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2008/04/21

日本赤十字社医療センター建物建設工事

「そら」2008年1月号 現場拝見 第5回

日本赤十字社医療センター建物建設工事

施工/大林組

「命を守る病院をつくっている」

という使命を忘れてはならない

今回の建設現場は、東京・渋谷区の日赤広尾医療センター。広尾は、都内でも有数の高級住宅街として知られ、邸宅や高級マンションが多く見られる。

地下RC造3階・地上S造13階建て、延べ約8万2,000㎡の広さを誇る新しい医療センターは、病床数は670床。診療科目は、現行の24科から31科へ増えて、救命医療が充実する。工期は、2006年11月から11年3月まで。現在、駐車場などになる地下部分を掘削中だ。

昭和50年に建設された医療センターは、老朽化が著しく、現行の建築基準法(昭和56年改正)に定められている耐震性を備えていないため、関東地域での巨大地震が発生した場合、病院機能の停止というような事態も強く危惧されていた。

そこで、地域医療の使命を果たし、非常災害時には医療救護の拠点とするため、建物の全面改築となったわけである。

新たな医療センターの建設にあたって、免震構造を採用した。積層ゴムとダンパーで構成された免震装置を地盤と建物の間に設置することで、耐震安全性が大幅に向上する。

また、通常は670床だが、大規模災害の発生時には、仮設の病床を約1,000床増やし、傷病者を収容できるようにとする。

赤十字の「十」をかたどった建物の屋上には、患者および医薬品の搬送のためのヘリポートも整備する予定だ。

「工事を行うに当たり、自分たちは、いま何をつくっているかを理解することが問題です。命を守る病院をつくっているという使命を忘れてはいけません」と田村所長は強調する。

赤レンガ塀の撤去、

樹齢300年の

赤松の移植、1日250台のダンプ

以前、日赤通り側は、医療センターの周りを赤レンガ塀が囲んでいた。工事施工に伴い撤去し、日赤の敷地を提供して、2.5mの歩道を4mまで拡げた。また、北側の区道沿いも、1mの歩道を2mに拡張した。日赤通りの赤レンガ塀の一部は、医療センター正門の両脇などに復元することになっているそうだ。

この医療センターの敷地は、もともと延宝年間から佐倉藩堀田家の下屋敷だった。敷地内には、当時を偲ばせる「二代目宗吾の松」といわれる推定樹齢300年の赤松があった。その移植も大きな課題だった。歌舞伎でも知られる佐倉宗吾ゆかりの松ということから、江戸時代からある大木を盆栽仕立ての美しい樹形のまま移動させるという、大がかりな工事となった。

「枝張り18mもの赤松を200トンクレーンに吊り上げ、トレーラーに載せて移動させる様子は、圧巻の一言につきましたね」と田村所長は振り返る。

また、赤松の移植のほか、これまでに最も大変だったのは、工事現場の真ん中を通っていた一般道を4段階にわたって切り替えたこと。現場のすぐ脇に建っている既存の医療センター(病棟)の患者や関係者の安全を確保するため、切り替え作業は深夜に行った。事前の告知から慎重に対応したため、クレームはなかったそうだ。

現在、1日250台のダンプトラックが出入りしている。江戸時代からほとんど道のかたちが変わっていない現場一帯は、道が狭く、坂道が多い。とくに大型車は、曲がり角で歩行者や道路標識に接触するおそれがある。

そのため、出入りする工事車両の運転者に対し、搬入許可、日時、経路の指定などの伝達を徹底し、十分注意するよう呼びかけている。また、現場前の路上などで待機や駐車をしないよう、入退場のときは、必ず窓ガラスを開けて、警備員の誘導に従うよう定めている。

「飲みものあげて、と現場のみんなに声をかけるなど、とても気さくな所長です」と語るのは、職長会会長の木村貴之さん(鈴木組)。貴之さんは、父・市夫さんとともに、田村所長とは2代にわたり20年のつきあいになる。

「職長会を立ち上げてまだ日が浅いので、まわりのベテランの職長さんに支えられています。現場のルールを新規入場者にも徹底していきたい」と木村会長はいう。

現在、所員32人、作業員170人。これから工事の進展にともない、作業員の人数は800~1000人にもふくれ上がる。

「若い所員は、現場の熟練工から、そんなやり方ではダメだと指摘されるなど、いろいろ教えられています」と田村所長は笑顔で語る。所長と会長の気負いのないやりとりをながめていても、現場のコミュニケーションがよくとれていることが伝わってくる。

「仕事に誇りを持ち、魂を込めて

つくる」よう作業員らに指導

作業所の基本方針は、「顧客満足の向上を自負した継続的改善の実践に基づき、顧客が安心し、満足し、誇りを持って使うことのできる建物を提供し、もって、当社に対する信頼を深め、会社の一層の発展を図る」とある。

現場の施工方針として、①世のため、人のための建物であることに誇りを持って誠実に魂を込めて創る、②コミュニケーションを重ねて、全員のベクトルを一致させる、③稼動中の病院の敷地内であることを意識し、現場を常に清潔に保つ、④メンテナンスの容易な建物を作る、⑤耐久性のある材料を選択する、という5点を挙げている。

さらに、管理のポイントとして、①躯体の場合は、書類だけに偏向しない現場重視の施工管理、②外装の場合は、精緻な図面検討と正確な施工管理、③内装の場合は、性能(遮音・振動)の実証と美観の一致を挙げ、施工中に瑕疵の兆候があらわれたときは徹底的につぶす、としている。

経済性を保つためには、「費用対効果を常に考えて、必要なところには資源(人・モノ・金)を投入し、必要のないところには投入しない」と実にわかりやすい。

所長は、「薄肉PCa折り曲げ型枠工法」を開発したことでも知られている。これは、コンクリート工事の省力化とスピードアップのため、現場での型枠材の加工、組立て、解体作業を極力減らす工法の1つ。合板ベニヤを使用しないため、熱帯雨林の伐採などの環境破壊の改善や現場での廃材利用にも有効とされている。

「細かい1つひとつの作業を積み重ね、決して手抜きをしたり、まあいいやという雰囲気にしない。全工期無事故無災害で、すべての終わったとき、お互いにっこり笑って別れたいね」とあくまで穏和な表情で、しかし毅然とした態度で田村所長は語った。<

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