(仮称)北品川三丁目計画新築工事
「そら」2007年7月号 現場拝見 第2回
(仮称)北品川三丁目計画新築工事
前田建設工業 東京支店
超高層タワーマンションの敷地に
広がる開放的なやすらぎ空間
ここ数年、都内でもっとも劇的な変貌を遂げている街、品川。京浜急行で1つ目の新馬場駅は、江戸時代、東海道の宿場町・品川宿として栄えた。地名は、幕府公用の荷物を運ぶ馬を置いた馬場があったことに由来する。
周辺は神社旧跡が多い。そのため、歴史散歩に訪れる人も増えている。北品川3丁目の名刹・東海寺は、臨済宗京都紫野大徳寺の末寺。品川区史跡めぐりマップのモデルコースにも指定されている。寛永15(1638)年、沢庵和尚を開山として、3代将軍徳川家光によって創建。この東海寺の隣り、山の手通り沿いに建設中なのが、地上36階、総戸数278戸の免震タワーマンションである。
完成予想図によると、縦のラインを強調したシャープでモダンな外観。建物の四隅には、ガラスと若葉色のタイルを配置。周辺の寺社と調和し、圧迫感の少ない、軽やかで清潔感のあるイメージを打ち出している。
マンションのプロムナードは、東海寺の参道と一体化した歩道に。指定文化財をより身近に感じられるように、マンションの敷地内に、品川の敷地や旧街道の歴史などを紹介する「しながわ歴史ギャラリー」を設ける。交通量の多い山の手通りの喧騒から離れ、憩いとやすらぎの場になるように、広場には水盤や水琴窟や手水鉢、ベンチも置かれる。史跡めぐりで疲れた方も気軽に休める。近代的な超高層タワーマンションの足もとに、ほっとするような和の空間が広がる。
私は、これまで数十ヵ所のタワーマンションの建設現場を取材させていただいた。でも、これほど地域住民に広く開かれたやすらぎの場を提供しているマンションは、ほかにはあまりなかったような気がする。
免震装置による耐震・安全性に加え
広い居住空間も実現
前田建設工業は、安全かつ快適な超高層マンションの建設のため、1986年より、60階200mクラスの建物を対象とする「MARC-Hシステム」の開発に取り組んでいる。工期短縮、大スパン構造、超高強度コンクリートの開発にも取り組み、これまでに約40棟を建設。
「MARC-Hシステムは、鉄筋コンクリート造の柱・梁・床スラブで構成される純ラーメン耐震工法といわれるものですが、居住空間を広くするため、梁形を極力なくし、天井の高さを確保しています」と浅川勝弘所長(前田建設工業東京支店)は語る。
柱・梁・床スラブなどには、PCa(プレキャスト)部材を用いて、高い品質と耐久性を保った。さらに、工場生産されたPCa部材を使って、施工の合理化と工期の短縮を実現した。
梁の本数は、建物の耐力に比例する。そのため、梁が少なくなると、建物全体の耐力は低下する。そこで、「MARC-Hシステム」に免震装置も併用。オイルダンパー、鉛ダンパー、積層ゴムによって、地震のときの揺れを初期に抑え、震動の低減を図った。
また、外周の梁を逆梁(梁と天井がさかさまになった工法)として、梁成を大きくすることで、個々の梁の耐力をアップ。在来工法では、梁が屋根(天井)を支える形をとる。これに対し逆梁は、天井の上から梁がそれを支え、バルコニーの底面となって外に張り出す。
「エンドユーザーのニーズや嗜好の変化を的確にとらえ、地震や火災のときの安全性はもちろん、広い居住空間(最大約20m×約7・5m)も確保し、さらに風による影響の低く抑えています」(浅川所長)。
ゼロエミッションへの取り組みとしては、プラスチック型枠を用いて、それまでのベニヤなどの南洋材を削減し、使用後もリサイクルしている。解体工事で8品目、仕上げ工事で13品目の分別・リサイクルを実施。また、作業員に分別教育を行い、理解を促している。
このほか、できるかぎり無梱包の資材を搬入したり、不用材で現場に置く消火セット(水を入れたペットボトルを設置した箱)を作成している。さらに、作業所のエアコン温度(冷房27度、暖房21度)を調節し、温暖化防止に努めている。
所長オリジナルの3Kリボンで
より良い職場環境を目指す!
こちらの作業所の安全スローガンは、「強い意志とおもいやりで心通わせゼロ災害」。
「1人ひとりが、『強い意志』を持って状況判断をして安全を実践すれば、より大きな力につながります。そして、自分自身はもちろん、仕事の仲間・家族・まわりの人間に『おもいやり』を持って接し、常に気を配り、励まし合いたい。作業の連絡・調整、危険ポイント、立ち入り禁止区画などの情報を交換するためにも、『心』を通わせたコミュニケーションは必要不可欠です。そうでなければ、安全の維持・管理はできません」と浅川所長は強調する。
この安全スローガンをいつも身近に感じてもらいたいと、所長オリジナルの、「3K(さんか)リボン」(青・赤の2色)を全員に配付、着用をルール化している。
「私が入社したときから、建設業界の3Kのイメージを払拭し、より快適な職場をみんなの力で成し遂げたいと思っていました」。危険を予知し、ケアレスミスをなくし、よりよい職場環境を!という、3つのキーワードの頭文字から3Kリボンと名付けた。
これは、リボンの素材探しから、太さや長さなど試行錯誤し、ウレタンの伸縮性のある素材で手作りしている。
職長会「さつき会」の三上明広会長と根本貞明副会長の左腕にも、所長オリジナルの青い3Kリボンが巻かれている。赤いリボンは新規入場者なので、すぐ見分けがつく。職長たちは、なれない新規入場者の行動に目を光らせるとともに、声をかけるよう心がけている。
リボンの表面には、「安全帯使用」「作業床の確認」など、それぞれ安全意識を高めることばが記されている。なかには「○○命」と大切な人の名が記されている場合も。「作業中に腕章を見ることで、自然と安全意識が高まりますね」と三上会長は、効果について語る。
さつき会では、浅川所長の思いを汲み取り、「今日も無事に家族のもとへ 自らの意志で造る快適職場」というスローガンを完成。作業員全員の名前と写真入ポスターの掲示、一列になっての肩もみ体操、日替わりによる「本日の一言」など、緊張感の中にも、「なごみ」の要素をうまく取り入れている工夫している。
現場の仮囲いに飾られている季節の風景画はセンスがよく、涼しげ。作業所入口付近の街路樹の根もとには、色とりどりの美しい花が植えられている。これは、「道ゆくみなさんに喜んでもらえたら」と、警備員の松尾忍さんが、自腹で購入し世話をしているという。こんなところにも、さつき会のみなさんの心遣いと心意気が感じられて、うれしくなる。
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