「そら」2009年9月号 現場拝見 第14回
東北本線浦和駅付近高架化(駅部工区)工事
施工/鉄建・清水建設共同企業体
湘南新宿ラインの浦和駅停車で
新宿・横浜へのアクセスも向上
現在、急ピッチで工事が進められている「東北本線浦和駅付近高架化(駅部工区)工事」(施工/鉄建・清水JV)は、埼玉県さいたま市にあるJR浦和駅の東西の連絡通路の新設をはじめ、駅を中心に延長約1.3kmを高架化するものである。
これまで浦和駅は、駅の東西の連絡通路がなく、利用者から「不便なため何とかしてほしい」という声が多く寄せられていた。そのため、高架下の1階部分に幅25mの東西連絡通路を整備し、東口と西口間の通行をスムーズにして、分断されていた東西市街地の一体化を推進する計画である。
また、駅の高架化に合わせ、構内のバリアフリー化にも取り組んでいる。各ホームに、これまでなかったエスカレーターやエレベーターを新設し、利用者の利便性の向上した新しい駅へと生まれ変わる。
高架化工事は、用地が限られているため、1線ずつ線路を移動しながら慎重に進められている。地面を走っていた線路がすべて高架化されたのち、東北客貨線に旅客ホームを新設し、湘南新宿ラインのホームとする予定だ。
現在は通過している湘南新宿ラインが浦和駅に停車することによって、京浜東北線と埼京線の混雑が緩和され、新宿方面や横浜方面とのアクセスが大きく向上する。
高架化工事は、京浜東北線(南行・北行)および京浜東北線。高崎線上下線の計4線を高架化していく。工事は、平成17年より本格工事が始まり、まず最初に、一番東口寄りの京浜東北線(南行)の線路の隣りに高架ホームを建設、京浜東北線(南行)の高架化に着手した。平成19年1月、高架への切換工事が無事完成し、新しい旅客ホームが新設された。
続いて、京浜東北線(北行)を高架化し、平成20年5月に高架への切換を行った。
現在、宇都宮線と高崎線の上り線の高架ホームの建設が進められており、今年12月に高架化する予定。その後、宇都宮線と高崎線下り線も順次高架化していく。
高架化された駅前広場側の新しい駅舎の壁面は、水色の防風スクリーン(強化ガラス)が多用され、開放的で洗練された外観となっている。ホームの上野側・大宮側には、コンコースからの階段を設置し、壁面は強化ガラスで装飾され、とても明るいイメージになった。
「私達は鉄道利用のお客さまに
ご迷惑をかけません」と唱和
現場作業所は、浦和駅前にあるプレハブの建物の2階にある。もともと、銀行の支店が併設されていたが、今は1階に浦和駅東口交番が入っている。
室内には、鉄建建設の今年の安全推進スローガン「見過ごすな危険の芽 ルールを守って 安全第一」が掲示されている。
安全重点目標は、「墜落災害の防止。重機・クレーン災害の防止。工事事故の防止」。
また、労働衛生目標として、「解体作業等における石綿ばく露防止対策の徹底。過重労働等による健康障害防止のための管理の実施」を掲げている。
さらに、安全3大運動として、「TPKY(鉄建式計画時危険予知)による安全先取りの推進、安全10分間運動の推進、一声かけ運動の推進」を実施している。
中津祐造所長が、同現場に着任したのは平成14年12月。今年で7年目になる。中津所長は、毎年1月に、その年の作業所目標を掲げている。平成21年は次の三つ。
① 基本ルール厳守の現場
② 安全を確保し、トラブル防止の現場
③ 品質・工程管理を徹底する現場
ちなみに前年は、
① 安心・安全で健康な現場
② 品質・工程管理を徹底する現
③ 報告・連絡・相談を徹底する現場
「人通りや交通量、列車本数が多い駅での大規模な工事で、しかも限られた時間内に作業を進めなくてはなりません。すみやかに作業に取り掛かれるよう、また、より良い条件の中で安全に作業が進められるように、毎日、作業工程を念入りに確認しています。常にJR東日本の了解のもと工事を進めていますから、計画外の作業は絶対しないよう現場に周知徹底を図っています」と語る中津所長。穏和な語り口が印象的だ。
現場では、朝礼と夕礼の点呼のときに、全員で「安全唱和」を行っている。
① 何かあったらまず一報
② 安全確認できない場合は、線閉解除しない
③ 疑わしきときは、まず電車を止める
続けて、「鉄道工事従事者の心得」も全員で唱和している。
① 私達は、鉄道利用のお客さまにご迷惑をかけません!
② 私達は、線路の内、上空で作業していることを忘れません!
③ 私達は、基本動作とルールを守り、予定外の作業はしません!
④ 私達は、無断作業、計画外作業は絶対に行いません!
町内会の一員として祭に参加
半被姿で神輿を担ぐ!
「工事を円滑かつ安全に進めるため、工事に関わるすべての人と良好な関係を築く努力をしています。工事をしているのではなく、工事をさせてもらっているんだという気持ちを忘れずに、近隣住民のみなさんと接していきたいですね」と中津所長。
職長会会長の島本徹さん(東和建設)は、「毎年7月に行われる浦和の祭に参加し、町内会の一員として半纏姿で神輿を担いでいます。今年も、職員3人と協力会社から2人が、2日間にわたって参加しました。こうしたことも、現場のイメージアップなど、良い結果につながっていると思います」と語る。
中津所長と島本さんのご案内で、私も宇都宮線と高崎線上り線ホームを見学させていただいた。ヘルメットをかぶり、黄色い安全チョッキを着用して、さながら工事関係者のようだ。
真新しい階段を上って工事中のホームへ。まだ一般の人が降り立ったことがない高架のホームに立てたことは、とても新鮮な体験だ。ほかのホームが新設された際は、近隣住民を招き、線路に下りて歩く「軌道内ウォーク」を楽しんでもらったそうだ。
工事はちょうど、ホーム屋根の鉄骨の仕上げにかかっているところであった。視線を下に移すと、敷設されている線路は、コンクリートの枕木を付けた状態で、20cmほど浮かして仮止めされている。木枠をはめてコンクリートを流し込むそうだ。
防護壁を隔てて、青いストライプの京浜東北線の車輌が頻繁に走り抜けていく。電車の走行が止まる夜間も、毎日、約40人が工事に当たっている。ホームの切換段階に入ると、100人体制に膨れ上がる。
これまで、浦和駅というと、正直なところ、県庁所在地とは思えないほど不便で、なんとなく暗いイメージがあった。工事の進捗によって、それもきれいに払拭されることだろう。
高架化工事全体の完成は、平成25年3月の予定。高架化工事とともに、東口の再開発工事も進み、浦和駅内外の風景も一気に変わることであろう。
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