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2009年1月

2009/01/29

「Shi-Ba シーバ」3月号発行

29日は「Shi-Ba」3月号の発売日。全国的に書店に並びます。今号も「ニッポンの犬探記」と「真・ハチ公物語」を連載しております。よろしくお願いいたます!

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2009/01/25

吉田悦子のニッポンの犬探訪記23 北海道犬

人と動物の共存が

ニッポンを救う!

クマ対策犬訓練中

北海道犬による野生動物の追い払いの訓練に孤軍奮闘する鈴木延夫さん。そこには、「人間とは何か」という気持ちから動物行動学を志し、アラスカオオカミに対する畏敬の念がある。強靭な北海道犬とともに自然と向き合う日々を追った。

野生動物の駆除ではなく

共存するための追い払い

長野県伊那市。南・中央アルプスに挟まれたこの地域は、ツキノワグマやニホンザルやイノシシなどによる農作物の被害が深刻化している。

「人間の栽培する農産物は、野生動物にとって麻薬みたいなもの。その味を1度覚えてしまった動物は、一種の麻薬中毒に陥ります」。そう語るのは、動物行動学の専門家、鈴木延夫さん。

北海道大先端科学技術共同研究センター助教授を退いた鈴木さんは、伊那市に招かれ、北海道からゆきえ夫人といのりちゃんと移り住んだ。

野生動物による農作物への被害を防ぐため、クマやサルが人里に現れたら、訓練した北海道犬に追い立てさせる。そうすれば、野生動物たちも学習して人里に出てこられなくはず。鈴木さんは、北海道犬を活用した野生動物の追い払い、「人間と野生動物の共生プロジェクト」に取り組んでいる。

鈴木さんによると、人間と野生動物の共存を制御するには、①人間と野生動物の生活圏を完全に分離する、②人間と野生動物が混住したまま双方を制御する、という2つの方法がある。

「農家によって、さまざまな作物が耕作されている日本では、完全無欠な有害鳥獣対策はありえません。ただ、野生動物を害獣として駆除するのではなく、人と生きものが共存するための試みとして、ぜひとも、北海道犬を用いた追い払いプロジェクトを成功させたい。そして、ほかの地域でも生かしてもらえたら」と抱負を語る。

生命力、認識力、闘争力、総合的能力は随一

北海道犬は、北海道の原住民・アイヌ民族がヒグマ猟に用いた中型の日本犬。寒冷な自然環境を生き抜く強靭な生命力。氷点下の冷水や流れに飛び込んでも健康に問題はない。伝染病に対する抵抗力も強い。

崖や壁をたくみに爪を駆使して上がり降りする。粗食に耐え、飢餓に対する驚異的な耐性力は注目に値する。

狩猟性に富み、高い運動能力を持つ。飼主に従順。ムダ吠えをしない。勇猛果敢。野生動物に恐怖感を持たない。視覚、聴覚、嗅覚が敏感。野生動物の発見能力に秀でている。

生涯にひとりの主人にしか仕えない。いったん身につけた能力は、一生忘れない。訓練者に対する主従関係を厳格に保つ。人間と一体になった追跡能力に優れている。

「アイヌの人たちが、ヒグマ猟のために活用してきたアイヌ犬は、長年にわたる人為淘汰の結果、嗅覚・聴覚・視覚、闘争力、持久力、主の意図を認識する能力などに優れている。総合的能力は、他の犬種の追従を許しません。有害鳥獣対策の利用価値はきわめて高い」と鈴木さんは指摘する。

人間大好き、明るく元気に疾走する犬たち

昨年10月、北海道に住む北海道犬のブリーダーから子犬10頭が伊那に届いた。最適な入手時期は、生後4560日。世話をする訓練者に対する絶対的信頼や服従性を刷り込むためだ。

生後120180日は、標高差の大きい伊那の地形へ順応する訓練を行う。生後180日から、野生動物の発見および撃退訓練。それ以降は、リ-ダ犬および追従犬の選別訓練をする。

ところが、当初から波乱にみまわれた。最初に入手した子犬のうち5頭が、激しい下痢と吐き気を繰り返し、生後90日齢前後で死亡。パルボウイルスに感染していたのだ。

深刻な伝染病は、ほかの子犬にも蔓延。そうした事態が、昨年から今年2月まで続いた。さらに訓練中、イノシシとの闘いで、リーダー犬をはじめとする数頭が重傷を負った。

鈴木さんは、現在、自家繁殖にも取り組んでいる。生後90日までは、自宅の庭に設けた犬舎で育てる。その後、近くの訓練場所で、初期訓練と本訓練を行う。訓練法は、動物学習心理学や動物行動学をもとにしている。

半年間は、主に追い払い犬として必要な感覚を磨く訓練。生後1年の2頭をリーダー犬に、前に述べたように、生後4カ月の4頭は里山での順応訓練、生後8カ月の2頭は、野生動物の発見・追跡訓練を行う。

