全戸オール電化で、ガスを使用していないのが特長。入居者のオーダーメイトにより、各戸ごとにフローリング床、壁のビニールクロス貼り、システムキッチンなどの仕様が異なる。

きれいな現場で仕事もはかどる

 実際に現場を案内してくださった職長会の中心メンバーは、みなさん精悍な面構え。がっしりとした体格の赤池孝二会長(測信)は墨出しと呼ばれる測量、笑顔がやさしい副会長の加藤満さん(光電舎)は架設工事、あごヒゲが印象的な副会長の大川東(あずま)さん(鈴木組)は資材搬入の仕事にそれぞれ携わっている。

 職長会は、安全部会、環境部会、清美部会の大きく三つから成る。加藤副会長は、「居心地の良い生活環境を整える」環境部会を担当。詰所の整理整頓はじめ、トイレや休憩所を各業者持ち回りで毎日清掃している。

張り出されたトイレ清掃マニュアルには、「毎日みなさんがお世話になる所です。きれいにしてあげましょう。きれいなトイレはキレイな現場です」。

特に力を入れているのは、「ゼロエミッションの推進」。一般ゴミは、①コンビニ、スーパーの袋、②燃えないゴミ(コンビ二弁当とカップ麺の容器、プラスチック製品)、③燃えるゴミ(新聞、軍手、靴下、ちり紙)、④空き缶、⑤ペットボトル、⑥生ゴミ(弁当・カップラーメンの中味、パン、飲み物ゴミ)、⑦割りばし、という七種類にきちんと分別するよう、それぞれ容器を設置している。

 親睦会の企画も環境部会の担当だ。大林組が参加しているソフトボール大会やマラソン大会に選手を出して、マラソン大会ではなんと優勝も果たしている。

 大川副会長は、清美部会の担当。各階の清掃用具の設置・管理、毎週一五分の一斉清掃、資材の整理整頓、作業後の片付けの確認、搬入車輌や通勤車輌の管理、週一回有志による搬入経路の清掃など、その名のとおり、現場内外のあらゆる整理整頓を担っている。

 作業時間は八時~一八時だが、作業終了の一五分前には、後片付けと清掃を行なうよう徹底している。使用しない材料は、各業者が材料置場に片付ける。木材はかさばらないようきちんと平らに並べる。不要の資材は持ち帰る。こうして、現場内を常に整然とした状態にするよう心掛けている。

「きれいな現場で仕事ができれば、気持ちがいいし、安全も保たれて、仕事もはかどります。はじめからきれいだったら、ディズニーランドと同じでゴミを捨てる人もいなくなるでしょう」と大川さん。

 整理整頓か行き届いているおかげで、現場は、いつ外部の人に入られてもよい状態が保たれている。今回の職長会の取材に際しても、特別なことは何もしていないと、赤池会長は胸を張る。

今年の三月、伊東浩司さん(マッセ)をリーダーとして、「内装仕上げ部会」を立ち上げた。これから内装工事で、ボード、家具、壁、床など、さまざまな職人さんが現場に入る。こうした職人さんをまとめて、内装工程の進捗状況の確認・管理、問題点の検討・是正・打ち合わせを積極的に行なっている。

「ちょっと飲みませんか」と伊東さんが、新しく立ち上げた内装仕上げ部会への参加を職人さんたちに呼びかけたところ、自主的に全体の八割の人が参加してくれたという。「みなさん生活がかかっていますからね、話し合いも真剣で活発です。自分たちの仕事を守りたい、スムーズに仕事をしたいという一心なんです」と伊東さん。

 現場では、名前が記されたヘルメットを被って、お互いに名前を呼び合うようにしている。以前は、「○○屋さん」など職種名で呼ぶことが多かった。そのため、意見が食い違うと感情的になりやすかったという。

でも、「○○さん」と名前を呼び合うようになってから、コミュニケーションも円滑になった。「人間ですものね、名前で呼ばれると素直にうれしいですよね」と赤池会長。

 屋上に上がると、隅田川を挟んでぐるりと周囲が見渡せる。「晴れた日は、富士山の夕焼けが素晴らしい」と加藤さん。

 インタヴューを終えて現場の外に出ると、日暮れ前の明るさが残っていた。ちょっともんじゃ屋の店先を散策してみたくなった。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…1)

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2006/07/30

つくばエクスプレス六町駅(仮称)工事

月刊「つち」2003年8月号

戸田・東亜・西武・東武谷内田特定建設工事

常新・六町St.()他1

住宅地に生まれる地下駅

千代田線北綾瀬駅から、環状七号線沿いに、首都高速三郷線のインターチェンジと綾瀬川を超え、一つ道を折れて歩くこと二〇分余り。いつの間にか、幅七メートルほどの区道に面した静かな住宅地に出る。

住所でいうと足立区六町一丁目から四丁目に至るあたり。ここが、つくばエクスプレスの六町駅(仮称)の工事現場だという。

「えっ、こんなところに?」

 住宅が点在して、商店もほとんどないこのあたりに、駅ができるとは、とても思えないのだけど……。

しかし、平成一七年度開通予定のつくばエクスプレス(常磐新線)の予定図を見ると、始点の秋葉原駅から六つ目に、確かに六町駅が存在する。

私はすでに、二〇〇二年一二月号で、秋葉原駅の地下工事を取材している。東京、埼玉、千葉、茨城の一都三県を経て、つくば駅に至る全長約五八キロ㍍を約四五分で結ぶ、新しい都市高速鉄道新線工事は、その後も着々と進んでいる。

ここ六町駅でも、すでに全体の約九三%の工事を終えているそうだ。

 小雨模様の中、作業着に着替えて、ヘルメットを被った私は、作業所長の杉田文隆さん(戸田建設)のご案内で、さっそく深さ三〇メートルの地下駅へ向かった。

これまで、地下駅やシールド工法の視察をしているので、地下にはもう慣れた気がしていた。それでもやはり、狭い階段を一歩一歩下りていくのは、ドキドキする。

六町駅は、区間延長三七五㍍、最大幅二三㍍、最も狭い両端が一二㍍の箱型トンネル。工事は基本的に開削工法である。

しかし、途中、中川汚水幹線が横断しているため、土留め用の連続壁を構築できない一五㍍については、非開削工法による。

地下三階の三層構造の駅舎は、ホームと円柱、線路、エスカレータと階段の斜面もすでに完成している。「軌道屋」さんがレールを敷けば、電車の乗り入れができるようになる。  

しかしながら、工事自体は、難問続出であったらしい。

「このあたりは地下水位が浅いうえ、地盤が軟弱なため、地盤沈下を生じやすいので掘削には十分な検討が必要でした。

また、東京電力の花畑洞道や中川汚水幹線などの重要な埋設物があります。土圧や水圧など、さまざまな課題を抱えて、高精度の施工を要求されました」と杉田作業所長は説明する。

