(仮称)豊洲3丁目8-4街区計画築工事
「そら」2008年9月号 現場拝見 第9回
(仮称)豊洲3丁目8-4街区計画築工事 竹中工務店
独自のチューブ架橋と制震技術を採用
耐震性に優れた超高層マンションを実現
東京都江東区豊洲の運河に沿ったエリアは、超高層マンションを中心とする開発がいくつも進められ、大きな変貌を遂げている。もともと豊洲は、関東大震災の瓦礫で埋め立てられた埋立地。昭和12年、将来の発展を願い、豊かな土地になるように「豊洲」と名づけられた。
その後、石川島播磨重工業(IHI)などの工場が立ち並ぶ工業地として発展。現在、IHIの工場跡地は、ショッピングモールとして賑わっている。
豊洲の再開発は、2001年に始まった。住宅を中心に教育・医療・商業機能も配した魅力的な文化都市を目指し、大規模な開発が進んでいる。この豊洲3丁目8-4街区に、RC造地下1階・地上44階建ての超高層マンションが建設中だ。延床面積は約10万㎡、2007年10月着工、10年3月完成予定。
建物の基本構造は、同社が独自に開発した、住戸内の梁をなくし、さまざまな住戸プランを可能にするチューブ型の架構法「スーパー・フレックスチューブR」を採用。これは、連続的に配置した柱とそれをつなぐ梁で構成されるチューブ型の立体的な架構法で、コア共用部に竹中式制震間柱を込みこむことにより、振動時のエネルギーを吸収し、揺れを抑える制震機能を果たす。
チューブ架構と制震構造を組み合わせることによって、住戸内や共用部に梁がなく、さまざまな住戸ニ−ズに対応可能な、快適な住宅を実現できる。また、地震の時でも振動、建物の損壊を最小限に抑えられる。
さらに、コンクリート1m2当り約800トンにも最大耐えられる高強度・高耐火の「AFRコンクリートR」も採用。
このように、同社独自の最新の工法・制震技術を採用することにより、耐震性にも優れた超高層マンションを実現している。
「当プロジェクトは、この地域で最後に計画された超高層マンションとして、注目を集めています。超高層マンションの建設とともに、敷地に面した豊洲運河沿いを住民の方以外のみなさんも楽しめる散策路として整備します。緑豊かな街づくりに携わることに大きな誇り持ち、1人ひとりに豊かな思い出が残る職場となるよう、一丸となって日々の作業に頑張っています」と澁田所長は、完成予想図を示しながら語る。
それを見ると、垂直方向へ伸び上がる建物はスタイリッシュで、運河沿いの青空を映してきらめく壁面は、豊洲の新たなシンボル・タワーとしての存在感を漂わす。同時に、未来都市・豊洲のさらなる進化を予感させる。
「豊かな思い出」づくりに
リーダー会とともに取り組む
澁田所長の所長方針は、①全工期無事故無災害を達成する、②品質重視の姿勢を貫き、適正品質を確保してお客さまの信頼を得る、③工期を厳守し、お客さまに満足される建物を確保させる、④創意工夫によりムダ・ムリ・ムラを排除し、生産性向上に努める、⑤建設副産物の資源循環・発生抑制を推進するリサイクル率の向上により、環境保全活動を推進する、⑥思いやりの精神で、明るく、元気な職場環境をつくる、という6項目。
「当作業所で働く皆さんは、お互いを思いやる、やさしい精神をいつも持ってもらいたいですね。そして、明るく元気な職場環境を共につくりあげたい。豊かな豊洲の街を作る私たちの心の中にも、豊かな思い出がたくさん残る、そんな作業所になるよう願っています」
澁田所長のいう「豊かな思い出」づくりを支えるため、「リーダー会」の車輌・広報委員会は、壁新聞「ニュースステーション豊洲」を今年創刊した。
その紙面で、書記の鈴木慶妃さんは、「リーダー会はみんなのための、みんなで作る、みんなで育てる組織です。明るく楽しく働きやすい職場を作っていきましょう」と述べている。
宮原輝夫会長も、「整理整頓・清潔で働きやすい職場、みんなで協力し、明るく、楽しく、風通しのよい職場作りを目指して活動していきましょう」と訴えている。
5月発行の第2号は、「躯体1階立ち上がる!」という特集号。杭工事から躯体工事で活躍した、鍛冶・鉄筋・大工・とび・重機の作業者たちを業者ごとに写真入で紹介している。「技術のトーセツ」「熟練の墨田」「情熱の福山」「忍耐の東京重機」「不屈の藤井」「革新のビルド」「団結の共英」と、社名につけた二文字がユニーク。それにしてもなぜ、「忍耐の東京重機」なのだろうか?
「重機のオペレーターには、『先に自分たちの資材を吊り上げてほしい』など、業者の要望が集中します。そうした声を受け止めるオペレーターさんはなかなか大変なんです」と宮原会長。なるほど、それで「忍耐」の文字が付くのか。
埋立地のため、掘削に労力を費やした。澁田所長は、杭工事などに功績のあった縁の下の力持ち的存在の作業員を称えるため表彰状を贈った。1人ひとりに「豊かな思い出がたくさん残る作業所」にしたいという切なる願いが込められている。
こうした積み重ねが、明るく楽しい、働きやすい現場をつくり、だからこそ無事故無災害も達成できる、という強い信念が感じられる。
車輌・広報委員会の遠藤茂委員長は、警備員として毎日、現場入口に立つ。純朴な遠藤さんは、小学校の通学路に面する「現場の顔」。今ではすっかり小学生の人気者だ。
全国安全週間準備期間と安全週間中に、所内で募集した安全標語を短冊に記し、七夕の竹に吊り下げて作業所入口に飾った。それを目にした小学生の女の子から「私も短冊に願いごとを書きたい」と声をかけられた。遠藤さんが喜んで色紙を渡すと、「こうじがうまくいきますように」と記してくれた。この言葉に感動した所員は、女の子の小学校にお礼に伺ったという。
近隣の小学生との心温まる交流。「豊かな思い出」の1つとして、作業所で働く1人ひとりの心にしっかり刻まれている。小学生のメッセージ入りの七夕飾りは、「安全は『おかえりなさい』の笑顔まで」などの作業員たちの安全標語と一緒に、今も仮設通路を彩り、作業員はもとより、来訪者の心にやすらぎを与えている。
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