本来、北海道犬は「一生一主」だ。しかし、こうした訓練後は「一生多主」となる。つまり飼い主の変更が容易になる。また、単独生活から集団生活へ、排他性から共存性へと習性が変化する。歩き方は、ベタ足からつま先へ(犬族からネコ族へ)。過度の攻撃性から温和な性格へ。山を歩くとき、人の前を行く先行型から人に付き添う追従型へ、というように大きく変わる。

実際に、私も北海道犬たちと山に入った。リーダー犬のリョウは、イノシシにやられて後ろ足にケガを負った。しばらく安静にしていた。山に入るのは久しぶりだ。リョウはじめ、喜びにあふれる犬たちは、全身で私に突進してくる。人間大好き。とにかく明るい。元気に疾走するリョウ。ほかの犬もそれに続く。山中では、互いに50メートルほど離れて行動する。

訓練では、クマやサルやイノシシ、シカなどの野生動物を見つけたら、300~400メートル、30分ほど追い掛けて山奥へ追い払う。
「人里に下りてきた野生動物を頂上近くまで追い返す。これを何度か繰り返すことで、野生動物が『ここを荒らすのはやめよう』と学習する。猟犬のように野生動物を仕留めるのではない。むしろ、こらしめに近い。野生動物との共存のための助っ人として北海道犬を育てたい」と鈴木さんは強調する。
 地形が複雑なため、通報を受けてから、鈴木さんが犬とともに現場へ向かうまでに30分くらいかかる。そのため、各集落に北海道犬のチームを置いて活動できれば、と期待している。
 今後は、北海道
犬の繁殖にも力を入れ、3年をめどに、訓練を受けた犬を地域に払い下げ、農作物被害を受けている農家に北海道犬を飼ってもらいたい。鈴木さんは、調教した犬とともにその家に出向き、継続的に犬の訓練をできたら、と考えている。

「犬の飼育や訓練と並行して、市民から公募して専門の訓練者、つまり後継者も養成していきたい」

人知を超えた能力を持つオオカミに畏敬の念

鈴木さんが、人間と動物との共存を考えるようになった原点は、少年時代にさかのぼる。日本、ロシア、フランスなど文学に熱中し、難解な哲学書を読みふけっていた。鈴木さんの頭を占めていたのは、「人間とは何か」という大命題であった。

北大に進むと、実験心理学を専攻した。その専門分野のひとつに、動物心理学があった。人間の心理を知る前に動物について知ろう。鈴木さんは、身近な野良犬の習性や生活を調べた。そして、犬の放尿がテリトリーを主張するという、それまでの常識を覆す説を発表した。

3頭の野良犬が、同じ場所に放尿してもケンカにならない。しかも、放尿には規則性はなかった。研究の結果、犬は、他の犬の尿や何かのにおいに緊張し、不安を感じて放尿することを実証した。放尿は、なわばりを示すのではなく、興奮のサインだった。

さらに自宅で、犬をはじめ、ネズミ、ニホンザル、オオカミ、キタキツネなど、あらゆる動物を飼育し、社会行動学や習性を研究するようになった

サル学にも注目した。愛知県犬山市の京都大学霊長類研究所で、ニホンザルの集団を使って実験した。異なる場所で飼われていた5頭のニホンザルを一緒の部屋に入れて餌を与え、どのようにして社会的順位が生まれるのか観察した。社会的順位は、一度出来ると簡単に崩れない。長期にわたって安定することがわかった。

昭和54年、北大文学部に行動科学科が設立された。大学院生時代から、鈴木さんは、蝦夷オオカミの絶滅の原因について考えていた。犬・人間・オオカミという三者の奇妙な歴史的関係の答えを探すため、84年から90年にかけて、アラスカに通った。

注目したのはハイイロオオカミ(蝦夷オオカミの仲間)。ハイイロオオカミの繁殖期における社会生活の実態について研究した。

滅びゆく運命にあるオオカミの姿を求め、アラスカの過酷な大自然に分け入り、長期にわたって探索した。『アラスカの雪原にて』という著書もある。オオカミと人間社会の関わり合いを深く問い直すうち、鈴木さんは、オオカミに魅入られた。

しかし、過去の歴史では、オオカミは評判が悪い。「赤ずきん」や「三匹の子ブタ」の物語に見られるように、オオカミは、貪欲で愚鈍な動物として描かれている。

 どうして、このようなオオカミ像が生まれたのだろう? 

人が山野を切り開いた牧場で飼っているヒツジをオオカミが襲う。家畜を強奪するオオカミは憎まれ、悪のイメージが定着した。人口の増加と自然破壊で、オオカミの生息域は減少しつづけた。獲物を奪われ、囲い込まれたオオカミは、家畜を襲った。

群れで狩りを行うオオカミにとって、社会的順位は重要だ。順位は生存のための基本条件。それを維持するための努力が払われる。

「オオカミは、野生動物の中でも、人知を超えたすぐれた能力を持つ、尊敬に値する生きもの。オオカミに畏敬の念を抱いています」と鈴木さん。

野生の意味、本来の野生とはどういうものか。その対極にある犬や猫などのペットはいかなる存在なのか。北海道犬のような強靭な犬を日本人の多くは飼いならすことができなくなっている。無害で超小型のペットに夢中になっている現代人。いったいどこに行くのか?