来年一月まで無事故無災害で

 この難しい工事に一致団結して挑んだのが、今回登場する職長会のメンバーのみなさんである。

小島宗雄会長(白岩工業)はトビ・土工、武藤浩明さん(脇田建設)は型枠、佐藤直達さん(タカミ工業)はトビ・土工、稲川周さん(まさと 稲川鉄筋工業)は鉄筋、佐藤光良さん(日本建設警備)は交通誘導、立崎啓三さん(中央電気)は電工をそれぞれ担当している。

地盤改良、山留め、掘削などのピーク時には、さまざまな業種が入り、作業員は一〇〇人を超えたが、現在は、四〇人ほどに落ち着いている。

職長会のみなさんの職種は、主に支保工や中間杭や路面覆工の解体・撤去に携わるトビや土工や鉄筋など。小島会長のもとで作業に当たっている。

「工事区域前の区道の幅が狭いため、トラックによる資機材の搬入・搬出にはかなり気を遣っています」と小島会長。

「近隣の餅つき大会やさくら祭にも積極的に参加したり、寄付をするなどして、町内のみなさんとのコミュニケーションに努めました」。

 そのため、住民とのトラブルはほとんどなかったそうだ。

「一番多いときは、一日一〇〇台から二〇〇台のトラックが残土の搬出で行き来していましたからね。付近は、小学校や保育園の通学や登園の通路になっていますから、安全確保が最優先です」と警備の佐藤さん。

 毎週水曜日、血圧測定を全員に徹底して、健康管理に努めている。

また、現場に講師を招いて高所作業のための特別教育も行った。

二ヵ月に一度、親睦を図るためのレクレーションも行っている。職人さんがくり抜いたドラム缶に炭を入れてのバーベキュー大会が好評だ。

お酒を酌み交わすことで、それまで名前も知らなかった人と顔見知りになる。それからは、現場でも自然と名前を呼び合うようになり、作業も円滑に進む。

「工事の山場は超えましたが、これから夏場にかけて気の緩みがないように、来年一月まで、無事故無災害で工事を終わりたいものです」と杉田作業所長。

 巨大な地下駅が完成すれば、地上にもロータリーやビルが建ち並び、静かな六町駅周辺の様相もきっと一変するのだろう。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…1)

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2006/07/29

共立女子学園神田一ツ橋新一号館(仮称)新築

月刊「つち」20039月号

共立女子学園神田一ツ橋新一号館(仮称)新築その他工事

鹿島建設

クリームを基調とした明るい新校舎

 東京・千代田区の神田から一ツ橋にかけての界隈は、古書店や出版社が軒を連ねる「本の街」として知られる。

この夏、出版された私の文庫本の打ち合わせで何度も通っていた出版社のすぐ隣で、今回訪ねる共立女子学園の新築工事が行われていたとは、まったく気がつかなかった。

 しかし、あらためて見ると、グレーの地味な色合いの建物が多いなかで、地上15階の、柔らかなクリームを基調とした明るく清新なイメージの新校舎は、ひときわ目をひく。

女子大らしいピンクの花崗岩の外壁は、共立女子大の石橋理事長の発案によるものだとか。あとは内装設備工事を残すのみ。九月末には完成し、二〇〇〇四年四月、開校予定である。

 ところで、この新校舎の隣には、「共立講堂」と呼ばれる、古風な講堂がその姿をとどめている。

聞くところによると、共立講堂は、昭和三一年のオープン以来、都内随一のホールとして、六〇年代から七〇年代にかけて海外アーティストの来日公演が行われたという。日本のフォークやロックの殿堂とも呼ばれ、音楽シーンを語るうえで重要な場となっていたらしい。

現在は、入学式や卒業式などに利用される以外は、ひっそりと佇んでいるように見えるが、建立当時は、かなり斬新かつモダンなデザインだったのだろう。

 そんな「歴史の生き証人」のような講堂のすぐ隣に地上15階の新校舎はそびえている。

親睦会の賞品はDVDプレイヤー

 本日集まってくださったのは、職長会の四人の役員。大谷孝雄会長(北友建設)は、墨だし三〇年のベテラン。松崎繁副会長(オリエンタル・ガイド・リサーチ)は、ゲート管理を担当している。

「前の現場では、朝から道行く酔っ払いの人にからまれたりしたこともありましたが、こちらでは、毎日、通勤・通学の方から『おはようございます』『ご苦労さまです』と声を掛けていただいて。これまでの現場ではなかったことですね」と松崎副会長。

 大谷会長も松崎副会長も、川上祥一所長と武藤正男工事課長(いずれも鹿島建設)とは、十数年来のおつきあい。しっかりとした信頼関係がすでにできている。

 書記の羽沢雄一さん(三建設備工業)は、空調・ボイラーなどの設備管理。これまで一二年余り内勤で、現場で職長を担当したのは、今回が初めて。

「コワイ人がたくさんいて、怒鳴られるんじゃないかと思って内心ビクビクしていましたが、みなさん意外とやさしい人ばかりで」と笑う。現場が楽しくてしようがない感じ。

 中村正美さん(関電工)は電工。中村さんも今回初めて職長になった。会計担当として、作業員の駐車場の駐車料金(一日二〇〇円)を毎日徴収している。

「駐車料金を積み立てて、職長会の費用にするのですが、ひと月では数十万円になりますので、その管理がなかなか大変です」

 シャワー室や詰所の整備など、職長会から出された要望書は、川上所長のОKで、ほとんどすべて実現化しているという。

「現場で働くみなさんが、楽しく快適に仕事をしてくれれば、仕事も安全かつ順調に進みますからね」と川上所長。

 朝礼の司会進行、週一回、各フロアを職長会全員で巡回する安全パトロール、詰所やトイレの備品管理、安全表彰、安全標語コンクールなど、職長会が自主的に運営している。なかでも楽しみなのは、やはり親睦会。

「現場で、焼肉パーティをしたり、ビンゴやカラオケ大会をするのですが、なんといってもここは賞品がスゴイんです。DVDプレイヤーにプレステーション2、冷蔵庫……健康管理のための血圧計というのもありましたね」と賞品調達班()の羽沢さん。

「やはり、安全に仲良く作業してもらいたいですからね。こうした親睦会は、作業員にとって貴重なコミュニケーションの場ですね」と大谷会長。

 学校の敷地内という環境のなか、騒音と振動と埃にはかなり気を使ったという。

「常に近隣の迷惑を考えて、同じ作業でも、ダダダダダーーーーっと長く続けないで、ダダッ、ダダッと間接的に申し訳なさそうにやるのでは受ける印象が異なります。モノを置くときも、どさっと放り投げるのと、静かに置くのでは全く違うでしょう」と川上所長。

