世界的に珍しい小鳥のお医者さん⑤
飼い主の不注意が小鳥を病気にする
腫瘍ができたコザクラインコ、白内障のオカメインコ、喘息で鳴くことができなくなったカナリア、全身の毛が抜け落ちたセキセイインコ、「妻」に死なれて憂鬱病になった十姉妹など、小鳥の病院には、さまざまな患者さんが訪れる。
肝臓が悪くなると、爪の伸びが早くなる。爪が伸びすぎると、歩くことができなくなり、ケガの原因になる。
くちばしが伸びすぎると、エサを食べることができない。爪やくちばしは、病院で切ってもらうとよい。
首のまわりの毛が抜けるのは、ホルモンや甲状腺異常が考えられる。自分の毛を抜いてしまう「毛引き症」は、ストレスがたまった小鳥がかかりやすい。
飼い主が、せんべいやラーメンなど、味のついた食べ物を与えたため、水を飲みすぎて下痢をしたり、腎臓を悪くすることも多い。ごはんや食パンを与え続けていると、おなかの中にカビが生えることがある。
寒いからといって、水浴びではなく、「お湯浴び」をさせる人がいるが、羽の脂がとれてしまい、カゼをひきやすくなる。乱暴に扱って骨折をさせたり、熱湯に近づけてヤケドをさせたり、飼い主の不注意による事故も多い。
長時間、部屋の中に放している小鳥は、タンスの引き出しにはさまれて圧死するなど、事故に遭いやすい。
いずれも、飼い主は、かわいがっているつもりでも、飼育方法に大きな問題がある。
「小鳥の生態をよく理解して、小鳥の立場に立って、正しい愛情で接してほしい」と広瀬さん。
小鳥は、蚊に刺されたところが化膿しただけで、生命を落とすこともあるほど、繊細な生き物だ。
「小鳥が羽をふくらませて、かわいいなと思っていると、病気である場合が多い。小鳥は、体温を保つため、羽の間に空気を入れてふくらんでいるのです。止まり木の下にうずくまっているようなむときは、病状はかなり深刻です」と広瀬さんは指摘する。
広瀬さんが、高橋先生の遺志を継いで小鳥の病院で診察をするようになって、10年になる。グローバル動物病院では、犬やネコなどの小動物を診ることが多いが、小鳥の病院で、たくさんの小鳥とふれあっていると、「自分はほんとうに生き物が好きなのだ」と実感するという。
広瀬さんにとって、それは高橋先生に憧れて獣医師を志した、初心に還ることができる、貴重な時間なのかもしれない。
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