10代から、「人間とは何か」を考えてきた鈴木さんは、自問自答する。

「日本は、少子高齢化、子供を虐待したり、子供が親を殺したりする事件が噴出しています。それは、日本人が家畜化の一途をたどっていることに原因があるのではないか。老いも若きも脆弱になり、自立心を失った典型的な家畜のように見えます。日本人は、自己管理能力を失っている」

イノシシとの対決訓練で傷を負い死に至るケ-スも

鈴木さん宅では、この夏、3頭の子犬に続いて、6頭の子犬が誕生した。素晴らしい犬同士の交配で、性質のすこぶる良性な健康な子犬たち。「北海道犬に関心のある人は、ぜひお問い合わせください」と鈴木さん。

某日朝5時半、クマ出没情報により、鈴木さんは、中央アルプスのふもとへオス犬3頭と急行した。そこで、1頭が原因不明の裂傷を負う。翌日、犬たちと山歩き中にイノシシの親子と激突。このときは、みんな無事帰還した。

これまで少数精鋭で、北海道犬の訓練に没頭してきた。当初の予想に反し、イノシシとの対決訓練では、傷を負い、死亡に至るケ-スもあった。野生動物から直接伝染する犬の病気も無視できないことが判明した。

これからは、リ-ダ犬や追従犬だけでなく、予備の犬も準備しておくことが課題だという。

「追い払い犬は、対処療法に過ぎません。人間と野生動物が暮らせる山づくりが大切です」と鈴木さんは語る。

取材後、メールが届いた。「こちらはすっかり秋の気配ですが、私は1日としてのんびりできる日がありません」。想像を絶する緊張感が漂う。

蝦夷地より伊那の谷間に移り来し我が目の前を子ザル通りぬ

 鈴木さんの短歌である。北海道犬とともに奔走する毎日。ゆったり歌を詠むのは、しばらく先のようだ。

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2009/01/20

編集者との対話「『死刑』で人間の存在を考える」

森達也さんのJCJ賞受賞作『死刑』を編集した鈴木久仁子さんに、編集作業を通してなにを伝えようとして、「死刑」についてどのように考えたのか、率直なご意見をうかがった。それからまもなくの9月11日、法務省は3人の死刑を執行した。執行は6月17日以来、保岡法相の命令は、8月の就任以降初めて。鳩山前法相下では、ほぼ2カ月おきに4回執行された。自民党総裁選の最中、内閣が機能していないような状態でも、死刑は確実に執行される。(吉田 悦子)

吉田 私は、JCJ賞授賞式の会場で『死刑』を購入して一気に読了しました。森さんの受賞スピーチをうかがって、硬軟自在というか、意外とお茶目な方なんだあと思いました。

鈴木 そうなんです(笑)。ハードなテーマの作品が多いせいか、一見、コワモテのように見えるんですけど、チャーミングで柔軟な人です。取材に同席していても感じましたが、無意識のうちに相手の心を開かせてしまうところがありますね。

吉田 最初から、低いアングルでぐっと引き込まれて、いつのまにか、いっしょにロードムービーを続けていたという臨場感が『死刑』にはあります。編集者の鈴木さんは、その登場人物のおひとりでもあるわけです。それと森さんは、「僕」という一人称で死刑について語っています。重いテーマだけに、記す側も読む側も、どうしても構えてしまいがちですけれど、「僕」という軽さによって、よい意味で肩透かしを食らった気がしました。読者のみなさんの反響は、いかがですか?

鈴木 読者からは様々な感想を寄せてもらっていますが、共通して見られるのは「森さんと一緒に揺れ動きながら読んだ。常に『あなたはどう思う?』と、問いを突き付けられているようだった」というものです。そして「まだ答えが出ない」、「ますます死刑がわからなくなった」という感想も多いです。廃止派だったけれど必要なのかもしれないという人もいれば、もちろんその逆もあります。

地方の40代の女性は、読んですぐに、7人の友人にメールで「とにかく読んでほしい」と勧めてくださったそうで、次に会うときにはその7人全員が読み終えた本を持ってきて議論されたそうです。そこでどういう意見が交わされたか、詳しく便箋につづられていました。すごくありがたい読まれ方をされています。森さんにオファーをしたのは5年前でした。オウム、超能力、放送禁止歌などいろんなジャンルの作品があるけれど、どれもとびきり面白かった。森さんから死刑の本を書きたいと言われたときは不安もあったけれど、ぜひやりたいと思いました。これまで死刑の本と言えば、フィクションではありますが、ノンフィクションでは元刑務官など当事者に近い人たちが書いた本がほとんどでした。あとは長く死刑廃止運動をしている作家や記者の方とか。森さんのように、もともとは死刑に深く関わっていない作家が死刑を描くということが大事だと思ったんです。