 みなさんと一緒に、実際に稼動するエレベーターで屋上に上がった。奥には自然観察のためのビオトープが設けられ、皇居の森を望むこともできる。

 この建物は当初は、二三階建になる予定だったそうだ。そのせいか川上所長は、前方の高層マンションを指差して、

「ああ、二三階だったら、あのビルから見下ろされなくてもすんだのに~! 残念だなぁ」と子供のようにくやしがっておられる。思わずクスリと笑ってしまった。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…19)

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2006/07/28

世田谷代田駅・喜多見駅間 線増連続立体交差工事

月刊「つち」200310月号

世田谷代田駅・喜多見駅間 線増連続立体交差工事(土木・第1工区)

フジタ・間・三井住友建設共同企業体

複々線化工事の真っ最中

 今年の梅雨は長かった。というか、いつまでも梅雨明けしない、はっきりしない陽気が続いて、夏を実感できないまま、いつの間にか秋風が吹くようになっていた。

まだ梅雨明け宣言のない、八月初旬の朝。私は、小田急線梅ケ丘駅に降り立った。雨こそ降ってはいなかったが、かなり蒸し暑い。

小田急電鉄は、小田原と新宿を直結する本線のほか、相模大野から藤沢へ分岐する江ノ島線などの支線を持つ、中堅の民鉄。

私は、箱根に旅行するとき、小田急の「ロマンスカー」を利用している。全車座席指定制で、しかも料金はリーズナブルである。

しかし、その一方で、新宿近辺の小田急線といえば、関東随一の混雑路線として有名だ。混雑の緩和が懸案となって久しいが、現在、関東の民鉄としては最大規模の複々線化工事(東北沢~和泉多摩川間)の真っ最中であるという。

「そういえば、女流作家のインタヴューで、梅ケ丘のご自宅を訪ねたことがあったなぁ。沿線に住む友人に誘われて、駅前にあるアナゴのおいしい寿司店に入ったのは、もっと前だったかな」

そんなことを思い出しながら、線路と並行する梅ケ丘商店街を歩く。徒歩数分の高架下に、工事事務所があった。

そちらで早速、長崎照夫所長と労務安全部の手島信五郎さん(いずれもフジタ)から、工事概要の説明を受けた。

 小田急線の高架工事は、成城学園前駅~登戸駅間(約二・四㌖)の第一期工事に引き続き、世田谷代田駅~喜多見駅間(約六・四㌖)の区間を立体交差・複々線化するもの。一七カ所の踏み切りを立体化することでなくすとともに、側道も整備している。

このうち、今回私が訪ねたのは、東京都世田谷区代田三丁目から梅丘一丁目に至る工事。高架部分は約六〇〇㍍に及ぶ。三ヵ所の踏切が施行対象となっている。

民家隣接の線路工事の騒音に注意

「昨年一二月に、上り線を高架に切り替えて、立体交差が完了しました。複々線のための三次切り替えに向けて、高架橋築造工事をはじめ、高架橋桁架設工事、ホーム築造工事などを行ないます」と語る長崎所長に、梅ケ丘立体作業所職長会のメンバーを紹介していただいた。

岩崎雅一会長(藤信 土・躯体工事)、西川健郎さん(信和建設工業 型枠工事)、大嶋健一さん(秋本工業 鉄筋工事)、釜石秀一さん(ワールド・ワン 警備誘導)の四人。

ちょうどこの日は、「安全パロール見直しプロジェクト」のメンバーによる、月一回の現場パトロールに当たっていた。これは、「藤興会」という協力会社一三〇社で組織しているプロジェクトだそうだ。

職長会の四人のほかに、郷司さん、米田さん、安原さんという三人が加わり、会議室の中は、すでに熱気むんむん。

 岩崎会長は、どちらかという童顔の、若い職長さん。型枠一筋三〇年の大ベテランの西川さんをはじめとする仲間たちとがっちりスクラムを組んで、職長会活動に取り組んでいる。

「民家に隣接した線路工事なので、ほかの現場に比べて、騒音には神経を使います。仕事に熱中してしまうと、つい連続して音を立ててしまいがちですが、そういうことがないよう注意しています。

資材を移動するとき放り投げたり、風で資材が飛んだりすることがないよう、材料管理にも気を配っています」と岩崎会長。

「商店街に隣接した土木工事ですから、現場ゲート付近へトラックが進入する際、一般車輌との接触に注意しています。

また、現場のすぐ脇を電車が走りますから、列車見張り員を配置して、電車が近づいたら作業員に合図を送って、作業を一時中断して退避させるなど、常に安全を心掛けています」と釜石さん。

「職長会のメンバーで、毎週月曜日は沿道の清掃、水曜日は現場の巡回を行なっています」と大嶋さん。

「現場が七〇〇㍍にわたってうなぎの寝床みたいに細長くて、車も走れないなど、いろいろ制約が多いのですが、トランシーバーやケータイで互いに連絡を取り合っています」と西川さん。

 この複々線化工事によって、輸送力が抜本的に増強され、ラッシュ時間帯の混雑緩和と所要時間の短縮が図られるという。

また、連続立体交差によって、小田急線を立体化し、踏切をなくすことにより、交通渋滞の緩和につなげるそうだ。

以前は、二、三分ごとに電車が通る、「開かずの踏切」として有名だった踏切も、すでに高架に切り替えられ、車の渋滞も解消した。

昼間だけではなく、夜間工事を行なっていた時期は、終電後から始発までの約三時間余りが勝負だった。工事は順調に進み、すでに全体の半分近くが終わっている。平成一六年三月末完成予定。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…20

)

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2006/07/27

仮称 南部葬祭場新築工事

月刊「つち」200311月号

東急・日本鋼管工事・ミユキ共同企業体

「元気! やる気! 負けん気!

合言葉はまかせて下さい!!」

 JR川崎駅からバスで約二〇分。日本最大の工業地帯、京浜工業地帯の一角、大型車輌がひっきりなしに行き交う幹線道路に面して、「仮称 南部葬祭場新築工事」が進められている。

人口一二五〇〇〇〇人を超える川崎市では、六五歳以上の老年人口が一五万人を超えた。また、二〇二〇年には、いわゆる団塊世代が老齢のピークを迎えるという。

ところが、市内北部(施行は東急建設)にしか葬祭場がないため、南部地区にも建設の必要に迫られ、市で計画を進めていたが、昨年から、南部地区に葬祭場の建設が始まった。

永峰滋所長と三宅祥夫工事主任(いずれも東急建設)のおふたりのお話によると、このあたりは埋立地で、掘ると水が出てくるため、地盤改良工事・山留工事・杭工事・土工事を経て、鉄筋が立ち上がったそうだ。

南部葬祭場は、地下一階(駐車場)、地上二階。最高二〇〇〇度の高熱炉からフィルターを通して完全にクリーンな空気を外に排出する、最新火葬炉一二基を持つ。火葬炉につきものの高い煙突はない。