吉田 私が、死刑制度に疑問を持ったきっかけは、1997年8月の永山則夫の死刑執行です。国家の名のもとに人が人を殺すとはどういうことなのか、その内実を知りたいと思いました。その後、死刑廃止運動のリーダー的存在の安田好弘弁護士が逮捕され、その裁判を傍聴する中で、元死刑囚や弁護士や支援者、死刑囚の妻など、様々な人に出会いました。松本智津夫の裁判を傍聴したり、死刑についての著作も読み漁りました。そうした中で、なぜ死刑を廃止できないのか考えました。

近ごろは、事件の全容や不可解さを解明することよりも、マスコミ報道の煽りもあって、「犯罪者は抹殺してしまえ」といった暴走気味の世論に引きずられているような気もします。オウム真理教のドキュメンタリー映画「A2」を撮って元オウム幹部たちとの交流を深められた森さんが、死刑について考えられるのは自然な流れだったのでしょうね。森さんと取材を進める中で、印象に残っている方はどなたですか?

鈴木 みなさん印象深いです。とくに死刑との関わりが深い方、弁護士、刑務官、教誨師、被害者遺族の方々。印象的だったのは、誰もが存置と廃止との間で揺れ動いていることです。絶対廃止派だと思って話を聞いていると、最後の方で「死刑制度は残しておいたほうがいいのかな」とおっしゃったり。教誨師のTさんのときは録音がNGだったので、ずっとメモを取りながら聞いていました。教誨師は執行現場には立ち会わず、直前まで死刑囚のそばにいてお祈りしたりするんです。Tさんは率直な言葉でユーモアも交えながら淡々と話される方ですが、だからよけいに執行直前の死刑囚とのやり取りを聞いたときは、何と言うか言葉が出なかったですね。

吉田 絶句して息をのむ音まで聞こえてくるようで、一言一言リアルに響きました。

鈴木 それはもともと、森さんがドキュメンタリー映画監督だったということが大きいかもしれません。細かい言動やその場の空気感も描かれるからか、読んでいると、森さんと取材対象者のすぐ横にいるような感覚があります。

吉田 鈴木さんは、岡崎一明死刑囚(元オウム真理教)にも会われていますね。

鈴木 はい。『死刑』の取材は岡崎さんに会いに、東京拘置所を訪れたところからスタートしました。第一印象は、すごく喋る人だなあと。せっかくだから文通をしようと、死刑が確定するまでの1ヵ月間、ひんぱんに手紙のやりとりをしました。死刑囚の1日の会話は、刑務官との事務的な数分間だけで、あとは毎日無音の中です。だから面会がある日は朝から、面会時間の15分で何を話そうかずっと考えているそうです。おしゃべりに見えたのは、せっかく来てくれたのだからと気を使ってくれていたんですね。私の質問のすべてに丁寧に答えてくださる真摯な方でした。ちょっと飄々としたところもありますね。だから益々、過去の犯罪と照らし合わせるとわからなくなるし混乱します。

吉田 死刑囚は、日々何を思って暮らしているのか、知らされないまま、死刑制度は意図的に隠され、徹底した秘密主義の中で続けられている。死刑はタブー視されて、議論されることもないのが現状ですね。

鈴木 昔から、死刑問題について議論されていることは、存置も廃止もほとんど同じで、平行線のままです。死刑の取材を始めた当初は、そうした議論すらなくなっている状態でした。取材を始める前、下調べのために死刑廃止運動をしている「フォーラム90」にも時々お邪魔したりしました。そのことを知人に喋ったら、「よくそんなところに行くね」と、その人たちの主張も知らないまま批判したり、拒否反応を示す人もいた。死刑囚と文通していると話すと、「やめたほういいんじゃない」と心配する友人もいました。不思議に感じたけれど、私もこの仕事に関わらなかったら同じ反応をしていたかもしれない。やはり死刑は見たくない、かかわりたくないものなんだと思います。でも関係なくない。私たち一人ひとりがOKと言っているからある制度ですよね。だからこの本は、死刑のことなど考えたこともなかったという人たちにこそ読んでもらいたいです。

吉田 裁判員制度では、「被告人を死刑にすべきか否か」という問題に直面するでしょう。鈴木さんが初めて編集された『死刑』が、長く読み継がれ、停滞した現状に風穴を開けることを心から願っています。

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2009/01/10

愛犬との暮らしを通して体得した「備えあればの老犬生活」とは?