完成予想図によると、車寄せには噴水が設置され、まるでホテルのエントランスのような感じ。内部は斎場棟と火葬棟に分かれ、一〇〇人を収容できる斎場の祭壇は大理石、告別式の床は花崗岩と、重厚で落ち着いた、たたずまい。

 さっそく現場に案内していただいて、すぐ目に飛び込んできたのは、建物正面に掲げられた、職長会が募集したスローガン「急ぐ作業も心にゆとり、安全確認もう一度!!」(佐々木一男さん(吉田工務店)の作品)

その下には、職長会メンバーが顔写真入りで掲示されている。隣には、「毎週水曜日は特別安全点検の日」と記されたアイドルのポスター。「女性っ気がないので……」と勝呂賀一職長会会長(よしかず、天内鉱業、鉄筋工事)

朝礼広場には、「元気! やる気! 負けん気! 合言葉はまかせて下さい!!」という大きな文字。

「元気! やる気!」に続く「負けん気!」というのは、私には欠けている部分ではないかと常々感じていたので、何ごとにも屈せず、やり遂げようとする気概が大切なのだと、改めて納得。なんだか元気になる言葉だなぁ。

「合言葉はまかせて下さい!!」も頼もしい。以前、大河ドラマ「利家とまつ」の主人公の決まり文句「おまかせくださりませ」が流行語になったことがあったが、だれもが自信を失いがちなこの時代、「おまかせください」と、いつでも率先して、胸を張って言えるだけの力を蓄えたいものだ。

委員会の中の分担を決めて

全員が職長会活動に参加

今回集まっていただいたのは、勝呂会長をはじめ、副会長・安全委員会委員長の岩崎文夫さん(時久組、外壁・タイル工事)、環境衛生委員の八巻義昭さん(大都建設、土工事)、同じく環境衛生委員の清水義久さん(京電・山洋JV、電気設備工事)、車両委員会委員長の矢田歩さん(大明・トヨオカJV、通信設備工事)の五人の職長さん。

鉄筋工事二九年のベテラン、勝呂会長は、「職長会は、各職長が全員で運営していくわけですが、積極的に活動に参加する人とあまり参加していない人がいるのが、実状ではないでしょうか?

私たちは、一部の職長だけが活動するのではなく、全員参加の意識を作るため、職長全員が何らかの委員会に参加して、その中で委員の役割を決めて責任を持って活動できるように、現場に職長会メンバーを顔写真入で掲示しています」

 職長会では、毎週水曜日の安全パトーロール、金曜日の一斉清掃、安全大会での職長会表彰、さらに、安全委員会・環境衛生委員会・車両委員会という三つの委員会活動を行っている。

 委員会活動で特長的なことは、委員長のもとに委員がいて、それぞれの職長が具体的な活動項目の役割を必ず担っていること。

 安全委員会では、安全パトロール、高所作業車の管理、脚立や足場の状態管理、作業通路の管理、電動工具や火気の使用管理、雨水対策、風散防止など、項目ごとに担当責任者を決めている。

  環境衛生委員会では、一斉清掃やゴミの分別収集の徹底のほかに、作業を終えたあと、身の回りのゴミをひとつかみ持って帰ろうという「ひとつかみ運動」を推進している。

車両委員会では、駐車場の管理、搬出・入車両の管理を行っている。目の前の幹線道路への出入は、左折入退場が原則だ。

「勝呂会長を中心によくまとまって、こちらが指示しなくても積極的に動いてくれているので、とても助かっています」永峰所長。職長会に対する信頼も厚い。

今夏、職長会では、熱中症対策として、暑さの影響を受けやすい首にタオルを巻くことを奨励した。

職長会を示すスカイブルーの美しいヘルメットに、首元の白いタオル。それは、職長会の団結の証のように思えた。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…2)

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2006/07/26

神谷ポンプ所建設工事

月刊「つち」200312月号

西松・青木・村木建設共同企業体

神栄会

都市型浸水被害を防ぐ

排水施設を

 今回初めて知ったのだが、東京・北区の岩淵・赤羽南・東十条地区を含めた、隅田川とJR京浜東北線に挟まれた地帯は、浸水被害が常に懸念されている低平地地域なのだそうだ。原因として、次の三点が考えられる。

    高度経済成長期時代に進んだ地盤沈下

    隅田川改修計画の見直しによる水位の上昇

    舗装などの都市化の進展による雨水流失量の増大、つまり雨水の地下浸透の減少

これらの結果、治水安全度が極めて低い地域となっている。なんだか、人災とも、典型的な都市型災害ともいえるような気がするが……。そのため、雨水を隅田川に放流する排水施設として、北区神谷三丁目に神谷ポンプ所が計画され、平成七年十月に着工した。

現在、平成一七年完成に向け、地下四〇メートルの土工も進み、排水のためのゲート門も完了している。

現場と地域の架け橋となる

クリスマスイベント

 神谷ポンプ所建設工事の職長会の名称は、「神栄会」。神谷の神と、加藤栄治所長(西松建設)の栄を合わせたのだとか。

神栄会九代目会長の伊藤利彦会長(栗原工業)は、職長会長としては珍しい電気職。伊藤会長はこれまで、副会長・会計・書記を歴任されたが、初めて会長に推されたときは、ご本人も「かなりびっくりしました」。

 取材には、伊藤会長のほか、九名のメンバーが勢揃い。鈴木孝二さん(電気)、佐野伸治副会長(左官)、松田透さん(型枠解体)、会計・書記の吉田裕夫さん(機械設備)、湯口浩充さん(衛生配管)、富田信吾さん(空調設備)、会計の福栄英昭さん(架設)、佐々木博孝さん(空調)、そして内堀友寛顧問(躯体)

「前会長の内堀さんはじめ、経験豊かなみなさんのバックアップのおかげでやっています」と伊藤会長。

毎朝の安全朝礼は、神栄会の安全当番が司会を務めて、作業内容の発表、全員による指差呼称、各業者ごとにKY(危険予知)活動を行っている。

しかし、「朝礼のラジオ体操はマンネリ」であると、神栄会は「五感いきいき運動」を取り入れた。例えば、仲間同士のコミュニケーションを図る「肩もみ運動」は、二人一組になってジャンケンをして、負けた人は勝った人の背中に回って両手を相手の両肩にのせて肩もみをする。最後は全員が大きな輪になるというもの。ゲーム感覚の体操だ。

その後、職長が新規入場者ごとに、規則の

説明を行う新規入場者教育、午後一時から翌日の作業の打ち合わせをする昼礼、当番制でトイレ・ゴミ置場・打合せ室の清掃管理を行う掃除当番、駐車場管理、毎週水曜日の職長会パトロール、毎週金曜日、神栄会による現場内の一斉清掃、毎月末、会長が参加する災害防止協議会、定期的に作業員全員参加による現場周辺の歩道などのゴミを拾う「クリーンアップ作戦」など、安全衛生に関するだけでも、ぎっしり予定が詰まっている。

現場のすぐお隣が赤羽警察署ということもあり、警察署の交通安全週間にも参加。警察署の協力依頼を受けて、クレーンで車を吊って自然落下させ、時速四〇㌔の自動車衝突実験を行った。

「地元の自動車学校で行ったのですが、一般から二〇〇人に上る見学者が集まりました。職長会で新調した揃いの白い作業着を着て参加しました」(伊藤会長)

また、横断歩道で小学生の旗振り誘導も行い、赤羽署から感謝状を贈られている。

毎年九月の防災の日、防災訓練に参加して、土のうを手配。実際に、台風災害時には救助活動も行い、下水道局から感謝状を受けた。

所轄の王子労働基準監督署より職長会会長が「安全優良個人賞」受賞したほか、全工期無災害、百万時間無災害記録達成などの安全成績表彰を受けている。

 現場を案内していただくと、地上には、風速表示計や地上と地下それぞれの温度・湿度・風速・酸素濃度が数値表示される場内環境監視システム、構内には、昇降口に青緑色に灯る表示灯が設置されていた。

作業員休憩所、リフレッシュルーム、健康状態をチェックするぶらさがり棒、安全帯の確認をする「安神棒」など、隅々まであたたかい心くばりや安全への配慮が感じられる。

毎年一二月には、神栄会が総力を結集して取り組んでいる「クリスマスイベント」が開催される。特製クリスマスツリーの電飾はもちろん、会場設営、ぬいぐるみを着ての地域住民への参加の呼びかけ、子どもたちへの風船配りなど、すべて神栄会メンバーによるもの。今や一〇〇〇人もの参加者がある、地域にすっかり溶け込んでいる大イベントだ。

これまで、地域のみなさん、被災した三宅島の子どもたち、養護学校の生徒さんを招待してきた。そのことがきっかけとなって、現場内で「空き缶のプルトップを集めて車椅子を購入しよう」という呼びかけが高まり、ついに車椅子を贈呈することができた。

 現場と地域の架け橋として、積極的に地域に飛び込み、福祉の分野でも活躍している神栄会。その自主活動は、これからの職長会活動の可能性と広がりを示す、先駆けとなるのものとして、とても心強く感じた。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…22

)

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2006/07/25

ニューシティー東戸塚中央街区A棟新築工事

月刊「つち」20042月号

熊谷組

四〇年の歳月をかけた

日本最大級の「未来都市」

 JR横須賀線東戸塚駅を出ると、目の前に「ニューシティー東戸塚中央街区」と呼ばれる高層住宅が広がる。

 駅から真っ直ぐ伸びるケヤキ並木の坂道が、両脇のマンションやビルとともに、都会的な街並みを演出している。

一九八〇年に東戸塚駅が開業してから、駅周辺の住宅街区計画が進められ、九〇年に超高層住宅D棟、九九年に西武棟・ダイエー棟、そして二〇〇二年には超高層住宅C棟が、次々完成。今回、私が訪ねるのは、建設中の超高層住宅A棟である。

実は、「ニューシティー東戸塚」の構想は、六四年に作成された「東戸塚開発八〇万坪総合マスタープラン」を出発点としているそうだ。開発面積一七・四㌶、計画戸数三三〇〇戸。「横浜の新しいファミリーライフを目指して」、実に四〇年以上の歳月をかけて、「未来都市」を創造していることになる。なんとも遠大な建設計画。

現在すでに二六六〇戸、約九三〇〇人が暮らしているという。民間としては、日本最大級の都市開発事業いえよう。

職長会は現場の一人ひとりが主役

 さっそく、久村睦義作業所長(熊谷組)と職長会会長の佐賀三郎さん(田中建設工業・型枠)と千葉宣義さん(石山鉄筋・鉄筋組立)に現場を案内していただいた。

ニューシティー東戸塚A棟は、地下四階、地上三二階。二〇〇五年一〇月に完成予定だが、現在、地下と一階部分を建設中である。

駐車場や機械室になるという地下は、床も壁もきれいにコンクリートで固められている。なかでも、ぶ厚い壁が目をひく。

「この建物は、ツインウォール工法という、優れた耐震工法を採用しています」

と久村所長。

これは、建物の中心部分に、鉄筋コンクリート造の連層耐震壁(厚さ八〇〇mm)を設け、さらに隣り合う連層耐震壁を連結部材(鉄骨梁)でつなぐことによって、地震エネルギーを吸収し、優れた耐震性と安全性を発揮する、というもの。

さらに、引っ張られる力に強い鉄筋と、圧縮される力に強いコンクリートで構成されるRC(鉄筋コンクリート)工法を取り入れ、強度にすぐれた構造体をつくり上げている。

一階部分にはまだ、剥き出しの鉄筋の柱があちこちに見られるが、いずれも、鉄筋を格子状に何重にも組み上げたもの。丹念な手組みで、見るからに強度がありそう。鉄筋組立のベテラン、千葉さんは、

「溶接閉鎖型のせん断補助筋を取り入れて、柱の耐震性を向上させています。阪神・淡路大震災のような地震で生じる、押しつぶそうとする大きな力に対して、重量上げ選手のベルトのような働きをして、柱の抵抗力を大きく高めています」

強い地震が起きたときにも、安心して過ごせるかどうか。基礎や柱の強度は、ふだん目にふれないことがないだけに、高層マンションの重要な基本性能だといえる。

しかし、これだけしっかりと基礎が施されていれば、建物の耐震性はもちろん、耐久性や耐用性もかなりアップするだろうなぁ。

 ところで、こちらの職長会では、一斉清掃を廃止したそうだ。

 「一〇〇人近い作業員が、自分の仕事をやめて一斉に清掃するのは、時間の浪費であり、能率も上がりません。それより、後片付けも仕事のうちということで、大工や鉄筋などの各工程のグループごとに、責任を持ってしっかり清掃をやってもらうよう徹底しました」

と佐賀会長。

千葉さんも、「一斉清掃をしているときは、どうせ誰かが片付けてくれるだろうという気持ちがあったようですが、個別清掃を徹底したことで、自分たちの現場は自分たちできれいにするという意識が高まりました。

みんなが互いの仕事を考えながら進めるようになって、コミュニケーションもスムーズにいっています」という。

ただし、建設現場の周囲の清掃は、月二回、すべての作業員が参加して行っている。

 「現場の周囲がきれいだと、自然と現場もきれいにしようという意識が育ちますね」と千葉さん。

 現場の視察を終えると、阿部広仁さん(真先工務店・型枠)、香月誠さん(きんでん・電気、能力開発大学校の卒業生)、田原常行さん(川本工業・衛生・空調)、成田健二さん(柳井工務店・補修)、三上正行さん(田中建設・とび)、細川竜太さん(田中建設・山留工事)、長谷山剛司さん(沼田工業・左官)という、職長会のメンバーが作業所に集まってくださった。