「犬との暮らしは十人十色。自分が出来る限りのことをやってあげれば、犬もその思いをきっと感じ取ってくれますよ」と、優しい笑顔でおっしゃる吉田悦子さん。

犬との生活を選ぶと、必ず避けては通れないのが“老犬”との暮らし。秋田犬のジョン万次郎、迷い犬だったジョニーとの別れを経験した吉田さんに、愛犬と最後まで快適に楽しく暮らすための心得を伺いました。

聞き手:松原 賢(ONE BRAND)/写 真:田中瑞江(ONE BRAND)

インタビュアーの大先輩に聞く

松原 本日はお忙しい中、ありがとうございます。作家でもあり、ジャーナリストとしても活躍しておられる吉田さんに、プロにお話を伺うということで緊張しております。

吉田 いえいえ、こちらこそよろしくお願いいたします。

松原 まず、今日の本題からは反れるのですが、一つお聞きしたいことがありまして・・・

吉田さんのお仕事の中で取材というのは非常に重要かと思うのですが、ONE BRAND WEBのオリジナルインタビューの第一回目ということもあり、取材対象にお話を伺う際の心構えや、アドバイスをご教授頂ければ幸いなのですが。

吉田 お目にかかる前に、お相手の情報をできるだけ集めておくというのは基本でしょうけれども。松原さんもWEBや雑誌で取材されることが多いでしょう?

松原 確かに取材する場にはよくいました。前職では映像制作をしていたので、世界遺産とかお城とか固めな作品を作っていまして。でもインタビュアー役というのはあまり経験が無いので。

人との出会いが財産に

吉田 この記事も松原さんが?(本誌連載中の『A First Dog & Mr. President ~社長が紹介する“我が社のファーストドッグ~』を指差しながら)

松原 いいえ、これは別の編集者の担当なのですけれど。でも犬が切り口だとお話を聞き易いというか、取材NGという事があまり無いですね。

吉田 そうですね。経営者の方にビジネスについてうかがうと、どうしても内容が固くなりがちですけれど、ペットのお話だと、にこにこと眦が下がるというか。

取材する側としても掲載して喜んでいただけると、嬉しいですよね。そうした一期一会の積み重ねが、やり甲斐に繋がっているのだと思います。

松原 吉田さんのホームページを拝見すると、編集記者時代より1日1人に取材することをモットーに、これまでに、数千人に取材を実践とあって。凄いなと思いました。

吉田 未知の方にお会いして、お話を伺うのって楽しいですよね。その人ならではの人生経験に、思わず聞き入ってしまいます。

松原 これは編集者だけでなく、営業マンにも当てはまる極意かもしれませんね(笑)

吉田 特に若い頃は、お話を伺う相手が皆さん年上で、さまざまな分野で活躍されている人生の達人みたいな方が多かったですから、とても勉強になりました。

フリーになって10年以上になりますけれど、公私ともにお付き合いのある方がたくさんいらっしゃいます。そうした人との出逢いが、いまの私の財産になっていますね。

松原 見習いたいと思います。

犬をテーマに書くきっかけ

松原 そんな中で犬をテーマに書かれることになったのは、ご自身が犬を飼っていらっしゃった事が大きいですか?

吉田 そうですね。学生時代の友人が(超有名犬雑誌)A誌の創刊スタッフで、「連載を担当して」と声を掛けられたのが、きっかけです。ただ当時は、私も出版社に勤めていたので、土日に取材するなど、記事を書くのはアルバイト感覚で始めました。

松原 なるほど。犬について勉強され始めたのはそれからですか?

吉田 当初から一飼い主の延長線上で取材していましたね。日本犬を連載で取材するようになって、日本犬六犬種のルーツを探るため、その産地へ取材を毎月続けるうち、結構コアというか、ディープな世界に足を踏み入れてしまったというか(笑)。

ペットというより、猟犬としての犬、生きものとしての犬として一途に愛情をそそいでいる飼い主さんが多かった事は非常に影響を受けましたね。

松原 そんな人と犬の関係が本来的なものだったんでしょうかね?

吉田 ただ猫かわいがりするのではなく、犬格を尊重するような、つき合い方もあるんだなと。こういう人と犬との絆もアリだなと思いました。

多面的な顔を持つこと

松原 吉田さんは非常に幅広く活躍されていて、作家、エッセイスト、ジャーナリストの他にも俳人や江戸ソバリエという肩書きもお持ちですし・・・

吉田 一見、雑多なようですけれど、いずれも繋がって、私の中で渾然一体となっているんですよ(笑)。例えば、好きな犬と俳句で「わん句」とか。

毎月、「お江戸蕎麦散歩」と称して、お蕎麦の食べ歩きをしているのですけれど、街歩きをする中で俳句もつくれますし、道行く犬にも目がいきます。格好のフィールドワークです。

松原 なるほど。何か生み出すということでは、すべてが役に立っているという事ですね。

吉田 松原さんは、映像の分野から入っていらっしゃって?

松原 そうなんです。ひょんなことから、犬の世界に、雑誌の世界に入ることになりまして。

創刊時から連載頂いている南村友紀さん(KitchenDog!)のドキュメンタリーを撮らせて頂いたのがきっかけで。取材させて頂く中で目から鱗なことがいっぱいあって、これは何か発信したいなと。

吉田 なるほど。ONE BRANDは創刊されて・・・

松原 3年目に入りました。

吉田 続けていくことって大変ですけれど、継続は力なり。大切ですよね。

松原 続けていくことで、いろんな方に興味をもって頂けると嬉しいですね。色んな方にもお目にかかれますし。

最新刊『うちの犬(こ)がぼけた』

松原 さて、吉田さんのご本『うちの犬(こ)がぼけた。備えあればの老犬生活』(幻冬舎文庫)ですが、書かれたのは少し前のようですね。

吉田 そうですね、2002年に出版したものに加筆修正して文庫化されました。

松原 この本に出てくる吉田さんの愛犬ジョニー君ですが、今もご一緒に?