みなさんによると、佐賀会長は、「日頃は、それほど口数は多くないが、お祭り好きで、親睦会の人気者」だとか。

 「職長会は、現場の一人ひとりが主役ですから、みんなが楽しく仕事ができるよう努めるのが我々の仕事です」と佐賀会長。

「未来都市」を造り上げるみなさんによる、今宵の宴も和気あいあいと大いに盛り上がりそうだ。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…2)

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2006/07/24

常磐新線南千住駅工事

月刊「つち」2004年3月号

清水建設

常磐新線南千住駅リーダー会

JR常磐線の真下に

常磐新線南千住駅を建設中

平成一七年度開通予定の常磐新線(つくばエクスプレス)。私は、一年まえに起点の秋葉原駅、続いて半年前には六町駅の工事を視察させていただいている。

今回訪ねたのは南千住駅。この工事は、起点の浅草方面からシールドトンネルで掘り進み、常磐線下り本線の位置にある立坑に到達すると、コツ通り(後述します)の真下三㍍を箱型トンネル(開削工法)で横断し、一〇㌫の勾配で上り常磐線南千住駅の真下四㍍に箱型トンネル構造で進んで、地上に出るというもの。

その後すぐ橋に至り、隅田川を渡るわけだが、橋の直前までの七九〇㍍が施工区間となっている。

 本工事では、JR常磐線の真下に常磐新線南千住駅を建設するため、仮線切り換え後、空いたスペースに常磐新線の構造物を施工する。現在走っている電車を止めないで工事を進めるため、仮ホームを設置して、線路の切り換えを実に九回も行う。ひとくちで説明するのは難しい、なんとも複雑な工事なのである。

工事現場から次々としゃれこうべが

 と、ここまで、平塚雅章所長(清水建設)に工事概要を伺ってきて、突然、驚くべき事実を知らされることになった!

 前にコツ通りという名が出たが、それは、江戸時代、江戸千住(現・荒川区南千住)にあった小塚原(こづかっぱら)に至る通りの名称で、現在もそう呼ばれている。小塚原というのは、昔の死刑執行場で、骨ヶ原に由来するといわれている。

 ここでは、安政の大獄に座した吉田松蔭やねずみ小僧をはじめ、二〇数万に上る受刑者が刑死したと伝えられている。

 常磐新線工事は、この刑場跡地である小塚原をまたぐ形で、真下を掘り進んだ。すると、工事現場の土中から次々としゃれこうべが現れたのである。刑死して野ざらしにされたもの、桶の中に押し込められたものなど、なんと一〇五体もの人骨が掘り出された。

「びっくりしました。平成一一年に着工しましたが、一四年四月に頭蓋骨が発見されたとき、作業員はみんな衝撃を受けて、お祓いをしました。その後、半年間は工事が完全にストップして、荒川区の文化財として発掘調査が現地で行われました」と平塚所長。

 このあたりは、もともと湿地帯で、一㍍掘ると水が出るほど地盤がとても柔らかい。そのため、掘削作業は、地中三五㍍に杭を打ち込んで箱型トンネルで進められた。

「泥地だったことが、人骨の保存に幸いして、ほとんど原形をとどめた形で見つかったそうです。頭蓋骨はいずれも真黒でした。空気に触れて酸化すると白骨になるそうです」

 当時の現場写真を見せていただいたが、まさに累々といった感じで人骨が土中からのぞいている。作業員のみなさんの驚きは大変なものであったろう。

こうした「アクシデント」も乗り越え、すでに六段階の建設手順のうち、スタップ4の常磐新線躯体構築まで進み、ほぼ完成間近という。

気を取り直して、御手洗孝会長(御手洗工務店・とび)率いるリーダー会一四人のみなさんのパトロールに同行させていただいた。

約三〇分かけて現場を巡回後、会議室に戻ると、メンバーが一人ずつ、気づいた点を述べ合う。運行する電車と近接している工事だけに、「紙切れやビニールが線路に飛ばされたら電車が止まってしまう。飛散物にはくれぐれも注意するよう、各作業員さんに伝えてください」と御手洗会長。

会議室の壁には、「私たちは当作業所に従事するに当たり、下記の実施事項を確実に守ります」という「リーダー会 十則」なるものが掲げられていた。

●「作業所ルール」「営業線近接工事ルール」

を実践します

●「危険作業事前打ち合せ」に必ず参加します

●「施工打ち合せ」以外の「無届け作業」は絶対にしません

●「作業エリアの明示」「重機作業半径立入り禁止措置」を実施します

●「一声かけあい運動」「重機作業におけるグーパー確認」を実施します

●「あいさつ」は元気よく大きな声でします

●「ひとつかみ運動」で一作業一片付けを励行します

といった項目が並ぶ。 んん? 「グーパー確認」って何かしら。伺うのを忘れた。

そのほかリーダー会では、「服装・保護具の点検」として、「赤色の服は着用しないこと」と定めている。「電車の運転手さんが、赤色を停車の合図と見間違えたりしたら大変ですからね」(田中昌明副会長・公団建築)

 さらに、「携帯電話の使用ルール」も定めている。勤務中のプライベートな使用や歩行中・作業中の使用は一切禁止。基本的に、作業を一時中断し、安全な場所に移動してから使用することになっている。

 最後に、御手洗会長の「ここで作業している者同士、お互いによろしく頼むという気持ちで、常に一声かけあって、今年一年よろしくお願いします」という挨拶で散会した。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…2)

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2006/07/23

都市計画道路環状2号線森支線街路整備工事

月刊「つち」20044月号

都市計画道路環状2号線森支線街路整備工事(第三工区・その4)

三井住友建設

森盛会

環状2号線の渋滞緩和のため

立体交差線を建設

 京浜急行線屏風ヶ浦駅。「屏風ヶ浦」という駅名から、断崖がそびえたつ荒々しい海をイメージしていたが、実際には駅の近くに海が見えるわけでもない。

改札口を出て左手に、戸塚や保土ケ谷区など横浜市郊外のベッドタウンから市中心部への通勤経路となっている環状2号線(磯子区森~鶴見区上末吉)が走っている。

すぐ目の前をかなりのスピードでひっきりなしに車が走っていく(一日の通行量は三万六千台とか)。信号待ちをしている間だけでも、交通量の多さに圧倒される。

この環状2号線の渋滞を緩和するため、高速湾岸線と国道357号とを結ぶ立体交差支線(磯子区森一~五丁目)が建設中ということで、今回訪ねたのは、屏風ヶ浦駅から徒歩数分の「環状2号線森支線」の工事現場。

森支線とは、環状2号線と高速湾岸線および国道357号を接続する路線で、このうち、第三工区は、PC(プレストレスコンクリート)6径間連続3室箱桁構造といわれる高架橋工事を進めている。

往復四車線(左右二車線ずつ)で、京浜急行線、国道16号、JR根岸線などをまたぎ、国道357号と高速湾岸線磯子出入口へとつながる。
 これまでは、湾岸工業地帯の隣接道路の357号、東京方面などへの近道である高速湾岸線へ出るには、16号をまたぎ、産業道路を横浜とは反対方向へ走らなければならなかった。

しかし、二〇〇五年三月の森支線の開通後は、信号付き交差点五カ所の通過の必要がなくなる。連絡時間が短縮されるという利便性の向上に加え、通勤・帰宅時の周辺渋滞も解消される見通し、という。

トコロテンみたいに桁を

押し出してPC橋を完成

「ここは、住宅密集地ですからねぇ」という所長の渕田博之さん(三井住友建設)のことばには実感がこもっている。

今まで静かだった住宅地を貫いて、新しく高架橋を通そうというのだから、土地買収や下部工事の段階では根強い反発もあったというのもわかる気がする。

渕田さんが上部工事を引き継いでから、深夜工事の騒音や振動にも細心の注意を払っているためか、大きな苦情はないそうだ。

お話を伺っていると、この森支線工事、地盤そのものが非常に弱いこともあるが、工事自体かなり複雑なようだ。

高架橋が、住宅密集地の中を大きくS字を描く複雑な線形で延び、途中で京浜急行の鉄路と市道をまたぐうえ、橋桁の幅と勾配が微妙に変化している。さらに、市道と京浜急行をまたぐ部分は、「押出し工法」によって架設される、という。

職長会訪問の取材では、毎回のように聞きなれない専門用語や最新技術にぶつかるのだが、押出し工法なるものも初めて知った。

ここでいう押出し工法とは、途中で交差する市道と京浜急行の安全性を確保するため、まず、手延べ桁を先に送り出しておいて、主桁製作ヤードでつくった主桁を前方の手延べ桁に、トコロテンみたいに(!)押し出し、PC橋を完成させるというもの。現在、工事事務所の目前に見えているオレンジ色の桁は、手延べ桁と呼ばれるものだという。

 したがって、現場を支える職長会こと森盛会のメンバーも、PC橋梁に関わる特殊工事の経験豊かな方ばかり。板谷茂会長の西和工務店は、橋梁工事専門。板谷会長は、横浜の立体交差工事や座間の架設橋工事に携わってこられた。

 片山峰雄副会長(住建機工)は、押出し工法の専門家。実際に、みなさんの案内で、主桁を押出すためのスライドジャッキが設置されているところ(桁下)に入ることができた。

片山さんは、外部からコンピュータの制御画面を見ながら、ジャッキを調整する作業員のみなさんに指令を出す。

夜間の作業なので、やりとりは無線。すべてのジャッキを連動して、約3時間かけて最大二四〇〇トンの主桁を少しずつ前に押出す。非常に集中力が必要とされる仕事だ。

「この現場を体験したら、三つくらいの現場を経験したくらいの力になって、大きく成長するのではないか、と思いますよ」という渕田所長のお話にも納得。

板谷会長はじめ、みなさん、どちらかといえば寡黙だが、渕田所長が入社三年目からのつきあいという鉄筋工の松尾○○さんなど、渕田ファミリーともいえる信頼関係がすでにできあがっていて、時間的制約のある中での高度な難工事を支えているのだろう。

森盛会主催のバーベキュー大会は、箱根の麓、南足柄の牧場直送の霜降りビーフが振る舞われることで評判で、大いに盛り上がるそうだ。

 取材の終わり、渕田所長の「一ヵ月くらいしたらもう一度きてください。京浜急行の上をまたいで高架が延びているはずですから」ということばに、私は深く頷いた。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…2)

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2006/07/22

オリゾン・マーレ新築工事

月刊「つち」20045月号

前田建設工業

リーダーシップの会長と

ムードメーカーの副会長

「こんにちは!」すでに職長会メンバーが会議室に勢揃いされて、立ち上がって一斉に迎えてくださった。

有明コロシアムや有明テニスの森などで知られる有明北地区初の高層マンション「オリゾン・マーレ」。地下一階、地上二七階のうち、二六階まで建ち上がって、すでに内装工事が進んでいる。年内には完成予定。

ホテルのように豪華なエントランスロビー、最上階にはプールやスカイラウジもある。単身者や夫婦を対象にした二DKが中心だが、人気スポットのべイエリアということもあり、すでに全室完売とのこと。

中村一彦副所長(前田建設)より、パソコンを使って、工事概要が説明されたあと、先ほどのみなさんの自己紹介。山田光男会長(大木組・PCとび)はじめ、桃井副会長(大山工業・鉄筋)、山本副会長(名取工務店・型枠)、松平副会長(ALC・外壁)、駐車場委員長の坂本さん(大木組・土工)、風紀委員長の村上さん(阿部工業・間仕切り)、環境美化委員長の忠鉢さん(ウッドハウス・造作)の代理出席の佐藤さん、安全委員長の畠山さん(立山アルミ・アルミサッシ)、富樫さん(旭電業・電気工事)、近藤さん(設備JV・設備)、寺田さん(マサル・サッシ防水)、島山さん(井上工業・塗装)、木下さん(オクジュー・内装)、五十嵐さん(関ヶ原石材・玄関の敷石)、実にさまざまな職種の職長さんが集まってくださった。

「今日は風が強いっすねぇー! こういうときに最上階に上ったこと、ありますか?」と松平副会長。

自他ともに認める抜群のリーダーシップを発揮する山田会長と、現場の人と人をつなぐムードメーカーの松平副会長。人当たりのよい桃井副会長は、十代の頃、タレントを目指していたこともあったとか。会長と副会長は、重厚・軽妙の対照的な存在感がある。

職長会が心掛けているのは、なんといっても現場のコミュニケーション。そのためには、積極的に声を出すこと。日常的に声を掛け合うなかで、現場の雰囲気がなごやかになり、仕事もスムーズに進む。

「はじめの頃は、声を掛けても返事がなかった人も、繰り返し声を掛け続けることで、少しずつ打ち解けてくれます」(松平副会長)

「たった一人の不安全行動が、周りのみんなを巻き込んでしまいますから、現場の和が大切です」(山田会長)

「初めてこの現場に来て、チリひとつ落ちていなかったのに驚きました。清掃が行き届いていなかったとき、会長からさんざん叱られました」(山本副会長)

なんでもいい合える、開かれた現場にしようと、現場の声を集める「目安箱」も設けた。意見は取捨選択され、「できることは、即実行。できないことは却下」と山田会長。これまで、ゴミ袋に業者名を記して管理責任を明確にしたり、会議中の禁煙の徹底したり、さまざまな事案の具体化に取り組んできた。また毎月一回、職長会で、作業所の神棚の安全祈願も行っている。