吉田 この本を書いた当時、15歳だったジョニーは、その後18歳の天寿を全うしました。

松原 そうでしたか。吉田さんはジョニー君とその前に飼われていたジョン万次郎君の2頭を見送った経験をお持ちなんですね。

老犬をテーマに、特に「ぼけ」に注目されたのはそういった経験からでしょうか?

吉田 今でこそ人間でも認知症の研究がすすんでいますけれど、当時は、「犬もぼけるの?」という声が多かったですね。私は、犬も人間も、同じ生きものとして老いていく過程は同じだと、一緒に暮らしていて感じていました。

そこで獣医師さんに伺ったら「犬もぼけますよ」と。生活習慣病と同じで、放っておくとドンドン進行してしまう。でも、人間と同じで、ぼけないようにする努力次第で、ぼけずにいられると。

うちのジョニーは、おかげさまで、とくに病気を患うこともぼけることもなく、食欲もありましたし、最後まで意思疎通もしっかりしていました。

松原 ご本を読ませて頂いても感じましたし、お話を伺っていても思うのは、犬の変化に早めに気付いてあげられるような関係性を作っておくことが大事なんですね。

犬も人も老いていくのは同じ

松原 人間の痴呆と犬のそれはメカニズムは違っていること、老化と共にすべての犬がぼけに向かっちゃう可能性があると書かれていて非常に興味深かったのですが。

その違いはどういうところなのでしょうか?

吉田 残念ながら、まだ科学的にはっきり解明されてはいないようです。犬の脳にも、歳をとるとシミのような黒い影があちこちに(これは人間でもそうなんですけれど)現れて来ることはわかっています。

松原 犬も同じように歳をとればぼけもするし、様々な症状が出てくるんだよと。

吉田 そうなんです。そのことを人間がわかっていないと、犬が急に言うことを聞かなくなったとか、元気なのに呼んでも来ないとか、ぼおっとして反応が無いということで、飼い主さんが「うちの犬、どうしちゃったの?」とパニックを起こすこともあります。

でも、心構えがあれば、これも老化の兆候なのかなと気付いてあげられるでしょう? 早めに獣医師に相談するなど対処の仕方もあると思います。

松原 犬はご本にもあるように、時間が4倍速ですからね。(参照、表1)

ずっとカワイイままでも、あっという間に老化しちゃっていることもあるんですね。

人間

1ヶ月

3ヶ月

6ヶ月

1年

3年

5年

7年

9年

11年

13年

15年

17年

1歳

5歳

9歳

17歳

28歳

36歳

44歳

52歳

60歳

68歳

76歳

84歳

犬の幸せって何でしょうか?

松原 犬をぼけさせないために出来る事はご本には色々と書かれているのですが、読ませていただくと、それって『犬にとっての幸せ』とイコールなのかなと思うのですが。

犬を飼っておられた経験もお持ちで、犬やその飼い主を取材する側でもある吉田さんが考える『犬の幸せ』ってどういうものでしょうか?

吉田 うーん、一概に、これが幸せとは決めつけられないですよね。10頭の犬がいれば10通りの飼い主さんとの暮らしがあるわけで。「これじゃなきゃいけない!」と押し付けるようなことは、本の中でも言っていないんですけれど。

松原 そうですね。ただ犬は生活環境の整備が自分で出来る訳ではないし、犬自身が選ぶことには限りがありますから。飼い主が何を提供してあげられるかが重要なのかなと。

吉田 老犬介護も、あなたが出来る範囲でやってください、という事なんです。飼い主さんが無理をすれば、長続きませんし、ストレスがたまって倒れてしまうかもしれない。それでは、犬だって大変なことになります。

私は、老犬になったジョニーがそこにいてくれて、食べて、寝て、おしっこして、うんちして……ただそれだけで幸せでした。犬も人も幸せな関係って、どちらも無理なく、自然でいられる、そんな感じじゃないかしら。

松原 ペットロスで苦しまれている飼い主さんも多いと聞きますが・・・・

吉田 そうですね。なかには1年以上、なにをする気力が起こらないという深刻な方もいらっしゃいます。

私は、心から世話をして、最期の瞬間も一緒にいられましたから、ジョニーが亡くなって、たしかに悲しかったけれども、不思議と安堵感に包まれました。看取ってあげられて、ほんとうに良かったなと。ですから、もう犬を飼いたくないとも思っていません。