親子二代、同じ現場で汗を流す

最上階は、松平副会長が指摘していたように、激しい突風に立っているのもやっとの状態。それでも、遠く東京タワーやレインボーブリッジ、目の前の運河を眺めているうち、これとよく似た風景を目にしたことを思い出した。

二年ほど前、東品川の海に面した高層住宅(前田建設ほか)を訪ねたことがあった。そのとき取材した藤池会長(鉄筋)の前の職長会長をつとめていたのが、なんと、こちらの山田会長で、東品川の現場を終えてから、有明の工事に移られたそうだ。

 さて今回は、番外編ともいうべきか、体を張った現場を離れたみなさんの「素顔」に迫るため、初めて職長会懇親会への「潜入ルポ」(?)を試みた。

会場は、新交通ゆりかもめ「有明駅」前のホテル二〇階のレストラン。仕事を終えて集まった六〇人近い職長さん。私服の中にスーツ姿も見られる。みなさん、いちようにくつろいだ雰囲気。

山田会長は、自席をあたためる間もなく、あちこちの席を回っている。ウーロンハイを手にしながら、「オレが山田だ」。どうやら、酔ったときの決まり文句らしい。

「昔から人に負けるのが嫌いで、いつか見てろと思ってやってきた」という山田会長には息子さんが三人いる。長男・光宏さんは、この現場で一緒に働いている。次男・正吾さんは五十嵐さんの会社で、三男・元気さんも土工として働いているという。松平副会長の長男さんと次男さんもこの現場で働いている。 

親と同じ仕事を受け継ぎ、親子二代で同じ現場で汗を流せるなんて、とても素晴らしいことだと思う。やはり、真剣に働く父親の背中を見て育ったからなのかしら。

宴の終わり、山田会長と名前が一文字(一音)違いという山田美智雄所長が、ガラス越しの夜景に浮かび上がる工事中の「オリゾン・マーレ」を指差して、「あれが私たちの現場です」。職長会のみなさんから「おー!」という賛同の声が上がった。

(明るい職場づくりをめざして 職長会訪問…2)

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2006/07/21

北陸新幹線(糸魚川・黒部)田海BL他工事

月刊「つち」2004年6月号

錢高組・JFE工建・伊藤建設

田海会

フォッサマグナとヒスイと

縄文遺跡とサケの川

東京から上越新幹線「とき」と特急「はくたか」を乗り継ぐこと二時間四〇分。新潟県西部に位置する糸魚川は、フォッサマグナの最北端部に位置する。フォッサマグナとは、本州中央部を南北に横断する地帯のことで、「糸魚川~静岡構造線」という大断層が有名。

正直なところ、私の糸魚川に対するイメージはこの程度だったのだが、実は、日本の考古学史上、ヒスイ(翡翠)の一大産地として有名、ということを今回知った。

 糸魚川と市振との間の海沿いには、難所として知られた「親不知」がある。北アルプスが日本海に迫った、典型的な断層海岸。「おくのほそ道」で松尾芭蕉は、やっとの思いで親不知を通り抜け、宿を求めた市振で次のような句を詠んでいる。

  一家に遊女もねたり萩と月

ところで、糸魚川を流れる姫川の上流には、古代、奴奈川姫(ぬながわひめ)という美しい姫が住んでいたそうだ。その噂を聞いた大国主命は、はるばる出雲の国からやってきて姫に求婚したと「古事記」にあることから、奴奈川姫の川、姫川と名づけられたのだとか。

運がよければ、姫川の河原や河口、海岸などで、淡いみどり色の装飾石・ヒスイを見つけることができるかも?

といっても、今回のお目当てはヒスイではない。北陸新幹線の糸魚川~黒部川間の起点側の高架橋工事である。地形的には、山岳部のトンネルを抜けて平野部への出口部分にあたる。

「高崎側の起点の工事として、周囲からも注目されています」と堀内隆所長(銭高組)

すでに、工事は三年目に入り、九割は完成。今年末には軌道が敷かれるという。

二級河川の田海川(とうみがわ)河口近くの現場周辺には、 縄文時代中期の遺跡が多数あり、竪穴住居も保存されている。そのため、工事に先立って埋蔵物調査が行われた。

「幸いにして、何も出土しなかったので、長期間工事が中断されることはありませんでした。しかし、隣接する北陸本線とその踏切、地元最大の企業・電気化学工業・田海工場の高架線が、現場の地上三一メートルを横断していることなどから、より慎重な工事が要求されました」(堀内隆所長)

高架橋工事のちょうど中央部に、田海川があり、そこはPC箱型工事によって行われている。

田海川は、サケが遡上する川として知られ、一一月の産卵期から養魚期を経て、約八八万匹を四月に放流するまでの六カ月は、サケの大切な成育期間として、大きな振動はなんとしても抑制しなければならない。そのため、施工方法や工程管理に細心の注意が払われたそうだ。

 このように、神話の時代にさかのぼる古い歴史の土地柄と豊かな自然を背景に、都市部とはまた様相の異なる新幹線工事が展開している。

雪が降っても休まない

新潟県人特有の粘りづよさ

 こちらの職長会の名は「田海会」。集まってくださったのは、丸山会長(坂詰組・躯体)、楠木さん(PC)、会計の西脇さん(高橋建設・とび)、後藤さん(江口鉄筋工業・鉄筋)、加藤副会長(江口鉄筋工業・鉄筋)、前屋さん(フナネ・型枠)、相談役の川合さん(田代建設・土工)、田村さん(サコウ建設・重機)、前原さん(ハイウェイガード・警備)の九名。

「冬場は、五〇センチの積雪がありましたから、まず除雪してから仕事にかかっていました。コンクリートは、表面温度が一〇度以下になると、養生といってあたためなければなりません。月に何度かそういう日があるので練炭であたためていました」と丸山会長。

どんなに雪が降っても休まないのは、「新潟県人特有の粘りづよさ」という丸山会長のことばにみなさんうなずく。

「海が近いため風が強いので、整理整頓を徹底して、隣接して走っている北陸本線への飛散物がないように厳重に注意しています」と加藤副会長。

「近くに中学校があって、高架橋工事の下が通学路になっていますが、毎朝、中学生が挨拶してくれます」と前原さん。

地元出身の職長さんがほとんどだが、堀内所長は東京からの単身赴任だとか。

「立ち上げの頃からですから、もう八年になりますね。なんといっても、ここはお酒も魚もおいしいから……」と堀内所長。

日本海に面した米どころならではの恵みを満喫されているようだ。職長会主催の親睦会も盛んである。

これから、防音壁工事や投雪ガイド板設置工事、路盤鉄筋コンクリート工事などが主体となる。

「毎日、職長会と所長で、翌日の仕事のミーティングをしていますが、安全と効率を向上させるために、職長が積極的に意見を出しています。所長にもなんでもいえる人間関係ができているのがいいと思います。これからも、現場の作業員と作業所とのパイプ役でありたいですね」と丸山会長。

 こちらの工事は