松原 確かに残された側がいかに、心置きなくやってあげられたかが重要ですね。

吉田 あの時にこうしてあげられれば・・・と後悔していらっしゃる飼い主さんもおられますけれど、私は言うんです。「あなたが精一杯やってあげてたことは、誰よりも愛犬が分かってくれていますよ」と。

松原 飼い主さんが出来る限りのことをしてあげることが一番ですね。

犬としっかり向き合っていくこと

吉田 犬は寂しがりやで甘えん坊なんですよ。その度合いは色々ですけれど、元々群れを成して生きていた生きものですからね。

人間もそうですが、若くて元気なときはともかく、特に、老年期にひとりぼっちにされちゃうと、とても心細くなりますよね。「いつも一緒だよ」と心のメッセージを送っていれば、犬にも必ず伝わって、幸せを感じられると思うんです。

松原 伝わるものですか?

吉田 もちろん、伝わりますよ。それを受け止めている犬は、歳を重ねても、気持ちに張りがあるというか、シャンとしていられるんじゃないかなあ。

ジョニーも「今日はお留守番、お願いね」と言いきかせて出かけると、ちゃんと待っていてくれましたし。老犬になるほど、判断力や洞察力が磨かれて、お利口になっていくと思いますね。

松原 色々と経験を積んで・・・老犬力がついていく?

吉田 そう、忍耐力もついていきますよ。きちんと人間と犬との関係を築くことができていれば、こちらの気持ちを読み取ってくれますからね。

松原 伝わるものなんですねぇ・・・

吉田 そうしてお互い思いやっていると、老犬との暮らしはとても楽しいですよ。

吉田さん琉、犬選び

松原 吉田さんが犬を選ぶ際の基準とかありますか?

吉田 たくさんの犬種がありますが、それぞれに特徴があって、良いところがありますからね。知れば知るほど奥が深いですよね。最初に、一期一会というお話をしましたけれど、人も犬も選ぶというより、結局、めぐりあいだと思うんですよ。とくに犬の場合、ひとつの命を丸ごと引き受けるわけですから、勇気と責任が不可欠ですよね。

まあ、私は、あまり賢い飼い主ではありませんから(笑)、利口すぎる犬はどうかなと思いますね。なんでも思いどおりに動く、スマート過ぎる犬だと、逆にこちらが疲れちゃうような気がします。少しおバカなところがあるくらいの犬のほうがカワイイかな、と思ったりします。

ジョニーは、とてもバイタリティーがあって、しかもフレンドリーな犬だったので、そういうタイプはいい相棒になるなと思いますね。

松原 それは犬種によって違うものですか?それとも育て方なのでしょうか?

吉田 やはり犬って、人間によって変わりますよね。どんなに素晴らしい素質を持った犬でも、飼い主次第で獰猛で危険な犬にもなっちゃうし。人間の子供と同じで、初めから悪い犬なんてあり得ないと思います。

松原 犬の問題行動で悩んでいる人は、まず自分の行動から見直すことも大切・・・かな。

吉田 そういう意味では、犬は飼い主の鏡のような存在ですよね。こちらがイライラしていると、犬もストレスがたまります。おっとり穏やかに接していれば、犬もそうなります。

松原 犬の顔が飼い主に似てくるとよく言われるのは、そういうとことなのでしょうね。

吉田さん流、犬選び

松原 次なる犬との暮らしを始められるご予定は?

吉田 あまり日本にはいない犬種なんですけれど、興味をひかれる犬がいるんです。

実は、すでにブリーダーさんにも仔犬の予約を入れてあります。年に1度の計画繁殖で今年の仔犬の飼い主はもう決まっているので、1年待ってくださいといわれているんですけれど(笑)。

長いこと日本犬の取材をしていますから、柴犬のように鼻のとがったりりしいタイプも大好きなのですが、その犬は、毛が長くて、鼻ペチャなんですよ。性格もぼおーっとしていて、どこかユーモラスなんです。

松原 個人的に鼻ペチャ大好きなので、飼われたら是非会わせて下さいね。

本日は色々と興味深いお話、ありがとう御座いました。

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2009/01/02

富士見二丁目北部地区第一種市街地再開発事業ビル築工事(仮称)

「そら」2008年11月号 現場拝見  第10回

施工/大成建設(株)東京支店

千代田区の超高層マンション

新たなランドマークとして注目集める

JR総武・中央線、東京メトロ有楽町・東西・南北線、都営大江戸線など、交通アクセスに優れた飯田橋駅から徒歩2分。千代田区富士見2丁目に、地上38階建て414戸の住居棟と地上17階建ての業務棟が建設中だ。

明治時代、このあたりの高台から、富士山を臨むことができたことから、富士見と呼ばれるようなった。この現場一帯は、20年近く前から、再開発計画が進められてきた。その中核を形成する超高層マンション「プラウドタワー千代田富士見」は、千代田区の新たなランドマークと注目されている。

建物は、鉄筋コンクリート造。基礎構造は深杭と地盤改良による直接基礎の2方式。コンクリートの設計基準強度は、30~100N/mm2。建物の上部躯体に、3種類の制震装置が併用され、さまざまな周期の揺れに対応できる。

「あわてず、ゆっくり、ていねいに!」

飽くなき無事故無災害の追求

さる7月3日、全国安全週間行事の一環として、大成建設の山内隆司社長による現場巡視が行われた。「職長会をはじめ、みなさんの協力で、おかげさまで大変高い評価を戴きました」と平田尚久作業所長は語る。所長の隣で大きくうなずくのは、職長会の早川伸夫会長

所長スローガンは、「近隣にはいつもやさしい気持ちで!」。都会の真ん中での大工事。地域住民とのコミュニレーションは必要不可欠だ。さらに、「あわてず、ゆっくり、ていねいに!」をモットーに、具体的な施策として、次の4点を挙げる。

        落ちない 

墜落する恐れのある高所作業時は、安全帯のダブル使用で身を守り、垂直・水平部の開口部を作らない。

        はさまれない

重機まわりの立入禁止に入らない。機械を扱うときのルールを守る。

        倒さない

足場や仮囲いの点検を毎日確実に行う。とくに重機の足元の確認を徹底する。

        飛ばさない、落とさない

整理整頓をして、物を存置させない。養生にすき間を作らない。

「この現場の重点目標は、『絶対に人を落とさない、物を落とさない』です」と平田所長は強調する。住居棟の最上階は138mに達する。万一、この高さから物が落ちて人に当たったら即死だ。落下物が跳ね、すぐ横のJRの線路に入ったら大変なことになる。

「無事故無災害を目指し、工程より安全優先で作業すること、人命を優先することはいうまでもありません。予定どおり作業が進まないとイライラして強引に進めたときが一番危ない。事故が起こったら、何にもなりません」。目標は、飽くなき無事故無災害の追求だ。

「作業に取りかかる前に、職長はじめみんなで段取り等を知っているか確認し合い、1人で勝手に行わないことが大切です。重大事故が起きたとき、職員も社員も知らなかったというケースもありますから」

規律と緊張感のある空気を保つため、作業員、特に新規入場者には礼儀とマナーの遵守を周知徹底している。きちんと挨拶をする、道具を大切に扱う、時間と約束を守る、きちんと片づけと整理整頓をする、いつも清潔にして健康管理をする。新規入場者は識別しやすいように、保護帽にシールを貼らせている(7日間着用)

自己管理ができる人は、事故を起こさない、というのが平田所長の持論だ。「まず、1人ひとりが、自分の身は自分で守り、事故を絶対起こさないという強い意志を持つことが大切です」と強調する。

 さらに、作業前の朝礼・昼礼による安全意識の向上(朝礼時には危険予知瞑想を行い、どこに危険が潜んでいるか、どんな危険が予想されるか考えさせる)、現地KY(危険予知)による作業手順の確認と周知、安全パトロールによる作業環境の安全確認などで、現場の緊張感を持続するよう努めている。現地KYでは、「手すりよし、ネットよし、電動工具よし」と指差し呼称をする。玉掛けワイヤーの点検、道路の凸凹による歩行者の転倒注意、ゲート前での一時停止の厳守、仮囲い周辺の点検、解体工事の粉塵防止対策など、神経を尖らせながら、毎日、現場ルールを遵守するよう指導に当たっている。

作業員一人ひとりが知恵と感性を磨き

危険を摘み取ることが大切

「どこが危険なのか、何が危険なのか、といったことを過去の事故例を通して常に学ぶことで、作業員1人ひとりが、知識と知恵と感性を磨き、危険の芽を摘み取ること、それが大切です」と鈴木所長は指摘する。

「住居棟は、5日サイクルで順調に工事が進んでいますが、繰り返し作業に馴れて、できているはず、やっているはずという思い込みは、思わぬ落とし穴があります。必ず自分の目で安全を確認し、決して手抜きをしないで、次のステップに進むように職長を通じて指導しています」

平田所長は災害をなくすため、自分一人だけでなく、仲間の命も大切にすること、仕事に対して謙虚であることを心がけるよう朝礼で作業員に呼びかけている。

「仲間からケガ人を出さないよう、やってはいけないことはやらない。自分の力を過信しないで、手抜きをしたり、早まったり、慌てたりしない。初心を大切に、職員と職長会が一致団結、力を合わせて、安全意識を高め、工事中の災害ゼロを誓っています」。

所長のお話から、プロ中のプロ集団であるという誇りと自覚と緊張感が伝わってくる。「あわてず、ゆっくり、ていねいに!」と私も口の中で繰り返す。迷ったら、作業手順を見直し、心のスキがないかきちんと確認すること。心のスキが事故につながるのだ。

「私は、この作業所から誰一人としてケガ人や病人を出したくありません。尊い命です。自分の体を大切に、具合の悪いときは、無理をしないで、職長や仲間に伝えて休息ほしい。今月も無事故で、そして元気に作業をしてほしい」。穏やかで、そして毅然とした平田所長の言葉が印象に残った。

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